7 / 86
1章 刻印を持つ者
2.漁師の頭
しおりを挟む
仕事を終え休んでいたルシフの所にその男はやってきた。
男が勢いよく部屋のドアを開ける。ドアを開ける振動で、壁に飾ってあった謎の絵が地面に叩きつけられた。その様子を見ていたルシフは、呆れたように気の無い声で愚痴をこぼした。
「あーぁ、その絵高いんですよ」
しかし、大男の方はそんなことは気にも留めず、ただ自分の怒りだけを表していた。
「またサボってたんだってな! マリアさんから聞いたぞ!!」
そう叫ぶ声は、礼拝堂にまで木霊していた。ルシフは耳を劈くような音に耐えきれず、両耳を手で塞いだ。それでも、耳が痛いようだった。
大男は漁師の頭だから、声が大きいのは仕方のないことだ。だが、ルシフにとってはそんなことは関係ない。
「大声の自慢なら他所でやってくださいよ…………」
ルシフは皮肉を吐いた。怒られてもなお皮肉を垂れる彼に漁師はガッカリする。
「お前がいくら皮肉ばかり垂れようが俺は怒りはせんが、俺もこのままじゃオメェの親父さんに申し訳ねぇ……それにお前は帰って来てからずっとその調子だから、マリアさん、お前のお母さんも心配している」
大男は真剣な眼差しで、声のトーンをかなり落としてそう言った。
(確かに、母さんに心配はかけたくない。だけど父さんはどうでもいい。)
「父さんのことは話さないでください! 俺に刻印があるからって逃げた男だ!」
ルシフは父の話をされるのを嫌った。行方不明なったのは、自分に獣の刻印があるからだと思ってあたからだ。頭はその言葉を否定した。
「あの人はそんな人じゃない! 最後にあった俺が言うんだ、あの人は逃げる人の目をしていなかったんだ」
その言葉を最後に、2人とも黙りこんだ。
ルシフは手の甲にある刻印を見つめた。彼はこの街で唯一獣の刻印を持つ者だった。それを横目で見た頭は何も言えなかった。
「俺は、この生を何度繰り返しても構いません。でも、父だけは別の人と変えて欲しい。俺の願いはそれだけです。俺は力を求めた覚えなんてありませんが、それぐらい神も許してくれるでしょう?」
昔から、ルシフの苦難を見続けた頭は、なにも話すことが出来ない。ただ、そんな自分を情けないとばかり感じていた。
「俺はあなたにも感謝しています。母が倒れなかったのだってあなたのおかげなのだから……。これからも母さんをよろしくお願いします」
それを聞いた頭は救われたという風に微笑んだ。
「今日はこんな暗い話のために来たわけじゃない。今日は漁に出る日だから、お前に祈ってもらおうと訪ねてきたんだ。お前もこの前20歳になったわけだし、今日はサボらずに祈ってくれよ……」
頭はそう強く懇願した。頭はルシフの育ての親とも言える存在だ。彼の願いを無碍にすることはできず、仕方なくルシフは祭服に着替え、礼拝堂へと向かうことにした。
男が勢いよく部屋のドアを開ける。ドアを開ける振動で、壁に飾ってあった謎の絵が地面に叩きつけられた。その様子を見ていたルシフは、呆れたように気の無い声で愚痴をこぼした。
「あーぁ、その絵高いんですよ」
しかし、大男の方はそんなことは気にも留めず、ただ自分の怒りだけを表していた。
「またサボってたんだってな! マリアさんから聞いたぞ!!」
そう叫ぶ声は、礼拝堂にまで木霊していた。ルシフは耳を劈くような音に耐えきれず、両耳を手で塞いだ。それでも、耳が痛いようだった。
大男は漁師の頭だから、声が大きいのは仕方のないことだ。だが、ルシフにとってはそんなことは関係ない。
「大声の自慢なら他所でやってくださいよ…………」
ルシフは皮肉を吐いた。怒られてもなお皮肉を垂れる彼に漁師はガッカリする。
「お前がいくら皮肉ばかり垂れようが俺は怒りはせんが、俺もこのままじゃオメェの親父さんに申し訳ねぇ……それにお前は帰って来てからずっとその調子だから、マリアさん、お前のお母さんも心配している」
大男は真剣な眼差しで、声のトーンをかなり落としてそう言った。
(確かに、母さんに心配はかけたくない。だけど父さんはどうでもいい。)
「父さんのことは話さないでください! 俺に刻印があるからって逃げた男だ!」
ルシフは父の話をされるのを嫌った。行方不明なったのは、自分に獣の刻印があるからだと思ってあたからだ。頭はその言葉を否定した。
「あの人はそんな人じゃない! 最後にあった俺が言うんだ、あの人は逃げる人の目をしていなかったんだ」
その言葉を最後に、2人とも黙りこんだ。
ルシフは手の甲にある刻印を見つめた。彼はこの街で唯一獣の刻印を持つ者だった。それを横目で見た頭は何も言えなかった。
「俺は、この生を何度繰り返しても構いません。でも、父だけは別の人と変えて欲しい。俺の願いはそれだけです。俺は力を求めた覚えなんてありませんが、それぐらい神も許してくれるでしょう?」
昔から、ルシフの苦難を見続けた頭は、なにも話すことが出来ない。ただ、そんな自分を情けないとばかり感じていた。
「俺はあなたにも感謝しています。母が倒れなかったのだってあなたのおかげなのだから……。これからも母さんをよろしくお願いします」
それを聞いた頭は救われたという風に微笑んだ。
「今日はこんな暗い話のために来たわけじゃない。今日は漁に出る日だから、お前に祈ってもらおうと訪ねてきたんだ。お前もこの前20歳になったわけだし、今日はサボらずに祈ってくれよ……」
頭はそう強く懇願した。頭はルシフの育ての親とも言える存在だ。彼の願いを無碍にすることはできず、仕方なくルシフは祭服に着替え、礼拝堂へと向かうことにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる