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3章 対なる聖者
3.聖なる角 2
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「ごめんなさい!」
アリサはかなり大振りに頭を下げ、謝罪の意を表明した。
「兄はレヴィア様の事になるとすぐ頭に血がのぼっちゃうんだ……って僕の体だから僕はって言った方がいいのかな?」
焦ったアリサはトンチンカンな事を言い出したが、ルシフは今まさに死の窮地から脱したばかりであった為、突っ込む余裕すらない。
それより、気になっているのはアリサの右手に握られている捻れた角だ。
「そんな事より、その角……」
「言いたい事は分かるよ。聖者ハムートの事だよね?」
それから、彼女は先程の状況について色々と説明した。
どうやら、ハムートが霊体としてアリサに憑依しているのは本当のことで、生まれ持って魂の半分が消滅してしまったアリサの精神を補う為にレヴィアの魔法で憑依させたらしい。それによって人間のアリサと聖者のハムートが一つの体を共有して生きている。
にわかに信じがたいことであるが、彼女からは聖者の気配を一切感じない。聖者は悪魔と違い、自分の気配を隠すことが出来ないから嘘はついていないだろう。
もし仮に、それが嘘だったとしても信じてやるのが大人の流儀だ、などとカッコつけているルシフだ。本当かどうかはどうでもよかった。
それよりも気になることはまだある。
「お前は何しにここまで来たんだ?」
ルシフの質問にアリサは目をそらし、冷や汗をかきながら呟く。
「それは勿論、レヴィア様を連れ戻しに来たんだよ……」
明らかに目が泳いでいる彼女だ。
(嘘を信じてやるのが大人の流儀だ! だが、もっと言えば嘘を付かせない様にすることこそが大人の役目だよな)
「安心しろ、俺はお前の近くにいる大人とは違う。お前が本当のことを言ったとしても怒ったりしない。」
「…………本当に?」
「ああ、神に誓おう。」
それを聞いて安心したのか、彼女は真実を話すための決心を決め深呼吸をする。そうして、話し始めようとするも突然の声に阻まれた。
「アリサ、正気か!?」
その声はどうやら下の方から聞こえた様で、ルシフはとっさに下を向く。だが誰も居ない。
「兄さんは黙ってて!」
アリサの大きな声にルシフは驚いて咄嗟に顔を上げる。どうやら声の主はアリサの兄ハムートのものらしい。だが、姿などどこにも見えなかった。
ルシフはよく観察してなんとなく状況を把握した。彼女が話し掛けているのは、右手に握られている黒い角だった。
「こいつもきっと騎士団の連中と同じで、俺らの力を利用しようする奴だぞ!」
「違うよ、ルシフさんはきっと違う」
「この分からず屋、それで何度痛い目にあったこもか! ここまで歩いて来たのだって、俺らの力にびびった爺さんのせいだろうが!」
「確かにそうかもしれないけど、メフィスト様だって地形を変えない為にって…………」
「そんな訳がないだろう! 俺たちが本気を出せば地形を変えずに移動することだって出来るし、悪魔に見つかろうが簡単に倒せる!!」
「兄さんがそんなんだから僕がいつも困っているんじゃないか!!」
2人の応酬はいつまで経っても終わらない。
「うるさーい! 今何時間だと思ってるんだ!!」
隣の家に住む小太りのおっさんの逆鱗に触れる。勢いよくドアを開け、こちらに近づいて来た。
「おい、ルシフ! いくら強く当たれる相手がいないからといって、そんな子供と言い合いなんかしてんじゃねぇ!!」
おっさんはルシフの声とハムートの声を勘違いしている様だ。当の2人はというと、おっさんの声にびびって黙り込んでしまった。
「隣のおっちゃん。いくら俺が性格が臆病だといっても、子供に怒鳴りつけるほど落ちぶれちゃいないぜ。それとも、そんな奴に見えるのか?」
「お前、鏡って知ってるか?」
「その返しには、流石の俺も傷つくぞ……」
隣のおっさんにとっては、ルシフのことなどどうでもよく、子供の方が心配だった。
「お前のことなんかどうでもいい、それよりお嬢ちゃん大丈夫か?」
おっさんは一目で女の子だと見定め、声をかける。
「ひぃっ!」
アリサはおっさんに完全に怯えてしまっていた。
「ほら、おっちゃんは顔が怖くて大人でもビビるんだから、さっさと帰んな。このロリコンめが……」
「俺ってそこまで怖いか……? ルシフ後で覚えていろよ……」
そもそも、このおっさんはとてもいい人だ。だが、顔つきが悪いというだけで、自身の娘と遊んでいると『ロリコン』だの、『誘拐犯』だの言われる始末で可愛いそうな人だ。
可愛いそうだが、もっと可哀想なことになる前に彼の巣に返してやらなければいけない。
「ひとまず、話がややこしくなる前に帰ってくれ!」
おっさんは悲しそうな目をしているが、その目にはカルマが宿っていた。そしてゆっくりと家まで足を運ぼうとした。
「ちょっと待った!!」
今現れると一番ややこい人物が、教会の窓から顔を出す。
そもそも、こんなことが起こっている主犯とも言える人物、レヴィアだった。
アリサはかなり大振りに頭を下げ、謝罪の意を表明した。
「兄はレヴィア様の事になるとすぐ頭に血がのぼっちゃうんだ……って僕の体だから僕はって言った方がいいのかな?」
焦ったアリサはトンチンカンな事を言い出したが、ルシフは今まさに死の窮地から脱したばかりであった為、突っ込む余裕すらない。
それより、気になっているのはアリサの右手に握られている捻れた角だ。
「そんな事より、その角……」
「言いたい事は分かるよ。聖者ハムートの事だよね?」
それから、彼女は先程の状況について色々と説明した。
どうやら、ハムートが霊体としてアリサに憑依しているのは本当のことで、生まれ持って魂の半分が消滅してしまったアリサの精神を補う為にレヴィアの魔法で憑依させたらしい。それによって人間のアリサと聖者のハムートが一つの体を共有して生きている。
にわかに信じがたいことであるが、彼女からは聖者の気配を一切感じない。聖者は悪魔と違い、自分の気配を隠すことが出来ないから嘘はついていないだろう。
もし仮に、それが嘘だったとしても信じてやるのが大人の流儀だ、などとカッコつけているルシフだ。本当かどうかはどうでもよかった。
それよりも気になることはまだある。
「お前は何しにここまで来たんだ?」
ルシフの質問にアリサは目をそらし、冷や汗をかきながら呟く。
「それは勿論、レヴィア様を連れ戻しに来たんだよ……」
明らかに目が泳いでいる彼女だ。
(嘘を信じてやるのが大人の流儀だ! だが、もっと言えば嘘を付かせない様にすることこそが大人の役目だよな)
「安心しろ、俺はお前の近くにいる大人とは違う。お前が本当のことを言ったとしても怒ったりしない。」
「…………本当に?」
「ああ、神に誓おう。」
それを聞いて安心したのか、彼女は真実を話すための決心を決め深呼吸をする。そうして、話し始めようとするも突然の声に阻まれた。
「アリサ、正気か!?」
その声はどうやら下の方から聞こえた様で、ルシフはとっさに下を向く。だが誰も居ない。
「兄さんは黙ってて!」
アリサの大きな声にルシフは驚いて咄嗟に顔を上げる。どうやら声の主はアリサの兄ハムートのものらしい。だが、姿などどこにも見えなかった。
ルシフはよく観察してなんとなく状況を把握した。彼女が話し掛けているのは、右手に握られている黒い角だった。
「こいつもきっと騎士団の連中と同じで、俺らの力を利用しようする奴だぞ!」
「違うよ、ルシフさんはきっと違う」
「この分からず屋、それで何度痛い目にあったこもか! ここまで歩いて来たのだって、俺らの力にびびった爺さんのせいだろうが!」
「確かにそうかもしれないけど、メフィスト様だって地形を変えない為にって…………」
「そんな訳がないだろう! 俺たちが本気を出せば地形を変えずに移動することだって出来るし、悪魔に見つかろうが簡単に倒せる!!」
「兄さんがそんなんだから僕がいつも困っているんじゃないか!!」
2人の応酬はいつまで経っても終わらない。
「うるさーい! 今何時間だと思ってるんだ!!」
隣の家に住む小太りのおっさんの逆鱗に触れる。勢いよくドアを開け、こちらに近づいて来た。
「おい、ルシフ! いくら強く当たれる相手がいないからといって、そんな子供と言い合いなんかしてんじゃねぇ!!」
おっさんはルシフの声とハムートの声を勘違いしている様だ。当の2人はというと、おっさんの声にびびって黙り込んでしまった。
「隣のおっちゃん。いくら俺が性格が臆病だといっても、子供に怒鳴りつけるほど落ちぶれちゃいないぜ。それとも、そんな奴に見えるのか?」
「お前、鏡って知ってるか?」
「その返しには、流石の俺も傷つくぞ……」
隣のおっさんにとっては、ルシフのことなどどうでもよく、子供の方が心配だった。
「お前のことなんかどうでもいい、それよりお嬢ちゃん大丈夫か?」
おっさんは一目で女の子だと見定め、声をかける。
「ひぃっ!」
アリサはおっさんに完全に怯えてしまっていた。
「ほら、おっちゃんは顔が怖くて大人でもビビるんだから、さっさと帰んな。このロリコンめが……」
「俺ってそこまで怖いか……? ルシフ後で覚えていろよ……」
そもそも、このおっさんはとてもいい人だ。だが、顔つきが悪いというだけで、自身の娘と遊んでいると『ロリコン』だの、『誘拐犯』だの言われる始末で可愛いそうな人だ。
可愛いそうだが、もっと可哀想なことになる前に彼の巣に返してやらなければいけない。
「ひとまず、話がややこしくなる前に帰ってくれ!」
おっさんは悲しそうな目をしているが、その目にはカルマが宿っていた。そしてゆっくりと家まで足を運ぼうとした。
「ちょっと待った!!」
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