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5章 智の魔王
6.たった一人
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ルシフだけ取り残された教会は、前までの賑やかさがまるで嘘であったかのように静まり返っていた。
結局、ルシフはレヴィア達3人にとっては足手まといにしかならない、そんなことはルシフ自身が自覚していることだ。なにより、それでもルシフはレヴィア達を助けたいと思ったのだ。
「俺、ダサいな……」
その呟きに対する返事などあるわけもない。ただ、静寂ばかりが辺りをつつんでいた。
(また、これか……でも今回は大丈夫だ! 一人でもダンダリオンを倒す算段はある……)
ベッドで寝転びながら、物思いに更けていたルシフはわずかな決意のもと、母のいるリビングへと向かった。
廊下では、なぜか親方とすれ違ったが、ルシフは彼に目配せだけして声もかけずに通り過ぎた。
リビングへとたどり着いたが、そこに母の姿はない。ルシフは少しだけ奇妙だと思ったが、何事もなかったかのように部屋を出た。
もともとルシフは、母に話そうが離すまいがもう町を出ることを決めている。ならば、やるべきことは1つだ。
「誰にも求められていないのかもしれないし、俺はみんなに心配をかけるかもしれないけど……俺行ってくるよ母さん……」
「わかってるよ! あんたは私の息子であの人の息子だ。だから胸を張って行きな! だれもあんたを邪魔だなんて言わせないよ!」
背後からの声に驚いたルシフだが、すぐにいつもの凛々しい顔つきを取り戻した。
「ああ、糞親父の分まで活躍してやるよ!」
「あんたなら出来る! あんたなら出来るよ!」
「絶対帰ってくるから、ご馳走の準備をしておいてくれよ?」
ルシフは死亡フラグを立てながら、母に背を向けリビングから出て行った。
また廊下で親方とすれ違ったが、今度もルシフは一言たりとも声をかけようとはしない。それが信頼からかはわからないが、なぜだが、ルシフも親方も誇らしげな顔をしていた。
それからは早かった。何も持たずに教会を飛び出したルシフは半壊して修理中の門を駆け抜け、泥の中を疾走した。
なんども足を取られ転び、折角の一張羅も泥だらけになっているが、そんなことも気にせずただひたすら草原を走った。
(確かレヴィアが話していた日時は明日の朝だったはず! 今から全力で走り続ければなんとか間に合うだろう……)
全力疾走で草原を駆け抜けるが、全てがうまく行くほど世界は甘く出来ていない。
それこそ、自分の責任であるが足がぬかるんでなかなか進まない。
なによりも問題なのは盆地であるこの草原の中心に、巨大な湖が出来てしまったことだろう。
これではルシフも遠回りするほかない。
(くそ、1人というのがこれ程までに辛いとは……俺は1人じゃこんなちっぽけな湖すらわたれないのか……っ!)
仕方なく迂回ルートを探すルシフだが、時間もあまりない。もし、湖の周りを行くルートなら時間を1時間程度ロスしてしまうだろう。
しかし、泳いで行くとその比ではないほど時間を失う。
(こんな時にレヴィアがいれば……いや、この状況を打破できないようでは……)
「いつまでも足手まといのままだな!」
ルシフは湖に向かって助走をつけて走り出す。それは、ルシフが昔訓練所で聞いた話を思い出してのことだ。
『ねぇルシフ、こんな話をしっている? ある国の騎士みたいな人達の話なんだけど、水の上を走る技術を使えるらしいの。もしそんな術があるなら、私の魔法は役に立たないかもね!』
ルシフが思い出したのは、水を支配する聖者レヴィアの言葉だ。ならば間違いなどあるはずもない。
ただ、その言葉だけを信じて、水に向かって一気に走り出した。
そう、水に浮かんだ右足が沈むよりも速く、左足を前にだし、それを左右で繰り返すことによって沈まずに水の上を走る、という荒唐無稽な技術を今まさに実践しようとしているのだ。
「————大丈夫だ! 俺ならいける……自分をしんじるんだ!」
根拠のない自信を持ってルシフは今水に右足をつけた。
(いける! 次は左足を素早く前にだす!)
普通の水の中でももちろん出来ないが、泥水の中ではさらに難しいだろう。出来たと思ったのもただの勘違いで、出来るわけがない。
ルシフは泥に足を取られて顔面から水面に叩きつけられた。
「ぐへっ!」
唯一の救いはそこが硬い地面の上でなかったということだけだ。
水に浮かんだルシフは真っ赤に燃える夕陽をみながら、自分の情けなさを乾いた笑いで誤魔化すことだけだった。
結局、ルシフはレヴィア達3人にとっては足手まといにしかならない、そんなことはルシフ自身が自覚していることだ。なにより、それでもルシフはレヴィア達を助けたいと思ったのだ。
「俺、ダサいな……」
その呟きに対する返事などあるわけもない。ただ、静寂ばかりが辺りをつつんでいた。
(また、これか……でも今回は大丈夫だ! 一人でもダンダリオンを倒す算段はある……)
ベッドで寝転びながら、物思いに更けていたルシフはわずかな決意のもと、母のいるリビングへと向かった。
廊下では、なぜか親方とすれ違ったが、ルシフは彼に目配せだけして声もかけずに通り過ぎた。
リビングへとたどり着いたが、そこに母の姿はない。ルシフは少しだけ奇妙だと思ったが、何事もなかったかのように部屋を出た。
もともとルシフは、母に話そうが離すまいがもう町を出ることを決めている。ならば、やるべきことは1つだ。
「誰にも求められていないのかもしれないし、俺はみんなに心配をかけるかもしれないけど……俺行ってくるよ母さん……」
「わかってるよ! あんたは私の息子であの人の息子だ。だから胸を張って行きな! だれもあんたを邪魔だなんて言わせないよ!」
背後からの声に驚いたルシフだが、すぐにいつもの凛々しい顔つきを取り戻した。
「ああ、糞親父の分まで活躍してやるよ!」
「あんたなら出来る! あんたなら出来るよ!」
「絶対帰ってくるから、ご馳走の準備をしておいてくれよ?」
ルシフは死亡フラグを立てながら、母に背を向けリビングから出て行った。
また廊下で親方とすれ違ったが、今度もルシフは一言たりとも声をかけようとはしない。それが信頼からかはわからないが、なぜだが、ルシフも親方も誇らしげな顔をしていた。
それからは早かった。何も持たずに教会を飛び出したルシフは半壊して修理中の門を駆け抜け、泥の中を疾走した。
なんども足を取られ転び、折角の一張羅も泥だらけになっているが、そんなことも気にせずただひたすら草原を走った。
(確かレヴィアが話していた日時は明日の朝だったはず! 今から全力で走り続ければなんとか間に合うだろう……)
全力疾走で草原を駆け抜けるが、全てがうまく行くほど世界は甘く出来ていない。
それこそ、自分の責任であるが足がぬかるんでなかなか進まない。
なによりも問題なのは盆地であるこの草原の中心に、巨大な湖が出来てしまったことだろう。
これではルシフも遠回りするほかない。
(くそ、1人というのがこれ程までに辛いとは……俺は1人じゃこんなちっぽけな湖すらわたれないのか……っ!)
仕方なく迂回ルートを探すルシフだが、時間もあまりない。もし、湖の周りを行くルートなら時間を1時間程度ロスしてしまうだろう。
しかし、泳いで行くとその比ではないほど時間を失う。
(こんな時にレヴィアがいれば……いや、この状況を打破できないようでは……)
「いつまでも足手まといのままだな!」
ルシフは湖に向かって助走をつけて走り出す。それは、ルシフが昔訓練所で聞いた話を思い出してのことだ。
『ねぇルシフ、こんな話をしっている? ある国の騎士みたいな人達の話なんだけど、水の上を走る技術を使えるらしいの。もしそんな術があるなら、私の魔法は役に立たないかもね!』
ルシフが思い出したのは、水を支配する聖者レヴィアの言葉だ。ならば間違いなどあるはずもない。
ただ、その言葉だけを信じて、水に向かって一気に走り出した。
そう、水に浮かんだ右足が沈むよりも速く、左足を前にだし、それを左右で繰り返すことによって沈まずに水の上を走る、という荒唐無稽な技術を今まさに実践しようとしているのだ。
「————大丈夫だ! 俺ならいける……自分をしんじるんだ!」
根拠のない自信を持ってルシフは今水に右足をつけた。
(いける! 次は左足を素早く前にだす!)
普通の水の中でももちろん出来ないが、泥水の中ではさらに難しいだろう。出来たと思ったのもただの勘違いで、出来るわけがない。
ルシフは泥に足を取られて顔面から水面に叩きつけられた。
「ぐへっ!」
唯一の救いはそこが硬い地面の上でなかったということだけだ。
水に浮かんだルシフは真っ赤に燃える夕陽をみながら、自分の情けなさを乾いた笑いで誤魔化すことだけだった。
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