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5章 智の魔王
8.恨むべき過去
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ルシフと共闘を望むその男は、ルシフにとっては元先輩であり魔術団長であると同時に、恨むべき相手の一人であった。だが、例え彼との共闘がどれほど嫌なことであったとしても今回ばかりは多人数と協力することは絶対に不可欠だろう。
だからこそ、ルシフは彼ら魔術士団に助けられた時、感謝は出来なかった。もし、ルシフを助けた人物が彼ら以外の団体だったとするならば、ルシフは手放して喜ぶことが出来ただろうし、ここまで黒い感情が渦巻くこともなかったはずだ。何よりも悪い過去を思い出すことはなかっただろう。
「確かに僕のこの魔法があればあなた達は無敵なんでしょうね……でもだからこそ言わせてもらいます。僕はあなた達が嫌いです。だけどあんた達の助けが必要なのは僕も同じ……。だから丁重にお断りさせていただきます」
「ああ、そうだろう。たとえ俺を嫌っていたとしても俺の協力は必要……え? お断り? ちょっと待て、それはまずいだろう……お前は親友たちを見殺しにするつもりか?」
そう言った彼の表情は、おそらく今までに見たことがないような表情をしていた。彼に対して期待を裏切ることこそが最も効率よく彼を苛つかせる方法であることは、誰よりも彼の近くにいたルシフが一番良く知っていたことだ。
つまり、ルシフは自分の過去を清算するつもりなど毛頭ないし、彼を許すつもりなど1ミクロンたりとも存在などしていない。というよりも、もしそんなものがあったとするのであれば、牛の餌にでもしてやりたいものだ。
「残念ながら、僕はあなたのことを信用していない……例え急を要するこの状況であったとしても、僕は絶対にあなたの力など借りたくはない! それが僕なりのけじめだ」
ルシフの意気揚々とした宣言に対し、彼はくすくすと不気味な笑い声を上げる。それに釣られたのか、はたまたもともとそういう予定だったのかは知らないが、周りの団員たちも笑い始める。この状況はさながらカルト集団から執拗に勧誘を受ける一般人の如きだろう。
きっと、彼はルシフを逃したりはしないし、ルシフと共闘しないなどという選択肢など初めから存在していないのだろう。彼は自分の計画は必ず実行し成功に導かなければ気が済まない悪魔的思考の持ち主にほかならない。
「馬鹿だな、いつまでも昔のことにとらわれてばかりいるクズが……だからお前は王国騎士団から推薦をもらえなかったのだ。もしかして、お前は獣の刻印が原因だなんて思っているんじゃないだろうな? そうだとするなら、それはただの被害妄想だ。お前はただ実力が足りていなかったがために王国騎士団に入団できなかったし、実力があったからこそ王国魔術士団に推薦されたんだ。お前の魔法はどう考えたところで暗殺向きにちがいないからな……」
彼の堂々としたその姿勢が一番僕の心を逆撫でた。彼は僕の元上司で鬼の教官でもあった。その指導は常軌を逸していた。
まず彼の教育は人格否定に始まり、人格否定に終わる。もっともたちが悪いことが彼の言葉はいずれも核心をついていたということだろう。彼は決して正しい人間とは言い難いが、彼の言葉はある意味においてはまるで正義の味方のものであった。だからこそ彼はルシフの上司だったのである。
ルシフは良くも悪くも純粋だったということだ。人は誰しも悪を生まれ持っているというわけではないし、善を持って生まれるわけでもない。だからこそ人は成長しない間は純粋なのである。彼に出会う前のルシフが持っている悪とは差別以外には存在していなかった。それほどまでにルシフは純粋だったのだ。
「暗殺向きか……。この何年かの間ずーっと考えていたんだ。あんたのいう実力なんてものは僕にはない。僕のこの能力ですら暗殺に向いていない。向いているとするならば人探しぐらいなもんだ。」
「ふっ……そうか、結局お前はまた間違えるわけだな。そこまでゴミみたいなやつだったら助けるんじゃなかったぜ……何もかも諦めて、自分の才能すら認められない愚か者が、たった数年休んだだけで成長することなど到底できるわけなどなかったな! だが、悪いがこちらにも意地はある。 例えお前が納得しようがしなかろうが絶対に協力するしかないんだ。意地になるのはやめろ、共闘などといい感じなことを言ったところで、とどのつまり俺たちがお前を利用して、お前に俺たちが利用されるだけだ……何をためらうことがある?」
「僕は誰も力を使わないなんて言ってないぞ……協力しないと言っただけだ。」
「なるほど。結局はお前も成長したというわけだな……失望したぞルシフ!」
「お前に失望されようとどうでもいい。さっさと王都まで俺をつれていけ!」
僕と彼の周囲を取り巻く愚かな団員たちは僕を思いっきり批判する。結局こいつらもなんの成長もしていないということだ。
「お前ら! 少し黙れ……!」
あまりにもうるさかったためか、団長は殺意の篭った声で沈黙をもたらした。そうして僕のを方を向き直すと馬車の方を指差した。
「ルシフ、お前の馬車はあれだ……」
彼の指差す馬車は明らかに貴族などを乗せる豪華絢爛で無駄な装飾が施された乗り心地の良さそうな馬車だった。
「ってあんたもこれに乗るのか?」
あまりにも自然に後ろから馬車に乗り込もうとする団長に対して呆れにも似たような感情がこみ上げたのをルシフは感じ取った。
「当たり前だろう? 一番いい馬車に乗るのは客と俺に決まっているだろう? お前は一体なにを当然なことを聞いているんだ? もしかして馬鹿なのか?」
言いたいことはわからなくもないが、彼の言い回しにはひたすら苛立ちばかりがつのるばかりでもう二度と話しかけまいとルシフは思った。
だが、同じ馬車に乗り込んでしまったわけだ。いくらルシフから話しかけなかったとしても、彼から話を切り出してくるのは目に見えていたことであった。ただ予想外だったのは彼がルシフに話しかけてきたのが出発してからかなりの時間を要してからだった。
「――――おい、おいルシフ!」
ルシフが親友たちの安否を気遣っているその丁度に、ルシフが話したくない相手は当然の如く話しかける。
「なんです。そこのクズ野郎?」
「もと先輩に対してその口の利き方……まあ、敬語を使っているわけだから特別に許してやろう。ところでルシフ、早速で悪いがある人物の未来を見てほしいわけだが……利用される準備は出来ているか?」
「ああ、いいですけど……一体誰を暗殺するつもりで?」
ルシフは少しだけ投げやりに問い返した。彼らに対する印象なんて暗殺以外一つたりともないかもしれない。
……いや、あった。ゴミクズ集団だ。
そんなルシフの思考を読み取ってだかなんだか知ったことじゃないが、僕を睨みつける。
「あのなぁ、俺たちといえば暗殺なんて一体いつ時代の話をしているんだ? 俺達の任務はお前がいた時代に比べて色々増えているんだよ。例えば要人の護衛とか………………聖者の援護とかな……」
結局、彼が何を言いたいのかは理解できないしする気ルシフだった。
「つまり、誰を護衛したいんですか? 言っておきますけど知らない奴は無理ですよ……未来を読めない」
「安心しろよ。お前がよく知っている人物だ。もちろん数秒先でいいし、無駄な魔力を使う必要はない!」
……どうでもいいから、さっさと誰の未来を見るのか教えてほしい。
「で?」
魔術士団がどんなに深刻な状況なのか知らないが、なぜそんな神妙な顔が出来るのか? そんな疑問が浮かぶのもくだらない緊張感からもしれない。
「————俺が未来を見て欲しい相手は、アリサ様だ」
だからこそ、ルシフは彼ら魔術士団に助けられた時、感謝は出来なかった。もし、ルシフを助けた人物が彼ら以外の団体だったとするならば、ルシフは手放して喜ぶことが出来ただろうし、ここまで黒い感情が渦巻くこともなかったはずだ。何よりも悪い過去を思い出すことはなかっただろう。
「確かに僕のこの魔法があればあなた達は無敵なんでしょうね……でもだからこそ言わせてもらいます。僕はあなた達が嫌いです。だけどあんた達の助けが必要なのは僕も同じ……。だから丁重にお断りさせていただきます」
「ああ、そうだろう。たとえ俺を嫌っていたとしても俺の協力は必要……え? お断り? ちょっと待て、それはまずいだろう……お前は親友たちを見殺しにするつもりか?」
そう言った彼の表情は、おそらく今までに見たことがないような表情をしていた。彼に対して期待を裏切ることこそが最も効率よく彼を苛つかせる方法であることは、誰よりも彼の近くにいたルシフが一番良く知っていたことだ。
つまり、ルシフは自分の過去を清算するつもりなど毛頭ないし、彼を許すつもりなど1ミクロンたりとも存在などしていない。というよりも、もしそんなものがあったとするのであれば、牛の餌にでもしてやりたいものだ。
「残念ながら、僕はあなたのことを信用していない……例え急を要するこの状況であったとしても、僕は絶対にあなたの力など借りたくはない! それが僕なりのけじめだ」
ルシフの意気揚々とした宣言に対し、彼はくすくすと不気味な笑い声を上げる。それに釣られたのか、はたまたもともとそういう予定だったのかは知らないが、周りの団員たちも笑い始める。この状況はさながらカルト集団から執拗に勧誘を受ける一般人の如きだろう。
きっと、彼はルシフを逃したりはしないし、ルシフと共闘しないなどという選択肢など初めから存在していないのだろう。彼は自分の計画は必ず実行し成功に導かなければ気が済まない悪魔的思考の持ち主にほかならない。
「馬鹿だな、いつまでも昔のことにとらわれてばかりいるクズが……だからお前は王国騎士団から推薦をもらえなかったのだ。もしかして、お前は獣の刻印が原因だなんて思っているんじゃないだろうな? そうだとするなら、それはただの被害妄想だ。お前はただ実力が足りていなかったがために王国騎士団に入団できなかったし、実力があったからこそ王国魔術士団に推薦されたんだ。お前の魔法はどう考えたところで暗殺向きにちがいないからな……」
彼の堂々としたその姿勢が一番僕の心を逆撫でた。彼は僕の元上司で鬼の教官でもあった。その指導は常軌を逸していた。
まず彼の教育は人格否定に始まり、人格否定に終わる。もっともたちが悪いことが彼の言葉はいずれも核心をついていたということだろう。彼は決して正しい人間とは言い難いが、彼の言葉はある意味においてはまるで正義の味方のものであった。だからこそ彼はルシフの上司だったのである。
ルシフは良くも悪くも純粋だったということだ。人は誰しも悪を生まれ持っているというわけではないし、善を持って生まれるわけでもない。だからこそ人は成長しない間は純粋なのである。彼に出会う前のルシフが持っている悪とは差別以外には存在していなかった。それほどまでにルシフは純粋だったのだ。
「暗殺向きか……。この何年かの間ずーっと考えていたんだ。あんたのいう実力なんてものは僕にはない。僕のこの能力ですら暗殺に向いていない。向いているとするならば人探しぐらいなもんだ。」
「ふっ……そうか、結局お前はまた間違えるわけだな。そこまでゴミみたいなやつだったら助けるんじゃなかったぜ……何もかも諦めて、自分の才能すら認められない愚か者が、たった数年休んだだけで成長することなど到底できるわけなどなかったな! だが、悪いがこちらにも意地はある。 例えお前が納得しようがしなかろうが絶対に協力するしかないんだ。意地になるのはやめろ、共闘などといい感じなことを言ったところで、とどのつまり俺たちがお前を利用して、お前に俺たちが利用されるだけだ……何をためらうことがある?」
「僕は誰も力を使わないなんて言ってないぞ……協力しないと言っただけだ。」
「なるほど。結局はお前も成長したというわけだな……失望したぞルシフ!」
「お前に失望されようとどうでもいい。さっさと王都まで俺をつれていけ!」
僕と彼の周囲を取り巻く愚かな団員たちは僕を思いっきり批判する。結局こいつらもなんの成長もしていないということだ。
「お前ら! 少し黙れ……!」
あまりにもうるさかったためか、団長は殺意の篭った声で沈黙をもたらした。そうして僕のを方を向き直すと馬車の方を指差した。
「ルシフ、お前の馬車はあれだ……」
彼の指差す馬車は明らかに貴族などを乗せる豪華絢爛で無駄な装飾が施された乗り心地の良さそうな馬車だった。
「ってあんたもこれに乗るのか?」
あまりにも自然に後ろから馬車に乗り込もうとする団長に対して呆れにも似たような感情がこみ上げたのをルシフは感じ取った。
「当たり前だろう? 一番いい馬車に乗るのは客と俺に決まっているだろう? お前は一体なにを当然なことを聞いているんだ? もしかして馬鹿なのか?」
言いたいことはわからなくもないが、彼の言い回しにはひたすら苛立ちばかりがつのるばかりでもう二度と話しかけまいとルシフは思った。
だが、同じ馬車に乗り込んでしまったわけだ。いくらルシフから話しかけなかったとしても、彼から話を切り出してくるのは目に見えていたことであった。ただ予想外だったのは彼がルシフに話しかけてきたのが出発してからかなりの時間を要してからだった。
「――――おい、おいルシフ!」
ルシフが親友たちの安否を気遣っているその丁度に、ルシフが話したくない相手は当然の如く話しかける。
「なんです。そこのクズ野郎?」
「もと先輩に対してその口の利き方……まあ、敬語を使っているわけだから特別に許してやろう。ところでルシフ、早速で悪いがある人物の未来を見てほしいわけだが……利用される準備は出来ているか?」
「ああ、いいですけど……一体誰を暗殺するつもりで?」
ルシフは少しだけ投げやりに問い返した。彼らに対する印象なんて暗殺以外一つたりともないかもしれない。
……いや、あった。ゴミクズ集団だ。
そんなルシフの思考を読み取ってだかなんだか知ったことじゃないが、僕を睨みつける。
「あのなぁ、俺たちといえば暗殺なんて一体いつ時代の話をしているんだ? 俺達の任務はお前がいた時代に比べて色々増えているんだよ。例えば要人の護衛とか………………聖者の援護とかな……」
結局、彼が何を言いたいのかは理解できないしする気ルシフだった。
「つまり、誰を護衛したいんですか? 言っておきますけど知らない奴は無理ですよ……未来を読めない」
「安心しろよ。お前がよく知っている人物だ。もちろん数秒先でいいし、無駄な魔力を使う必要はない!」
……どうでもいいから、さっさと誰の未来を見るのか教えてほしい。
「で?」
魔術士団がどんなに深刻な状況なのか知らないが、なぜそんな神妙な顔が出来るのか? そんな疑問が浮かぶのもくだらない緊張感からもしれない。
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