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終章 魔の終末
6.失った物
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「――嘘、兄さんが封印された!? それは非常にまずいですね、ルシフさんも知っているとは思おいますが、二人でようやく魂は一人分なんです……半分かけた状態では…………ってどうして僕は平気なの!?」
冷静さを欠いているのだろうか、アリサはまるで一人漫才でもしているかのようなボケとツッコミだ。だが、ルシフもそれについてはよくわかっていない様子で、うなりながら考えている。
「うーん、考えても俺の脳みそじゃわからん。それに、今は大丈夫ってだけでもしかしたら時間が立つに連れてどうなるかわからんしな……」
ルシフは出来るだけことの重大さについて教えようと、簡潔にそう言った。
「でも、レヴィア様の話では数刻も持たないっていってた……」
「だがお前は実際何も問題もないように見えるが? やはり数時間程度なら問題無いということか?」
「さあ? 私は魂のことに関してはあまりしらないからね」
「お前な……」
アリサのなんとも言い難い物言いに、ルシフは呆れたように言葉を紡いだ。
「自分自身のことだろう? お前が一番詳しくなくてどうするんだよ。魂のこととかじゃねえ……これはお前自身の話なんだぞ?」
「そんなこと言われたって……」
ルシフに責められたアリサはうつむき加減で声を小さくした。そんな様子だからだろうか、ルシフはそれ以上追求することをやめ、もう一つ気になっていたことを聞く。
「ところで、お前はレヴィアとその兄貴と一緒にこっちへ戻ったはずだろう? 他の奴らはどうしたんだ?」
そう聞いたところで、彼女は更に顔を青くする。その表情から、二人に何かあったということは明白だが、ルシフも信じたくは無いのだろう、アリサからの返答を待った。しかしその返答は返ってこない。
「お二人とも落ち込んでいるところ悪いんですが、私達もさっさと仕事を初めなければなりません ので申し訳ありません。早速ですが、アリサ様から出撃の許可をいただきたい」
二人の無言のやり取りに嫌気が指したのか、ルシフの背後で待機していた団員の内、リーダーの男がそう言った。
ようやく二人の沈黙は解かれ、アリサは慌てた様子で答える。
「許可します。と言うかこの状況だから、不測の事態に備えて指揮権をそちらの団長さんにうつしてもらって構わないよ。責任……なんてものを取る必要があるかは分からないけど、街を守るために取った行動に関しては全て私が責任をとるのであとはご自由に……」
指揮を取るものの言葉としてはあっさりしているが、街が崩壊しつつある今において指揮を取るのは現場のものである方が良いと思ってのことだろう。アリサは子供ながらも、国のことを考えて行動しているようだ。
――それはルシフだって同じだ。いくら自分を差別してきた王都であろうが、数年間暮らした街で知り合いも少なからずいる。いくら『働かない男』であろうとも、危機に瀕しては神父の血が無視することを赦さない。
だからこそ、ルシフは二人か街のどちらかを優先するなんてことは出来ない。救うのであればどちらも救う……そんな無茶苦茶なことを考えている可能性すらある。だが、アリサと団員のやり取りを見ていたルシフの表情からそんな決意の表情は全くと言っていいほど読み取れなかった。
「私達のような小物への気遣い痛み入ります。ですが、確かにアリサ様が私達指示をしていたのでは、いつまで経っても悪魔を倒しに行くことが出来ないでしょう。それにレヴィア様たちのこともありますし、早急にダンダリオンの元へ向かうのが良いと思います。未来を見ることが出来ない今それが一番いい方法だと私は考えますが?」
確かに彼の言うことには一理あるが、アリサはその自虐的な彼の考え方があまり好きではなかった。というよりも、魔術士団のその嫌味ったらしい言葉はいつも聖者に対して送られることに憎しみすら覚えてた。――彼女は特に魔術士団を嫌っていたが、それでも国を憂いる心だけは同じだと知っていたからこそ、彼らを信頼はしていた。
それ故に、彼の言った未来を見ることが出来ないという言葉を聞き流せない。
「それはどういう……」
そこまで口にして、アリサはようやくルシフが右目を右手でおさえていることに気がついた。
「ああこれか? ちょっと油断してな……」
ルシフはおさえていた手をどけて、縦に入った傷と開かなくなった瞳を露わにした。傷はかなり深く、眼球まで届いている。アリサは泣き出しそうになりながらも、涙をおさえ、両手で口を覆う。
「僕が捕まったばかりに……」
「違う、アンドロマリウスは強かった……だが俺が油断さえしなければこんな事にはならなかった。あの時だって俺が決断を誤らなければ、街がこんな事にならなかったかもしれない。悪いのは全部俺だ。俺が面倒くさいと思ってしまったからこうなった」
「そうじゃないよ、今回のこの事件は起きるべきしておきたんだ。僕達があの人を信頼しすぎていたためにこんな事に……もし少しでもあの人を疑っていれば……」
二人は自分の気持を吐露して少しだけスッキリした。いつまでも反省していられない。これ以上街を破壊させないためには、リーダーの男の言うとおりダンダリオンに会うべきだろう。
「ようやく落ち着いたようですね……では私達が雑魚は引き受けます故、お二人は他の聖者様とともに悪魔ダンダリオンの討伐と反逆者の始末をお願いします」
団員の男はルシフ達にそう告げると団長の元へと返ってゆく。その様子を見届けて、ルシフとアリサはダンダリオンの元へと向かう。
冷静さを欠いているのだろうか、アリサはまるで一人漫才でもしているかのようなボケとツッコミだ。だが、ルシフもそれについてはよくわかっていない様子で、うなりながら考えている。
「うーん、考えても俺の脳みそじゃわからん。それに、今は大丈夫ってだけでもしかしたら時間が立つに連れてどうなるかわからんしな……」
ルシフは出来るだけことの重大さについて教えようと、簡潔にそう言った。
「でも、レヴィア様の話では数刻も持たないっていってた……」
「だがお前は実際何も問題もないように見えるが? やはり数時間程度なら問題無いということか?」
「さあ? 私は魂のことに関してはあまりしらないからね」
「お前な……」
アリサのなんとも言い難い物言いに、ルシフは呆れたように言葉を紡いだ。
「自分自身のことだろう? お前が一番詳しくなくてどうするんだよ。魂のこととかじゃねえ……これはお前自身の話なんだぞ?」
「そんなこと言われたって……」
ルシフに責められたアリサはうつむき加減で声を小さくした。そんな様子だからだろうか、ルシフはそれ以上追求することをやめ、もう一つ気になっていたことを聞く。
「ところで、お前はレヴィアとその兄貴と一緒にこっちへ戻ったはずだろう? 他の奴らはどうしたんだ?」
そう聞いたところで、彼女は更に顔を青くする。その表情から、二人に何かあったということは明白だが、ルシフも信じたくは無いのだろう、アリサからの返答を待った。しかしその返答は返ってこない。
「お二人とも落ち込んでいるところ悪いんですが、私達もさっさと仕事を初めなければなりません ので申し訳ありません。早速ですが、アリサ様から出撃の許可をいただきたい」
二人の無言のやり取りに嫌気が指したのか、ルシフの背後で待機していた団員の内、リーダーの男がそう言った。
ようやく二人の沈黙は解かれ、アリサは慌てた様子で答える。
「許可します。と言うかこの状況だから、不測の事態に備えて指揮権をそちらの団長さんにうつしてもらって構わないよ。責任……なんてものを取る必要があるかは分からないけど、街を守るために取った行動に関しては全て私が責任をとるのであとはご自由に……」
指揮を取るものの言葉としてはあっさりしているが、街が崩壊しつつある今において指揮を取るのは現場のものである方が良いと思ってのことだろう。アリサは子供ながらも、国のことを考えて行動しているようだ。
――それはルシフだって同じだ。いくら自分を差別してきた王都であろうが、数年間暮らした街で知り合いも少なからずいる。いくら『働かない男』であろうとも、危機に瀕しては神父の血が無視することを赦さない。
だからこそ、ルシフは二人か街のどちらかを優先するなんてことは出来ない。救うのであればどちらも救う……そんな無茶苦茶なことを考えている可能性すらある。だが、アリサと団員のやり取りを見ていたルシフの表情からそんな決意の表情は全くと言っていいほど読み取れなかった。
「私達のような小物への気遣い痛み入ります。ですが、確かにアリサ様が私達指示をしていたのでは、いつまで経っても悪魔を倒しに行くことが出来ないでしょう。それにレヴィア様たちのこともありますし、早急にダンダリオンの元へ向かうのが良いと思います。未来を見ることが出来ない今それが一番いい方法だと私は考えますが?」
確かに彼の言うことには一理あるが、アリサはその自虐的な彼の考え方があまり好きではなかった。というよりも、魔術士団のその嫌味ったらしい言葉はいつも聖者に対して送られることに憎しみすら覚えてた。――彼女は特に魔術士団を嫌っていたが、それでも国を憂いる心だけは同じだと知っていたからこそ、彼らを信頼はしていた。
それ故に、彼の言った未来を見ることが出来ないという言葉を聞き流せない。
「それはどういう……」
そこまで口にして、アリサはようやくルシフが右目を右手でおさえていることに気がついた。
「ああこれか? ちょっと油断してな……」
ルシフはおさえていた手をどけて、縦に入った傷と開かなくなった瞳を露わにした。傷はかなり深く、眼球まで届いている。アリサは泣き出しそうになりながらも、涙をおさえ、両手で口を覆う。
「僕が捕まったばかりに……」
「違う、アンドロマリウスは強かった……だが俺が油断さえしなければこんな事にはならなかった。あの時だって俺が決断を誤らなければ、街がこんな事にならなかったかもしれない。悪いのは全部俺だ。俺が面倒くさいと思ってしまったからこうなった」
「そうじゃないよ、今回のこの事件は起きるべきしておきたんだ。僕達があの人を信頼しすぎていたためにこんな事に……もし少しでもあの人を疑っていれば……」
二人は自分の気持を吐露して少しだけスッキリした。いつまでも反省していられない。これ以上街を破壊させないためには、リーダーの男の言うとおりダンダリオンに会うべきだろう。
「ようやく落ち着いたようですね……では私達が雑魚は引き受けます故、お二人は他の聖者様とともに悪魔ダンダリオンの討伐と反逆者の始末をお願いします」
団員の男はルシフ達にそう告げると団長の元へと返ってゆく。その様子を見届けて、ルシフとアリサはダンダリオンの元へと向かう。
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