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終章 魔の終末
7.始まりの聖者
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2人はしばらく瓦礫の山か街だかよくわからない場所をひたすら王宮に向けて走り続けたが、崩壊した街では道と呼べるものも見当たらず普段よりもさらに時間を要した。
「くそっ! これじゃあ王宮に着くまでに途方も無い時間がかかっちまう……」
いつにもなく弱気なルシフは、やるせなさそうにそう呟く。
「僕の魔法を使うわけにもいかないしね……」
ルシフの愚痴に対して、アリサはそうこぼした。
街中で使うには派手な魔法だ。住民を巻き込んでしまうことは幼い少女の頭でも、容易に想像できるだろう。だが、ルシフはそれを気にしてばかりいられない状況であることをよく知っていた。
「お前の魔法……使っちまうか?」
信頼していた男からの突拍子もない提案に、アリサは立ち止まり困惑する。以前のルシフからは想像出来ない言葉だ。
「国民を犠牲にするつもり!?」
アリサは声を荒げた。しかし、彼はそんなつもりは毛頭ない。
「俺が思うに、お前はハムート2人でようやく聖者なんだろう。だから今のお前の魔法は丁度いいくらいなんじゃないか?」
「それなら魔法すら使えないと思うけど……まあちょっとだけやってみるよ」
『働かざる男』の適当な妄想は当たらずとも遠からず、しかし大外れという方が正しいだろう。
そんな男の口車にまんまと乗せられた少女は、いつものようにいつもの手順で大地の魔法を発動する。だが、もちろん妄想と現実は違う。
アリサの魔法は以前よりもかなり大きく、あたり周辺を巻き込んで大地を揺るがす。その威力はハムートがまるで枷であったかのように大きくなり、ついには地割れを起こす。
地面に入った亀裂はとどまることを知らず、ついには倒壊していない建物のあたりに届かんばかりだ。
「うそ……でしょ……」
当の本人にしてみれば軽くはなった魔法であるから、まさかこんなことになるとは思っていない。顔を青ざめて、自身がしたことの重大性をようやく理解した。
だが理解がおそく、建物の直前まで亀裂が入る。いくら魔法を止めようとも、間に合わない。しかし、アリサの右肩に誰かの手が置かれようやく魔法は停止した。
「やれやれ、リミッターもなしに魔法を発動するとは……」
その聞き覚えがある声とルシフの驚愕の視線に、アリサは自身の右後ろに顔を向けた。
「メフィストさま……っ!」
そこにいたのは魂の聖者メフィスト、言い換えるのであれば魅了する悪魔メフィスト卿だった。
「さっきは世話になったな? だが予定があったのでは無いのか、どうして戻ってきた?」
ルシフはメフィストを警戒し、構えを崩さない。それを見てアリサも緊張感を高める。
「そう構えるでない。時間が無いと言っただろう。お前の相手をしている時間はない! だがそうだな、一つ良いことを教えてやろう」
不敵に笑うメフィストをよそに二人は不安に襲われるが、今この状況はアリサを人質に取られているようなもので動けない。
「……何を教えてくれるんだ?」
ルシフは慎重に言葉を選びながら、いつもの調子を崩さずに言葉を発する。それに対して、メフィストは奇妙な笑みを時真剣な目つきで聞き返す。
「魂なんてものが本当に存在すると思うか?」
「はあ? 魂の聖者ともあろうものが、そこに疑問を持っているのか?」
「良いからお前の意見を聞かせろ」
「魂か……深く考えたことはなかったが、永劫回帰なんてものがあるんだ。あっても不思議では無いと思うがな……。それに、聖者はムートは魂を角に宿しているんだろう? じゃあ無いはずなんてないだろう」
「お前たち人間はどうして簡単に他人の言葉を信じれるのだろうな……。お前は永劫回帰したことがあるのか? どうしてハムートなんて存在を信じられる? ダンダリオンが言ったからか? レヴィアが言ったからか? じゃあ、そいつらはその情報をどこからえたのだ? 永劫回帰の黙示録か? それとも他の誰かからか? お前はそれを自分の目で見たのか?」
「何が言いたい?」
ルシフはメフィストの言葉の意図することが全くわからず首をかしげる。しかし、メフィストに肩を掴まれたままのアリサはその真意に気がつく。
「まさか……!?」
「そのまさかだ。永劫回帰も魂も存在しない。いや今回は誰もそれを見たことがないだろう。あったとしても覚えてはいないはずだ。それこそが永劫回帰だ……覚えているのであれば前回とは異なり永劫回帰ではなくなる。魂だってそうだ…………目に見えない、記憶にないものは存在しないのと同じだ……」
ルシフもようやく気が付き、メフィストの方に駆け寄り目の前で静止する。掴みかかろうとするのを耐えて、両手をあげたまま震えて、言葉にならない言葉を吐く。
「永劫……回帰が、魂が……ない!?」
それがよっぽどメフィストの目には滑稽に写ったのか吹き出した。
「まあ事実とはそんなところだ。そんな物は認められていない」
ルシフの中で今までの常識が崩れ去った。王国でも最高に近い王国騎士団の中で、唯一神の教会について知る聖者であるメフィストが、その教会の理念であるはずの『永劫回帰』を否定するということは、教会によって否定されていると言っても過言でない。
つまり、本当に『永劫回帰』なんて現実から遠くはなれた思想が、この国の全ての物が信じているその思想が全てウソだったということになる。
「そんなわけ無いだろう!? じゃあ、今のこの争いに意味がなくなるじゃないかっ!」
激昂するルシフをなだめるように、メフィストは話を続ける。
「まあ、別に信じてもらおうだなんて思ってない。ただお前たちが思っているほど世界は単純じゃない…………教会も、ダンダリオンも悪魔も、そんな単純じゃないんじゃ」
「教会? ダンダリオン? ……っ!? まさか、グルなのか?」
「さあな、後は自分で考えるがいい」
「待てっ……!」
ルシフが止めるのも聞かず、魂の聖者は城の方へと姿を消した。その場に取り残された二人は呆然と立ち尽くし、これからどうすれば良いのかを考えていた。
「くそっ! これじゃあ王宮に着くまでに途方も無い時間がかかっちまう……」
いつにもなく弱気なルシフは、やるせなさそうにそう呟く。
「僕の魔法を使うわけにもいかないしね……」
ルシフの愚痴に対して、アリサはそうこぼした。
街中で使うには派手な魔法だ。住民を巻き込んでしまうことは幼い少女の頭でも、容易に想像できるだろう。だが、ルシフはそれを気にしてばかりいられない状況であることをよく知っていた。
「お前の魔法……使っちまうか?」
信頼していた男からの突拍子もない提案に、アリサは立ち止まり困惑する。以前のルシフからは想像出来ない言葉だ。
「国民を犠牲にするつもり!?」
アリサは声を荒げた。しかし、彼はそんなつもりは毛頭ない。
「俺が思うに、お前はハムート2人でようやく聖者なんだろう。だから今のお前の魔法は丁度いいくらいなんじゃないか?」
「それなら魔法すら使えないと思うけど……まあちょっとだけやってみるよ」
『働かざる男』の適当な妄想は当たらずとも遠からず、しかし大外れという方が正しいだろう。
そんな男の口車にまんまと乗せられた少女は、いつものようにいつもの手順で大地の魔法を発動する。だが、もちろん妄想と現実は違う。
アリサの魔法は以前よりもかなり大きく、あたり周辺を巻き込んで大地を揺るがす。その威力はハムートがまるで枷であったかのように大きくなり、ついには地割れを起こす。
地面に入った亀裂はとどまることを知らず、ついには倒壊していない建物のあたりに届かんばかりだ。
「うそ……でしょ……」
当の本人にしてみれば軽くはなった魔法であるから、まさかこんなことになるとは思っていない。顔を青ざめて、自身がしたことの重大性をようやく理解した。
だが理解がおそく、建物の直前まで亀裂が入る。いくら魔法を止めようとも、間に合わない。しかし、アリサの右肩に誰かの手が置かれようやく魔法は停止した。
「やれやれ、リミッターもなしに魔法を発動するとは……」
その聞き覚えがある声とルシフの驚愕の視線に、アリサは自身の右後ろに顔を向けた。
「メフィストさま……っ!」
そこにいたのは魂の聖者メフィスト、言い換えるのであれば魅了する悪魔メフィスト卿だった。
「さっきは世話になったな? だが予定があったのでは無いのか、どうして戻ってきた?」
ルシフはメフィストを警戒し、構えを崩さない。それを見てアリサも緊張感を高める。
「そう構えるでない。時間が無いと言っただろう。お前の相手をしている時間はない! だがそうだな、一つ良いことを教えてやろう」
不敵に笑うメフィストをよそに二人は不安に襲われるが、今この状況はアリサを人質に取られているようなもので動けない。
「……何を教えてくれるんだ?」
ルシフは慎重に言葉を選びながら、いつもの調子を崩さずに言葉を発する。それに対して、メフィストは奇妙な笑みを時真剣な目つきで聞き返す。
「魂なんてものが本当に存在すると思うか?」
「はあ? 魂の聖者ともあろうものが、そこに疑問を持っているのか?」
「良いからお前の意見を聞かせろ」
「魂か……深く考えたことはなかったが、永劫回帰なんてものがあるんだ。あっても不思議では無いと思うがな……。それに、聖者はムートは魂を角に宿しているんだろう? じゃあ無いはずなんてないだろう」
「お前たち人間はどうして簡単に他人の言葉を信じれるのだろうな……。お前は永劫回帰したことがあるのか? どうしてハムートなんて存在を信じられる? ダンダリオンが言ったからか? レヴィアが言ったからか? じゃあ、そいつらはその情報をどこからえたのだ? 永劫回帰の黙示録か? それとも他の誰かからか? お前はそれを自分の目で見たのか?」
「何が言いたい?」
ルシフはメフィストの言葉の意図することが全くわからず首をかしげる。しかし、メフィストに肩を掴まれたままのアリサはその真意に気がつく。
「まさか……!?」
「そのまさかだ。永劫回帰も魂も存在しない。いや今回は誰もそれを見たことがないだろう。あったとしても覚えてはいないはずだ。それこそが永劫回帰だ……覚えているのであれば前回とは異なり永劫回帰ではなくなる。魂だってそうだ…………目に見えない、記憶にないものは存在しないのと同じだ……」
ルシフもようやく気が付き、メフィストの方に駆け寄り目の前で静止する。掴みかかろうとするのを耐えて、両手をあげたまま震えて、言葉にならない言葉を吐く。
「永劫……回帰が、魂が……ない!?」
それがよっぽどメフィストの目には滑稽に写ったのか吹き出した。
「まあ事実とはそんなところだ。そんな物は認められていない」
ルシフの中で今までの常識が崩れ去った。王国でも最高に近い王国騎士団の中で、唯一神の教会について知る聖者であるメフィストが、その教会の理念であるはずの『永劫回帰』を否定するということは、教会によって否定されていると言っても過言でない。
つまり、本当に『永劫回帰』なんて現実から遠くはなれた思想が、この国の全ての物が信じているその思想が全てウソだったということになる。
「そんなわけ無いだろう!? じゃあ、今のこの争いに意味がなくなるじゃないかっ!」
激昂するルシフをなだめるように、メフィストは話を続ける。
「まあ、別に信じてもらおうだなんて思ってない。ただお前たちが思っているほど世界は単純じゃない…………教会も、ダンダリオンも悪魔も、そんな単純じゃないんじゃ」
「教会? ダンダリオン? ……っ!? まさか、グルなのか?」
「さあな、後は自分で考えるがいい」
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