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終章 魔の終末
8.秘密
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「俺はもともとあまり『永劫回帰』だとか『悪魔』だとかを信じていなかったし、実のところ対してショックはない。だが、アリサお前は違うだろう?」
ファウストが去った後、ずっと黙り込んでいたルシフがアリサを心配して問いかけた。
「ううん、『永劫回帰』がないことは実は知ってた。ずっと黙っててごめん……」
「大方騎士団の決まりかなんかだろう、気にしないさ。だが『魂』のことについてはお前も知らなかったようだが?」
ルシフはアリサに鋭い眼光を向ける。彼は特に怒っている様子ではないが、アリサにとってその目は恐怖の対象になりえる。
「……っ! ……うん、知らなかった。知らなかったんだ…………」
そう呟くと彼女はうつむいて、それでも何かいいたげルシフの方を見ては目をそらした。
「つまり、お前は魂が存在しないということを知らなかった……。だが、魂が存在しないと言うなら、ハムートとは一体何なんだ?」
「……僕には分からない。でもレヴィア様は僕の兄だと」
しっかりとアリサの方を見据えるシフトは違い、アリサはルシフの方を直視せず目が泳いでいる。それだけショックだった。
「レヴィアが嘘を……?」
「分からない……僕にはなにも、レヴィア様のことも僕のことも……」
「ならレヴィアに聞く以外ないな」
「でもレヴィア様は……」
彼女の言葉は歯切れが悪くまるでなにかを隠しているようで、それがなんとなくルシフを不安にさせた。
「……まさか!? 死んだわけじゃないだろう!?」
そんなルシフの不安を煽るかのように、彼女は顔をそらす。だがそれでもルシフはレヴィアが死んでいないという確信をえて、続けてアリサに問いかける。
「そうか、悪魔に捕まったんだな?」
その問に対し、アリサは申し訳なさそうに声を小さくした。
「……うん。僕をかばって捕まっちゃった。それなのに僕は、レヴィア様との約束すら守れずに、アンドロマリウスに捕まってしまったんだ」
「約束?」
「ルシフを守れって……」
『彼女』の言葉によって、自分の立場を思い出したルシフは腸が煮えくり返る思いで、あの時の自分をただ恨むばかりだ。あの時、自分が一緒について行けばこんな事にはならなかったのではないか……街は無事だったんじゃないかなんて、そんな傲慢なことを考えている自分にも腹が立つ。――ただ、どちらにせよあの時の選択を取り替えることなど出来ないし、幼馴染に心配を掛けてしまったということも事実だ。
「そうか……」
彼に言える言葉はそれだけだった。
「それだけ……?」
「うーん……まあとりあえずレヴィアを助けに行くか?」
「違う! 僕が……私が足手まといだったからレヴィア様が……」
「なんだ、そんなことを気にしていたのか? そんなこと関係ないだろ、お前は助かったんだ。それだけでも設けもんだろ?」
とは言ったもの、レヴィアが捕まってしまったという事実は変わることではないし、何よりもそのレヴィアが嘘をついていたということに対するルシフの不信感は払拭されない。
それどころか、彼の不安は募るばかりで、アリサを慰めている自分が一番気落ちしていることをふしふしと感じていた。そんなことを知る由もないアリサは、ルシフに指示を仰ぐ。
「僕はどうすれば良いんだろう……? レヴィア様を助けに行っても邪魔じゃないかな?」
ルシフにはそのアリサの言葉が、今の自分に対して自信が持てていないことの現れだということはよくわかっていたし、魔法の規模がいちいちでかすぎる彼女を連れて行っても役に立たないということもわかっていた。
だからこそ、ルシフは彼女に対してどういった言葉をかければ良いのかわからない。連れていくべきなのか、はたまた安全なところに身を隠してもらうべきなのか決め兼ねていた。
「……まあ邪魔だろうな……だけど、俺はそんなことを理由にお前をここにおいていくつもりはない。ただ、お前たちについていかなかったうえに、勝手にここまで来た俺が言うのもなんだが、お前にはついてきてほしくない……きっとお前なら自分の身を守ることくらい簡単だろうが、それでも危険がないというわけではない」
彼女はその言葉に落ち込んだのか、うつむきながら涙をこぼした。そして一切言葉を返さない。
「…………」
その様子はまるで子供のようであるが、ルシフは彼女が少なからず修羅場を乗り越えている猛者だということは知っている。それに彼女がいくら幼い少女であるとしても、自己判断が出来る人物足り得ると思っていた。
だからこそ、彼女の意思を無視して一人にするほうが遥かに不安に感じている。
「……まあ結局は自己判断だ。俺がお前の意思を決めるわけじゃないし、お前の気持ちを無下にすることは出来ない」
ルシフは照れ隠しで、彼女に背を向けながらそうぶっきらぼうに言う。だけどその思惑は彼女にうまく伝わらない。
「それってどういうこと?」
彼女にどれほど強い決断力があろうと、どれだけ強い力を持ち合わせていようとも、その人生が悲惨であったとしても、まだ幼いことには違いないということをルシフは痛感させられ、少し強めにため息を吐いて振り返る。
「みなまで言わせるなよ……好きにしろ。残念ながら俺一人じゃダンダリオンの足元にも及ばないし、俺はただの神父だ。ただの働く気力のない神父。そんな男が一人で姫様、いや聖女様を救う物語なんて夢物語だ! そこにちょっと有能すぎる仲間が一人いるぐらいが丁度いいんだ!!」
「じゃあ……!?」
「さっさといくぞ!」
そう投げやりな言葉を吐いて隻眼の男は歩きだす。その後ろからついていく少女は涙を吹きながら後ろから必死でついていった。
「ちょっとまってよ! ……ルシフさん!」
ファウストが去った後、ずっと黙り込んでいたルシフがアリサを心配して問いかけた。
「ううん、『永劫回帰』がないことは実は知ってた。ずっと黙っててごめん……」
「大方騎士団の決まりかなんかだろう、気にしないさ。だが『魂』のことについてはお前も知らなかったようだが?」
ルシフはアリサに鋭い眼光を向ける。彼は特に怒っている様子ではないが、アリサにとってその目は恐怖の対象になりえる。
「……っ! ……うん、知らなかった。知らなかったんだ…………」
そう呟くと彼女はうつむいて、それでも何かいいたげルシフの方を見ては目をそらした。
「つまり、お前は魂が存在しないということを知らなかった……。だが、魂が存在しないと言うなら、ハムートとは一体何なんだ?」
「……僕には分からない。でもレヴィア様は僕の兄だと」
しっかりとアリサの方を見据えるシフトは違い、アリサはルシフの方を直視せず目が泳いでいる。それだけショックだった。
「レヴィアが嘘を……?」
「分からない……僕にはなにも、レヴィア様のことも僕のことも……」
「ならレヴィアに聞く以外ないな」
「でもレヴィア様は……」
彼女の言葉は歯切れが悪くまるでなにかを隠しているようで、それがなんとなくルシフを不安にさせた。
「……まさか!? 死んだわけじゃないだろう!?」
そんなルシフの不安を煽るかのように、彼女は顔をそらす。だがそれでもルシフはレヴィアが死んでいないという確信をえて、続けてアリサに問いかける。
「そうか、悪魔に捕まったんだな?」
その問に対し、アリサは申し訳なさそうに声を小さくした。
「……うん。僕をかばって捕まっちゃった。それなのに僕は、レヴィア様との約束すら守れずに、アンドロマリウスに捕まってしまったんだ」
「約束?」
「ルシフを守れって……」
『彼女』の言葉によって、自分の立場を思い出したルシフは腸が煮えくり返る思いで、あの時の自分をただ恨むばかりだ。あの時、自分が一緒について行けばこんな事にはならなかったのではないか……街は無事だったんじゃないかなんて、そんな傲慢なことを考えている自分にも腹が立つ。――ただ、どちらにせよあの時の選択を取り替えることなど出来ないし、幼馴染に心配を掛けてしまったということも事実だ。
「そうか……」
彼に言える言葉はそれだけだった。
「それだけ……?」
「うーん……まあとりあえずレヴィアを助けに行くか?」
「違う! 僕が……私が足手まといだったからレヴィア様が……」
「なんだ、そんなことを気にしていたのか? そんなこと関係ないだろ、お前は助かったんだ。それだけでも設けもんだろ?」
とは言ったもの、レヴィアが捕まってしまったという事実は変わることではないし、何よりもそのレヴィアが嘘をついていたということに対するルシフの不信感は払拭されない。
それどころか、彼の不安は募るばかりで、アリサを慰めている自分が一番気落ちしていることをふしふしと感じていた。そんなことを知る由もないアリサは、ルシフに指示を仰ぐ。
「僕はどうすれば良いんだろう……? レヴィア様を助けに行っても邪魔じゃないかな?」
ルシフにはそのアリサの言葉が、今の自分に対して自信が持てていないことの現れだということはよくわかっていたし、魔法の規模がいちいちでかすぎる彼女を連れて行っても役に立たないということもわかっていた。
だからこそ、ルシフは彼女に対してどういった言葉をかければ良いのかわからない。連れていくべきなのか、はたまた安全なところに身を隠してもらうべきなのか決め兼ねていた。
「……まあ邪魔だろうな……だけど、俺はそんなことを理由にお前をここにおいていくつもりはない。ただ、お前たちについていかなかったうえに、勝手にここまで来た俺が言うのもなんだが、お前にはついてきてほしくない……きっとお前なら自分の身を守ることくらい簡単だろうが、それでも危険がないというわけではない」
彼女はその言葉に落ち込んだのか、うつむきながら涙をこぼした。そして一切言葉を返さない。
「…………」
その様子はまるで子供のようであるが、ルシフは彼女が少なからず修羅場を乗り越えている猛者だということは知っている。それに彼女がいくら幼い少女であるとしても、自己判断が出来る人物足り得ると思っていた。
だからこそ、彼女の意思を無視して一人にするほうが遥かに不安に感じている。
「……まあ結局は自己判断だ。俺がお前の意思を決めるわけじゃないし、お前の気持ちを無下にすることは出来ない」
ルシフは照れ隠しで、彼女に背を向けながらそうぶっきらぼうに言う。だけどその思惑は彼女にうまく伝わらない。
「それってどういうこと?」
彼女にどれほど強い決断力があろうと、どれだけ強い力を持ち合わせていようとも、その人生が悲惨であったとしても、まだ幼いことには違いないということをルシフは痛感させられ、少し強めにため息を吐いて振り返る。
「みなまで言わせるなよ……好きにしろ。残念ながら俺一人じゃダンダリオンの足元にも及ばないし、俺はただの神父だ。ただの働く気力のない神父。そんな男が一人で姫様、いや聖女様を救う物語なんて夢物語だ! そこにちょっと有能すぎる仲間が一人いるぐらいが丁度いいんだ!!」
「じゃあ……!?」
「さっさといくぞ!」
そう投げやりな言葉を吐いて隻眼の男は歩きだす。その後ろからついていく少女は涙を吹きながら後ろから必死でついていった。
「ちょっとまってよ! ……ルシフさん!」
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