永劫回帰の黙示録(レヴェレーション)

真白 悟

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終章 魔の終末

15.国

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「気落ちするのは分かるが、今が本当のチャンスだと思わないか?」
 その声と同時に、ジゼルがメフィストの腰のあたりを切り落としにかかった。だがしかし、その剣すらメフィストの腰に携えられた剣で止められた。
「そんな甘い剣が儂に届くわけ無いだろう……」
 いくらなんでも人間業とは思えないその剣さばきに、3人は困惑した。今の攻撃で一太刀すら浴びせらないのあれば、剣だけでどうにか出来る相手ではないだろう。
 3人はカウンターを喰らうまいと、とっさに後ろに飛び、メフィストの剣を躱す。

「化物め……」

 ルシフはそうこぼした。少しでも文句を言ってやらないと失意の念に押し殺されてしまいそうだったからだ。それは他の二人も同じだ。どれだけ修行したところで剣の領域では今のメフィストに追いつくことはできそうにもない。そんな圧倒的な実力差に恐れ逃げてしまいそうだから。

「化物に化物と言われるとは儂もまだまだ捨てたものではないな……さて化物たちが本領を発揮する前に潰してやるとするか」
 メフィストがそうルシフたちを威圧すると、メフィストの両手と腰の剣の全てが中に浮く。
「やはり魔法をつかっていたのだな……それで味方を操ったというわけか?」
 怒りのあまり声が震えているジゼルがメフィストの剣を弾き飛ばす。
「そんなことをしても無駄だとなぜわからん。どうせやるのならあなたも魔法を使えばいいものを……」
「こんな場所で使えるわけ無いだろうが!」
 聖者の魔法ともなれば、どれほど手加減してもここら一体を吹き飛ばすだろう。ルシフはいぜん見たレヴィアとハムートの戦いを見てそれがよくわかっていた。

「聖者とは厄介なものだな。そんな事だから悪魔ごときに付け入られるんだよっ! これから必要なのは、正義の心を持った獣の刻印を持つものだ。聖者は最終兵器として椅子にでも座っていればよいのだよ」
 自分の理屈をさも当たり前のことだというふうにメフィストは述べた。しかしルシフがそれに反論する。
「人間は兵器じゃない!」
 そんな反論しか出来ないルシフを、メフィストが笑い飛ばす。
「いいや、聖者は人間じゃない」
「人間だ」
 少しも譲らないルシフに、メフィストはしびれを切らした。
「まあ良いだろう。聖者を人間として扱ったとしても、やはりこいつらは兵器でしか無い。それ以外に行き方など知らないだろうし、儂だってそれだけだ。先々代の国王だってそう扱うために聖者なんて制度を作ったのだろう。矮小な脳みそで作り上げた悪魔というものに対抗するためにな」
 その言葉に疑問を感じたのはルシフだけではなかった。
「作り上げただと?」
 ジゼルがそう尋ねる。
「そうだ。悪魔・永劫回帰・聖者……その全て人間のリーダーたちが作り上げた幻想でしか無い。聖者のリーダーとして儂が、人間のリーダーとして国王が、悪魔のリーダーとしてダンダリオンが、儂らの3人が作り上げた幻想でしかなかった。と入っても現存の国王ではないがな!」
「じゃあ現王は……」
 メフィストの説明で、嫌な推理を組み立ててしまったルシフはそれだけ言って口を紡いだ。

「そうだ、現国王がそれをやめると言ったのだ。たった三人で世界のバランスを保っていたのに、そのうちの一人が全ての人間のためにもうやめようなんてくだらないことをいい始めた。そもそもこの世界がこんな風になったのだって、世界に必要な悪と正義を作り出す事によって、人間の業を押さえつけるためであったのに、それを取りやめようと言うのでは元も子もなかろう?」
 怒りにも似た声を上げメフィストはルシフを睨んだ。聖者達とルシフに世界の成り立ちを知ってほしかったのだ。
 しかし、世界がどうして悪魔と聖者などという存在を作り出したのかなど、知ることもないルシフにとっては、彼の言葉ほど信用できない物はない。そもそもバランスがそのようなくだらないエゴのために人が苦しむ世界となっていたのであれば、それを作り出した3人とやらを恨むことはすれど、共感できるはずもない。
 王とあった時点からたまりにたまったルシフのストレスはついに、限界点をゆうに突破した。

「……ふざけるな!! お前は世界のバランスとやらのために、これほど多くの人間を殺めたとでも言うのか!?」
 ふつふつと湧き上がる憎しみの心に呼応するかのように、ルシフの右目が怪しく光った。体中から魔力が溢れ出し、まるで神、いや悪魔が降りてきたかのような緊張感がその場に走る。ジゼルとアリサは寒気からか鳥肌が立ち、ルシフの元から数歩引いた。だが、メフィストは全く動揺していない。
「ふざけてなどいない。儂は……儂たちこそが必要悪なのだ。お前たちだってそう感じるだろう? 儂たちが三竦みになっていた間は、この国は平和そのものだったじゃないか……歪められた宗教は世界で一番の信者を誇り、ニセの聖者は崇められ、獣の刻印をもつものも犯罪を侵さなかった者は人として扱われた。まあ多少の差別はあっただろうがな……」
 あっけらかんとして、持論を繰り広げるメフィストの襟ぐりをルシフが掴み上げる。
「お前たちのせいで、俺の知り合いは何人も死んだ。ちょっとの差別だと……? 差別によって人が殺されているんだぞ!?」
 メフィストはルシフの手を払った。
「その少ない犠牲のお陰で、隣国がせめてくることも大きな事件が起きることも減った。何より一つの共通の敵を作ることによって国に反逆しようというものなど出てこなかっただろう? ダンダリオンというテロリストはいたが、それこそ儂らの身内だ。本当に攻めてくるはずなどなかったのだ!」
 ルシフはメフィストに向けて剣を構える。
「人は成長する生き物だ」
 メフィストもルシフに呼応して剣を構えた。
「そうだ。そして傲慢さを身につける。人の業は一生なくならない……魂を司る儂ですら傲慢さを捨てられなかったのだ。力をつけた人間は必ず自らの傲慢さによって星を死滅させる」
「そうならないように考えて生きるのが人間だ」
 二人の会話を横から聞いていた、ジゼルが横槍を入れる。それにアリサが続いた。
「人は自分の罪だって償うことが出来るんだ」

 ルシフの剣をふせぎながら、メフィストが二人に反論する。
「それが傲慢だと言うのだ。全ての人類が正しく成長するわけがない……だからこそ、正しく成長した者とそうでない者、成長しきれない者に指導者がいるのだ」
 メフィストの剣に弾き飛ばされ壁に激突したルシフが立ち上がり吠える。
「未来を読める俺を差し置いて預言者気取りかっ!?」
 向かってくるルシフをメフィストは牽制し、殴り飛ばす。
「お前の未来予知などせいぜい一人の人物がどの位置にいるか分かる程度のものだろう? 儂にはお前の剣筋すら読めるぞ!!」
 メフィストが何度も立ち上がってくるルシフの剣を弾き飛ばす、そうしルシフがのけぞったのを見て追い打ちを掛けた。その状況でルシフはニヤリと笑った。
「いいや違う。俺には……未来なんて読めないからこそ人間は成長するんだ」
 二人の背後から迫って来ていた水の剣にメフィストが貫かれた。

「これは、まさかレヴィア……あやつは儂が葬ったはず……そうか、お前は儂の未来を呼んでなを儂について来られないのだと思っていたが、一度も儂の未来など見てはいなかったのだな……?」
「お前の言うとおり俺の魔法はせいぜい、対象が未来でどの位置にいるのか程度しかわからないし、その未来ですらすぐに変動してしまう……そんなものが戦いで役にたつはず無いだろう? 役に立つのはお前が知らない未来だけ、つまりここにいるはずのない者からの攻撃ぐらいだ」
 ルシフは口から血を吹き出すメフィストに対し勝ち誇ったように言った。
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