永劫回帰の黙示録(レヴェレーション)

真白 悟

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終章 魔の終末

19.奇跡

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 地面にゆっくりと倒れ伏していくレヴィアを見て、その間もなんの反応も出来なかったルシフはようやく意識を現実へと引き戻された。
「まさか、お前の悪魔魔法は見た目を自分以外の人物にそっくり変化させるものだけじゃないのか?」
 あまりにも驚いているルシフに、ダンダリオンは何か面白くなったようで笑い始める。
「いやいや、今まで誰も知り得なかった事実として誰もが知っていた噂の通り、獣の刻印を持つものだろうが、聖者だろうが使える魔法は一種類だ」
 笑いながらもそう説明するダンダリオンに、再びルシフはわけがわからなくなった。
「じゃあどうして……?」
「どうしてって……それじゃあ聞くけど、君はソロモン72柱って聞いたことあるかな?」
 ダンダリオンは大げさに手を広げながら、やれやれといった風にルシフに問い返す。しかし、ダンダリオンの口からでた言葉が自身の聞いたことのある言葉ではなかった為、彼は再び口を閉じた。
 彼がそんな様子だったから、ダンダリオンは仕方ないといったように続けて話す。

「知らないなら話しても仕方ないけど、自己満足ってやつだ……僕はね、その72柱のなかに出てくるダンタリオンという悪魔の性質と似た魔法が使える。僕の名前の由来がそれだ。だけどな……そのダンタリオンと呼ばれる悪魔の力は使えないんだよ。それはどうしてだろうか?」
 ダンダリオンが突然始めたの話の内容に、ルシフは少しだけ口調を荒げた。
「それが僕の質問とどんな関係がある!?」
 それに対してダンダリオンは再びにやけた。
「まあ質問に答えてくれ」
「…………それはお前が言ったように、俺達が悪魔じゃないからだろう?」
 ルシフの回答にダンダリオンは『おしい』と返した。
「僕の考えでは、力が濁っているからだ。僕には知識があり、ダンタリオンの見た目通りあらゆる姿に変身することが出来る……だがそれはダンタリオンの力ではない。見た人物が勝手に様々な姿を信じただけだ。僕の場合はそうじゃない僕は実際に変身しているし、欺こうとして欺いている。その上、ダンタリオンが肉体的力など必要ないのに対して、僕は肉体的力ばかりが先行する」
「じゃあその力は魔法じゃないのか?」
 人間離れした動きをするダンダリオンのスピードが魔法じゃないなんてことはルシフには信じられないことだが、ルシフが得られる情報が本人の言葉以外存在しないのであれば、それが嘘であれ本当であれどその言葉を基準に想像する他無い。
 何より、ダンダリオンの速さが魔法でせよ、本人のポテンシャルせよルシフに取ってはどちらも対策がほとんど不可能だった。それはルシフの未来予知が目をなしてもらってから絶好調だということも含めて考えても覆りようがない事実であり、真実だ。――未来を予知しようとも反応出来ない速度に対応することなど、最初からできっこないのである。
 だからこそ、ルシフは彼が話している間に未来を見ることはしなかったというよりも出来ないかった。そんな魔法を発動しているうちに、ダンダリオンはきっとルシフの目では捉えられないようなスピードで封殺してくるだろうと考えたわけだ。なにより、以前に闘ったとは言い難いが、襲われた時には魔法を発動する暇もなかった。

「君に取っては不幸なことだが、魔法ではない。だからこそ君が魔法を発動するためのラグが僕にはないわけだ。つまり事実上つみだね……と言っても今の僕にあったら相当な手練でもない限りはつみ。魔法に頼っている者たちは絶望するしか無いだろうね」

 誇ったようで、悟ったような口ぶりでダンダリオンが黙り込んだルシフを一蹴した。だが、ルシフにとって、その速さが魔法由来かどうかはもはや興味の外側に位置している。
 ルシフは適当に話を合わせながら、ダンダリオンの隙を突く機械を伺う。
「それは良かったな。でも俺は魔法に頼って来たものとはいえないな……どちらかと言うと母親に頼って来たぼんくらだしな。最近は友人や偶然出くわした幼女、あとは……そうだ、元上司にも厄介事を押し付ける始末だ」
「それならなおさら……」
 自身のダメさ加減を話しの肴に酒でも煽り飲むかのような雰囲気を醸し出しているルシフに、ダンダリオンは幻滅してそう呟く。自分たちはどうしてこんな男を英雄としての人柱にしようとしたのかわからなくなったからだ。――というよりも彼を選んだの自体ほとんどメフィストだったからこそ、彼は余計に沿う感じてしまったのかもしれない。途中まで出た言葉が自分の計画を否定する言葉のようで、飲み込まざるおえなかった。
 ダンダリオンは、自分の目の前にいる男を見たくなかった為に目をそらす。その間たった数秒の動作だったが、魔法を発動する時間としては十分だった。ルシフは小声で呪文を唱え、その後、ダンダリオンに向かって大声で自身の心情について叫ぶ。

「だけどな……俺は昔も今も神父だ。俺は俺が信頼する人物たちがそう言ってくれたからには、どれだけ休みたくても、サボりたくても、嫌になって逃げ出したくなったとしても、それだけは変わらない。……だから、俺が悪魔としての魔法を使うのは今日が最後になる。残念だがお前のいう英雄とやらにも、ルシファーなんて大層な天使にもなるつもりはない!」
 ダンダリオンは、自分が以前見たルシフとあまりにも考え方が違っていた為、少しだけ反応が遅れる。――それもほんのコンマ数秒だ。そのぐらいのハンデはダンダリオンに取っては造作もないゴミのような時間と例えてしまっても構わないぐらいに、本当に少ない時間。むしろそんな時間ではルシフが動き始めることも出来ないぐらいに短い。
 それでもルシフにとってはダンダリオンを倒すために作った貴重な隙きには違いなく、ルシフはコンマ数秒後に彼の心臓があった場所にめがけて地面に落ちていた剣を蹴り飛ばす。
 剣を真っ直ぐに蹴り飛ばせるというだけでもはや神業というしかないのだが、それをある時間までにピッタリ10数センチ四方の隙間に収めるなんてまず不可能。特に緊張が加わったこのタイミングにおいては奇跡……いやそれ以上としか言いようがない。
 もちろんルシフの当ては大きくはずれた。

「むだだよ。何度も言うけど僕のスピードは魔法じゃない」

 ダンダリオンはたった2本の指で、神がかりのような奇跡を起こした剣先をつまんでいた。何億分の1、いや何兆分の1、それよりも遥かに低い奇跡……起こり得ない矛盾のような出来事に対し、事前に予測していたとしか思えない反応速度で防いだのだ。――いくら動くスピードが早かろうが、絶対にそれを予測するうえで時間にロスが生じるはずであり、避けれることは出来たとしても、今回のようにつまむことは出来ない。

「まさか、人の心も読めるのか?」

 ルシフは恐る恐る尋ねる。ダンダリオンは、そんなルシフの反応が面白かったのかいたずら気味に笑って答える。
「それが出来たのなら、僕の力は濁ってなかっただろうね」

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