77 / 86
終章 魔の終末
21.9回目
しおりを挟む
ルシフは朝目を覚ますと、いつも思うことがある。それは働きたく無いということだ。巷であだ名されている通り、『働かざる男』の名はだてではなく、今日も教会の仕事をサボる為に一心不乱に懺悔室へと向かう。そこは、懺悔する人が少ない港町にとってはこの世で一番暇な仕事場といえるだろう。
しかし、最近では不吉な噂を聞く。なんでも街を収めるなんとか会長とやらが、外国人を含めた街の外から違法で屋台を開く人々を合法化しようと画策しているとのことだ。もしそんな計画が現実的なものになってしまうと、ルシフの仕事が増えてしまうことは容易に想像できた。
今でも移民問題は港町の住人から問題視されており、時々とは言え、愚痴をこぼすために懺悔室を訪れる不埒者がいる。
そんな中で、移民が合法的になると住民と移民の確執は避けられない問題となるだろう。そうなってしまえば、ルシフの仕事、もとい暇な懺悔室も暇ではなくなってしまう。そんな未来を想像して、ルシフはため息を吐く。
「いつまでもこんな生活が続けばいいのに……」
――そんな生活が続けれるわけ無いだろう!
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
「どうしてだ?」
いつものルシフなら、そんな奇妙な声など空耳と簡単に断定し、無視しただろうがあまりにも暇だったからか、ルシフはその声に問うた。
――同じことがいつまでも続くなんてことはありえない、未来でも過去でもな。だからこんな生活は続かない。いいや、続けちゃいけない。
その声は、いっそうルシフに近いところから聞こえるようになった。
「夢の中でぐらい夢見させてくれてもいいだろう?」
――甘えるな、それよりいつまで寝ているつもりだ?
今度は確実にルシフの頭の中で、声は響いた。
――――ダンダリオンはルシフの首を切り落とした後、ゆったりとその場に座り込んだ。先程気絶させた他の3人には気にもとめず、ドアの向こうから入ってきた国王に視線を向ける。
「今更登場か? まさか自分の役割を忘れたわけじゃないだろう……僕の役割はここまでだ。後は君とメフィストの仕事だよ。これい以上は失敗出来ない、10回目は世界がずれちゃう可能性があるからね」
国王はダンダリオンの言葉に、ゆっくりと頷く。
「ニゴリよ本当にこれで良かったのか? 神を欺く方法は本当にこれしかなかったのか? もしルシフが永劫回帰の渦に飲まれたら、それこそ神の思う壺だぞ」
彼はダンダリオンを心配するように顔を覗き込んだ。
「顔が近い、あとその名前は捨てた。僕のことはダンダリオンと呼べといつも言っているだろう……?」
「捨てた……!? 捨てきれなかったのはお前だろう? 捨てたのならダンタリオンと名乗ればよかろうに、結局その濁りは捨てきれなかったのだろう」
ダンダリオンは呆れたように、王を睨んで言い返す。
「僕は捨てられなかったんじゃない。ダンダリオンと名乗っているのだって、力に淀みがあったからだ。自分を悪魔と名乗るのもおこがましいほど、僕の魔法は見完全だ。魔法だけならルシフにも勝てないほどに脆弱だ。そんなことより、僕よりも魔力が強いルシフが戻ってこれないわけ無いだろう。もう9回目だぞ?」
国王は、自嘲気味に笑い、ダンダリオンを強く睨んだ。
「国民をここまで犠牲にしたのは初めてだぞ! 確かに英雄の誕生にはふさわしい人災といえるだろうが、失敗したら国が滅びるかもしれんのだぞ?」
「それを含めて君も同意しただろう? それとも神を欺くためにこれからも三つ巴の戦いを繰り広げるのか? それもいいだろう、だけどそれじゃあ結局『永劫回帰』はなくならないことがよくわかった、僕にはね。もう8回も経験したんだ……もう疲れた。いくら強くなろうとその人生が永久に続くのなら、なんの達成感もなく、向上心すら消え失せる」
ダンダリオンは悟ったように遠い目をしている。国王もそのことについては何度も聞かされていたから、何も言えなくなり口を閉じた。
「とにかく、ルシフなら大丈夫だろう。彼にとってはあまり嬉しくないことだろうが、僕達3人が認めた人間だ……なんの問題もないだろう」
ダンダリオンはゆっくりと立ち上がり、懐から黒い角を取り出した。
「忘れられたのかと思ったぞ。じゃあ残念だが、ダンダリオンの体とはこれでお別れと言うわけじゃが、何かやり残したことはないか?」
黒い角からはハムートの声ではなく、メフィストの声が響き渡った。二人はそのことに驚きもせずに対応する。
「僕は特に何もない」
「私も同じだ。こいつもだいぶ疲れているし、早いところ休ませてやろう」
ダンダリオンと国王は、3人で立てた計画を早くすすめるべく、メフィストに最後の一手を早くするように促した。
しかし、最近では不吉な噂を聞く。なんでも街を収めるなんとか会長とやらが、外国人を含めた街の外から違法で屋台を開く人々を合法化しようと画策しているとのことだ。もしそんな計画が現実的なものになってしまうと、ルシフの仕事が増えてしまうことは容易に想像できた。
今でも移民問題は港町の住人から問題視されており、時々とは言え、愚痴をこぼすために懺悔室を訪れる不埒者がいる。
そんな中で、移民が合法的になると住民と移民の確執は避けられない問題となるだろう。そうなってしまえば、ルシフの仕事、もとい暇な懺悔室も暇ではなくなってしまう。そんな未来を想像して、ルシフはため息を吐く。
「いつまでもこんな生活が続けばいいのに……」
――そんな生活が続けれるわけ無いだろう!
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
「どうしてだ?」
いつものルシフなら、そんな奇妙な声など空耳と簡単に断定し、無視しただろうがあまりにも暇だったからか、ルシフはその声に問うた。
――同じことがいつまでも続くなんてことはありえない、未来でも過去でもな。だからこんな生活は続かない。いいや、続けちゃいけない。
その声は、いっそうルシフに近いところから聞こえるようになった。
「夢の中でぐらい夢見させてくれてもいいだろう?」
――甘えるな、それよりいつまで寝ているつもりだ?
今度は確実にルシフの頭の中で、声は響いた。
――――ダンダリオンはルシフの首を切り落とした後、ゆったりとその場に座り込んだ。先程気絶させた他の3人には気にもとめず、ドアの向こうから入ってきた国王に視線を向ける。
「今更登場か? まさか自分の役割を忘れたわけじゃないだろう……僕の役割はここまでだ。後は君とメフィストの仕事だよ。これい以上は失敗出来ない、10回目は世界がずれちゃう可能性があるからね」
国王はダンダリオンの言葉に、ゆっくりと頷く。
「ニゴリよ本当にこれで良かったのか? 神を欺く方法は本当にこれしかなかったのか? もしルシフが永劫回帰の渦に飲まれたら、それこそ神の思う壺だぞ」
彼はダンダリオンを心配するように顔を覗き込んだ。
「顔が近い、あとその名前は捨てた。僕のことはダンダリオンと呼べといつも言っているだろう……?」
「捨てた……!? 捨てきれなかったのはお前だろう? 捨てたのならダンタリオンと名乗ればよかろうに、結局その濁りは捨てきれなかったのだろう」
ダンダリオンは呆れたように、王を睨んで言い返す。
「僕は捨てられなかったんじゃない。ダンダリオンと名乗っているのだって、力に淀みがあったからだ。自分を悪魔と名乗るのもおこがましいほど、僕の魔法は見完全だ。魔法だけならルシフにも勝てないほどに脆弱だ。そんなことより、僕よりも魔力が強いルシフが戻ってこれないわけ無いだろう。もう9回目だぞ?」
国王は、自嘲気味に笑い、ダンダリオンを強く睨んだ。
「国民をここまで犠牲にしたのは初めてだぞ! 確かに英雄の誕生にはふさわしい人災といえるだろうが、失敗したら国が滅びるかもしれんのだぞ?」
「それを含めて君も同意しただろう? それとも神を欺くためにこれからも三つ巴の戦いを繰り広げるのか? それもいいだろう、だけどそれじゃあ結局『永劫回帰』はなくならないことがよくわかった、僕にはね。もう8回も経験したんだ……もう疲れた。いくら強くなろうとその人生が永久に続くのなら、なんの達成感もなく、向上心すら消え失せる」
ダンダリオンは悟ったように遠い目をしている。国王もそのことについては何度も聞かされていたから、何も言えなくなり口を閉じた。
「とにかく、ルシフなら大丈夫だろう。彼にとってはあまり嬉しくないことだろうが、僕達3人が認めた人間だ……なんの問題もないだろう」
ダンダリオンはゆっくりと立ち上がり、懐から黒い角を取り出した。
「忘れられたのかと思ったぞ。じゃあ残念だが、ダンダリオンの体とはこれでお別れと言うわけじゃが、何かやり残したことはないか?」
黒い角からはハムートの声ではなく、メフィストの声が響き渡った。二人はそのことに驚きもせずに対応する。
「僕は特に何もない」
「私も同じだ。こいつもだいぶ疲れているし、早いところ休ませてやろう」
ダンダリオンと国王は、3人で立てた計画を早くすすめるべく、メフィストに最後の一手を早くするように促した。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる