永劫回帰の黙示録(レヴェレーション)

真白 悟

文字の大きさ
79 / 86
終章 魔の終末

23.獣

しおりを挟む
「なんども言わせるな、その考え方は人間が作り出した空想……いいや、妄想という忌むべきもの。いわゆる人間にとっての禁忌だ。自分たちがわからない力を忌み嫌い、悪と決めつけるというのはよくあることだ」
 神を名乗る男は悲しそうな声で語った。それに対して、ルシフは考えが追いついていない。
「……つまり、どういう事だ?」
「魔女狩りという出来事は知っているか?」
 ルシフは神から出た聞きなれない言葉に首をかしげる。
「そうか、この時代ではまだあまり広まってはいなかったな。……そうだな、簡単に言うと人間は自己の領域を侵すものを極端にきらう傾向にある。人間は自分とは違うものを嫌い、ただ嫌いと言うだけで殺すことも出来る。特に集団の中ではその傾向が強くなり、集団の中に異形の者、いや異能を使う者がいた場合は排除するべく協力を始めるだろう。その異能を使う者を『獣の刻印を持つ者』といえばわかりやすいだろう?」
「つまり、自分と違う力が怖いってことか?」
「少し違うが、まあそう言うことだ。……もう少し話してやりたいが、そろそろ、元のところへ帰る時間だ。残念ながら君には何も出来ないだろうが、気を確かに持って私との約束を果たしてくれ」
 神は突然、慌てている様子で話しを切り、そのまま二度と話しかけてくることはなかった。ルシフはまだまだ尋ねたいことは多かったが、相手の声が聞こえないのでは仕方がないと、再び王都へ向かおうと足を進めた。

――幾許かの時が経ち、ルシフは崩落した城の中にいた。辺りを見渡すとレヴィア、ジゼル、アリサが地面に倒れ伏しているのが見える。
「どう言うことだ? ……俺はさっきまで」
 ルシフが驚くのも無理はない、ルシフは自分が死んだとばかり思っていたからだ。
「どうした、未来でも見てたのか!?」
 彼の視界に全く入っていなかった男が、ルシフを挑発する。
「未来……いや、どちらかと言えばあれは過去……」
 ぐるぐる巡る思考をまとめようとルシフは頭を抱えながら、目の前にいる男に聞こえないぐらい小さな声でつぶやいて男の方を見る。そこに立っていたのは、間違いなく自分を殺した相手であるダンダリオンだ。
 ダンダリオンはルシフの視線が自分に向いたことに気がつくと、ゆっくりと口を釣り上げた。
「神との邂逅はどうだった……神がいかに意味の無い存在かわかっただろう? だから計画を最終段階に移そうと思う」
 彼の言う計画とやらがどのようなものかをルシフは知らないが、今まで彼が口にした言葉の数々から今の世界を破壊に導くものには違いないだろう。ルシフはそんな計画を断固として拒否する姿勢を崩さず、神の言う約束とやらは思い出せないがひとまず自分のやりたいようにすることに決めた。
「俺は英雄にはならないし、なるつもりもない。例え悪魔なんて者が存在しようがなかろうが、そいつらがどれほど残虐な行為を繰り返していようがいまいが、俺は自分の守れるものを少しずつ守るだけだ。それが自分のエゴだとしても、力が足りなかったとしてもだ!」
 そんな一人の神父の決断を悪魔はあざ笑う。
「一つだけ教えてやろう。このまま神に任せていれば必ず世界は滅びるだろう……つまり君のエゴで世界が滅びるということだ」
 悪魔がなぜそういう結論を簡単に出せるのかがルシフには分からない。それはルシフにとって神という存在がよくわからなかったからということもあるが、神が何かをしようがするまいが人間にはそれを超えていけるだけの何かがあると思ったからだ。
「神なんか関係ないだろう?」
 ルシフは思わずそう尋ねる。しかし、ダンダリオンはそれを一蹴する。
「そんな風に考えられる人間がどれだけいる? たかだか噂として流した『永劫回帰の黙示録』程度でここまで疲弊してしまう国だぞ、そんな国に住む人間が本当に自分で考えて暮らしていけると思うか? いいやある一定の人間はそれでも暮らしていけるだろう……だが9割近くの人間にはそんな簡単なことすら出来ない」
 彼はそう言うと嘆き悲しむように、それでいて希望を捨てきれないようなそんなオーラを感じさせる雰囲気を振りまいた。それは、きっと自身の計画がうまく言ってるからだろう。

「そうかもしれないが、一人の英雄が民衆を導いていくのでは今と何も変わらないだろう?」

 ルシフは城の外であった王のことを思い出した。あれだけ頼りなさそうな王であっても少なからず国を治められたわけではあるが、それよりも頼りない自分自身では人々を導いて行くことなど出来ないという事はわかっていた。
 それならば、ジゼルならどうだ。彼は曲者ぞろいの騎士団をまとめ上げてきた逸材だ。きっと疲弊した国であったとしてもまともな国に戻すことなど容易であろう。
「それじゃあ意味がない。彼には神の加護がないからね」
 ルシフの妄想を読み取るように、ダンダリオンはそう呟く。
「いいや誰が王になろうと意味なんてないさ、俺が妄想するそれは現実逃避でしかないってわかっている。お前たちにはそれがわかっていないようだが……」
 ダンダリオンの言葉も自分自身の妄想すらあざ笑うようにルシフはそう言った。それを聞いたダンダリオンは壊れたように笑い始める。
「何がおかしい?」
 ルシフは笑い続ける悪魔に問う。その問いに悪魔は冷徹な目を向けて答える。
「勘違いしているようだから言っておいてやろう。僕たちは王がほしいのではない……英雄、すなわち新しい神がほしいんだ。見守るしか脳のない神ではない、人間を良い方へと導いてくれる神が! ある一体の天使を地上におろしてそいつに任せっきりな神じゃなく、地上で人のために働く天使が神になるべきだと思うわけだ。だけど神も他の天使もそれを望んでいない。愚かな人間の中にもそれを望まないものがいる。だから俺たちは神との約束を果たすつもりも、その中でも重要な約束を持ってきた君を……あなたを私達のリーダーとして育てなければならなかった」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...