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終章 魔の終末
23.獣
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「なんども言わせるな、その考え方は人間が作り出した空想……いいや、妄想という忌むべきもの。いわゆる人間にとっての禁忌だ。自分たちがわからない力を忌み嫌い、悪と決めつけるというのはよくあることだ」
神を名乗る男は悲しそうな声で語った。それに対して、ルシフは考えが追いついていない。
「……つまり、どういう事だ?」
「魔女狩りという出来事は知っているか?」
ルシフは神から出た聞きなれない言葉に首をかしげる。
「そうか、この時代ではまだあまり広まってはいなかったな。……そうだな、簡単に言うと人間は自己の領域を侵すものを極端にきらう傾向にある。人間は自分とは違うものを嫌い、ただ嫌いと言うだけで殺すことも出来る。特に集団の中ではその傾向が強くなり、集団の中に異形の者、いや異能を使う者がいた場合は排除するべく協力を始めるだろう。その異能を使う者を『獣の刻印を持つ者』といえばわかりやすいだろう?」
「つまり、自分と違う力が怖いってことか?」
「少し違うが、まあそう言うことだ。……もう少し話してやりたいが、そろそろ、元のところへ帰る時間だ。残念ながら君には何も出来ないだろうが、気を確かに持って私との約束を果たしてくれ」
神は突然、慌てている様子で話しを切り、そのまま二度と話しかけてくることはなかった。ルシフはまだまだ尋ねたいことは多かったが、相手の声が聞こえないのでは仕方がないと、再び王都へ向かおうと足を進めた。
――幾許かの時が経ち、ルシフは崩落した城の中にいた。辺りを見渡すとレヴィア、ジゼル、アリサが地面に倒れ伏しているのが見える。
「どう言うことだ? ……俺はさっきまで」
ルシフが驚くのも無理はない、ルシフは自分が死んだとばかり思っていたからだ。
「どうした、未来でも見てたのか!?」
彼の視界に全く入っていなかった男が、ルシフを挑発する。
「未来……いや、どちらかと言えばあれは過去……」
ぐるぐる巡る思考をまとめようとルシフは頭を抱えながら、目の前にいる男に聞こえないぐらい小さな声でつぶやいて男の方を見る。そこに立っていたのは、間違いなく自分を殺した相手であるダンダリオンだ。
ダンダリオンはルシフの視線が自分に向いたことに気がつくと、ゆっくりと口を釣り上げた。
「神との邂逅はどうだった……神がいかに意味の無い存在かわかっただろう? だから計画を最終段階に移そうと思う」
彼の言う計画とやらがどのようなものかをルシフは知らないが、今まで彼が口にした言葉の数々から今の世界を破壊に導くものには違いないだろう。ルシフはそんな計画を断固として拒否する姿勢を崩さず、神の言う約束とやらは思い出せないがひとまず自分のやりたいようにすることに決めた。
「俺は英雄にはならないし、なるつもりもない。例え悪魔なんて者が存在しようがなかろうが、そいつらがどれほど残虐な行為を繰り返していようがいまいが、俺は自分の守れるものを少しずつ守るだけだ。それが自分のエゴだとしても、力が足りなかったとしてもだ!」
そんな一人の神父の決断を悪魔はあざ笑う。
「一つだけ教えてやろう。このまま神に任せていれば必ず世界は滅びるだろう……つまり君のエゴで世界が滅びるということだ」
悪魔がなぜそういう結論を簡単に出せるのかがルシフには分からない。それはルシフにとって神という存在がよくわからなかったからということもあるが、神が何かをしようがするまいが人間にはそれを超えていけるだけの何かがあると思ったからだ。
「神なんか関係ないだろう?」
ルシフは思わずそう尋ねる。しかし、ダンダリオンはそれを一蹴する。
「そんな風に考えられる人間がどれだけいる? たかだか噂として流した『永劫回帰の黙示録』程度でここまで疲弊してしまう国だぞ、そんな国に住む人間が本当に自分で考えて暮らしていけると思うか? いいやある一定の人間はそれでも暮らしていけるだろう……だが9割近くの人間にはそんな簡単なことすら出来ない」
彼はそう言うと嘆き悲しむように、それでいて希望を捨てきれないようなそんなオーラを感じさせる雰囲気を振りまいた。それは、きっと自身の計画がうまく言ってるからだろう。
「そうかもしれないが、一人の英雄が民衆を導いていくのでは今と何も変わらないだろう?」
ルシフは城の外であった王のことを思い出した。あれだけ頼りなさそうな王であっても少なからず国を治められたわけではあるが、それよりも頼りない自分自身では人々を導いて行くことなど出来ないという事はわかっていた。
それならば、ジゼルならどうだ。彼は曲者ぞろいの騎士団をまとめ上げてきた逸材だ。きっと疲弊した国であったとしてもまともな国に戻すことなど容易であろう。
「それじゃあ意味がない。彼には神の加護がないからね」
ルシフの妄想を読み取るように、ダンダリオンはそう呟く。
「いいや誰が王になろうと意味なんてないさ、俺が妄想するそれは現実逃避でしかないってわかっている。お前たちにはそれがわかっていないようだが……」
ダンダリオンの言葉も自分自身の妄想すらあざ笑うようにルシフはそう言った。それを聞いたダンダリオンは壊れたように笑い始める。
「何がおかしい?」
ルシフは笑い続ける悪魔に問う。その問いに悪魔は冷徹な目を向けて答える。
「勘違いしているようだから言っておいてやろう。僕たちは王がほしいのではない……英雄、すなわち新しい神がほしいんだ。見守るしか脳のない神ではない、人間を良い方へと導いてくれる神が! ある一体の天使を地上におろしてそいつに任せっきりな神じゃなく、地上で人のために働く天使が神になるべきだと思うわけだ。だけど神も他の天使もそれを望んでいない。愚かな人間の中にもそれを望まないものがいる。だから俺たちは神との約束を果たすつもりも、その中でも重要な約束を持ってきた君を……あなたを私達のリーダーとして育てなければならなかった」
神を名乗る男は悲しそうな声で語った。それに対して、ルシフは考えが追いついていない。
「……つまり、どういう事だ?」
「魔女狩りという出来事は知っているか?」
ルシフは神から出た聞きなれない言葉に首をかしげる。
「そうか、この時代ではまだあまり広まってはいなかったな。……そうだな、簡単に言うと人間は自己の領域を侵すものを極端にきらう傾向にある。人間は自分とは違うものを嫌い、ただ嫌いと言うだけで殺すことも出来る。特に集団の中ではその傾向が強くなり、集団の中に異形の者、いや異能を使う者がいた場合は排除するべく協力を始めるだろう。その異能を使う者を『獣の刻印を持つ者』といえばわかりやすいだろう?」
「つまり、自分と違う力が怖いってことか?」
「少し違うが、まあそう言うことだ。……もう少し話してやりたいが、そろそろ、元のところへ帰る時間だ。残念ながら君には何も出来ないだろうが、気を確かに持って私との約束を果たしてくれ」
神は突然、慌てている様子で話しを切り、そのまま二度と話しかけてくることはなかった。ルシフはまだまだ尋ねたいことは多かったが、相手の声が聞こえないのでは仕方がないと、再び王都へ向かおうと足を進めた。
――幾許かの時が経ち、ルシフは崩落した城の中にいた。辺りを見渡すとレヴィア、ジゼル、アリサが地面に倒れ伏しているのが見える。
「どう言うことだ? ……俺はさっきまで」
ルシフが驚くのも無理はない、ルシフは自分が死んだとばかり思っていたからだ。
「どうした、未来でも見てたのか!?」
彼の視界に全く入っていなかった男が、ルシフを挑発する。
「未来……いや、どちらかと言えばあれは過去……」
ぐるぐる巡る思考をまとめようとルシフは頭を抱えながら、目の前にいる男に聞こえないぐらい小さな声でつぶやいて男の方を見る。そこに立っていたのは、間違いなく自分を殺した相手であるダンダリオンだ。
ダンダリオンはルシフの視線が自分に向いたことに気がつくと、ゆっくりと口を釣り上げた。
「神との邂逅はどうだった……神がいかに意味の無い存在かわかっただろう? だから計画を最終段階に移そうと思う」
彼の言う計画とやらがどのようなものかをルシフは知らないが、今まで彼が口にした言葉の数々から今の世界を破壊に導くものには違いないだろう。ルシフはそんな計画を断固として拒否する姿勢を崩さず、神の言う約束とやらは思い出せないがひとまず自分のやりたいようにすることに決めた。
「俺は英雄にはならないし、なるつもりもない。例え悪魔なんて者が存在しようがなかろうが、そいつらがどれほど残虐な行為を繰り返していようがいまいが、俺は自分の守れるものを少しずつ守るだけだ。それが自分のエゴだとしても、力が足りなかったとしてもだ!」
そんな一人の神父の決断を悪魔はあざ笑う。
「一つだけ教えてやろう。このまま神に任せていれば必ず世界は滅びるだろう……つまり君のエゴで世界が滅びるということだ」
悪魔がなぜそういう結論を簡単に出せるのかがルシフには分からない。それはルシフにとって神という存在がよくわからなかったからということもあるが、神が何かをしようがするまいが人間にはそれを超えていけるだけの何かがあると思ったからだ。
「神なんか関係ないだろう?」
ルシフは思わずそう尋ねる。しかし、ダンダリオンはそれを一蹴する。
「そんな風に考えられる人間がどれだけいる? たかだか噂として流した『永劫回帰の黙示録』程度でここまで疲弊してしまう国だぞ、そんな国に住む人間が本当に自分で考えて暮らしていけると思うか? いいやある一定の人間はそれでも暮らしていけるだろう……だが9割近くの人間にはそんな簡単なことすら出来ない」
彼はそう言うと嘆き悲しむように、それでいて希望を捨てきれないようなそんなオーラを感じさせる雰囲気を振りまいた。それは、きっと自身の計画がうまく言ってるからだろう。
「そうかもしれないが、一人の英雄が民衆を導いていくのでは今と何も変わらないだろう?」
ルシフは城の外であった王のことを思い出した。あれだけ頼りなさそうな王であっても少なからず国を治められたわけではあるが、それよりも頼りない自分自身では人々を導いて行くことなど出来ないという事はわかっていた。
それならば、ジゼルならどうだ。彼は曲者ぞろいの騎士団をまとめ上げてきた逸材だ。きっと疲弊した国であったとしてもまともな国に戻すことなど容易であろう。
「それじゃあ意味がない。彼には神の加護がないからね」
ルシフの妄想を読み取るように、ダンダリオンはそう呟く。
「いいや誰が王になろうと意味なんてないさ、俺が妄想するそれは現実逃避でしかないってわかっている。お前たちにはそれがわかっていないようだが……」
ダンダリオンの言葉も自分自身の妄想すらあざ笑うようにルシフはそう言った。それを聞いたダンダリオンは壊れたように笑い始める。
「何がおかしい?」
ルシフは笑い続ける悪魔に問う。その問いに悪魔は冷徹な目を向けて答える。
「勘違いしているようだから言っておいてやろう。僕たちは王がほしいのではない……英雄、すなわち新しい神がほしいんだ。見守るしか脳のない神ではない、人間を良い方へと導いてくれる神が! ある一体の天使を地上におろしてそいつに任せっきりな神じゃなく、地上で人のために働く天使が神になるべきだと思うわけだ。だけど神も他の天使もそれを望んでいない。愚かな人間の中にもそれを望まないものがいる。だから俺たちは神との約束を果たすつもりも、その中でも重要な約束を持ってきた君を……あなたを私達のリーダーとして育てなければならなかった」
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