永劫回帰の黙示録(レヴェレーション)

真白 悟

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終章 魔の終末

24.もう一体の天使

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 ダンダリオンの話を聞いていて、ルシフには不審に思う点が幾つかあった。それは彼らが神との約束を果たさないと言ったことでもあるが、自分自身が本当に神となんらかの約束を交わしたのであればどうして覚えていないのかということがその一つだ。
「約束とはなんのことだ?」
 自身の記憶を確かめる為に、いまいち信用できない悪魔に尋ねる。
「神はお前に人間の罪を全て引き受けるように命じ、お前はそれを果たすために人間としてこの地上に生まれた。もともとはお前と同じくらい神に愛されたもう一人の天使がその役目を果たすはずだったが、神はあなたに罪を償ってほしくて代わりに命じた」
 ダンダリオンは嘘か本当か分からないことを口にするが、今のルシフにとってはその話を信じる他にどうすることも出来ない。それに実際のところそんな約束はどうでも良かった。
「そうか……だが、それがどうしたっていうんだ!? もしそれが本当だとしてもそんな約束覚えてないし、俺は天使じゃなくて、人間の神父ルシフだ。お前が本物の悪魔じゃないように、俺だって違う!」
 そんなルシフの現実逃避のような言葉にも、ダンダリオンはニヤリと笑い言葉を返す。

「それでいい、僕は人間だし君も人間だ。神の計画は僕達の計画の一部でもあるというわけだ。神が君に天使の頃の記憶を残さなかった事自体、君が人間として裁かれなければいけなかったからだが、それはこちらも同じ。人間じゃないものがいくら奇跡を起こそうが何も変わらない、人間が神に取って代わるからこそ世界は変革するのだ。なあ、同士たちよ」
 彼がそう高らかに言うとともに、ルシフ達の周りには獣の刻印を持つ者たちが数百人ほど集まってきた。

「こんなに人を集めて何をするつもりだ?」
 ルシフはあまりにも突然の出来事に思わず尋ねた。
「何もしない……というよりはすでにしたというべきだろうね。別に君である必要はないし、何よりこれ以上僕と闘ったって何も生まれないだろう? だったら、君の被り物をかぶった他人で十分だって僕たちは考えたんだ……僕達3人はね」
 ダンダリオンの言う3人とは誰のことだろうか、ルシフは1人には心当たりがあった。それは聖者として生きてきた悪魔であり、魂という名の精神を操る男。ルシフが苦労してようやく倒すことが出来た男メフィストのことだ。だが悪魔という関連付けや彼の発言からそれは分かったが、もう一人が誰なのかはルシフには皆目見当もつかない。
「3人?」
 そんなルシフの様子を見て目の前に立つ悪魔ダンダリオンは笑う。
「人、聖者、悪魔……そこに一体どれほどの違いがあるのだろうね。いいやそんなこと言うまでもなく、違いなんてものは端から存在していない。それと同じで平民も咎人も王さえも皆少しだけ状況が違うだけで、なんら特別な存在ではなく同じ生き物だろう?」
 笑ったままダンダリオンがそのような問答をする。そんな意味ありげな言葉にルシフはまたも困惑させられる。その言葉と自分の問いにどのような関係性があるのかどうか知りたくても知りようがない。

「何が言いたい?」

 思わずルシフは問い返す。そんなふうに問い返されたものだからダンダリオンの笑いも消え去り、後に残ったのは哀れみにも似た陳腐な感情だけだ。
「僕たちは人間と聖者と悪魔だと言うことだ」
 おそらくダンダリオンの口から出たその言葉は、彼の言っていることを解析するヒントなのだろうがそれでもルシフには意味が分からない。
「どういう意味だ?」
 しびれを切らしたのか、ダンダリオンは呆れ顔で答える。
「どうせ、君と会うのもこれが最後だ……全て教えてあげるとするか。僕達とは悪魔と聖者と人間の代表を指すということだ。つまりダンダリオンとメフィストと王の3人……僕達だけで始めた計画だ」
「王だって!?」
 ルシフはダンダリオンの言葉に声をおさえられなかった。もしかすればダンダリオンが嘘を付いているのかもしれないが、この際それは可能性としては殆ど無いだろう。なぜならダンダリオンが嘘をつく必要性が無いからだ。それはダンダリオンの方に歩み寄ってくる男の姿がルシフの目に写った時点から現実的な真実として、どのように強く否定しようともそれが現実だということを明らかにした。

「まあ、そういうことだ。儂がどうして街がこうなるまでほっておいたか、その答えが今ならよく分かるだろう?」
 突如として現れた男は、きらびやかな衣装を身にまとい厳格な佇まいと厳しく引き締まった顔をした国王その人だった。
「あんたの役目は国民を守ることだろう? どうしてそんなやつの口車に……」
 ルシフはやるせなく呟く。
「そんなに睨まれても困る。ルシフと言ったか、儂はお前のことをよく知らない。だがダンダリオンが言うのなら儂よりも遥かにこの国を良い方向へと導いてくれるだろう。ならば儂は悪に徹して何が悪い。いまよりも良い国を作れるのであれば、今回のことは必要な犠牲として片付けることが出来るだろう?」
「それはあんたたちの身勝手な考えだろう!? そんなくだらないことのためにどれほどの苦しみがこの国に……俺たちに……レヴィアやアリサ、俺の仲間たちにあったのか知りもしないくせに……!」
 王を一層強くにらめつけるルシフは、今にも王の首に噛みつきそうな勢いだがそれは多勢に無勢なこの状況下では容易ではない。王も無防備にここに立っているというわけではないようで、魔法の防御壁のようなもので身を守られている。

「勘違いするな、儂だって国民を傷つけることは悲しいに決まっているだろう。それにこの街が発展する様を目に出来ないことも心残りだ。だがもうこうなるまで何もしなかった神に絶望している。お前はこの世界のことをあまりにも知らなさすぎる」
 人を見下したような王の目つきに、ルシフは噛み付いた。
「何を知らないと言うんだ!?」
 今にも食ってかかろうとするルシフにも、王は全く引かず話し続ける。
「北では貧民による暴動、南では悪魔による神隠し、東では疫病、西では大災害、そして中央では……儂が知っているこの数十年であまりにも多くの不幸が起こり、その被害を被らないもののほうが多いだろう。そして、それは儂が生まれるよりずっと以前から……ダンダリオンが悪魔などという適当な存在を作り出すよりもはるか前から起き続けた。お前も知っているだろう……我が国は長年の間背水の陣を敷かれ続けて来たことぐらい、だが今となってはそれはいい思い出だ。なぜなら儂の先祖が罪を犯したからだ。魔法を戦争の道具として我が国は他国に対し圧倒的優位に立った」
「それのどこが不幸だと言うんだ!?」
 ルシフの問を王は無視する。
「魔法で勝ったのだから魔法を使えるものにはそれなりの地位が与えられた。しかし、それは妬みを産んだだけだ。力を持つものと持たざるもの、その間に新たな争いが生まれただけで……敵が国外から国内に移っただけで何も変わらない。力を持たざる者は持つものに対抗するために生体実験を行った。力を持つものの子供を使ってな。その結果、子供は不老になり特殊な力を持つようになり、永劫回帰が生まれた」
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