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終章 魔の終末
25.あらたな世界
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「永劫回帰が生まれただと!? だが神は永劫回帰など存在しないと……」
ルシフは声を荒げ王に尋ねる。
「存在しないさ……だが存在しないものが生まれないということではないだろう? 存在しないからこそその概念が生まれる。いや、人間の意識の中に植え付けられるとでも言うのか……ともかくそれは人の脳内にだけ存在し得る。お前の言うとおり現実には存在しない、しかしそんなことはどうでもいいだろう。儂はお前にそんなことを説明してやるために姿を表したわけじゃない」
それだけ言うと王はルシフのように近づいて来る。それを警戒しないルシフではない、相手からの攻撃から身を守るために腕をあげて構える。しかし、それは杞憂だった。
王は別にルシフを攻撃するために近づいたわけではなく、別の目的を持っている。それをルシフに説明するわけでもなく、王は口を開いた。
「儂達はこの不毛な世界にもう疲れた。もう次の時代はすぐそこまで来ているのに、いつまでたっても前時代的な考え方が足を引っ張っていることは明らかだ。ならば老兵はただ去るだけではなく、その膿を落とすべきだろう?」
王の言葉にルシフはとても共感できなかった。それどころか、彼がどれほど正しいことを言っていると感じていても共感してはならないと決意した。
「それがお前たちのエゴだと気が付かないのか……世界を変えたいのならほかを犠牲にするべきではなかった」
ルシフの言葉が気に触ったのか、王は少し早口で言う。
「それこそ、小市民らの勝手な意見だろう? 痛みを負わずに世界を変えることなど不可能だ。神がそれを赦さないだろうし、なにより人間がそれを許さない。歴史がそれを物語っている……たったひとつの国を変えるためにも人間は傷を負い続けた。いまだってそうだ、革命には痛みをともなう」
そんな様子の王をダンダリオンがあざ笑う。
「痛みか……そんなもので世界が変わることなどないだろう? まあ、今回のことは単なるきっかけだ。革命を起こすためのきっかけ、いや革命を起こしても誰も文句を言わないきっかけと言うのが正しいだろう。腐りきった人間の貴族も、現状を受け入れてしまった悪魔達も新たな体制に文句は言えないだろう」
「それはお前が勝手にそう思ってるだけだろうが……」
くだらないという風にルシフは王の言葉を一蹴した。今の彼にとって、国なんて物は取るに足らない物でしかないのだ。
彼にとって重要なのは仲間とともに笑って過ごせた日々そのものを取り戻すということであり、自分が神といかなる約束をしたのかすらどうでもよく、王がいう新体制になど甚だ興味がない。
しかし、王はルシフの考えなどどうでもよく、彼のことを単なる駒程度にしか思っていない。彼がどのような考えを持とうが、計画が終わってしまえば全てが自分の思い通りになると確信していた。
「そうだ、儂らもお前らも自分の意見を押し付けているだけだ。だがそれは神も同じだろう? だからこそ儂は自分の考えを押し通す。それが愚かな人間が出来る唯一の手段だからだ。そこには神も天使も存在しない、悪魔でさえだ。神話性まで失くすことは出来ないが、限りなく特別がない世界が構築され、誰一人弾圧されないさせないまるで楽園のような物が出来るかもしれない。そんな僅かな可能性に賭けざるおえないのが今の人類の袋小路といわれるこの時代における現状なのだ」
悲しい目をした王は、自分の言いたいことだけ言い終えると腰に据えた剣を構える。
その剣は王家に代々伝わる伝説の剣であり、神話の時代に神から授かったという逸話を持つ物だ。王はその剣を神の時代を終わらせる為に引き抜いた。
「俺はお前と戦うつもりはない」
ルシフは聖剣に背を向ける。
「お前にその気がなかろうと関係ない」
王は自身の喉笛に剣を突き立てた。
「俺は未来を見ることが出来る……」
「だからどうしたというのだ? その結果儂が死ぬつもりがないなんて言うわけじゃないないだろう。儂は国のために死ねるぞ」
「俺だけじゃない、未来は誰にだって見ることが出来る。だがあんたはそれを捨てようとしている。死んで勝負から降りようとしている」
「なんと言われようと同じだ。儂は死ぬ……これ以上の問答など無意味だ。さらば――」
王は自分の首にある頸動脈をいともあっさりと切り裂いた。剣が地面にゆっくりと落ち、王はまるで時間の流れがゆっくりと流れるように地面に倒れる。
地面に流れたおびただしい量の血が王の死を物語っていた。
ルシフにとって王は別段死んで悲しむような存在ではなく、ちょっとだけ面識のあるおっさん程度でしか無い。だからといって、彼の死がどうでもいいわけではなく、やるせなく虚しかった。
「ダンダリオン……お前はこんな無意味な最後がほしかったのか?」
「無意味ではないさ……悪逆非道な王は処され、ここに新たな英雄が生まれただけのこと……後はどうするか君次第だ」
ダンダリオンは苦しそうにそうつぶやいた。
「悪逆非道……? 確かに王は手前勝手だったが、悪逆非道と言われる程のことはしていないだろう?」
「いいや、王は裏で本当の悪魔とつながり国にいる国民は愚か獣の刻印を持つものすら売った男だ。この街の住民なら誰でも知っている。王の黒い噂をな」
ルシフは声を荒げ王に尋ねる。
「存在しないさ……だが存在しないものが生まれないということではないだろう? 存在しないからこそその概念が生まれる。いや、人間の意識の中に植え付けられるとでも言うのか……ともかくそれは人の脳内にだけ存在し得る。お前の言うとおり現実には存在しない、しかしそんなことはどうでもいいだろう。儂はお前にそんなことを説明してやるために姿を表したわけじゃない」
それだけ言うと王はルシフのように近づいて来る。それを警戒しないルシフではない、相手からの攻撃から身を守るために腕をあげて構える。しかし、それは杞憂だった。
王は別にルシフを攻撃するために近づいたわけではなく、別の目的を持っている。それをルシフに説明するわけでもなく、王は口を開いた。
「儂達はこの不毛な世界にもう疲れた。もう次の時代はすぐそこまで来ているのに、いつまでたっても前時代的な考え方が足を引っ張っていることは明らかだ。ならば老兵はただ去るだけではなく、その膿を落とすべきだろう?」
王の言葉にルシフはとても共感できなかった。それどころか、彼がどれほど正しいことを言っていると感じていても共感してはならないと決意した。
「それがお前たちのエゴだと気が付かないのか……世界を変えたいのならほかを犠牲にするべきではなかった」
ルシフの言葉が気に触ったのか、王は少し早口で言う。
「それこそ、小市民らの勝手な意見だろう? 痛みを負わずに世界を変えることなど不可能だ。神がそれを赦さないだろうし、なにより人間がそれを許さない。歴史がそれを物語っている……たったひとつの国を変えるためにも人間は傷を負い続けた。いまだってそうだ、革命には痛みをともなう」
そんな様子の王をダンダリオンがあざ笑う。
「痛みか……そんなもので世界が変わることなどないだろう? まあ、今回のことは単なるきっかけだ。革命を起こすためのきっかけ、いや革命を起こしても誰も文句を言わないきっかけと言うのが正しいだろう。腐りきった人間の貴族も、現状を受け入れてしまった悪魔達も新たな体制に文句は言えないだろう」
「それはお前が勝手にそう思ってるだけだろうが……」
くだらないという風にルシフは王の言葉を一蹴した。今の彼にとって、国なんて物は取るに足らない物でしかないのだ。
彼にとって重要なのは仲間とともに笑って過ごせた日々そのものを取り戻すということであり、自分が神といかなる約束をしたのかすらどうでもよく、王がいう新体制になど甚だ興味がない。
しかし、王はルシフの考えなどどうでもよく、彼のことを単なる駒程度にしか思っていない。彼がどのような考えを持とうが、計画が終わってしまえば全てが自分の思い通りになると確信していた。
「そうだ、儂らもお前らも自分の意見を押し付けているだけだ。だがそれは神も同じだろう? だからこそ儂は自分の考えを押し通す。それが愚かな人間が出来る唯一の手段だからだ。そこには神も天使も存在しない、悪魔でさえだ。神話性まで失くすことは出来ないが、限りなく特別がない世界が構築され、誰一人弾圧されないさせないまるで楽園のような物が出来るかもしれない。そんな僅かな可能性に賭けざるおえないのが今の人類の袋小路といわれるこの時代における現状なのだ」
悲しい目をした王は、自分の言いたいことだけ言い終えると腰に据えた剣を構える。
その剣は王家に代々伝わる伝説の剣であり、神話の時代に神から授かったという逸話を持つ物だ。王はその剣を神の時代を終わらせる為に引き抜いた。
「俺はお前と戦うつもりはない」
ルシフは聖剣に背を向ける。
「お前にその気がなかろうと関係ない」
王は自身の喉笛に剣を突き立てた。
「俺は未来を見ることが出来る……」
「だからどうしたというのだ? その結果儂が死ぬつもりがないなんて言うわけじゃないないだろう。儂は国のために死ねるぞ」
「俺だけじゃない、未来は誰にだって見ることが出来る。だがあんたはそれを捨てようとしている。死んで勝負から降りようとしている」
「なんと言われようと同じだ。儂は死ぬ……これ以上の問答など無意味だ。さらば――」
王は自分の首にある頸動脈をいともあっさりと切り裂いた。剣が地面にゆっくりと落ち、王はまるで時間の流れがゆっくりと流れるように地面に倒れる。
地面に流れたおびただしい量の血が王の死を物語っていた。
ルシフにとって王は別段死んで悲しむような存在ではなく、ちょっとだけ面識のあるおっさん程度でしか無い。だからといって、彼の死がどうでもいいわけではなく、やるせなく虚しかった。
「ダンダリオン……お前はこんな無意味な最後がほしかったのか?」
「無意味ではないさ……悪逆非道な王は処され、ここに新たな英雄が生まれただけのこと……後はどうするか君次第だ」
ダンダリオンは苦しそうにそうつぶやいた。
「悪逆非道……? 確かに王は手前勝手だったが、悪逆非道と言われる程のことはしていないだろう?」
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