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「3人目の仲間……いやどちらかと言えばそっちが2人目なんじゃないのか?」
そんな僕の言葉を聞いてシアが嬉しそうに笑う。
「それは嫉妬かしら? 確かに彼はあなたよりかは古い付き合いだけど、この会社に参加してくれたのはあなたが1人目よ。それでいいじゃない」
「彼ね。なるほど男か……」
僕はシアに聞こえない程度の声でそう呟く。
男となると最悪の展開だ。半殺しにされることはほぼ確定したようなものだ。面倒なことだが、新たにどうにかしなくちゃいけない問題が増えた。というか問題が山積みだ。こんな調子で、新しい環境でうまくやっていけるだろうか。ものすごく心配だ。
こんなことばかり考えていてもなるようにしかならいし、無駄なことを考えるのはやめよう。面倒くさい。
「まあ彼のことは明日紹介するとして、午後から清掃屋が来てくれるほとになっているから、私たちは今のうちに備品の買い出しとかをすませておきましょう」
「そう。午後から……って午後から!? 行動が早いとは思っていたけど、ここまで早いともはや恐ろしいぞ……」
「直感は女神のおぼしめしって言うでしょ?」
シアは当然のことであるかのようにそう言ったが、僕にはその言葉の意味が分からない。何となくニュアンス的には思いついたことはすぐにやれって意味だと思うけど、この世界ではスタンダードなことわざなのだろうか。
だとしたら、そんなことも知らないやつだと思われたくないし適当に頷いておくとしよう。
「それはその通りだが、僕のことを仲間だというならちょっとぐらいは相談してくれてもいいだろうに」
僕の苦言にシアはハトが豆鉄砲をくらったような顔をする。
彼女の中には、他人に相談するなんて言葉が1ミリ足りとも存在していなかったらしい。彼女は「確かにその通りかもしれないわ……」とほんの少しだけ反省した様子だ。
「でも、別にいいじゃない。そう言う事は徐々に変えていけば」
「軽いな……別にいいけど」
やはりシアはどこか考え方が緩い。
ある程度はきちんと考えて動けるようだが、その反面、フットワークも軽くて、成功しやすいタイプだと思う。
つまりは僕をこの上なく振り回してくれるという事だ。というよりも、すでに振り回されてばかりだ。
性格なんてものは長い年月をかけて形成されてきたもので、他人にとやかく言われたところで変わる事なんてことはほとんどない。表面上変わったとしても、それは本心を押し殺して自分を殺しているというだけのことだ。それじゃあ意味がない。個性を殺して、社会の歯車として生きて行くことなんて無意味だ。
そんなことをするよりかは、店の開業準備をする方が幾分か有意義だろう。そう考えた僕はとりあえず出かける準備を始めた。
「――それで、どこに行くんだ?」
適当な服に着替えながら僕はシアに尋ねた。
正直なところ、僕は店舗経営とか自営業とかをしたことがないから、何が必要なのかとか見当がつかない。というよりも、そもそもこの街についてそれほど知らないから、何が必要かが分かったところで、どこに行くのかなんてまるで見当がつかないわけだ。
そんな僕の全身をシアは渋い顔でなめるように見た。
「そのジャケット……私を意識したのかしら?」
どうやら僕の青みがかった上着が気に喰わないらしい。確かに、シアが好んで着用している赤いコートを意識したかのように思えるかもしれないが、もちろんそんなことを意識しているわけがない。
そもそも、僕がコーディネイトに何らかの思惑を持たせるとしても、それはおしゃれでなく、利便性と安価さだ。
だからシアの服に合わせたというわけではもちろんない。
ただ前金として受け取ったお金をあまり使いたくないという貧乏性と、それでも幾分か動きやすい服装でありたいという気持ちがこの服を選択させた。むしろ青色なんて派手な色の服は好みでないまである。そこに深い意味はない。だけど彼女の言葉を否定したところで、その根拠となる言葉が出てくるはずもなく、それを探すのは不毛にすら思えた。
「まあな」
「適当に流さないでよ。冗談なんだから。これじゃあまるで自意識過剰じゃない」
シアが頬を膨らませる。
冗談だったのか、だとすると彼女は圧倒的に冗談のスキルが足りていない。真顔でそんなことを言われて、それが冗談だなんて気が付くのはかなり難しい。しかし、彼女の表情から逆に考えると貴族の中では……もといこの国ではそれが常識なのだろうか。だとするなら僕はただの空気が読めないやつになってしまう。
なんて。もちろん、この国でそれが常識でないことぐらいを僕は知っている。家なしでストリートで生きていた僕にとっては、ジョークというやつは日常茶飯事に耳へと入ってくるのだ。貴族の文化だと言われたらそれまでだが、きっと貴族にもそんな文化は存在しない。していたとしたら、きっと僕はすぐに不敬罪になってしまうだろう。ジョークを普通に流してしまいそうだし。笑いどころが分からなくて、貴族の面目をつぶしてしまいそうだ。
なんて、これも僕なりの冗談だ。
「面倒くさい。この服は適当に買った。汚い服で服屋に長居は出来ないからな」
浮浪者としてずっと着用してきた服はかなり薄汚れていたし、僕の黒髪を見て店主には心底嫌そうな顔で対応された。僕はそんなこと別にどうでもいいんだが……僕と一緒に歩く人にとってはそうじゃないだろう。成り行きでなってしまったとはいえ、婚約者に恥ずかしい思いはさせられない。
「まあ確かに薄汚かったからね」
「ちょっとは否定してくれよ」
自分で言っておいてなんだが、シアに言われると何となく傷つく。
僕の格好が薄汚かったのは事実だが、同意するならもう少しオブラートに包んでもらいたものだ。僕はこう見えても繊細なんだから。
そんな僕の言葉を聞いてシアが嬉しそうに笑う。
「それは嫉妬かしら? 確かに彼はあなたよりかは古い付き合いだけど、この会社に参加してくれたのはあなたが1人目よ。それでいいじゃない」
「彼ね。なるほど男か……」
僕はシアに聞こえない程度の声でそう呟く。
男となると最悪の展開だ。半殺しにされることはほぼ確定したようなものだ。面倒なことだが、新たにどうにかしなくちゃいけない問題が増えた。というか問題が山積みだ。こんな調子で、新しい環境でうまくやっていけるだろうか。ものすごく心配だ。
こんなことばかり考えていてもなるようにしかならいし、無駄なことを考えるのはやめよう。面倒くさい。
「まあ彼のことは明日紹介するとして、午後から清掃屋が来てくれるほとになっているから、私たちは今のうちに備品の買い出しとかをすませておきましょう」
「そう。午後から……って午後から!? 行動が早いとは思っていたけど、ここまで早いともはや恐ろしいぞ……」
「直感は女神のおぼしめしって言うでしょ?」
シアは当然のことであるかのようにそう言ったが、僕にはその言葉の意味が分からない。何となくニュアンス的には思いついたことはすぐにやれって意味だと思うけど、この世界ではスタンダードなことわざなのだろうか。
だとしたら、そんなことも知らないやつだと思われたくないし適当に頷いておくとしよう。
「それはその通りだが、僕のことを仲間だというならちょっとぐらいは相談してくれてもいいだろうに」
僕の苦言にシアはハトが豆鉄砲をくらったような顔をする。
彼女の中には、他人に相談するなんて言葉が1ミリ足りとも存在していなかったらしい。彼女は「確かにその通りかもしれないわ……」とほんの少しだけ反省した様子だ。
「でも、別にいいじゃない。そう言う事は徐々に変えていけば」
「軽いな……別にいいけど」
やはりシアはどこか考え方が緩い。
ある程度はきちんと考えて動けるようだが、その反面、フットワークも軽くて、成功しやすいタイプだと思う。
つまりは僕をこの上なく振り回してくれるという事だ。というよりも、すでに振り回されてばかりだ。
性格なんてものは長い年月をかけて形成されてきたもので、他人にとやかく言われたところで変わる事なんてことはほとんどない。表面上変わったとしても、それは本心を押し殺して自分を殺しているというだけのことだ。それじゃあ意味がない。個性を殺して、社会の歯車として生きて行くことなんて無意味だ。
そんなことをするよりかは、店の開業準備をする方が幾分か有意義だろう。そう考えた僕はとりあえず出かける準備を始めた。
「――それで、どこに行くんだ?」
適当な服に着替えながら僕はシアに尋ねた。
正直なところ、僕は店舗経営とか自営業とかをしたことがないから、何が必要なのかとか見当がつかない。というよりも、そもそもこの街についてそれほど知らないから、何が必要かが分かったところで、どこに行くのかなんてまるで見当がつかないわけだ。
そんな僕の全身をシアは渋い顔でなめるように見た。
「そのジャケット……私を意識したのかしら?」
どうやら僕の青みがかった上着が気に喰わないらしい。確かに、シアが好んで着用している赤いコートを意識したかのように思えるかもしれないが、もちろんそんなことを意識しているわけがない。
そもそも、僕がコーディネイトに何らかの思惑を持たせるとしても、それはおしゃれでなく、利便性と安価さだ。
だからシアの服に合わせたというわけではもちろんない。
ただ前金として受け取ったお金をあまり使いたくないという貧乏性と、それでも幾分か動きやすい服装でありたいという気持ちがこの服を選択させた。むしろ青色なんて派手な色の服は好みでないまである。そこに深い意味はない。だけど彼女の言葉を否定したところで、その根拠となる言葉が出てくるはずもなく、それを探すのは不毛にすら思えた。
「まあな」
「適当に流さないでよ。冗談なんだから。これじゃあまるで自意識過剰じゃない」
シアが頬を膨らませる。
冗談だったのか、だとすると彼女は圧倒的に冗談のスキルが足りていない。真顔でそんなことを言われて、それが冗談だなんて気が付くのはかなり難しい。しかし、彼女の表情から逆に考えると貴族の中では……もといこの国ではそれが常識なのだろうか。だとするなら僕はただの空気が読めないやつになってしまう。
なんて。もちろん、この国でそれが常識でないことぐらいを僕は知っている。家なしでストリートで生きていた僕にとっては、ジョークというやつは日常茶飯事に耳へと入ってくるのだ。貴族の文化だと言われたらそれまでだが、きっと貴族にもそんな文化は存在しない。していたとしたら、きっと僕はすぐに不敬罪になってしまうだろう。ジョークを普通に流してしまいそうだし。笑いどころが分からなくて、貴族の面目をつぶしてしまいそうだ。
なんて、これも僕なりの冗談だ。
「面倒くさい。この服は適当に買った。汚い服で服屋に長居は出来ないからな」
浮浪者としてずっと着用してきた服はかなり薄汚れていたし、僕の黒髪を見て店主には心底嫌そうな顔で対応された。僕はそんなこと別にどうでもいいんだが……僕と一緒に歩く人にとってはそうじゃないだろう。成り行きでなってしまったとはいえ、婚約者に恥ずかしい思いはさせられない。
「まあ確かに薄汚かったからね」
「ちょっとは否定してくれよ」
自分で言っておいてなんだが、シアに言われると何となく傷つく。
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