境界線の知識者

篠崎流

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表裏の果実

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「見つけるのは難しくない」は翌朝、結果が出る事に成る

フォレスらの部隊で周囲を探索、追跡の結果、アノミアの召喚がテスネア本国の北東の山岳、麓の森で捉える

相手は召喚師や魔術士ではない、故に、先の事件から逃走を図ったが移動はあくまで自身の足、そう遠くまで行ける訳も無くあっさり補足され囲まれる事と成った

アノミアの報告からテスネア本国から南東森まで逃れた「彼女」を一定の距離から包囲、ターニャとフォレスが組んで、先行して接触する

そこからアノミアと、専門家でもある、ロベルタの騎士団が後続

が、現地に辿り着いて彼女に対面したが。もう既に、トーラも正常では無かった

深い森の奥、大木の袂に座ったままの彼女は、問うても何も反応しなかった。フォレスが眼鏡装備のまま近づき探査する

「やはりな、召喚器だ」
「どれ?」
「指輪、右手の」

そうフォレスとターニャで交わした所で彼女は目を覚まし。下を向いたまま、目だけフォレスらに向ける

「まだ‥居たか‥」

そう、ボソっと云ってヨロヨロと立ち上がり右手をかざした

「!、おい、よせ‥どんな引き換えがあるか分らんのだぞ!?」

そうフォレスも云って、彼女の右手を掴みに行き、止めようと動いた、が、彼女の耳にも入らず、もう眼には全て「敵」としか認識されなかった

掴みにいった手を払い飛ばされ、後ろによろめいた、次の瞬間指輪から術式が展開、黒い渦から召喚が果される

咄嗟、フォレスは後方に跳躍
距離を取って「ソレ」と対峙した

「何アレ!?」

ターニャも咄嗟に出る、驚きながらも「ソウルオブ・リメンバー」を抜く

「前後の事情を聞かねば真相も分らん、が、これは無理か‥」

そこでフォレスも見切った。即、荷物から剣を出し、ターニャに渡す、自身も指輪を嵌めて、整えると同時指示も出した

「ターニャはソレを使え、英霊とタッグでやるんだ、呼び出した奴を探査する!」
「う、うん」
「無理に勝たなくていい、後ろから味方も来る、時間さえ稼げば」
「分った!」とターニャは即座に英霊を呼び出す

「英霊の魂よ!」

ソウルオブリメンバーの剣闘士が召喚され、剣を取ってターニャの前に出る

相手の召喚も黒い渦から出てくる、それは屈強な闘士、盾と槍を構え、黒い騎馬に乗った、髑髏の頭、大男の見姿だった。即座にターニャは剣を構え、左に、英霊の剣士はそのまま「相手」に飛びかかった、髑髏の剣士も構え英霊の魂と合わせる

が、一方でフォレスの「探査」は30秒で済んだ、ある程度の予想と目算がついていた事にある、図書館から戻るのに時間は掛からない

「キマリスか‥が、これは悪くない‥!。ターニャ!」
「!?」
「純粋な魔系、魔人の一種だ、聖側の英霊とターニャなら極めて相性は良い、直接攻撃中心!英霊が打ち合えるなら参加していい。特殊能力も戦闘関連は「咆哮」「高揚」だけだ」
「わ、わかった!」

両者で交されて、同時に二人共行動、ターニャは英霊が相手と打ち合えている事を確認し直接剣の打ち合いに参加

フォレスはありったけの肩代りの石と杖を用意と共に、まず、ターニャに継続して続く、援護、回復魔法を先に掛ける

3対1、だが、相手も尋常でなく強い、英霊の魂でもやや武力で劣る程だ、剣を合せるが吹き飛ばされる、がソウルオブリメンバーは基本精神体に近く。無敵に近い、その為、即座に立ち上がり再び倒しにゆく

一方、ターニャもソウリオブリメンバーとそれ程武力差が無い。しかも武器はエンチャントであるが、魔族に特別な効果がある訳ではない

裂傷をつけても、相手の傷が即治る、その為、防御と避けに徹して言われた通り「時間稼ぎ」に終始する

「パパ!こいつ斬りの効果が薄いよ!」
「分ってる!‥被弾だけするな、味方が来る」

そう、したのもフォレスに手が無い訳ではない。が、彼のとっておきは制限がある、だから使うなら味方が揃ってからで良い

もう一つが、ロベルタの神聖騎士には洗礼の装備がある。それが来れば、やらずに済む可能性もある

更に三つが、この手の一時的召喚は相手が大物程、引き換え条件が要る、時間を掛ければ掛ける程、相手が時間切れで別界に引き戻される可能性もある、故に「時間を稼げ」なのだ

接敵、開始から3分。後続から最速で辿り着いたのはアノミア最も足が速い

「何者だ!?」
「ソロモンの使者、キマリス」
「‥よりによって軍将か」

云いつつも、自身もシャドウウルフを呼び出す。まともに戦う判断も無い、そもそも通常の武器が利くハズも無いし、相手は「武」特化の魔人だ

その為、同じ側の闇召喚だが、自身の召喚を使い相手の妨害を図った

更に五分、ロベルタの騎士団15人も到着、彼らも驚いていたが、むしろ意気は上がる

「ここが我らの力の使いどころ!」とクロス、シンシアと共に前へ

騎士団は選抜された神聖術士でもある、自身に其々「ブレッシング」や「ディフェンディング」の神聖魔法を掛け攻守を補った後、相手に突撃する

ここで明らかに「こちら側」の戦力が逆転して優位になる、如何に強いと云っても相手は一人だ、四方からの物理を防げない

いける、と思ったが、それでもまともに武器が通るのがソウルオブリメンバーのみだった

「ダメか!?」

そう、神聖騎士と術と言っても特化装備が特別な物で無く、所詮「こちら側」の物質、物理で打ってもそれ程の効果が無い

洗礼の武器、と言ってもかすり傷をつけて怯ませる、が精精だった、やはり「神剣」とは効果が段違い、そこいらのアンデットや悪霊なら兎も角「魔の格」が違いすぎた

群がる人間側にキマリスは乗馬する黒い馬と共に咆哮を挙げる、それで周囲に強烈な衝撃波が発生して全員吹き飛ばされ、距離を取った、取らされた

その一撃でアノミアの召喚も消失、全員、体制を整え再び構えるが打つ手が無い

「クッソ‥化け物が!」
「おい!フォレスどうにかならんのか!?」
「全員防御」
「は!?!?」
「ちっとの間でいい、俺が味方を呼び出す、我慢してくれ」

何だか分らないが「手がある」なら託すしかない。全員、英霊の魂以外の者は防御を固め、距離を取った

フォレスは杖を振って、頭の上、前方に術式を空中に描く、空中に描かれた円の召喚術式が光を放ち目視出来る形を作る、最後に彼はこう言った

「Δύναμις(デュナミス)」と

円の召喚術式の中から大きな白い羽を持った、黄金の髪の女性体が現れる、これには見ていた神聖騎士団も目が飛び出す程驚いた、知らぬハズも無い「天使!?」なのだ

が、フォレスに、それに応える時間も余裕も無い、必要な事だけを最短で行う

「魔と対する我ら英雄に、祝福を」

フォレスの呼び出した召喚は笑顔で応えて、頷いた。瞬間、騎士団、ターニャ、アノミアの武器に祝福、聖属性が付与され、太陽の様な、黄ともオレンジともつかない光を発する

「なな!?」
「長くは持たん、それで斬れる!急げ!」

そう云われ、全員一斉にキマリスに突撃、が、物理で斬れるなら苦労する相手ではない、キマリスは突き出される剣を五度、盾と槍で防いで残り、三度を体に受けて切り裂かれた

まるで霧が霧散する様に、体を通り
爆発するかの様にバンッ、と弾けて「奴」は消えた

「た、倒した!?」
「いや、死にはせん「追い返した」だな」

そう言われて一同も安堵してその場に崩れ落ちた

騎士団は半ば、ボーとしたままフォレスの上に居る「彼女」に傅いた、当然ではある、一生に一度、も見れない相手である

フォレスは終った事を確認して「彼女」に礼を払って頭を垂れる「彼女」も涼しげな笑みのまま小さく頷き、幻の如く、その姿を消した

「天使、ですよね‥」シンシアがそう問うた

ようやく余裕の出来たフォレスも説明する

「天使階級中級第ニ位。ヴァーチャーのデュナミス「輝かしき者」」
「あれほどの方を呼び出せるなんて‥」
「彼ら、いや彼女らかな、元々、天での役目は「地上の英雄に手を差し伸べ輝かせる者」だ、敵対する者が居れば、呼びかける事は出来る、そして応える事も、な」
「成る程‥、でも、天使等、呼んで呼べるモノでは‥」

シンシアやクロスの云いたい事は分っている。神仏を降臨させる、等、聖者の所業であると考えて居るのだろう、人と神の歴史では、そう大体表現、記録させる、が、勿論フォレスはそうではない

「皆勘違いしているがアレも一種の召喚でしかない」
「へ?!」
「今戦ったろ?、大物と、伝心や通常の召喚と実はあんまり変わらん、伝わるチャンネルと、行き来する扉さえ用意すれば、天の側の方が実は呼びやすい」
「し、知らなかった‥」
「つっても呼び出すには条件と手法が其々違う、魔の側は精神とか物質とか、天の側は「理由」か「資質」が居る、天敵、対する者、英雄とかな」
「成る程‥だからこそ、今なんですね」
「そ、特殊な条件下、無闇やたらに力を貸してはくれんさ。元々、天の側、種族に寄って常に人を見ている役目の者もいる、だから今、魔人と対した我々には力を貸せる」
「ああ‥故に「実は呼びやすい」なんですね?」
「そういうこと、オレは神の使徒でも聖者でもない」
「が、素晴らしい物を見せて貰いました、これは一生の思い出ですね」

クロスも周囲の騎士団も全く同感である
何しろ「歴史や物語で見聞きした奇跡」を体験したのだ、自分らが

「さて、問題は‥」とフォレスも道具を仕舞って召喚主に歩き膝をついて屈んで調べる、が、既に「彼女」は中身が無かった

「どうなったの?」
「残念ながら、命を吸われたな」
「!?」
「死んだ?のか」
「‥そうだ、召喚器があるつってもやたらと連続で呼び出したからな、対価無しで呼べる様なもんじゃない、結果、引き換えに命をとられた、詳しく調べんと分らんが、多分そういう事だ」
「そっか、真相は闇の中か」
「今の所推測でしかないが、急な天候の変更や災害、災厄、これらはこいつのせいだろうな」

フォレスは説明しつつ、トーラの右手人差し指のリングを外す

「何なんだ?」
「それも調べてからだが、呼び出した連中に統一性がある。オレらが見たのが二回「フュルフュール」と「キマリス」どちらも、ソロモン王の72柱の一つこのリングも多分ソロモンの輪だろうな」
「それは?」
「召喚器には違いないが、呼び出せるは72柱のみ限定した物だ、結構魔力があることから、充填と召喚を繰り返すもんだろう無闇に連打しなきゃ多分、死ななかったろうな」
「ターニャのソウルオブリメンバーとは違う?」

「どっちかと言うと、カハル事件に近いモノだろう、呼び出すチャンネルとルートを其々の手法で繋げ、指輪の魔力である程度召喚を操る、先の森の火計の風、首都での裏切り者の惨殺、今のオレらの相手、これら短期で連続で使った事で指輪の魔力で足りなくなった」
「それで変わりに命を、か‥」

「これも憶測だが、彼女はアデルの為に何らかの方法で手に入れたこいつを事有る毎に使った、それで裏からアデルの野望を手助けした、こんな所だろうなぁ‥」
「アデルの所に味方が踏み込み、殺した、その場に居た彼女はそれを見てタガが外れ全員召喚を使って殺し、今に至る、か」
「現場の情報からすると、多分な」
「しかし、彼女は術士じゃないが、何故使い方を知ってる」
「ふむ‥」とフォレスはそのまま指輪を自身がつけてみる

「お、おい‥危なくないか?」
「ああ、こいつは説明書付きだ」
「へ?」
「装備すると頭に使用法が流れ込んでくる」
「なんと‥」

フォレスはそれを外し、小さい袋に放り込んで封をして立った

「まぁ、物騒なモンには違い無い、ただ、本人が死んでいるので、どう手にして、どう使った、意味も理由も憶測でしかないな、兎に角、こいつは封印か破壊しよう」
「うむ」
「しかし、事情を伝える訳にもいかんなこりゃ」
「それはまあ、信じられん話だしなぁ」
「つーわけで、この一件はオフレコで」
「う、うん」
「そもそも、中央の乱とは一応関わりは有る、とは云え歴史を動かす要素でもないしな」
「まー、アデル本人がやってたならそうだが、多分彼女だけでひっそり裏からやってたんだろ、アデルが知ってりゃもっと別のやり方がある」
「だろうな」
「兎に角、全部終った」
「ああ」

「彼女はどうします?」
「‥オレらが逃走した彼女を追撃、抵抗から戦闘、彼女は死亡とするしかないな、ま、兎に角‥埋葬してやろう」
「そうですね、では我々が預かりましょう」
「頼む、クロス」
「はっ」

こうして一連のテスネア中央の乱の「裏」は片付いたのである、真相は闇の中、部分は追調査で半分の事情は明らかに成る

トーラは元々この国の人間ではない、戦火から逃れ、テスネアに逃れて来た人間、そこで彼に拾われた最初の「部下」だった

それへの恩なのか借りなのか、どう入手したのか分らないがソロモンの輪を使い、アデルの目的の後押しを続ける、あくまで、彼の為だけに、ひっそりと

これは最後まで彼の身を保とうと動いた事でも明らかであった、これらの事情と召喚器の事は連合側、極一部のみ情報共有される

フォレスと裏の戦いで実戦闘に関わったターニャ、アノミア、ロベルタの騎士団、クロス、シンシア、グランセルナのエミリアとメリルとロッゼと成った

隠匿するモノでもないが、知らせた所で結果にそれ程違いが無い、それに、理解し難い話でもある故に、そういう流れに成った

そして終ったのは「単に裏だけ」の話であって表の部分はまだ続く

表、の部分も事前にフォレスと東軍とで交された書がある、それ程、もめる訳では無い

フォレスらは一連の裏の事態を片付けて、テスネア本国首都に滞在する連合主軍と合流、翌日には、北、東、連合とでテスネアの城での会議と成ったが、ここも方針は明確であっさり決まる

つまり「テスネアの二国は北と東で分配」である、アチラ側も「ホントに宜しいのか!?」と言ったが当初の方針通り、乱が終ればそれで良く

そもそもフォレスにしても、中央北東二国など貰ってもあまり意味がない、統治も遠いし、任せる人材も無駄だし、孤立地もいいところだ。ただ、交換条件的に以下の条件を呑ませた

テスネアの残った兵は一旦解放し、民の生活に戻す事、改めて志願するしないは、其々の統治国が行うとする

降伏した唯一の大軍将でもあるベステックはグランセルナ側が引き取る、処分の類は任せる事である

それでさっさと統治を譲って、連合側フォレスらは全軍ペンタグラム側へ撤退、唯一の戦果とも云えるテスネア南のリム城砦があるが、これも東軍に譲る

春、四月には其々の連合、責任者や指揮官も本国に戻り、グランセルナ一行は、一時ペンタグラムに滞在した先の形も有る程度出来ているが、やはり明確な形は作らなければならない

ここでベステックと彼に最後まで付き従ったリバースクロスのメンツ百名も開放する事と成った、同時、エミリアはこう切り出した

「私の下に成るが、その武力を活かさぬか?」と、ベステックはこれを断らなかった

「貴女に敗れた者が貴女の下で働くのに何の躊躇が要りましょう」

そう返して、彼の部下もそのままグランセルナの一角と成る、其の形にしたのも勿論、エミリアの希望もあったがペンタグラムの事もある

ペンタグラムを自立させ、再び統制地として活動させる為には過去に云った通り

「政治、軍事、経済」の何れかの力は要る

つまりガーディアンの立場の有るなしに関わらず、単身で「世界」と渡り合える力はどれかしら要るのである、で、無ければ、また中央での乱が繰り返されかねないが、ガーディアンと形は当面、残す事と成った

フォレスはペンタグラムが独立しても大丈夫な所まで力を取り戻せば

この立場を返すと考えたが、それは成されない、一つにペンタグラムに優秀な軍将が出なかった事、世界はまだ乱の最中であり、数年は油断出来ない状況であった

ここにペンタグラムのガーディアン、駐留軍、と将にエミリアとベステックを充てる。これに、インファルやメリルを交換で補佐を送る形におさまった、ただ、それも「数年」だろう

明らかに成らなかった、トーラの一件と裏もベステックに明かし、聞く事になるが彼もアデルとトーラの関係にあまり干渉しておらず有益な情報の類は無く、進展は薄かった

「陛下が12の頃、拾った異国の娘かと、それから身の回りの世話も含め常に一緒に居た」
「確かに、決戦前にオレがグランセルナ連合の木材武装の弱点「火」を進言しトーラが「どうにかなる」とは云っていたが、まさか召喚とはな‥」

と、彼も驚いていた事からベステック自身は事に関知していなかった

「おそらく、アデル陛下はその事を知るまい、知っていれば、こう追い込まれる前に別の使い方があったハズ。尤も、アデル陛下とトーラがお互い了承の上で裏を展開したとしても陛下は使わせなかったろう」
「それは?」
「アデル陛下は自身の実力と才能に自信を持っていた、確かに覇者かもしれぬが、姑息とは違う」
「そうだな、実力に確信があればあるほど、それ以外に頼るのは自尊心、プライドが許さないだろう」
「オレにしてもそうだ、武を持って示す、そうして勝たねばそもそもオレが存在する理由も意味も無い」
「ズルをしてと云えるかどうか分らんが、召喚器を使って、裏で勝ったとしても何の充足感も満足感も無いだろうな」
「そういう事だ、第一、それは一時的な事で終るし陛下は納得しないだろう、勝てば何でも良い、を平気でやれるのは偽者だけだ」

結局の所、アデルも裏を知らなかったのだろう。これもフォレスの見解「裏でひっそり」という様に、あくまでアデルの目的を見、彼女が個人的範囲で動いただけだ

其々が其々、アドリブ的要素で結果的に偶然、連動していたに過ぎない

もう一つがソロモンの輪だが
これもフォレスの調査の結果、先の憶測の通りであった、作られた年代は古い、が、別界の物質の類で無く、ターニャのソウルオブリメンバーとは明らかに違う

図書館を調べた所、「ソロモンの輪」は歴史上何度か登場しており、大昔から現存するモノだと分った、人の歴史の初期からあり、手相術にも記録される程有名だ

したがって「どこか遺跡の類からの出土品」と決定付けられ、フォレスが封印を施し、ペンタグラムの宝物庫に納められ厳重管理される、これで「裏」の部分は全て整理をつけて、終らせる事と成った

後の策、の部分だが、それ程大胆な何かは必要ない、既に、ペンタグラムの「道」は整えた、守って固い施設と、魔の干渉を防ぐ結界も置いた

後は時間と共に自然強化が進めば、元の、統制管理や、派兵に寄る抑えも利く

「ガーディアンだとしても、ペンタグラムに何でも干渉は不味いな」
「そうねー、防備と、内治の土台は用意したし後は少しづつ当地の人に任せた方がいいわね」
「それに、ペンタグラムを後ろから操っているという印象は残りますし、最終的にはガーディアンの立場も外していく事になるでしょう」
「うむ、後の事は後の世代がやるべきだろう、オレらが、全部宿題を片付けん方がいい」

フォレス、インファル、メリルはそう述べて
繋いだ手を、少しづつ離して行き、立たせる方針を見せる

「自分の足で」

連合全体も過保護干渉はせず、グランセルナに戻る事と成った

翌年夏の終わり頃にはフォレスは驚きの行動を取った、グランセルナの君主の座を、さっさとターニャに譲って一線を引いたのである

「既に中央から南半分は安定しているし、もう、無意味な乱も無いだろう」

それと

「これまであんまり会ってやれなかった、ロッゼらにも寂しい思いをさせた」とし

マルギット共、正式に婚姻の式を行いまだ30前半だが、早々に隠居というか、大御所的な立場に落ち着いた

その旨を住民らにもきちんと伝達し、一応「選挙」の形を取ったが大方の住民はこの決定を支持して、グランセルナの第二代目君主にターニャが推挙通りついた

システム上、王政だが途中解任権も住民にあるし、ターニャの人気と知名度はグランセルナに収まらない、また、フォレス王がそうしたいなら、と、理解を示す者も多く。依然、大御所の様な立場で政の部分は関われるので次世代にそれ程不安部分は無かった

そこから暫くは3国を移動しながら妻や子と交流を図り、自身はたまに帰っては自室で研究の毎日と、悠々自適な生活に「戻った」のである

そう、彼は最初から最後まで何も変わらなかった「毎日、平和で寝て過ごせるならその方がいい」に

後事を託されたと云うか、押付けられたターニャやメリルの若い責任者も、立場が変わっただけで、やる事に変わり無かった

元々若年にして国家や連合の重要な位置と仕事を担っていただけに、やる事がそれ程変わる訳じゃない

それもフォレスは、ある程度目算があった
「トップがやたら何でもかんでも忙しくしていると下が育たない」という事を知っているのである

一つ変わった事と言えば自ら王の立場を引いた事から、自身がグランセルナ本国の学術施設の教師も始めた事である

「メリルやターニャの件で分ったが、後を任せられる者を早期に見つけて育てるのは悪くない、組織にしろ集団にしろ、優秀で誠実で良識のある者を集めれば集める程、平和で、幸せな世界を作れる」
「オレは案外、人に何かを教えたり育てたりするのが向いているらしい」


秋の終わり
一度だけロッゼ、神聖騎士の護衛と共に、テスネアの本国のアデルの墓を見舞った、そこでどうしても、云わざる得なかった

「あの時、いや、どのタイミングでも良い、こっちの会談を受けてくれれば、な」

終って久しい事、ではあったが、そう思わざる得ない

「陛下は最善を尽くされました、彼は共存を望まなかった」
「そうだな‥、あの時こうしていれば、は、驕りというものか」
「けど、歴史は繰り返した」
「うむ‥覇者に相応しい、同じ終り方、か」
「ですが陛下は、予防を沢山しました、南半分はこれからも、争い少なく、民衆の平和と安定は続くでしょう」
「予防か、確かに」
「陛下はこれからどうされるのですか?」
「変わらんさ、手の届く範囲の、身内の生活を守るに尽力するそれだけ」
「そう、それにしても」
「ん」
「結局彼には、そういう終りしか無かったのでしょうか」
「うーん、結局、世の法則は正しく作用した、そういう事かな世に本来専制者など要らぬのよ」
「そう、なんでしょうか?」
「人は人の生活をする、それ以外必要無いのさ、君主などおらんでも人の営みは変わらぬ、人居らず君主等意味が無い」
「結局、そこに集約されるのですね」
「そうだな、やはり、だからこそ名君も愚君も他者からの反応で先も後も左右される、だから俺たちはなるべく、国民の害にならない君主でなくてはならない」
「彼にはそれが分らなかった」

「歴史上の多くの為政者はそうさ、主従を履き違えた愚者のなんと多い事か、何しろ、食わせて頂いている、のはオレらの方だしなどっちが主かなんて明白だ」
「確かにそうですね」
「これは、政治に限った話じゃない、他人のテリトリーを土足で踏み込み、荒らせば、必ず反撃を誘う、それを多く行う、覇者、独裁者ほど反撃を食らう頻度が多い」
「考えてみれば当然ですね‥」
「そうな、他人を罵ったり、手を上げたりすれば、当然其の分嫌われる、そりゃ自然、反撃されて殴り返されて孤立するのは当然さ、だから愚者や暴者は大抵不幸にしかならない、それが「代表者」ともなれば良愚の行動で影響を受ける人間が比較にならない」
「そう扱いを小さくして考えると判りやすい」

「うむ、実は単純明快な事さ、所詮、社会てのは、多くの他人の集団の中での事、つまり「人間社会」な訳だ。多くの人の平和に寄与すれば幸せに、そうでなければ逆になるそんだけ」
「陛下が幾度か仰った、他人に嫌われながら生きるのはまっぴらだ、は結局そういう事でしょうか」
「大元の所はそうかな、つまるところ「多くの他人から見た評価」とも云える、オレが暴君ならロッゼも好きに成らなかったろ?」
「なるほど‥」
「俺の場合性分だが、考えてやってるという訳でもないが、そこまで器用でもないしな、単に面前の事例を見過ごせないというだけの事、多分、ロッゼもそうだ」
「例えば、トロントの様な例でしょうか」
「だな、ロッゼはトロントの住人を捨てなかった、それは計算じゃない、計算なら捨てた方が楽」
「ええ、捨てても状況が悪化する、とはもちろんありますが、それ以前苦境にある無辜の民衆を捨てる事は出来ませんでした」

「そういう事だ、事の善悪なんぞ、見る側の立場で変わる事もあるが、圧倒的に万人から支持され聖者とされるのは「心」の部分だ、どれだけ他人の為に尽くしたか、これは誰も好感を持ち否定出来ない」
「そうかも知れません」
「アデルは結局、そういう部分が足りなかった、主眼を自分の為としたか、誰かの為としたかだな。優しく手をかけ、育てた果実は多く甘い、それは自身の為だけの手間ではない」
「なるほど‥」

ロッゼはフォレスの手を取って切り替えた

「寒く成ってきましたね、戻りましょう陛下」
「ああ、また、つまらん事を言ってしまったな」
「いいえ、何時も新しい発見があります」

そうして夫婦は、自分らの帰るべき家へ帰る

そう歴史は繰り返しただけだ、そして得た物は「世界」南半分の永遠ならざる連合内の平和、だけである

何年か、何十年か、人にとっては長いと云える、そうで無い者からとっては、瞬きの様な期間の、一時的、限定的な平和。でも彼にとっては、それで十分満足な結果だった

自分の様な、流浪の術士如きが国と妻と子、信頼する多くの仲間や友人を得た、それは、彼にとっては「人間」の生涯では十分、幸せで十分、余人に成しえない偉業だったろうか

そして「彼」と関わった者、連合の君主や民にとっても幸せな事に違い無い、飢えや貧しさ、戦や暴力での支配に怯える事も無く「生きる」事が出来るのである、極めて穏健で、公正な治世によって

たったそれだけの事すら、出来た者は稀であり彼は、優れた「結果を出した」と言えるだろう

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その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

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うちの冷蔵庫がダンジョンになった

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一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

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