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国の行く末10
しおりを挟む仮面の男の正体に気づいたのはレイルだけではない。姉であるアリアもそのよく知っている声に驚いていた。
これはどういうことだ。なぜあいつが向こうにいる?
それにルイ王子を擁護するのも解せない。
仮面のせいで表情は読めないが、もしかして仲介しているのか?
戦争回避のために・・?
確かに人質をとるのも手の一つだが・・・
「レイル国王・・」
名前をルイ王子に呼ばれて意識が引き戻される。
ルートを見れば口角が上がっていて、これはしてやられたと思った。
やっぱりあいつはこういう時、頭が切れる。
「・・・よかろう。その件を受けよう」
レイルの言葉にハイム国王は驚愕する。
まさか、こんな条件を呑んでもらえるとは夢にも思わなかったからだ。
「レイル国王、よろしいのですか?」
「ああ、余も戦争はしたくないからな・・」
ぱあ――っと明るい顔になったハイムにルートもホッとする。そしてルイ王子の行動に感服する。
「ありがとうございます。レイル国王」
再び頭を深く下げるルイ王子にレイルはルートとの関係を聞きたくて仕方がなかった。
サラ王女もホッとしてのか顔色も戻ってきているし、あとは国王同士で話をつめるだけだ。
「ところでルートはこの後どうするつもりなのかな?」
「・・・・・・」
眉をピクピクとさせているレイルとルートの親し気な会話にハイムは首を傾げる。
「えっと、もしかしてお二人は知り合いなのか?」
「・・・・・ええ」
「え、ホントに?・・・あ、だから任せろとおっしゃったんですね」
「そうだ・・」
「え、でも・・」
でもだったらこの不穏な空気は何なんだろう?親しいならもっと嬉しそうにしてもいいと思うんだけど。
ルイ王子の疑問は無理もない。
「ルート殿?」
「・・・私の伴侶は不貞を働いたんですよ。だから私は家を出たんです」
な、何を言い出すんだ。
「ふ、不貞っ!」
「バカを言うなっ!オレはそんなことはしていない」
「はあ?あんなに鼻の下を伸ばしておいてか?」
「伸ばしてなんてしていないっ!」
「ウソをつくな!リリアが言ってたぞ、レイル様と結婚するって・・お前もその気だったんだろう?」
「それは誤解だって、わかっているだろうがっ!」
「フン!どうだか!お前も男のオレより女のほうがいいんだろう?だからオレを放っておいた。違うのか?」
ちょっと待て!誰だこいつにそんなこと吹き込んだのはっ!
「違うって言ってんだろうっ!」
「オレは・・オレはお前がイヤになったんなら離縁してもいいと思っている」
イヤイヤイヤ!ホント何を言い出すんだ?離縁なんてできるはずがないだろう?
「待てって・・」
「少し前までそう思っていた。だが、隣国に行ってルイ王子にあって考えが変わった」
「そ、そうか・・」
良かった。考えが変わって・・
「だから戻って来た。戦争はダメだと思ったからな・・」
「アラン・・」
「だが、お前のことは許してない」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
ええ――っ!何でそこでそうなるんだ?オレは不貞なんてしてないのに許さないってそれはないだろう。
ああ、泣きたい!思えば親書を持って来たから手厚くもてなしてたけど、あの女のことなんて部下に任せておけばよかった。仕事もセーブしてアランに会いに行けばよかった。せめて食事だけでも一緒にすれば良かったんだ。そうしておけばこんなに不安な気持ちにさせずに済んだのに・・
「アラン、オレが悪かった。許してくれ!護衛も側近も今選択中だからもう少し待っていてくれないか?」
「・・・・・・・・」
「アランっ!頼む!」
いきなり目の前で始まった痴話げんかにアリアは「何も今ここでしなくてもいいのに」と小さく呟きながら頭を抱えた。
そしてハイム国王たちはというと―――・・
「えっと、まさか・・ルート様って?・」
「ええ、彼はアラン。この国の王妃よ・・」
「え、ええええ――――っ!!!」
と、驚きの声を上げたのだった。
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