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しおりを挟むはあ、はあ・・・さすがに全力疾走はきつい。しかし一位の生徒は早かったな。さすがに運動部だけにことはある。
一位の旗に下で座っている生徒をこの目で褒めたたえたくなった。
だから、声をかけようと近づいて行ったら振り向いた彼とバチッと目が合った。勇人は何の気にも留めず反射的にほほ笑んだ。ホントに何の意味もなくだ。そしたら、彼は勇人が声をかける前に顔を真赤にしてコテンと倒れた。
「え・・?」
何で、どこか調子が悪かったのか?慌てて彼に近寄り抱きかかえると薄目を開けてボーっとしていたので、勇人は額に手を当てて熱を確認した。
その行動にどよめきが起こり、彼は目をバチッと大きく開けて飛び起きた。
「ゆ、ゆゆゆゆゆ・・・ゆう、とさ・・さ・さま?・・・・な、なにを?」
言葉に詰まりながらも何とか言葉を発した彼だが周りの視線は鋭く嫉妬で殺されるのかとドキドキした。
「何って、倒れたから・・心配になって」
「ししししし・・・しん・・ぱい・・して・・くださったのですか?」
「ああ、だって目が合ったと思ったら突然倒れたから・・」
心配してくださった?この私を・・?
クラスメイトの行動に不満を持っていたので友達らしい人は少なかった。親衛隊だってそうだ。こっちの気持ちを考えず友達との交流をよく邪魔されてうんざりしていた。
だからこうやって面と向かって心配したなどと言ってもらえたのは久しぶりだった。
う、嬉しいっ!
ただそれだけの感情だけど、彼にはじゅぶんな言葉だった。
気分が高揚して、心臓がばくばくと煩かった。
「あ、ありがとうございます。もう、大丈夫ですので・・」
そう言って立とうとしたが、腰が抜けて立ち上がることができなかった。
「やっぱり・・大丈夫じゃないだろ」
勇人はこれ以上具合が悪くなるのはよくないと判断して彼を抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこという奴だ。
「ふぇ・・?」
「ごめん、すぐに救護室に運んであげるから」
「―――っ!」
ゆ、勇人さまが僕をお姫様抱っこ―――っ!!
「「「「ぎゃああああああああああああ―――――――っっっ!!!!!」」」」」
「「「「イヤああああああああああああ――――――っっっ!!!!!」」」」
グランドの外にいればまだマシだったかもしれないが、百メートル走の最終でしかもグランドのど真ん中でやっていたので全校生徒の注目の的になり一般生徒だけでなく親衛隊も巻き込んで悲鳴の嵐が巻き起こった。
「あのバカっ・・・」
無自覚とは恐ろしいものである。
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