最低で最強な亜神の弟子になる‼

きょーま(電傳)

文字の大きさ
1 / 2
序章 崩壊

プロローグ

しおりを挟む
「お前、何の真似だ?」

 核戦争崩壊から253年。残された人類と技術が寄せ集まり、形成されてきた大都市。その中心部にある高層マンションの一室で、一つの事件が起こった。それは一人の兵器研究者の男性が、息子の手によって殺害されたというもの。

「ふざけた事は止めろ。今すぐに」

 それはある日の夕暮れ。街の発展と世界の復興に勤しむ人々が業務を終え、交通機関が慌ただしさを増し、繁華街に明かりが灯る。そんないつもと変わらない、復興都市の一日の終わり。
 夕陽に照らされた幾つもの摩天楼の中に紛れる、一棟の高層マンションのある一室。橙色の眩しい光が差し込む広いリビングで、大きな影と小さな影が、互いの未来を賭けて対峙していた。

「───ッ‼それをこっちに向けるな。 早く下ろせ ‼」

 黒光りする、消音器サプレッサーのついた自動拳銃。その小さな銃口を、ボロボロの服を身に纏った少年が、スーツの上に白衣を羽織り、四角い眼鏡をかけた男に向けていた。
 少年の体には新しい物から古い物まで、無数のアザや切り傷があった。酷く惨めで、高給取りの息子とは思えないような風貌。だがそうしたのは、そしてこの状況を作り出したのは他でもなく父であり、少年の唯一の身寄りであるこの男だったのだ。

「下ろせと言ってるだろう‼」

 男は凄みを効かせた、部屋全体に響き渡るような大声で怒鳴った。常人なら、大人でも飛び上がってしまいそうな迫力。
 だが少年は聞こえぬとでも言うように表情一つ変えず、機械のような無駄の無い動作で銃の安全装置セーフティーを解除し、遊底スライドを引いて本体を構え直す。

 「おいっ‼止めろと言って──」

 男はそう叫び、右手を前に突き出した。が───


 トスッ────‼


 こ気味のいい、サプレッサーによって極限まで削ぎ落とされた銃の発射音。
 排莢口から飛び出した空薬莢は、小さな金属音を立てながら大理石の床を跳ねて転がり、やがて部屋の片隅で止まる。そして微かな硝煙の匂いが、二人の間に漂い始めた。
 少年は銃を構えたまま動かず、男は半歩後退って自分の体を見下ろした。男の目に映ったのは銃弾が衣服を焦がし、突き抜けて自分の胸に空けた小さな穴と、そこを中心に白衣がじわじわと赤く染まってゆくところだった。

「き、貴様───」

 眼鏡の奥で憤怒していた男の表情は、瞬く間に驚愕と恐怖の入り混じったものへと変貌した。そして数秒遅れてやってきた焼けるような胸の痛みに、両手をあてがう。手の平から伝わるヌルリとした生暖かい感触と、指の合間から止め処無く零れ落ちる液体が何を意味するのか。男は直ぐに理解した。
 自分はこのまま、出血多量で死ぬのだろうと。
 だが、それは男の短絡的な考えであった。少年がこれまで耐えてきた苦痛と屈辱。それに対する恨みと憎しみが、一体どれほどのものだったのか、男にはまるで分かっていなかったのだ。
 少年は閉ざしていた口を僅かに動かし、消え入るような、小さな声で言い放つ。

「これで───終わりじゃ─────ない──────」


 トスッ──トスッ────‼


 その言葉の意味を理解する前に、引き金が二回引かれた。
 胸に加えて右肩。そして左足に弾丸を撃ち込まれた男は、声にならないような悲鳴を上げて激痛に身をよじり、床に崩れ落ちて体を縮み込ませた。

「かっ────かはっ──────」

 込み上げてきた血の塊を吐き出し、弱々しい喘ぎを繰り返す。手足は小刻みに震えてまともに傷口を押さえる事もできず、痛みのあまりに意識が飛んでしまいそうであった。だが、沸々ふつふつと沸き上がる怒りは収まることなく、立ち尽くす息子の姿を恨めしそうに、睨むことだけは止めなかった。
 少年はその視線に気づくと、血みどろで死にかけた父の姿を見下ろした。そして感情のこもっていない、まるで心の無いロボットのような目で、その目を見つめ返した。
 その冷たい視線に、男は改めて恐怖した。こいつは人間じゃない。人に銃弾を撃ち込み瀕死に追いやっても何も感じない、人間の皮を被った悪魔だと。
 自分のしてきた息子への惨い仕打ちを棚に上げ、そんな愚かな考えをしていたのであった。少年をこのような人間にしてしまった張本人が自分自身であると、死ぬ間際になっても、自覚する事は無く。
「クソ────が─────」言い残したその言葉と息子に向けられた怨念が、この男の下劣さを、浅ましさを物語っていた。

 少年は、目を見開いたまま血溜まりの中で動かなくなった父の姿を、しばらく見つめていた。自分でも今の気持ちが分からなかった。たった今、自分が人を殺したという実感が湧かないのだ。それはこの男を親として、人間として認識していなかったからなのか。それとも自分がただ非常識で、非人間的でおかしいだけなのか。それすらもよく分からなかった。
 だだ、確かな事は一つある。それは今自分は生きていて、自由を手に入れたということ。もう目の前にはなんの障害もない。自分を縛る者も、否定する者も、危害を加える者もいない。そう、自由が。
 それを再認識した少年は父の亡骸から視線を外し、奥にある、内鍵の掛かった玄関扉に目をやった。

「自由───」

 そう呟いた少年は夢中で男の死体を漁り、血にまみれた鍵をポケットから見つけて取り出した。そしてそれを固く握ったまま、扉に吸い寄せられたかのように、いつになく軽い足取りで玄関に向かって歩き出す。
 これまで自分を捕らえてきた監獄の扉の向こう側。
 外の世界に向かって。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

処理中です...