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僕の大好物
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僕は猫又ラルルッチ。好物はサンマと高級ホタテなのにゃ。
それにこのサンマ、丁度旬の上物。
おいしそうにゃる。
「ほら、今は丁度寒くなる季節。子は畑仕事に行ってるから、2人でゆっくりサンマを食べながら、いろいろ話そうな」
「う、うん……」
この男、口調は実に穏やかになっているが、目元が潤んでいる。
平常を装っている、いや、昔の実に穏やかだった家庭の頃を思い出しているのか。
「焼けたぞ、京子」
こいつ、当り前のように幽霊が食べ物を食べると思っている。
僕、猫又ラルルッチは肉体を持つ高級妖怪だから飲食するけど、
普通幽霊は物を食べないぞ……
「茂、私と会えてそんなに嬉しいの?」
「嬉しいなんてものじゃないさ。病弱な身体に鞭を打って、2年間、あの神社に通ったんだ。子にはそんな妄想はやめろと反対され続けたけど」
「そりゃぁ……、いや、本当に私に会えると思って来てくれるなんて。そう言えば、子供って……」
「ああ、息子はなんとか命を取り留めたぞ。大切な1人息子、お前さんが亡くなった後、ずっとこの家の宝として育て続けた。だけどごめん、良いものはあまり食わせてやれてないんだ」
この家はどうも貧困に悩まされているようなのにゃ。家の壁は、どこからか外の風が通るほど、ぼろく、修理されていない。
さらに、この家庭は病弱なこいつと、息子の父子家庭。大正時代には珍しく、親族も暮らしてはいないようだ。
「病弱な俺に代わり、息子が頑張っている。だけど、今心配なのは、俺に残されている時間が少ない事だ」
「茂、お前のそのやせ細った手足と、枕元に置いてある薬。病気なのか」
「ああ、元々病弱な身体だが、1年前より悪化してしまってね。医者には残り僅かな命と言われているよ。もって2年かな」
「2年……」
ただでさえ貧困な家庭だ。そんな父子家庭でこいつが死んでしまったら、息子はどんな肩身の狭い人生を送ることになるか。
「そんな身体で、神社に通っていたのか、茂……」
「ああ。京子に会えることを願って、通い続けたさ。だけど今日、それが叶った」
「私に会いに来てくれるなんて、本当に嬉しいよ、茂。だけど、息子には内緒にしておくれ」
「どうして話しちゃだめなだ、京子。息子もお前に会えたら嬉しいだろうに」
「会いたいけど、会えないの。神社に通って、会いたいと誓ってくれた茂には会えるけど、他の人間にこの姿を見られてしまうと、私、消えちゃうの」
「そう、なのか……」
全くの嘘である。他の人間に僕の京子に化けた姿を見られても消えはしない。だけど、この家庭はちょっと問題ごとが多すぎる。
子供にこの姿を見られて、厄介事になっても困るにゃ。
だから、ここは茂に口止めをしておこう。
「そうだ、京子。ちょうどサンマが焼けたぞ」
わ、美味しそうなサンマにゃる!
丁度旬のサンマの焼ける匂いは、非常に香ばしいのにゃ!!
「ほら京子、口を開けて」
「え、ううん」
「はい、あーん」
美味しい!ちょうどキツネ色に焼けたサンマが、旬の上物なだけあって、油が乗ってて美味しいにゃる!
「美味しいよ、茂!」
「そうだろ京子ぉ」
「もっと頂戴!」
「いいぞお、一杯食べておくれ」
美味しい、美味しい。いつもは神社の小汚いネズミばかり食べてたから舌が鈍ってるけど、久しぶりに美味しいお魚を食べれたのにゃ。
「美味しかったか、京子」
「うん、美味しかったよ茂。そう言えば、茂はサンマ食べないの?」
「ああ、俺はいいんだ。今日の夕ご飯にとっておいたもので、後は息子の分しかない」
「そう、なんだ」
「そうだ、今度京子は何が食べたいかな」
「そうだなあ、高級ホタテなんて食べてみたいなあ」
「はは、全く京子は。今はお金が無くて買えないけど、またいつか家族で食べれるように、買ってやるからな。約束するよ」
それにこのサンマ、丁度旬の上物。
おいしそうにゃる。
「ほら、今は丁度寒くなる季節。子は畑仕事に行ってるから、2人でゆっくりサンマを食べながら、いろいろ話そうな」
「う、うん……」
この男、口調は実に穏やかになっているが、目元が潤んでいる。
平常を装っている、いや、昔の実に穏やかだった家庭の頃を思い出しているのか。
「焼けたぞ、京子」
こいつ、当り前のように幽霊が食べ物を食べると思っている。
僕、猫又ラルルッチは肉体を持つ高級妖怪だから飲食するけど、
普通幽霊は物を食べないぞ……
「茂、私と会えてそんなに嬉しいの?」
「嬉しいなんてものじゃないさ。病弱な身体に鞭を打って、2年間、あの神社に通ったんだ。子にはそんな妄想はやめろと反対され続けたけど」
「そりゃぁ……、いや、本当に私に会えると思って来てくれるなんて。そう言えば、子供って……」
「ああ、息子はなんとか命を取り留めたぞ。大切な1人息子、お前さんが亡くなった後、ずっとこの家の宝として育て続けた。だけどごめん、良いものはあまり食わせてやれてないんだ」
この家はどうも貧困に悩まされているようなのにゃ。家の壁は、どこからか外の風が通るほど、ぼろく、修理されていない。
さらに、この家庭は病弱なこいつと、息子の父子家庭。大正時代には珍しく、親族も暮らしてはいないようだ。
「病弱な俺に代わり、息子が頑張っている。だけど、今心配なのは、俺に残されている時間が少ない事だ」
「茂、お前のそのやせ細った手足と、枕元に置いてある薬。病気なのか」
「ああ、元々病弱な身体だが、1年前より悪化してしまってね。医者には残り僅かな命と言われているよ。もって2年かな」
「2年……」
ただでさえ貧困な家庭だ。そんな父子家庭でこいつが死んでしまったら、息子はどんな肩身の狭い人生を送ることになるか。
「そんな身体で、神社に通っていたのか、茂……」
「ああ。京子に会えることを願って、通い続けたさ。だけど今日、それが叶った」
「私に会いに来てくれるなんて、本当に嬉しいよ、茂。だけど、息子には内緒にしておくれ」
「どうして話しちゃだめなだ、京子。息子もお前に会えたら嬉しいだろうに」
「会いたいけど、会えないの。神社に通って、会いたいと誓ってくれた茂には会えるけど、他の人間にこの姿を見られてしまうと、私、消えちゃうの」
「そう、なのか……」
全くの嘘である。他の人間に僕の京子に化けた姿を見られても消えはしない。だけど、この家庭はちょっと問題ごとが多すぎる。
子供にこの姿を見られて、厄介事になっても困るにゃ。
だから、ここは茂に口止めをしておこう。
「そうだ、京子。ちょうどサンマが焼けたぞ」
わ、美味しそうなサンマにゃる!
丁度旬のサンマの焼ける匂いは、非常に香ばしいのにゃ!!
「ほら京子、口を開けて」
「え、ううん」
「はい、あーん」
美味しい!ちょうどキツネ色に焼けたサンマが、旬の上物なだけあって、油が乗ってて美味しいにゃる!
「美味しいよ、茂!」
「そうだろ京子ぉ」
「もっと頂戴!」
「いいぞお、一杯食べておくれ」
美味しい、美味しい。いつもは神社の小汚いネズミばかり食べてたから舌が鈍ってるけど、久しぶりに美味しいお魚を食べれたのにゃ。
「美味しかったか、京子」
「うん、美味しかったよ茂。そう言えば、茂はサンマ食べないの?」
「ああ、俺はいいんだ。今日の夕ご飯にとっておいたもので、後は息子の分しかない」
「そう、なんだ」
「そうだ、今度京子は何が食べたいかな」
「そうだなあ、高級ホタテなんて食べてみたいなあ」
「はは、全く京子は。今はお金が無くて買えないけど、またいつか家族で食べれるように、買ってやるからな。約束するよ」
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