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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ
142 持っていたアーティファクト(遺物)
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「取りあえずトレカを試すのは、ここまでにするかな」
「そうか。ならもう引き上げるとするか」
「そうだな、この本に載ってる魔法を、試そうと思ったんだけど……」
カズは【アイテムボックス】から魔法の古書を出し、白真に見せた。
「それもカズの元居た世界から来た物なのか?」
「いや、これはこの麓にある、アヴァランチェの都市で見つけた本だよ。ちょっと変わった本でね、俺がトレカを使うと、同じ様な効果の魔法が、この本に現れるんだよ。だから今使ったトレカと、似たような効果の魔法が、どこかに出てるかもしれないんだ」
「また面妖な書物を持っているものだな」
「それに空間移動魔法と飛翔魔法に、あと重力魔法も、この本に載ってたんだよ」
「と言う事は、その書物はアーティファクトか!?」
「アーティファクト? これが!」
「数百年以上前の魔法が書かれていて、異世界から来たカズが、持ってきたトレカに書かれている魔法を使用すると、その書物に記録させる。正に不可思議な古代の遺物(アーティファクト)ではないか!」
「そうなのか! 古い変わった本だとは思ってたけど、アーティファクトだったとは気付かなかった」
「おいカズ、その書物に載ってる魔法を試すと言っていたな。先程のファイヤーストームは使うよ」
「必ずしもこの本に載る訳じゃ……(炎の竜巻を起こす魔法……!?)」
「どうしたカズ? まさか」
「え~と……載ってる」
「は?」
「だから、ファイヤーストームだと思われる魔法が、この本に載ってた」
「決っしてここで使うなカズよ。もう熱いのはゴメンだ」
「分かってる。ここでは使わないから」
「ここでは…か、訂正しよう。我の居る所では、使わないでくれ」
「……分かったよ。今使った浮遊…じゃなくて、飛行を得る魔法も載ってる。これならもう一回白真に使って良いか?」
「うぐっ……まぁ、あれならば危険は無かったから構わんが、自らの翼で飛ばないとは不思議なもので、気持ち悪くもあるのだぞ」
「そうなのか? 今度は二回目だから、浮いてるだけじゃなくて、なんとか自在に飛んでみてよ」
「それで自らの翼で飛ぶ方法を忘れたら、どうしてくれる」
「そうしたら……飛翔の魔法を覚えさせるから!」
「……それは解決になっているのか?」
「と言っても、長年飛んできた経験は、そんな簡単に忘れたりはしないでしょ(たぶん)」
「カズ……」
「そう睨むなよ。危険は無いんだからさ」
「仕方ない、主には従うか。我が弱いから逆らえんのだからな」
「うっ、そんな言い方……なんか無理矢理で悪かったよ。やっぱりやめよう」
「ククッ! 従属した我に対して詫びるとは、やはり変わっておるなカズ」
「……あ、そうだ! チーズを持ってきたんだけど、食べるか?」
「チーズ? 人が作った食べ物か?」
「そう。お土産で持ってきたんだけど」
「カズが言うのであれば、試しに食うてみよう」
「なら時間的にも丁度良いし、昼食にしよう」
カズは燃やせそうな枯れ枝を集め、その後の【アイテムボックス】から、パンとベーコンに、王都のパン屋で買った濃厚なチーズを出した。
放出した魔力を、魔力変換で火に変えて、枯れ枝を燃やし焚き火を作った。
切ったチーズを枝に刺し火であぶり、とろけてきたところを、ベーコンと一緒にパンにのせて食べる。
白真には、大きく切ったチーズの塊を枝に刺し、表面がとろけてきたところで、食べてみろと渡した。
「雪山で食べる、アツアツとろとろのチーズも、なかなか良いもんだな」
「そんなものか?」
「そんなものだ! ほれ食べてみろよ」
「どれ……熱っ! 悪くはないな。我によこすのは、火で炙らんでもよい。我はフロストドラゴン、熱いのは苦手だ」
「いくらなんでも、それくらいで火傷はしないだろう。まあいいじゃあ残りは、そのままやるよ(ドラゴンが猫舌か!?)」
カズは残り4㎏程の濃厚チーズを、白真に渡した。
それを受け取った白真は、ガブリと一口で食べてしまう。
「やっぱり白真に持ってくるには、量が少なかったか」
「それほど腹は減ってないから、これで十分だ」
「そうか。白真は俺と初めて会ってから、今まで何してたんだ?」
「何と言っても、のんびりと寝て、空腹になれば適当に喰らって、また寝るといったところだが」
「引きこもりでありがちな、不摂生な暮らし方だな。昔の自分を見ているようだよ。あと適当に喰らうとか言っていたが、人でも襲ったか? それなら……」
カズが白真を睨み付ける。
「待て待て、この山脈や他に場所に行き、そこに居る獣等を捕まえて食ってるだけだ」
「……あっそ。その獣が良いか悪いかは俺には分からないが、取りあえず人(エルフ・ドワーフ・獣人等)なんかに被害がなければ、まぁ現状良いか(勝手な俺の考えだけど)」
「飯を食い終わったら、カズはまた王都に戻るのか?」
「せっかく静かな所に来たんだから、日暮れまではのんびりしたいな」
「人にとって何もなく、寒いこの山脈で、のんびりしたいとは、やはり変わっておるのぉ」
「……そうかもな(ずっと独り身だったから、この方が気楽なんだよな)」
カズは枯れ枝を燃やした焚き火にあたりながら、周囲の雪景色を眺め、のんびりとしていた。
「寒くなってきたこの時期に、ここは静かで良いな。白真」
「……」
白真はカズの近くに横たわり、目を閉じていた。
「なんだ、寝てるのか」
今朝の雰囲気を思い返すと、ラヴィオリ亭に戻るがちょっとなぁ……やはり王都に戻るのは、日が暮れてからだな。
明日か明後日には、貴族のオリーブ・モチヅキ家に行かないとならないし。
迎えが来ると言っていたけど、メイドの誰かが来るのか?
やっぱりキウイかな? お使いで貴族区から街に、よく来てるようなことを言っていたし。
そうだ! 人の居ないこの場所に来るのを分かったから、ちょっと試そうと思って、布製の手提げ袋を買ってきたんだった。(今で言うところの、お買い求め安いエコバック的な物)
カズは【アイテムボックス】から、来る前に王都の雑貨屋で買った、手提げ袋を出した。
俺が使えるアイテムボックスを、スピラーレが羨ましそうに見てたから、なんとか付与(エンチャント)出来ないか、試そうと思ったんだっけ。
スキル付与か……魔力補助や、魔力自動回復(微量)は出来たから、アイテムボックスのスキルも、付与出来そうな気もするんだけど。
取りあえず、なんとなくでもやってみるかな。
あれ(チャラ神=管理神)も、今の世界は曖昧だからとか言ってた…ような気がしたから、なるようになるだろう。
手提げ袋に、空間収納出来るようにイメージして、《付与》アイテムボックスとやってみたが、何も起きなかった。
「カズ」
「起きてたのか?」
「一応頼まれた警戒をしておるのだ、本気で寝たりはせん」
「そうか」
「それより先程から見ておると、その小さな袋に、何かを付与しようとしているようだが」
「ああ。俺の使えるアイテムボックスを、この手提げ袋に、付与出来ないかと思ってさ」
「空間収納魔法など、使える者も希であろうに、それをそんな媒体も無い小さな袋に付与しようなど、人がドラゴンを素手で、倒そうとしてるようなものよ」
「それはほぼ不可能ってことか?」
「そういう事だ」
「……ソーサリーカードには付与出来るんだけど、空間収納魔法を付与するには、素材がこれじゃあ無理って事か」
「それこそ魔力を帯びた素材で、作られた物であれば可能かもしれんがな」
「やっぱり無理か……」
カズはおもむろにアイテムボックス内のリストを表示させ、持っているトレカ名を見て考え始めていた。
暫くして【アイテムボックス】から、1枚のトレカを取り出した。
「ダメ元でこれ使ってみるか」
「我に危険はないだろうな」
「そういったのは、使わないって言ったしょ」
「ではいったい、どんな効果なのだ?」
「アイテムボックスのような効果を、この手提げ袋に、与えることが出来るかもしれないトレカだ。と言っても、使ってみないと、どんな効果になるか、分からないんだけどな?」
「我に危害がないなら、それでいい」
「興味ないか……まぁ良いさ」
「そうか。ならもう引き上げるとするか」
「そうだな、この本に載ってる魔法を、試そうと思ったんだけど……」
カズは【アイテムボックス】から魔法の古書を出し、白真に見せた。
「それもカズの元居た世界から来た物なのか?」
「いや、これはこの麓にある、アヴァランチェの都市で見つけた本だよ。ちょっと変わった本でね、俺がトレカを使うと、同じ様な効果の魔法が、この本に現れるんだよ。だから今使ったトレカと、似たような効果の魔法が、どこかに出てるかもしれないんだ」
「また面妖な書物を持っているものだな」
「それに空間移動魔法と飛翔魔法に、あと重力魔法も、この本に載ってたんだよ」
「と言う事は、その書物はアーティファクトか!?」
「アーティファクト? これが!」
「数百年以上前の魔法が書かれていて、異世界から来たカズが、持ってきたトレカに書かれている魔法を使用すると、その書物に記録させる。正に不可思議な古代の遺物(アーティファクト)ではないか!」
「そうなのか! 古い変わった本だとは思ってたけど、アーティファクトだったとは気付かなかった」
「おいカズ、その書物に載ってる魔法を試すと言っていたな。先程のファイヤーストームは使うよ」
「必ずしもこの本に載る訳じゃ……(炎の竜巻を起こす魔法……!?)」
「どうしたカズ? まさか」
「え~と……載ってる」
「は?」
「だから、ファイヤーストームだと思われる魔法が、この本に載ってた」
「決っしてここで使うなカズよ。もう熱いのはゴメンだ」
「分かってる。ここでは使わないから」
「ここでは…か、訂正しよう。我の居る所では、使わないでくれ」
「……分かったよ。今使った浮遊…じゃなくて、飛行を得る魔法も載ってる。これならもう一回白真に使って良いか?」
「うぐっ……まぁ、あれならば危険は無かったから構わんが、自らの翼で飛ばないとは不思議なもので、気持ち悪くもあるのだぞ」
「そうなのか? 今度は二回目だから、浮いてるだけじゃなくて、なんとか自在に飛んでみてよ」
「それで自らの翼で飛ぶ方法を忘れたら、どうしてくれる」
「そうしたら……飛翔の魔法を覚えさせるから!」
「……それは解決になっているのか?」
「と言っても、長年飛んできた経験は、そんな簡単に忘れたりはしないでしょ(たぶん)」
「カズ……」
「そう睨むなよ。危険は無いんだからさ」
「仕方ない、主には従うか。我が弱いから逆らえんのだからな」
「うっ、そんな言い方……なんか無理矢理で悪かったよ。やっぱりやめよう」
「ククッ! 従属した我に対して詫びるとは、やはり変わっておるなカズ」
「……あ、そうだ! チーズを持ってきたんだけど、食べるか?」
「チーズ? 人が作った食べ物か?」
「そう。お土産で持ってきたんだけど」
「カズが言うのであれば、試しに食うてみよう」
「なら時間的にも丁度良いし、昼食にしよう」
カズは燃やせそうな枯れ枝を集め、その後の【アイテムボックス】から、パンとベーコンに、王都のパン屋で買った濃厚なチーズを出した。
放出した魔力を、魔力変換で火に変えて、枯れ枝を燃やし焚き火を作った。
切ったチーズを枝に刺し火であぶり、とろけてきたところを、ベーコンと一緒にパンにのせて食べる。
白真には、大きく切ったチーズの塊を枝に刺し、表面がとろけてきたところで、食べてみろと渡した。
「雪山で食べる、アツアツとろとろのチーズも、なかなか良いもんだな」
「そんなものか?」
「そんなものだ! ほれ食べてみろよ」
「どれ……熱っ! 悪くはないな。我によこすのは、火で炙らんでもよい。我はフロストドラゴン、熱いのは苦手だ」
「いくらなんでも、それくらいで火傷はしないだろう。まあいいじゃあ残りは、そのままやるよ(ドラゴンが猫舌か!?)」
カズは残り4㎏程の濃厚チーズを、白真に渡した。
それを受け取った白真は、ガブリと一口で食べてしまう。
「やっぱり白真に持ってくるには、量が少なかったか」
「それほど腹は減ってないから、これで十分だ」
「そうか。白真は俺と初めて会ってから、今まで何してたんだ?」
「何と言っても、のんびりと寝て、空腹になれば適当に喰らって、また寝るといったところだが」
「引きこもりでありがちな、不摂生な暮らし方だな。昔の自分を見ているようだよ。あと適当に喰らうとか言っていたが、人でも襲ったか? それなら……」
カズが白真を睨み付ける。
「待て待て、この山脈や他に場所に行き、そこに居る獣等を捕まえて食ってるだけだ」
「……あっそ。その獣が良いか悪いかは俺には分からないが、取りあえず人(エルフ・ドワーフ・獣人等)なんかに被害がなければ、まぁ現状良いか(勝手な俺の考えだけど)」
「飯を食い終わったら、カズはまた王都に戻るのか?」
「せっかく静かな所に来たんだから、日暮れまではのんびりしたいな」
「人にとって何もなく、寒いこの山脈で、のんびりしたいとは、やはり変わっておるのぉ」
「……そうかもな(ずっと独り身だったから、この方が気楽なんだよな)」
カズは枯れ枝を燃やした焚き火にあたりながら、周囲の雪景色を眺め、のんびりとしていた。
「寒くなってきたこの時期に、ここは静かで良いな。白真」
「……」
白真はカズの近くに横たわり、目を閉じていた。
「なんだ、寝てるのか」
今朝の雰囲気を思い返すと、ラヴィオリ亭に戻るがちょっとなぁ……やはり王都に戻るのは、日が暮れてからだな。
明日か明後日には、貴族のオリーブ・モチヅキ家に行かないとならないし。
迎えが来ると言っていたけど、メイドの誰かが来るのか?
やっぱりキウイかな? お使いで貴族区から街に、よく来てるようなことを言っていたし。
そうだ! 人の居ないこの場所に来るのを分かったから、ちょっと試そうと思って、布製の手提げ袋を買ってきたんだった。(今で言うところの、お買い求め安いエコバック的な物)
カズは【アイテムボックス】から、来る前に王都の雑貨屋で買った、手提げ袋を出した。
俺が使えるアイテムボックスを、スピラーレが羨ましそうに見てたから、なんとか付与(エンチャント)出来ないか、試そうと思ったんだっけ。
スキル付与か……魔力補助や、魔力自動回復(微量)は出来たから、アイテムボックスのスキルも、付与出来そうな気もするんだけど。
取りあえず、なんとなくでもやってみるかな。
あれ(チャラ神=管理神)も、今の世界は曖昧だからとか言ってた…ような気がしたから、なるようになるだろう。
手提げ袋に、空間収納出来るようにイメージして、《付与》アイテムボックスとやってみたが、何も起きなかった。
「カズ」
「起きてたのか?」
「一応頼まれた警戒をしておるのだ、本気で寝たりはせん」
「そうか」
「それより先程から見ておると、その小さな袋に、何かを付与しようとしているようだが」
「ああ。俺の使えるアイテムボックスを、この手提げ袋に、付与出来ないかと思ってさ」
「空間収納魔法など、使える者も希であろうに、それをそんな媒体も無い小さな袋に付与しようなど、人がドラゴンを素手で、倒そうとしてるようなものよ」
「それはほぼ不可能ってことか?」
「そういう事だ」
「……ソーサリーカードには付与出来るんだけど、空間収納魔法を付与するには、素材がこれじゃあ無理って事か」
「それこそ魔力を帯びた素材で、作られた物であれば可能かもしれんがな」
「やっぱり無理か……」
カズはおもむろにアイテムボックス内のリストを表示させ、持っているトレカ名を見て考え始めていた。
暫くして【アイテムボックス】から、1枚のトレカを取り出した。
「ダメ元でこれ使ってみるか」
「我に危険はないだろうな」
「そういったのは、使わないって言ったしょ」
「ではいったい、どんな効果なのだ?」
「アイテムボックスのような効果を、この手提げ袋に、与えることが出来るかもしれないトレカだ。と言っても、使ってみないと、どんな効果になるか、分からないんだけどな?」
「我に危害がないなら、それでいい」
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