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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

208 大空からの眺め

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 覚悟を決めたキウイをマイヒメの背中に乗り、王都の近くまで飛んでいくことに決まった。

「マイヒメゆっくりだから。ゆっくり飛んでくれ」

「『分かったわ。じゃあ行くわよ』」

 マイヒメが翼を広げ、大空へと飛び上がった。
 キウイは目を閉じ、カズの腕に強く抱きつき震える。
 マイヒメの上昇が止まると、風の流れに乗り空を滑るように飛ぶ。

「『カズ。どこまで行けば?』」

「とりあえず王都から少し離れた、人気のない所を見つけて降りよう。街道近くや街中でなければ、人はあまり居ないと思うから」

「『どこか探しましょう』」

「頼むよマイヒメ」

 マイヒメは王都の方面へ、ゆっくりと飛んでいく。

「か、風が強いけど大丈夫かにゃ」

「無理そうなら、すぐに降りようか(目をずっと閉じてるから、こりゃあダメかな)」

「だ、大丈夫だにゃ。カズにゃんを信じてるにゃ」

「やっぱやめとけば……あ! ほらキウイ、王都が見えた」

「そう言われても、目が開けられないにゃ」

 キウイが震えてるのを見て、子供の鳥がキウイに寄り添う。

「にャ! なんにゃ?」

「『どうしたの、おねぇさん?』」

「飛んだことないから、高い所がちょっと苦手なんだよ」

「なんにゃ? さっきのこ(子供の鳥)かにゃ?」

「そう。キウイが震えてるから、心配してるんだよ」

「そ、そうかにゃ……(怖くない、怖くないにゃ)」

 キウイが薄目を開けて、寄り添ってる子供の鳥を見る。
 子供の鳥も、キウイの顔を覗き込む。

「『おねぇさん大丈夫?』」

「大丈夫かってさ」

「にゃ、にゃちきは大丈夫にゃ」

 キウイはしっかりと目を開け、子供の鳥を見て気持ちを落ち着かせようとする。
 次に自分がしがみついている腕の人物(カズ)を見る。

「目、開けられた?」

「にゃ、にゃんとか……」

「あっちを見れそう?」

 カズが進行方向に顔を向けると、キウイも恐る恐る同じ方に顔を向ける。

「に、にゃかい……」

「にゃかい? (あ、高いって言ったのか)」

 眼下に広がる王都に目を奪われ、いつの間にかキウイの震えは止まっていた。

「スゴいにゃ~! 王都を上から見れるなんて」

「少しは落ち着いた?」

「落ち着いたけどにゃ、これ(カズの腕)離さなくてもいいかにゃ? 高い所は好きだけど、ここまで高いと……」

「良いけど、そこまでぴったりとくっつかなくても。もう少し離れても大丈夫だから」

 キウイは自分の状態を、しっかりと確認する。

「……嫌にゃ。怖いからカズにゃんが恥ずかしくても、降りるまで離れないにゃ」

 キウイはカズの腕に自分の腕を強く絡ませ、離れようとしない。
 毎度の事ながら、カズの腕にはキウイの柔らかい胸の感触が伝わる。
 腕に伝わる感触から気を紛らすため、カズは【マップ】を見て人の少ない場所を探す。
 王都の少し外、街道から離れた場所をマイヒメに伝えて、そこへと降下する。
 地上に着くと、カズの腕をしっかりと掴みながら、マイヒメから降りるキウイ。

「街道から少しそれたとはいえ、こうも人が居ないなんて」

「お祭りは盛大だからにゃ、王都の中央街じゃなくても賑やかにゃ。新年のお祭りの間に王都にから出る人は、行商人か冒険者くらいだと思うにゃ」

「行商人は稼ぎ時だからね。ああ! だからキウイは迎えに馬がなくても、街道で王都へ向かう行商人の馬車が通ったら、乗せてもらおうって言ったのか」

「そうだにゃ。お祭りの時は、行商人の馬車が多く通るにゃ。よく売れるから何度も品物を運ぶのにゃ」

「そうなんだ。よく知ってるね」

「村に来る行商人のおっちゃんに聞いたにゃ」

「ねぇキウイ、落ち着いたように話してるけど、なんで俺の腕を掴んだままなの? もうマイヒメから降りて地上に居るんだから、離れても大丈夫でしょ」

「今カズにゃんから離れると、倒れるにゃ」

「少し座って休もう(足ガクガクしてるし、腰が抜けたか?)」

「そうするにゃ」

「王都はすぐそこだから、日が暮れる前に宿屋を見つけて一泊すれば、明日には第2ギルトまで行けるよ」

「『カズ。人が来るから、ワタシは離れるわね』」

「ああ、分かった」

「『坊やを任せたわ』」

 マイヒメは子供の鳥をカズに預け、空高くへと飛んでいった。

「このこ(子供の鳥)を置いて、どこか行っちゃったけどいいのかにゃ?」

「マイヒメを街中に連れていけないからね。俺の居場所がはっきり分かるように、子供の鳥を置いて行ったんだよ。マイヒメはまだテイムしたモンスターとして、ギルトに登録してないから、見つかったら騒ぎになるだろうしね」

「あんな大きなモンスターをテイムしてる人なんて、王都でも見たことないにゃ」

「……こっち(子供の鳥)なら連れていても変じゃないでしょ。仮の登録はしてあるから、街中で連れていても大丈夫だし」

「カズにゃんと一緒だと変わった事ばかりで、飽きなくていいにゃ」

「ハハ……。どう、もう立てそう?」

「大丈夫にゃ。足に力が戻ったにゃ」

「じゃあ行こう。空いてる宿屋を見つけないと、王都で野宿になっちゃうから」

「そうなったらお祭りなんだし、夜通し遊べば良いにゃ」

「夜通し遊ぶなんて、若い頃にゲームで徹夜してたくらいだよ」(ボソッ)

「何か言ったかにゃ?」

「ん、あ、いや、なんでもない」

 二人は街道に出て、王都に向かい歩いて行く。
 子供の鳥は、二人の前をパタパタと飛び、疲れるとカズに背負われ楽しそうにしていた。
 カズ達が王都に入ると、先ずは宿屋を探した。
 しかし手頃な宿はどこも満室で全然見つからない。
 唯一空いていたのは、一泊金貨三枚(30,000GL)もする高級な所だった。
 さすがに王都の街中で、キウイを野宿させるわけにはいかないと、カズは部屋を借りることにした。

「キウイはここに泊まって」

「ねぇカズにゃん。ここは豪商とかお金持ちの人が泊まる高級な宿だにゃ。にゃちき達には合わないにゃ」

「と言っても、他に空いてる宿屋が無かったから。それに泊まるのはキウイ一人だよ」

「なんでにゃちきだけにゃ? 広い部屋なら、カズにゃんも一緒に泊まったっていいにゃ」

「ここの宿は、このこ(子供の鳥)を泊められないんだって。まぁ俺はなんとでもなるから」

「だったらにゃちきも、野宿するからにゃ」

「夜通し騒いでる酔っ払いもいて危ないから、キウイは宿屋に泊まってよ。怖い思い(マイヒメに乗せた事)させたお詫びだと思って」

「……分かったにゃ。なんかにゃちきだけ贅沢して悪いにゃ(でっかい鳥に乗るって言ったの、にゃちきなのににゃ)」

「気にしない気にしない。宿代払った俺が良いって言ってるからさ。夕食は露店で色々買って食べようよ」

「それは良いにゃ! さっき美味しそうなのを見つけたにゃ。早くから行くにゃ」

「現金だな(キウイらしくて良いけど)」

 キウイと子供の鳥が露店で好きなものを選び、お腹一杯になるまで食べてお祭りを満喫した。
 キウイを宿屋まで送ると、カズは子供の鳥を連れて王都から出る。
 人の来なそうな場所まで行き、マイヒメと合流して野宿をすることにした。

「『あの獣人の娘はどうしたの?』」

「空いてる宿屋を見つけたから、そこに泊まってもらってる」

「『カズは一緒じゃなくて良かったのでは?』」

「テイムしてても、モンスターお断りの宿屋だったから。まぁ高級な宿屋だから仕方ないのかな」

「『面倒ね』」

「テイムしたモンスターと一緒でも大丈夫って宿屋でも、マイヒメは無理だろうね。大きいから」

「『人の宿屋なんて、泊まりたいと思わないわ。それよりあの娘は、カズとつがいになるの? だったら子作りしなくていいの?』」

「つが……こ、子作りなんてしないよ。つがいじゃないんだから!」

「『そんなに驚く事かしら? 雄と雌が一緒に居れば子作りはするでしょ』」

「ま、まぁ……でもキウイは、そういうのと違うから」

「『そう。強い雄の子を産みたいと思うのは、当然だと思うのだけど。カズには居ないの?』」

「べ、別にいいじゃないか。さぁ話は終わり。俺ちょっとやることあるから」

 カズは【アイテムボックス】から、砂漠のダンジョンで入手した魔鉄鉱石を取り出し、スキルを使ってある物に加工した。


 ◇◆◇◆◇


「朝か……(昨夜はマイヒメに、つがいだ子作りだと変なこと言われたなぁ。まぁ野生動物と人の違いみたいなもんか。気にしてもしょうがない)」

「『カズ起きた。おねぇさんとこに行く?』」

「ああ。キウイの所に行くよ」

「『また何か食べる!』」

「露店で売ってる食べ物が気に入ったのか?」

「『カズ。あまり人が作った食べ物を、坊やに与えないで』」

「そうだね。モンスターといえども、子供のうちから味が濃い物を、食べさせない方がいいか」

「『ええ。それにまだ狩りを覚え始めたばかりだから、簡単に食べ物を与えてたら、狩りの感覚が鈍るだけじゃなくて、危険な目にだって』」

「分かった。でも街中で狩りはできないから、与える食事を少なくするよ」

「『坊やも分かったわね』」

「『えぇー』」

「『坊や!』」

「『……はい』」

 カズはしょんぼりした子供の鳥を連れて、キウイが泊まっている宿屋へと向かった。
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