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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影
293 私だってこのくらいは……
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不敵な笑を浮かべたキウイが椅子から立ち上り、ゆっくりとカズに近寄る。
「な、なに?」
「触るかにゃ? 軽くなら揉んでもいいにゃ。にゃちきからのご奉仕にゃ」
キウイは自分の胸を突き出して、カズに問い掛けからかう。
一瞬キウイの胸に目を奪われそうになるが、三人の視線が自分に集まるのに気付き、カズは顔を反らした。
「カズお兄ちゃん……エッチ」
「なッ! (確かに少し見てしまったけど)」
「カズさんだって男性だから、そこは分かってあげなさいミカン。それが大人の女性というものよ。もし触っていたら、軽蔑ものだわ」
「ア、アキレアさん……」
「見せようとしたのはにゃちきだけど、そんなにまじまじと見られると恥ずかしいにゃ。いやぁ~にゃちきの魅力的な、このスタイルは罪だにゃ~」
「まじまじとなんか見てないから! 一瞬、チラッとだけだから!」
「キウイお姉ちゃんは、既にカズお兄ちゃんのに汚されてしまったのね」
「ミカンもそういった表現はやめよう。俺がとてつもないクズで、駄目なやつに聞こえるから」
「ちょっと言い過ぎちゃったかな。ごめんなさい」
「さぁもうそこまで。キウイも謝りなさい」
「ごめんにゃ。カズにゃん怒らないから、ついからかって遊んじゃうにゃ。お詫びに触るかにゃ?」
「キウイ!」
「冗談にゃ冗談にゃ。たからそんなに怒鳴らなくてもいいにゃ。怒ってばかりいると、シワが増えるにゃよアキレア」
「余計なお世話よ。それにそう思うなら、怒らせるんじゃないの。このやり取りだって何度目よ」
「にゃははは。楽しいから、いいじゃにゃいか」
「あれ…皆も休憩しての?」
「キウイの笑い声が聞こえたけど、皆で何話してたの? あちしにも教えて」
マーガレットの所に行っていたビワとレラが、休憩室に戻ってきた。
「私は仕事に戻るから、あなた達も少ししたら仕事に戻りなさい」
アキレアは一人で先に休憩室を出て、仕事に戻っていった。
「マーガレットさんに許可はもらえた?」
「はい。お世話になった人には、しっかりお礼をしてきなさいと。なので、明日でも大丈夫です」
「じゃあ明日行こう(明日で三日経つから、俺が無罪だという情報は、リアーデの衛兵にも届いているだろ)」
「ビワお姉ちゃん。カズお兄ちゃんと、どこか行くの?」
「前に話した街に行くのよ。借りた家の大家さんに、改めてお礼を言いたくて。今、奥様に許可をもらってきたの」
「そうなの」
「うん。だから明日のお仕事よろしくね」
「しかたないにゃ。ビワの仕事は、代わりににゃちきがやってあげるかにゃ」
「ありがとうキウイ」
「その代わりに」
「なぁに?」
キウイとミカンは視線を合わせて、ここぞとばかりビワに質問を投げ掛けた。
「カズにゃんとキスした感想は?」
「舌は入れたの?」
「どうな味にゃ?」
「気持ち良かった?」
キウイとミカンの二人はビワに迫り、カズから聞けなかった話を、本人の居る前で聞こうとする。
「……へ? あわ…あわゎゎ……」
二人の迫り来る質問を聞いたビワは、あの時の出来事を思い出し、顔はみるみる赤くなっていく。
「そりゃあもう。こう、ぶちゅ~っと」
何かを抱き抱えたような格好をして、唇を突き出すレラ。
「やめろお喋りレラ。二人も話をぶり返すなよ」
「いいじゃんカズ。話したところで減るもんじゃないんだし。ビワもこういった話も慣れないと」
「慣れさせるな! もうレラは置いてくからな」
「そ…そうね。意地悪なレラは置いて、私とカズさんの二人だけで行くわ」
座っているカズの後ろに立ち、肩に手を置き自分の方に引き寄せるビワ。
「ほらビワだってこう……え?」
カズの後頭部に、柔らかいものが少し当たっていた。
ビワはからかう三人に、いつまでも言われっぱなしではないところを見せようとしたのだろうが、赤かった顔は更に耳までも赤くなって、無理しているのが丸分かりだ。
「わ…私だって、このくらい言い返せます」
慣れないことをしながら喋ったことで、カズを引き寄せる手に力が入る。
「あ、あの……ビワさん」
「な…なんですか」
「その、後頭部にですね」
「……わ…わわ…分かってます。わざと…です」
どうだと言わんばかりに、自分の胸をカズの後頭部に当てて、それを三人に見せつけるビワ。
恥ずかしさからビワの手は汗ばみ、小刻みに震えていた。
「ビワもやるようになったにゃ」
「尊敬です。ビワお姉ちゃんが、そんなこと出来るようになったなんて」
「これじゃあ、からかい甲斐がなくなっちゃうよ。あちしの楽しみが」
「これで分かったろ。ビワだってもう、引っ込み思案で臆病なわけじゃないんだから。これからは、あんまりからかわないこと。ほらアキレアさんに言われたんだから、キウイとミカンは仕事に戻らないと」
「そうするかにゃ」
「ミカンもお仕事に戻るね」
キウイとミカンは休憩室を出て、自分の仕事へと戻った。
「我ながらキウイとミカンがからかうのを、あしらうのがうまくなったかな(メイドの皆の記憶も、元に戻ってるようで良かった)」
「慣れてきたのなら、これからもあちしがからかっても大丈夫っしょ」
「大丈夫なわけあるか! 元はといえば、レラがあの事を話したからだろ。毎度毎度、少しは反省しろ。捕まってた事を忘れたのか」
「ぅ……ごめんなさい」
「俺だけじゃなく、ビワにも迷惑が掛かるんだから。これならはするなよ」
「はい……なるべくは」
「こいつ……(やめる気ねぇな)」
「それよりもさぁ」
「なんだ?」
「ビワはいつまでそうしてるの?」
レラの発言を聞き、自分が置かれてる状況を再度確認をするカズ。
椅子に座るカズの後ろに立ったままのビワは、カズの肩を掴み強く自分の方に引き寄せたまま動かない。
レラが返答のないビワの顔を覗き込むと、遠くを見つめたまま停止していた。
「無理して慣れないことしたから。お~いビワ……」
「レラ、ビワの様子は?」
「駄目ね」
「ビワ。ビワさ~ん……」
「またキスでもすれば、元に戻るんじゃないの」
「この状態で、出来るわけないだろ」
「ふ~ん。出来たらするんだ」
「それは言葉の綾だ」
「ビワ聞いてる? そろそろ離さないと、カズが興奮してビワの胸を揉みしだいちゃうよ」
「するか!」
レラの言葉が届いて、遠くを向いていた視線が、自分の胸に当たっているカズの頭部に移して、正気に戻るビワ。
「……きゃ」
「あ、元に戻った」
カズの肩に置いていた手を離して、カズから離れ両手で胸を隠すビワ。
「こ…こんな昼間から……」
「ふ~ん。昼間じゃなければいいんだ」
「そ…そそ…そうじゃ…夜なら良いとかじゃ……」
「レラ、もうやめろよ。ビワがまた停止するから」
「こういう状態だからこそ、本音がぽろ……ビワだから、ぼろぼろと出るもんなのに」
「そこを言い直すのかよ。怒っていいんだよビワ。……ビワ?」
カズの心配をよそに、ビワはまたもや思考が停止していた。
「一ヶ月くらいも一緒に暮らして、少しは慣れたかと思ったんだけど」
「初めて会った時からを考えれば、慣れたどころか、もの凄く親しくなったんだぞ」
「へぇ~」
「俺は倉庫街にある家に戻るから、レラはここに居てビワに謝ること。明日ギルドに寄った後で迎えに来るから。ビワが正気に戻ったら伝えといてくれ」
「は~い」
思考が停止しているビワをレラに任せ(大丈夫だろうかと少し思いながらも)カズは一人で倉庫街にある家に戻った。
庭の雑草が無くなったことで、持ち主であるカズが戻っていると知られれば、ビワを助けた時の冒険者や衛兵が、あの時やられた腹いせで狙ってくることも考えられた。
なので今回は、レラを連れては戻らなかった。
街に出て食材を買い集めると、暗くなる前に家に戻って食事をし、久々の風呂を満喫して、家の敷地内を範囲に入れて〈アラーム〉を使ってから床に入り就寝した。
「な、なに?」
「触るかにゃ? 軽くなら揉んでもいいにゃ。にゃちきからのご奉仕にゃ」
キウイは自分の胸を突き出して、カズに問い掛けからかう。
一瞬キウイの胸に目を奪われそうになるが、三人の視線が自分に集まるのに気付き、カズは顔を反らした。
「カズお兄ちゃん……エッチ」
「なッ! (確かに少し見てしまったけど)」
「カズさんだって男性だから、そこは分かってあげなさいミカン。それが大人の女性というものよ。もし触っていたら、軽蔑ものだわ」
「ア、アキレアさん……」
「見せようとしたのはにゃちきだけど、そんなにまじまじと見られると恥ずかしいにゃ。いやぁ~にゃちきの魅力的な、このスタイルは罪だにゃ~」
「まじまじとなんか見てないから! 一瞬、チラッとだけだから!」
「キウイお姉ちゃんは、既にカズお兄ちゃんのに汚されてしまったのね」
「ミカンもそういった表現はやめよう。俺がとてつもないクズで、駄目なやつに聞こえるから」
「ちょっと言い過ぎちゃったかな。ごめんなさい」
「さぁもうそこまで。キウイも謝りなさい」
「ごめんにゃ。カズにゃん怒らないから、ついからかって遊んじゃうにゃ。お詫びに触るかにゃ?」
「キウイ!」
「冗談にゃ冗談にゃ。たからそんなに怒鳴らなくてもいいにゃ。怒ってばかりいると、シワが増えるにゃよアキレア」
「余計なお世話よ。それにそう思うなら、怒らせるんじゃないの。このやり取りだって何度目よ」
「にゃははは。楽しいから、いいじゃにゃいか」
「あれ…皆も休憩しての?」
「キウイの笑い声が聞こえたけど、皆で何話してたの? あちしにも教えて」
マーガレットの所に行っていたビワとレラが、休憩室に戻ってきた。
「私は仕事に戻るから、あなた達も少ししたら仕事に戻りなさい」
アキレアは一人で先に休憩室を出て、仕事に戻っていった。
「マーガレットさんに許可はもらえた?」
「はい。お世話になった人には、しっかりお礼をしてきなさいと。なので、明日でも大丈夫です」
「じゃあ明日行こう(明日で三日経つから、俺が無罪だという情報は、リアーデの衛兵にも届いているだろ)」
「ビワお姉ちゃん。カズお兄ちゃんと、どこか行くの?」
「前に話した街に行くのよ。借りた家の大家さんに、改めてお礼を言いたくて。今、奥様に許可をもらってきたの」
「そうなの」
「うん。だから明日のお仕事よろしくね」
「しかたないにゃ。ビワの仕事は、代わりににゃちきがやってあげるかにゃ」
「ありがとうキウイ」
「その代わりに」
「なぁに?」
キウイとミカンは視線を合わせて、ここぞとばかりビワに質問を投げ掛けた。
「カズにゃんとキスした感想は?」
「舌は入れたの?」
「どうな味にゃ?」
「気持ち良かった?」
キウイとミカンの二人はビワに迫り、カズから聞けなかった話を、本人の居る前で聞こうとする。
「……へ? あわ…あわゎゎ……」
二人の迫り来る質問を聞いたビワは、あの時の出来事を思い出し、顔はみるみる赤くなっていく。
「そりゃあもう。こう、ぶちゅ~っと」
何かを抱き抱えたような格好をして、唇を突き出すレラ。
「やめろお喋りレラ。二人も話をぶり返すなよ」
「いいじゃんカズ。話したところで減るもんじゃないんだし。ビワもこういった話も慣れないと」
「慣れさせるな! もうレラは置いてくからな」
「そ…そうね。意地悪なレラは置いて、私とカズさんの二人だけで行くわ」
座っているカズの後ろに立ち、肩に手を置き自分の方に引き寄せるビワ。
「ほらビワだってこう……え?」
カズの後頭部に、柔らかいものが少し当たっていた。
ビワはからかう三人に、いつまでも言われっぱなしではないところを見せようとしたのだろうが、赤かった顔は更に耳までも赤くなって、無理しているのが丸分かりだ。
「わ…私だって、このくらい言い返せます」
慣れないことをしながら喋ったことで、カズを引き寄せる手に力が入る。
「あ、あの……ビワさん」
「な…なんですか」
「その、後頭部にですね」
「……わ…わわ…分かってます。わざと…です」
どうだと言わんばかりに、自分の胸をカズの後頭部に当てて、それを三人に見せつけるビワ。
恥ずかしさからビワの手は汗ばみ、小刻みに震えていた。
「ビワもやるようになったにゃ」
「尊敬です。ビワお姉ちゃんが、そんなこと出来るようになったなんて」
「これじゃあ、からかい甲斐がなくなっちゃうよ。あちしの楽しみが」
「これで分かったろ。ビワだってもう、引っ込み思案で臆病なわけじゃないんだから。これからは、あんまりからかわないこと。ほらアキレアさんに言われたんだから、キウイとミカンは仕事に戻らないと」
「そうするかにゃ」
「ミカンもお仕事に戻るね」
キウイとミカンは休憩室を出て、自分の仕事へと戻った。
「我ながらキウイとミカンがからかうのを、あしらうのがうまくなったかな(メイドの皆の記憶も、元に戻ってるようで良かった)」
「慣れてきたのなら、これからもあちしがからかっても大丈夫っしょ」
「大丈夫なわけあるか! 元はといえば、レラがあの事を話したからだろ。毎度毎度、少しは反省しろ。捕まってた事を忘れたのか」
「ぅ……ごめんなさい」
「俺だけじゃなく、ビワにも迷惑が掛かるんだから。これならはするなよ」
「はい……なるべくは」
「こいつ……(やめる気ねぇな)」
「それよりもさぁ」
「なんだ?」
「ビワはいつまでそうしてるの?」
レラの発言を聞き、自分が置かれてる状況を再度確認をするカズ。
椅子に座るカズの後ろに立ったままのビワは、カズの肩を掴み強く自分の方に引き寄せたまま動かない。
レラが返答のないビワの顔を覗き込むと、遠くを見つめたまま停止していた。
「無理して慣れないことしたから。お~いビワ……」
「レラ、ビワの様子は?」
「駄目ね」
「ビワ。ビワさ~ん……」
「またキスでもすれば、元に戻るんじゃないの」
「この状態で、出来るわけないだろ」
「ふ~ん。出来たらするんだ」
「それは言葉の綾だ」
「ビワ聞いてる? そろそろ離さないと、カズが興奮してビワの胸を揉みしだいちゃうよ」
「するか!」
レラの言葉が届いて、遠くを向いていた視線が、自分の胸に当たっているカズの頭部に移して、正気に戻るビワ。
「……きゃ」
「あ、元に戻った」
カズの肩に置いていた手を離して、カズから離れ両手で胸を隠すビワ。
「こ…こんな昼間から……」
「ふ~ん。昼間じゃなければいいんだ」
「そ…そそ…そうじゃ…夜なら良いとかじゃ……」
「レラ、もうやめろよ。ビワがまた停止するから」
「こういう状態だからこそ、本音がぽろ……ビワだから、ぼろぼろと出るもんなのに」
「そこを言い直すのかよ。怒っていいんだよビワ。……ビワ?」
カズの心配をよそに、ビワはまたもや思考が停止していた。
「一ヶ月くらいも一緒に暮らして、少しは慣れたかと思ったんだけど」
「初めて会った時からを考えれば、慣れたどころか、もの凄く親しくなったんだぞ」
「へぇ~」
「俺は倉庫街にある家に戻るから、レラはここに居てビワに謝ること。明日ギルドに寄った後で迎えに来るから。ビワが正気に戻ったら伝えといてくれ」
「は~い」
思考が停止しているビワをレラに任せ(大丈夫だろうかと少し思いながらも)カズは一人で倉庫街にある家に戻った。
庭の雑草が無くなったことで、持ち主であるカズが戻っていると知られれば、ビワを助けた時の冒険者や衛兵が、あの時やられた腹いせで狙ってくることも考えられた。
なので今回は、レラを連れては戻らなかった。
街に出て食材を買い集めると、暗くなる前に家に戻って食事をし、久々の風呂を満喫して、家の敷地内を範囲に入れて〈アラーム〉を使ってから床に入り就寝した。
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