不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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176.暫定

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「正常位、騎乗位、背面測位」

 ボクは、正確に正直にどんな体位で律子としたかの質問に答えた。

「背面測位って、したことないわね。今度やってみてね」

「騎乗位って、普通の騎乗位ですよね。失礼な言い方になるかもしれないけど、律子さんの障害だと出来ないんじゃないですか」

「あっ、そうだね。わたしたちは瑞樹とやる時には必須の体位だけど」

 二人は、ようやくその矛盾に気がついたようだった。

「ああ、それは律子さんのお母さんに、手伝ってもらったんだよ。律子さんが、どうしても騎乗位がして見たいって言ったから」

「どんな感じにですか」

「えっと、脇に腕を入れて抱える感じで上に乗せてもらって動かしてもらったんだよ」

「子供にオシッコをさせるように膝を抱えたんじゃなくて」

「それも、途中からあったかな」

 なるべくなら深く掘り下げて欲しくない話題に、ボクは簡素に返答した。

「それって、わたしがあいつと初めてやった時、母親がわたしにしたのと一緒だよね。それが肯定的にしてもらった行為か、否定的にやられた行為かってことが絶対的に違うけど」

「そうなのね。まあ、律子さんの希望だったんなら仕方ないですよね」

「お母さんのサポートが、ある時しか出来ないからって」

 この話題から逃げるわけではあかったが、一番大切なことに話を移した。

「ねぇ、律子さんは、咲恵と萌との約束からは除外してもらえるんだよね」

「本当は例外無しにしておきたいんですけど、事情が事情だし。瑞樹さんも障害者同士の大変さもわかるでしょうしね」

「自分から能動的に出来るわけでもないしね。仕方ないんじゃないの」

 咲恵も萌も、理解はしてくれている。

「じゃあ、三人目の彼女ってことでいいんだよね」

「それは、暫定的にはいいと思います」

「わたしも。三人目の彼女になりたいなら、わたしたちに会ってからってことだよね」

「そうですね。わたしと萌ちゃんみたいにお互いをわかって認め合ってるんですから。律子さんにも会ってみたいですから」

「咲恵ちゃんが、今度帰ってくる時にわたしも休みを取ってみんなで会ってみてからだね」

 この二人は、ボクが思っている以上に連携が取れているみたいだ。

「咲恵さんは、帰ってくる予定があるのですね」

「はい。最重要案件ですから。それに、瑞樹さんもあまりほっとけないですから」

「瑞樹に会いたいからって、素直に言えばいいのに」

「もう、萌ちゃんったら」

「予定が決まったら、連絡をくださいね」

 グループLINEが終わり、ボクは額に薄らかいた汗を手で拭った。律子とのことにやましいところはないのだけれども、節子が絡む部分は深くつつかれるとまずいことだらけだ。平然と嘘をつく男にはなりたくないのだけれども、ここは平静を装うしか道はないような気がする。

 次の日、二人の彼女達の意向を律子に伝えた。

「そう言われるのは、当然のことだと思うしわたしも先輩方には会ってみたいわ」

「まあ、律子さんなら大丈夫だと思います」

「わたしだって、それほど度胸があるわけではないんだからね」

「わかってますよ。弱き者は強がりも大事ですからね」

「ところで、次はいつ会ってくれるつもりなのですか」

「考えておきます」

「なるべく早く会いたいわね」

 律子は、一つハードルを越えて勢いが付いているのだろう。暫定的三人目の彼女なのだから、そんなにホイホイ会うわけにはいかないのだ。それに、他にも問題があるのだから。色々と考えていると、問題の張本人から連絡が来た。

「明後日、会いたいの。大丈夫よね」

 ボクの都合なんて、関係ないと言わんばかりの言葉が並んでいる。

「会えないって言ったら」

「律子とは、約束しなかったんでしょ。だったら空いてるわよね。午前中に迎えに行くから。その家じゃ、安心してあえぎ声も上げられないからホテルに行きましょう。ホテル代は出してあげますから」

 たくさんの圧力が詰まったLINEに、ボクは白旗を揚げるしかなかった。
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