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190.課題
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三人で食事をして、ボクはこの後何かあることを少し期待していた。けれども、片づけが終わると咲恵と萌は、ボクに言った。
「瑞樹さん、わたしたちもう寝ますね。明日のこともあるので」
「瑞樹も、明日のことがあるし早く寝てね」
そう言うと、彼女達は自分たちの部屋に行ってしまった。取り残されたボクは、少し悶々とした気持ちで、リビングの灯りの下で佇んだ。咲恵と萌音は、体だけの関係ではないので、もちろんこういうことがあっても当たり前なのだ。この二人は、ボクにとっては特別なのだから。期待で少し大きくなりかけていたもう一人のボクに慰めの言葉をかけた。
次に日の朝、溢れんばかりの光と蒸し暑さでボクは目を覚ました。
「おはよう、瑞樹さん。よく眠れましたか」
「瑞樹、おはよう」
「ああ、おはよう」
リビングに行くともう二人は起きていて、朝食の準備をしていた。
「ご飯を食べたら、支度して出ないとですね」
「ああ、そうだね」
「瑞樹、昨日一人で寝させたから拗ねてるの」
「違うよ」
悶々として、なかなか寝付けなかったとはとても言えないので、適当にごまかした。
三人で家を出て、眩しい太陽の日差しの下、待ち合わせの駅に向かう。目的の駅の改札を出て、久しぶりの駅前の広場に行く。
「初めて、瑞樹さんと出会ったのは、ここでしたね」
「わたしもだった」
二人は、なつかしそうに人が行き交う駅前を見渡した。物語は、ここから始まったのだと思っていると、聞き覚えのある声がした。
「おはようございます」
声のした方向を見ると、律子と節子がこちらに向かって来るのが見えた。
「おはようございます。律子さん、お母さん」
ボク達の前まで来た二人は、改めてボク達に挨拶をした。
「今日は、よろしくお願いします」
「娘をよろしくお願いしますね」
二人はボク達に、頭を下げた。
「おはようございます。わたし、咲恵です。よろしくお願いします」
「あっ、おはようございます。わたしが、萌です。よろしく」
「あなたたちが、瑞樹さんの彼女さんなのですね。わがままな娘ですが、今日はよろしくお願いしますね」
節子は、咲恵と萌を興味深く見つめて頭を下げた。
「大丈夫ですよ。安心してください。ちゃんと、律子さんのお手伝いはさせていただきますから」
「わたし、力はあるんで大丈夫ですから」
「お母さん、ボクも付いているし、大丈夫ですよ」
完全には納得していないのだろう顔をしている節子が、ボクに視線を向ける。
「お母さん、もういいから帰っていいから」
なかなか律子の側を離れようとしない節子に、しびれを切らして帰るように促す。
「じゃあ、帰る時に連絡しなさいね」
そう言うと節子は、何回も振り返りながらこの場を去った。
「もう、すみませんね。心配性な母親な者で。でも、実はわたしもドキドキしているんですが」
普段とは違った笑顔で、律子はボク達に言った。
「お母さんは、どこでもあんな感じですよ。わたしたちがいるので安心してください」
咲恵は、律子と同じ目線の高さにしゃがんで笑顔で言った。
「さあ、行きましょうか」
ボクは、三人の女性を促してホテルに続く道へと進んだ。
「瑞樹は、『お母さん』って呼んでるんだ」
萌は、さりげなくボクの耳元に近づいて囁いた。
「他に呼び方が、わからなくて」
「ふーん。そうなんだ。瑞樹を見る目が、ちょっと違ってたように見えたけど」
「それは、大事な娘の彼氏になろうとしてるヤツだからじゃないの」
こういう時に、勘の働く萌は恐ろしいと、背筋に汗が流れた。車椅子の男女に、若い二人の女の子という集団は、傍目から観るとどう映っているのだろうか。わずかに緊張感を漂わせながら、想い出が多く詰まったホテルにたどり着く。スモークの入ったドアに、写ったボク達はゆっくりと薄暗いエントランスに消えていった。バリアフリーの部屋番号をタッチして、チェックインを済ますとエレベーターに乗ろうとする。
「一度には乗れませんね」
「先に、咲恵さんと律子さんが上がって。ボク達は後から行くから」
当たり前だけれども、思っていなかった事態に少しおかしくなった。
「なに、笑ってるの」
「いや別に」
萌とボクが、遅れて上がると部屋の前で待っていた二人と合流してみんなで部屋に入った。
「へぇ、こんな感じなのね」
「感想は、わたしたちと一緒ですね」
心置きなく会話出来る領域に入って、女性達はお喋りを始めた。
「改めまして、律子、もう少しで30歳です。よろしく、先輩方」
「先輩と呼ばれるほどのもんじゃないですし。わたしたちの方が、年下ですから」
「順番で言えば、そうなんだけど。わたしは、そういうのは好きではないわ」
「じゃあ、名前で呼び合うってことでいいですか」
「わたしは、それでいいです」
「わたしも」
女性陣は、最初の課題をクリアしたようだった。さあ、これからどうするのだと思っていると、萌が珍しく率先して意見を出した。
「ラブホに来た限りは、エッチする前提だとは思うけれど、そこはどうなの」
「もちろん、わたしもそのつもりで来てます」
「そう、昨夜は瑞樹にもお預けワンにしたから、そっちの方は万全だと思う。ひとりずつ1回でもいけるはず。だよね、瑞樹」
「えっ、ああそうだね」
萌は、ボクのハードルを一気に上げた。
「じゃあ、まずやることは、どういう感じで服を脱いでいくかだよね」
「そうね、先にわたしたちが脱いでから、律子さんを脱がしてあげるか、律子さんを脱がしてから、わたしたちが脱ぐかですよね」
「わたしは、脱がせてもらう方だから、お二人のいい方にしてもらって結構ですよ」
律子は、いつもとは違って遠慮がちに言う。
「わたしは、平等にリレー方式で脱いでいくのがいいと思う」
「リレーって」
「どんな」
「お互いの服を、お互いが一枚ずつ脱がしていったら、誰が恥ずかしいとかないと思う」
萌は、萌なりに考えてきた意見を言っているのだろう。
「ああ、それはいいかもですね」
「それなら、みんながだんだん脱いでいくことになるからいいですね」
二つ目の課題を解決したと言わんばかりに、ボクを見て萌が言った。
「瑞樹、あんたは自分で脱ぐんだよ」
「瑞樹さん、わたしたちもう寝ますね。明日のこともあるので」
「瑞樹も、明日のことがあるし早く寝てね」
そう言うと、彼女達は自分たちの部屋に行ってしまった。取り残されたボクは、少し悶々とした気持ちで、リビングの灯りの下で佇んだ。咲恵と萌音は、体だけの関係ではないので、もちろんこういうことがあっても当たり前なのだ。この二人は、ボクにとっては特別なのだから。期待で少し大きくなりかけていたもう一人のボクに慰めの言葉をかけた。
次に日の朝、溢れんばかりの光と蒸し暑さでボクは目を覚ました。
「おはよう、瑞樹さん。よく眠れましたか」
「瑞樹、おはよう」
「ああ、おはよう」
リビングに行くともう二人は起きていて、朝食の準備をしていた。
「ご飯を食べたら、支度して出ないとですね」
「ああ、そうだね」
「瑞樹、昨日一人で寝させたから拗ねてるの」
「違うよ」
悶々として、なかなか寝付けなかったとはとても言えないので、適当にごまかした。
三人で家を出て、眩しい太陽の日差しの下、待ち合わせの駅に向かう。目的の駅の改札を出て、久しぶりの駅前の広場に行く。
「初めて、瑞樹さんと出会ったのは、ここでしたね」
「わたしもだった」
二人は、なつかしそうに人が行き交う駅前を見渡した。物語は、ここから始まったのだと思っていると、聞き覚えのある声がした。
「おはようございます」
声のした方向を見ると、律子と節子がこちらに向かって来るのが見えた。
「おはようございます。律子さん、お母さん」
ボク達の前まで来た二人は、改めてボク達に挨拶をした。
「今日は、よろしくお願いします」
「娘をよろしくお願いしますね」
二人はボク達に、頭を下げた。
「おはようございます。わたし、咲恵です。よろしくお願いします」
「あっ、おはようございます。わたしが、萌です。よろしく」
「あなたたちが、瑞樹さんの彼女さんなのですね。わがままな娘ですが、今日はよろしくお願いしますね」
節子は、咲恵と萌を興味深く見つめて頭を下げた。
「大丈夫ですよ。安心してください。ちゃんと、律子さんのお手伝いはさせていただきますから」
「わたし、力はあるんで大丈夫ですから」
「お母さん、ボクも付いているし、大丈夫ですよ」
完全には納得していないのだろう顔をしている節子が、ボクに視線を向ける。
「お母さん、もういいから帰っていいから」
なかなか律子の側を離れようとしない節子に、しびれを切らして帰るように促す。
「じゃあ、帰る時に連絡しなさいね」
そう言うと節子は、何回も振り返りながらこの場を去った。
「もう、すみませんね。心配性な母親な者で。でも、実はわたしもドキドキしているんですが」
普段とは違った笑顔で、律子はボク達に言った。
「お母さんは、どこでもあんな感じですよ。わたしたちがいるので安心してください」
咲恵は、律子と同じ目線の高さにしゃがんで笑顔で言った。
「さあ、行きましょうか」
ボクは、三人の女性を促してホテルに続く道へと進んだ。
「瑞樹は、『お母さん』って呼んでるんだ」
萌は、さりげなくボクの耳元に近づいて囁いた。
「他に呼び方が、わからなくて」
「ふーん。そうなんだ。瑞樹を見る目が、ちょっと違ってたように見えたけど」
「それは、大事な娘の彼氏になろうとしてるヤツだからじゃないの」
こういう時に、勘の働く萌は恐ろしいと、背筋に汗が流れた。車椅子の男女に、若い二人の女の子という集団は、傍目から観るとどう映っているのだろうか。わずかに緊張感を漂わせながら、想い出が多く詰まったホテルにたどり着く。スモークの入ったドアに、写ったボク達はゆっくりと薄暗いエントランスに消えていった。バリアフリーの部屋番号をタッチして、チェックインを済ますとエレベーターに乗ろうとする。
「一度には乗れませんね」
「先に、咲恵さんと律子さんが上がって。ボク達は後から行くから」
当たり前だけれども、思っていなかった事態に少しおかしくなった。
「なに、笑ってるの」
「いや別に」
萌とボクが、遅れて上がると部屋の前で待っていた二人と合流してみんなで部屋に入った。
「へぇ、こんな感じなのね」
「感想は、わたしたちと一緒ですね」
心置きなく会話出来る領域に入って、女性達はお喋りを始めた。
「改めまして、律子、もう少しで30歳です。よろしく、先輩方」
「先輩と呼ばれるほどのもんじゃないですし。わたしたちの方が、年下ですから」
「順番で言えば、そうなんだけど。わたしは、そういうのは好きではないわ」
「じゃあ、名前で呼び合うってことでいいですか」
「わたしは、それでいいです」
「わたしも」
女性陣は、最初の課題をクリアしたようだった。さあ、これからどうするのだと思っていると、萌が珍しく率先して意見を出した。
「ラブホに来た限りは、エッチする前提だとは思うけれど、そこはどうなの」
「もちろん、わたしもそのつもりで来てます」
「そう、昨夜は瑞樹にもお預けワンにしたから、そっちの方は万全だと思う。ひとりずつ1回でもいけるはず。だよね、瑞樹」
「えっ、ああそうだね」
萌は、ボクのハードルを一気に上げた。
「じゃあ、まずやることは、どういう感じで服を脱いでいくかだよね」
「そうね、先にわたしたちが脱いでから、律子さんを脱がしてあげるか、律子さんを脱がしてから、わたしたちが脱ぐかですよね」
「わたしは、脱がせてもらう方だから、お二人のいい方にしてもらって結構ですよ」
律子は、いつもとは違って遠慮がちに言う。
「わたしは、平等にリレー方式で脱いでいくのがいいと思う」
「リレーって」
「どんな」
「お互いの服を、お互いが一枚ずつ脱がしていったら、誰が恥ずかしいとかないと思う」
萌は、萌なりに考えてきた意見を言っているのだろう。
「ああ、それはいいかもですね」
「それなら、みんながだんだん脱いでいくことになるからいいですね」
二つ目の課題を解決したと言わんばかりに、ボクを見て萌が言った。
「瑞樹、あんたは自分で脱ぐんだよ」
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