40 / 75
40話 Cecil
しおりを挟む
七海さんの告白は僕と陽菜さんに大きな衝撃を与えた。
七海さんが嘘をついているとは思えないが、それでもまだ僕は信じられずにいた。
あの時教室に居たという事は、桃恵先生は僕と翔さんが入れ替わる事を事前に知っていたのだろうか。
僕達に協力してくれていたのには何か裏があるのか。
桃恵先生を疑いたく無い。
その気持ちは陽菜さんも一緒だった。
「そんな・・・ウソでしょ・・・。
だって桃恵先生はいつだって私達の味方だったんだよ?」
「僕も信じられません。
もしかしたら、七海さんの見間違いって可能性はありませんか?」
「ううん。あれは見間違いじゃない。
桃恵先生がいつも身に着けている珍しい柄のペンダントもはっきり見えたから。」
「そうですか・・・」
「セシルくんどうする?
桃恵先生に事実関係を確認する?」
「僕はこの件を桃恵先生に問い質すのは得策じゃないと思います。
桃恵先生が僕達に話せなかったのには何か理由があるかもしれません。
それともう一つ、この事はあまり考えたく無いのですが・・・
もし仮に僕達に対して、密かに悪意を持っているのであれば警戒される恐れがあります。
暫くは桃恵先生の出方を伺いつつ、これまで通りの関係を続けましょう。」
「そうね。今はお互いが疑心暗鬼になってはダメだよね。」
「そうですね。この事は今は忘れましょう。」
僕自身これ以上桃恵先生を疑う事に耐えられなかった。
いつでも話すチャンスはあった筈なのに、どうして桃恵先生は今までこんな大事な事を話してくれなかったんだろう。
その理由が知りたい反面、知るのが恐かった。
「実は七海さんに聞きたい事があるんです。
亡くなられたおじいさんが監督を務められた映画。
"ANOTHER WORLD STORIES"について、おじいさんから何か聞いている事はありませんか。
些細な事でも良いのでストーリーでも何でも思い出す事があれば教えて下さい。」
「そうね・・・
私も映画を観たのが随分昔で、記憶が曖昧なの。
あの映画はおじいちゃんの遺作で、二部構成の物語。
私が知ってるのは一部だけ。
一部は勇者の冒険譚。
色々な人との出会いや別れを経験して、一人の少年が立派な勇者へと成長して、世界を救ってハッピーエンドを迎えるの。
だけど、最初の構想では一部のラストはハッピーエンドじゃ無かったと思う。」
「えっ!?最初の構想って一体どんな物だったんですか?」
「ごめんなさい。初期のシナリオで勇者が迎えた結末は、私にも教えてくれなかったの。
おじいちゃんは、その結末で進めるべきかどうか、ずっと悩み苦しんでた。
その様子を見ていると、まるでその結末を、おじいちゃん自身が望んで考えたんじゃ無いって思える程だった。」
「そうだったんですね・・・」
「その苦しんでた時期に、おじいちゃんが珍しく、昔話をしてくれたの・・・
『この作品は、儂の監督人生の集大成じゃ。
思えば、儂はこの作品を作る為に、映画監督を志そうと思ったんじゃ。
これから結末は変えるかもしれぬが、それでも儂は彼との約束を果たせたと言えるじゃろうか?
七海。お前がまだ幼い頃、寝る前によく話してやった勇者の冒険物語。憶えているか?
儂は救いの無いバットエンドが大嫌いで、希望の持てるハッピーエンドが好きじゃった。
お前は、物語に登場する勇者が大好きで、勇者が悲しむ時には一緒になって悲しみ、勇者が喜ぶ時には一緒になってベッドを飛び跳ねて喜んでおったな。
どんな困難にも負けず、人々に勇気と希望を与える勇者。
いつの日かきっと、お前の前にも勇者が現れて、素敵な冒険に一緒に連れて行ってくれると言ったら、いつ来るの?って目を輝かせて言うもんだから、儂はその度に冷や汗をかいてたんじゃぞ。
もし本当に、お前の前に勇者が現れたら、その時は彼にこう伝えてくれ・・・
"ANOTHER WORLD STORIES"は只の映画では無い。
ここには、ヒントでは無く、幾つかある中の一つの答えを残したと。』
そう言っておじいちゃんは、何かに取り憑かれた様に、シナリオを書き直し始めたの。」
七海さんが嘘をついているとは思えないが、それでもまだ僕は信じられずにいた。
あの時教室に居たという事は、桃恵先生は僕と翔さんが入れ替わる事を事前に知っていたのだろうか。
僕達に協力してくれていたのには何か裏があるのか。
桃恵先生を疑いたく無い。
その気持ちは陽菜さんも一緒だった。
「そんな・・・ウソでしょ・・・。
だって桃恵先生はいつだって私達の味方だったんだよ?」
「僕も信じられません。
もしかしたら、七海さんの見間違いって可能性はありませんか?」
「ううん。あれは見間違いじゃない。
桃恵先生がいつも身に着けている珍しい柄のペンダントもはっきり見えたから。」
「そうですか・・・」
「セシルくんどうする?
桃恵先生に事実関係を確認する?」
「僕はこの件を桃恵先生に問い質すのは得策じゃないと思います。
桃恵先生が僕達に話せなかったのには何か理由があるかもしれません。
それともう一つ、この事はあまり考えたく無いのですが・・・
もし仮に僕達に対して、密かに悪意を持っているのであれば警戒される恐れがあります。
暫くは桃恵先生の出方を伺いつつ、これまで通りの関係を続けましょう。」
「そうね。今はお互いが疑心暗鬼になってはダメだよね。」
「そうですね。この事は今は忘れましょう。」
僕自身これ以上桃恵先生を疑う事に耐えられなかった。
いつでも話すチャンスはあった筈なのに、どうして桃恵先生は今までこんな大事な事を話してくれなかったんだろう。
その理由が知りたい反面、知るのが恐かった。
「実は七海さんに聞きたい事があるんです。
亡くなられたおじいさんが監督を務められた映画。
"ANOTHER WORLD STORIES"について、おじいさんから何か聞いている事はありませんか。
些細な事でも良いのでストーリーでも何でも思い出す事があれば教えて下さい。」
「そうね・・・
私も映画を観たのが随分昔で、記憶が曖昧なの。
あの映画はおじいちゃんの遺作で、二部構成の物語。
私が知ってるのは一部だけ。
一部は勇者の冒険譚。
色々な人との出会いや別れを経験して、一人の少年が立派な勇者へと成長して、世界を救ってハッピーエンドを迎えるの。
だけど、最初の構想では一部のラストはハッピーエンドじゃ無かったと思う。」
「えっ!?最初の構想って一体どんな物だったんですか?」
「ごめんなさい。初期のシナリオで勇者が迎えた結末は、私にも教えてくれなかったの。
おじいちゃんは、その結末で進めるべきかどうか、ずっと悩み苦しんでた。
その様子を見ていると、まるでその結末を、おじいちゃん自身が望んで考えたんじゃ無いって思える程だった。」
「そうだったんですね・・・」
「その苦しんでた時期に、おじいちゃんが珍しく、昔話をしてくれたの・・・
『この作品は、儂の監督人生の集大成じゃ。
思えば、儂はこの作品を作る為に、映画監督を志そうと思ったんじゃ。
これから結末は変えるかもしれぬが、それでも儂は彼との約束を果たせたと言えるじゃろうか?
七海。お前がまだ幼い頃、寝る前によく話してやった勇者の冒険物語。憶えているか?
儂は救いの無いバットエンドが大嫌いで、希望の持てるハッピーエンドが好きじゃった。
お前は、物語に登場する勇者が大好きで、勇者が悲しむ時には一緒になって悲しみ、勇者が喜ぶ時には一緒になってベッドを飛び跳ねて喜んでおったな。
どんな困難にも負けず、人々に勇気と希望を与える勇者。
いつの日かきっと、お前の前にも勇者が現れて、素敵な冒険に一緒に連れて行ってくれると言ったら、いつ来るの?って目を輝かせて言うもんだから、儂はその度に冷や汗をかいてたんじゃぞ。
もし本当に、お前の前に勇者が現れたら、その時は彼にこう伝えてくれ・・・
"ANOTHER WORLD STORIES"は只の映画では無い。
ここには、ヒントでは無く、幾つかある中の一つの答えを残したと。』
そう言っておじいちゃんは、何かに取り憑かれた様に、シナリオを書き直し始めたの。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~
仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。 そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。
しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。
ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。
武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」 登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。
これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる