ANOTHER WORLD STORIES

佳樹

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51話 安里翔

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俺達はロマリオンのワープ魔法で一瞬の内にヴァリア城から少し離れた森へと辿り着いた。
城の前にワープする事も可能だったそうだが、それでは余りにも危険過ぎるとの判断から、ロマリオンが独断で決めたのだ。
森を進み、城の周辺に辿り着いたが、やはり相変わらず人の気配は無かった。
それだけならまだしも、前に来た時には、魔物の群れが城門を守る様にびっしりと配置されていたが、今回は一匹も見当たらない。
その静けさが寧ろ恐ろしく、魔物達は何処からかひっそりと俺達を狙っているのでは無いかと思わせる程だった。

「張り切って来た割には、魔物が一匹も居なくて拍子抜けだぜ。この調子だと楽にゲートを見つけられそうだな。」
イワンは警戒心を解き、すっかりリラックスムードだった。
「楽観視するのは早計に過ぎるぞ。敵は息を潜めて私達が来るのを待ち構えているかもしないのだ。」
ロマリオンはくれぐれも周囲の警戒を怠らない様にと注意を促した。

「そうだ。アリシアの透視のディバインの魔法で、外から城内の様子を探る事は出来ないかな?」
「そうね・・・。50m位の範囲だったら、中の様子を観通す事が出来るわ。」
「それは助かる。早速やってくれないか?」
「分かったわ。任せて翔!」
アリシアは得意気に言って見せたが、まさか万引き犯としての能力がこんな所に生かされるとは思わなかった。
アリシアはこの魔法を悪用し、ブティックを訪れた時には、店員が隠しているショーケースの鍵を見事に探し当て、幾つもの難航不落のセキュリティーを突破して来たのだ。
俺はこれまでの旅の経験で、無駄な物は何一つとして無かったんだとしみじみと感じた。

アリシアは呪文を唱え、慣れた様子で城内の様子を確認し始めた。
「やっぱり中には誰も居ないみたい。それに扉の閂も掛かっていない様ね。」
「そうか。魔物は既に我々が来ることを予想し、態勢を整えているかもしれぬな。ならば正面から入ろうが何処から入ろうが同じ事であろう。」
「もう覚悟は決めたんだ!ここは正々堂々と正面突破しよう!」
「そうだな。では、敵が奇襲を掛けて来る可能性も否めないから、私が先頭に立って道を切り開くとしよう。」
ロマリオンは剣を構えて言った。
「おいおい、ちょっと待ってくれよ!」
イワンが唐突に割って入った。
「何もかも二人で勝手に決めやがって!入る順番は早い者順で良いのか?だったら俺は一番逃げ易い最後尾に・・・」
アリシアは真っ先に冷ややかな目でイワンを睨み付けた。
「いや、違う!決して一人だけ逃げる為では無いぞ。これは万が一ピンチに陥った時に、一番足の速い俺が誰かに助けを呼びに行く為の戦略的な布陣だ。」
アリシアはイワンに何か言いたそうだったが、こんな所で揉める訳には行かなかったから、俺はアリシアを制した。
「分かったよ。俺もロマリオンと並んで二人で先陣を切る。だからイワンとアリシアは後ろからそれに続いてくれ。」

ロマリオンと俺は扉を開き、アリシアとイワンもそれに続いて城内へと足を踏み入れた。
アリシアの言った通り、魔物が居る気配はしない。

"バタン!"

後ろを振り返ると、突然、今入って来たばかりの扉が独りでに閉まっていた。
イワンはパニックになり、大声で叫びながら扉へと駆け戻った。
力任せに開こうとするも全くビクともしない。
俺とロマリオンも扉を開けようと必死に試みたが全く動かない。

そして暫く考えた末にロマリオンが言った。
「この先、何が起こるか分からないから退路は確保しておきたかったのだが、こうなってしまっては仕方ない。前へ進むしか無いな。」
前へ進もうとしたロマリオンのマントの袖を後ろからイワンが強い力で引っぱった。
「ロマリオン!あんたは不死身だから大丈夫だろうけど、こっちは生身の中年なんだ!
前へ進むしか無いって格好良い事言ってるけど、言い方を変えれば、俺達は城に閉じ込められて袋のネズミ状態じゃないか!
俺は本当はこんなトコ来たく無かったんだよぉーーー!帰りたいよぉーーー!」
イワンはもう十分いい年なのに、地べたに座り込み、べそをかきながら言った。
「まだ魔物にも遭遇して無いのに何言ってんの!この意気地なしのモヒカン頭!」
「おいおい、アリシア。幾ら何でもそれは言い過ぎじゃないのか?」
俺はイワンが居た堪れなくなり、ついつい庇ってしまった。
「このモヒカン頭はこれ位きつく言わないと分かんないのよ!そうやって翔がイワンを甘やかすからこうなっちゃうのよ!」
イワンは捨てられた子猫の様な潤んだ瞳で、縋る様にして俺を見つめていたが、俺はその瞳を見てると何だか段々腹が立って来た。
「我儘言うなイワン!いいから行くぞ!」

俺達は周囲を警戒しながら、ロマリオンが気になっている部屋へと向かって先を進んだ。
二階へと続く階段の踊り場に差し掛かった時に、不意にロマリオンの足が止まった。

その視線の先には、一枚の大きな肖像画が飾られていた。
そこに描かれていた人物は俺と同じ位の年恰好だろうか。暗く沈んだ表情で、頼り無い印象を受けた。
そして、その見た目の印象とは不釣り合いな煌びやかな服に身を包み、その頭頂には、これも似つかわしくない豪華絢爛な王冠を載せていた。

"初代城主トレイソン"

「ロマリオン。この人物がどうかしたのか?」
「いや、上手く説明は出来ないんだが、この絵から違和感を感じたのだ。足を止めて済まぬ。私の気のせいかもしれないな。」
俺もロマリオンと同じく、確かにこの肖像画からは違和感を感じていた。しかし、それが何なのかと聞かれたら説明出来ない。


考えても仕方無いから今は先を急ぐとしよう・・・


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