光の中へ

佐崎らいむ

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 家に帰ると、ぱたりとベッドに倒れ込んだ。
 お風呂に入るのも面倒なほど疲れていた。バイト終わりで夜までコニーランドは、20歳にだってちょっときつい。

 時刻はまだ9時前だけど、このまま寝ちゃおうか。そう思ってゴロゴロしていると、スマホに着信があった。
 表示された名前を見て、慌てて起き上がる。
 三沢君だった。

 一応緊急時のシフト交代のためにバイト仲間で番号を交換しているのだけれど、入る時間帯が重ならない三沢君とは今まで一度もやり取りしたことが無い。これからも無いと思っていた。

 なのに、いったいどうしたんだろう。恐る恐る出てみた。

『あの……三沢です。……夜分、すみません、……倉橋さん……ですよね』
 間違い電話だ。倉橋さんは、深夜によく入っている別のバイトの人だ。それも、男の人だ。

「いえ、……」

『あの、本当にすみません、こんな時間に、お願いするのは、すごく申し訳ないんですが……』
 息づかいが苦しそうだ。

「違うんです」

『……あ』

「間違いです。私、里中です。いつも交代する、里中亜実です」

 しばらく沈黙がつづいたあと、三沢君は慌てた様子で何度も謝り、電話を切ろうとしたが、咄嗟に引き止めた。

「体調が悪いんですよね、もしかして朝からずっと寝込んでたんですか? 店長に連絡は?」
 思わず一気に質問を浴びせてしまうと、電話の向こうはまたしばらく沈黙した。

「三沢さん?」

『……今日、別の仕事も休んでずっと寝てたから、夜は行けると思ってたんだけど。でも、ダメみたいなんです。それで……』
 今にも死んでしまいそうな声を聞きながら、色々察した。

 彼は深夜バイトを終えて昼間にも仕事をしている人なのだ。
 そしてこんな具合が悪いのに、この日の深夜のバイトに行こうと思っているような、無謀で自己管理の出来ない人なのだ。
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