光の中へ

(18)

　眩しさに目をしかめた。

　気づくと、窓から朝の陽射しが差し込み、私の顔を直撃していた。

「やばい」
　私は抱き枕にしていたクッションと一緒に、体を起こした。

　背中が痛い。朝まで床に転がって眠ってしまったなんて。何やってんだ私。
　慌てふためきながら顔を上げると、私よりも驚いた顔をした三沢君がベッドの上からこちらを見ていた。
　まだ私がここにいるとは思わなかったのだろう。

　言葉を失くしたまま二人、しばらく見つめ合った。
　こういう時、なんて言えばいいのだろうか。

　薄手のカーテンの隙間からは、相変わらず容赦なく光が差し込んでいる。
　家具もカーペットも、私も、ベッドの上にいる彼も、金色の日差しに包まれて、昨日までとまるで違う世界に来たような感覚だ。

　そういえば、陽の光の中で三沢君を見たのはこれが初めてだった。

「おはようございます」
　取りあえずそう挨拶してみたら、彼は何度か瞬きしたあと、「おはようございます」と返してくれた。

　昨日よりもすっきりした表情をしている。熱が下がったのかもしれない。

「さっき……だれかに魔法をかけられた夢を見てました」

　目をこすりながら、ぼんやりとした声で三沢君が言う。

「ごめんなさい、たぶん私です」

　そう言って笑うと、彼もちょっと首をかしげながら笑ってくれた。
　それだけで胸が温かくなる。

　どんなミラクルが起こっても、もうおかしくない。

　ここから始まるのはたぶん、光あふれる世界。


　（了）