わたしはあなたの隣で幸せに咲く

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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6.アンに誘われてお庭の散歩に出る

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「シャノンお嬢様。まだご無理をなさらないでくださいませ」

「ありがとう、アン。でももう大丈夫だから。こほ」

「ほら! まだ咳が出てます。お嬢様は自分のことをいつもおざなりにされるから心配なんです!」

「そんなことないと思うけど……」

アンは私を聖女か何かと思っているのだろうか。

私はいつだって自分のことばかりだ。だからこそ、周りの人に幸せになって欲しいというわがままを先日もロベルタ公爵様にお願いしたのだ。

そう、あのロベルタ公爵様の前で気を失うという失態を演じてから3日がたった。

すぐに追い出されるかと思ったが、とりあえず今のところ、ロベルタ様から追放の御沙汰はない。

でも私はもう安心した気持ちでいる。

あの日、いつ追い出されてもアンのことだけは何とかして欲しい、というたった一つの願いを、ロベルタ様は叶えて下さると約束してくれたから。

私がいつ追い出されても、この目の前の心優しい少女は助かる。だから何の心配もしてなかった。

「どうされたんですか、お嬢様? じーっと私の顔を見つめられて。あっ、何かついてますか!?」

パタパタと慌てる。その姿はとても可愛いらしく思う。

私も目の前の少女のような純真さがあればいいな、とうらやましく思った。

(まぁ、もちろん、あの日話した内容は、アンには伝えていなかった。知られれば心優しい彼女のことだ。きっと心配をかけてしまうだろう。だから黙っていることに決めたのだ)





しばらく、そんな会話を続けた後、アンが提案してきた。

「お咳は少し心配ですが、お医者様もこもりきりもよく無いとおっしゃっていましたから、少しお庭に出てみませんか? あっ、ただし!」

アンはくれぐれもといった風に、

「絶対に無理しないでくださいよ。お嬢様!」

「心配性ね、アンは。大丈夫よ、無理はしないから」

「はい、そうしてくださいね。私の寿命が縮みますから」

「……」

私なんかのために大げさだな。

本当に、どうして私なんかをこんなに心配してくれるのか分からない。

でも、こういう子がいてくれることは幸せだな、と心から思う。

私は自然と口元を緩める。

すると、アンが私の表情を見て、ポーっと見つめるようにしてきた。

「あっ、いえ、その。失礼しました。ただ、ちゃんと栄養のあるものを食べていらっしゃるからか、お嬢様は最近血色も良くて……その……」

「ああ、そうなの。それで見ていたのね」

「あー、それだけではないんですけど、ね」

「?」

私は首を傾げる。

ともかく、こうして、私はアンに連れられて、お城の庭を少しの間、療養をかねて散歩することにしたのだった。






「奇麗で広いお庭ね。お花もたくさん咲いていて、とても歩ききれないわ」

「はい、お嬢様。でも慌てることないです。長い時間をかけて、ゆっくりと見て回りましょう」

「ええ、そうね」

私は追い出されるから無理だと思うけれど、アンはきっと大丈夫だろう。

そのことに改めて安堵を覚えた。

(ああ、でも本当に奇麗)

伯爵領でも庭にはお金を使っていたと思うけれど、ここは何というかレベルが違うような気がする。

自然な風景も残しながら、庭の美しさが造られているのだ。

完全に区画を整備したお庭を作っていた伯爵領の雰囲気に比べて、ここの庭はなんというか、とてものびのびとしていて、自由な雰囲気がした。

だからだろうか。

今まで実家で。妹と両親から自由をはく奪され、虐げられていた私は、はしたないと思うのだけど、美しくも自由を感じさせるお庭に心が少し踊るのを感じたのだった。

そんな風に、花々の美しさに見とれていると、

「あ、お嬢様、お城の裏手につながる道がありますね」

「あら、本当ね」

隠すように作られた植物のトンネルがあり、それが城の裏手に続いていた。まるで童話の世界に誘う通路のようだ。

「ちょっと行ってみましょうか」

いいのかしら? と思ったが、アンがどうも行きたそうな表情をしていたので、私は彼女の気持ちを汲《く》むことにした。

それに多分だけど、アンはあえて私に色々なものを見せようとしてくれているのだ。

そういう彼女の優しさに、私は何となく気づくことができた。

こういう人の心根《こころね》の優しさに気づけることは、私が唯一誇っていい良い点なのかもしれない。

「いいわ。裏庭にちょっと行くくらいなら、お医者様もお許しくださるはず。でも少しだけよ?」

「はい、もちろん」

アンが微笑んだ。表情がコロコロ変わって可愛らしい。

私たち二人は植物で作られたトンネルを通って裏庭に行く。

ただ、その先で見つけたものに、私とアンはとても驚くことになったのでした。

「こ、これ……」

「凄い。大きい。まさかこれって……伝説の聖獣グリフォン!?」

そう。

目の前には自分より遥かに大きな、生きる伝説であるグリフォンがいたのです。

眠っているようで、目を閉じて、羽毛の上に自分の頭を乗せています。

ですが、その時。

『パチ!』

寝ていたはずのグリフォンが突如目を覚まし、その大きく円らな瞳を開くと、

『クルルルルル!』

高い声を上げながら、私たち二人へと迫ってきたのでした!!

(続きます)
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