6 / 27
6.アンに誘われてお庭の散歩に出る
しおりを挟む
「シャノンお嬢様。まだご無理をなさらないでくださいませ」
「ありがとう、アン。でももう大丈夫だから。こほ」
「ほら! まだ咳が出てます。お嬢様は自分のことをいつもおざなりにされるから心配なんです!」
「そんなことないと思うけど……」
アンは私を聖女か何かと思っているのだろうか。
私はいつだって自分のことばかりだ。だからこそ、周りの人に幸せになって欲しいというわがままを先日もロベルタ公爵様にお願いしたのだ。
そう、あのロベルタ公爵様の前で気を失うという失態を演じてから3日がたった。
すぐに追い出されるかと思ったが、とりあえず今のところ、ロベルタ様から追放の御沙汰はない。
でも私はもう安心した気持ちでいる。
あの日、いつ追い出されてもアンのことだけは何とかして欲しい、というたった一つの願いを、ロベルタ様は叶えて下さると約束してくれたから。
私がいつ追い出されても、この目の前の心優しい少女は助かる。だから何の心配もしてなかった。
「どうされたんですか、お嬢様? じーっと私の顔を見つめられて。あっ、何かついてますか!?」
パタパタと慌てる。その姿はとても可愛いらしく思う。
私も目の前の少女のような純真さがあればいいな、とうらやましく思った。
(まぁ、もちろん、あの日話した内容は、アンには伝えていなかった。知られれば心優しい彼女のことだ。きっと心配をかけてしまうだろう。だから黙っていることに決めたのだ)
しばらく、そんな会話を続けた後、アンが提案してきた。
「お咳は少し心配ですが、お医者様もこもりきりもよく無いとおっしゃっていましたから、少しお庭に出てみませんか? あっ、ただし!」
アンはくれぐれもといった風に、
「絶対に無理しないでくださいよ。お嬢様!」
「心配性ね、アンは。大丈夫よ、無理はしないから」
「はい、そうしてくださいね。私の寿命が縮みますから」
「……」
私なんかのために大げさだな。
本当に、どうして私なんかをこんなに心配してくれるのか分からない。
でも、こういう子がいてくれることは幸せだな、と心から思う。
私は自然と口元を緩める。
すると、アンが私の表情を見て、ポーっと見つめるようにしてきた。
「あっ、いえ、その。失礼しました。ただ、ちゃんと栄養のあるものを食べていらっしゃるからか、お嬢様は最近血色も良くて……その……」
「ああ、そうなの。それで見ていたのね」
「あー、それだけではないんですけど、ね」
「?」
私は首を傾げる。
ともかく、こうして、私はアンに連れられて、お城の庭を少しの間、療養をかねて散歩することにしたのだった。
「奇麗で広いお庭ね。お花もたくさん咲いていて、とても歩ききれないわ」
「はい、お嬢様。でも慌てることないです。長い時間をかけて、ゆっくりと見て回りましょう」
「ええ、そうね」
私は追い出されるから無理だと思うけれど、アンはきっと大丈夫だろう。
そのことに改めて安堵を覚えた。
(ああ、でも本当に奇麗)
伯爵領でも庭にはお金を使っていたと思うけれど、ここは何というかレベルが違うような気がする。
自然な風景も残しながら、庭の美しさが造られているのだ。
完全に区画を整備したお庭を作っていた伯爵領の雰囲気に比べて、ここの庭はなんというか、とてものびのびとしていて、自由な雰囲気がした。
だからだろうか。
今まで実家で。妹と両親から自由をはく奪され、虐げられていた私は、はしたないと思うのだけど、美しくも自由を感じさせるお庭に心が少し踊るのを感じたのだった。
そんな風に、花々の美しさに見とれていると、
「あ、お嬢様、お城の裏手につながる道がありますね」
「あら、本当ね」
隠すように作られた植物のトンネルがあり、それが城の裏手に続いていた。まるで童話の世界に誘う通路のようだ。
「ちょっと行ってみましょうか」
いいのかしら? と思ったが、アンがどうも行きたそうな表情をしていたので、私は彼女の気持ちを汲《く》むことにした。
それに多分だけど、アンはあえて私に色々なものを見せようとしてくれているのだ。
そういう彼女の優しさに、私は何となく気づくことができた。
こういう人の心根《こころね》の優しさに気づけることは、私が唯一誇っていい良い点なのかもしれない。
「いいわ。裏庭にちょっと行くくらいなら、お医者様もお許しくださるはず。でも少しだけよ?」
「はい、もちろん」
アンが微笑んだ。表情がコロコロ変わって可愛らしい。
私たち二人は植物で作られたトンネルを通って裏庭に行く。
ただ、その先で見つけたものに、私とアンはとても驚くことになったのでした。
「こ、これ……」
「凄い。大きい。まさかこれって……伝説の聖獣グリフォン!?」
そう。
目の前には自分より遥かに大きな、生きる伝説であるグリフォンがいたのです。
眠っているようで、目を閉じて、羽毛の上に自分の頭を乗せています。
ですが、その時。
『パチ!』
寝ていたはずのグリフォンが突如目を覚まし、その大きく円らな瞳を開くと、
『クルルルルル!』
高い声を上げながら、私たち二人へと迫ってきたのでした!!
(続きます)
「ありがとう、アン。でももう大丈夫だから。こほ」
「ほら! まだ咳が出てます。お嬢様は自分のことをいつもおざなりにされるから心配なんです!」
「そんなことないと思うけど……」
アンは私を聖女か何かと思っているのだろうか。
私はいつだって自分のことばかりだ。だからこそ、周りの人に幸せになって欲しいというわがままを先日もロベルタ公爵様にお願いしたのだ。
そう、あのロベルタ公爵様の前で気を失うという失態を演じてから3日がたった。
すぐに追い出されるかと思ったが、とりあえず今のところ、ロベルタ様から追放の御沙汰はない。
でも私はもう安心した気持ちでいる。
あの日、いつ追い出されてもアンのことだけは何とかして欲しい、というたった一つの願いを、ロベルタ様は叶えて下さると約束してくれたから。
私がいつ追い出されても、この目の前の心優しい少女は助かる。だから何の心配もしてなかった。
「どうされたんですか、お嬢様? じーっと私の顔を見つめられて。あっ、何かついてますか!?」
パタパタと慌てる。その姿はとても可愛いらしく思う。
私も目の前の少女のような純真さがあればいいな、とうらやましく思った。
(まぁ、もちろん、あの日話した内容は、アンには伝えていなかった。知られれば心優しい彼女のことだ。きっと心配をかけてしまうだろう。だから黙っていることに決めたのだ)
しばらく、そんな会話を続けた後、アンが提案してきた。
「お咳は少し心配ですが、お医者様もこもりきりもよく無いとおっしゃっていましたから、少しお庭に出てみませんか? あっ、ただし!」
アンはくれぐれもといった風に、
「絶対に無理しないでくださいよ。お嬢様!」
「心配性ね、アンは。大丈夫よ、無理はしないから」
「はい、そうしてくださいね。私の寿命が縮みますから」
「……」
私なんかのために大げさだな。
本当に、どうして私なんかをこんなに心配してくれるのか分からない。
でも、こういう子がいてくれることは幸せだな、と心から思う。
私は自然と口元を緩める。
すると、アンが私の表情を見て、ポーっと見つめるようにしてきた。
「あっ、いえ、その。失礼しました。ただ、ちゃんと栄養のあるものを食べていらっしゃるからか、お嬢様は最近血色も良くて……その……」
「ああ、そうなの。それで見ていたのね」
「あー、それだけではないんですけど、ね」
「?」
私は首を傾げる。
ともかく、こうして、私はアンに連れられて、お城の庭を少しの間、療養をかねて散歩することにしたのだった。
「奇麗で広いお庭ね。お花もたくさん咲いていて、とても歩ききれないわ」
「はい、お嬢様。でも慌てることないです。長い時間をかけて、ゆっくりと見て回りましょう」
「ええ、そうね」
私は追い出されるから無理だと思うけれど、アンはきっと大丈夫だろう。
そのことに改めて安堵を覚えた。
(ああ、でも本当に奇麗)
伯爵領でも庭にはお金を使っていたと思うけれど、ここは何というかレベルが違うような気がする。
自然な風景も残しながら、庭の美しさが造られているのだ。
完全に区画を整備したお庭を作っていた伯爵領の雰囲気に比べて、ここの庭はなんというか、とてものびのびとしていて、自由な雰囲気がした。
だからだろうか。
今まで実家で。妹と両親から自由をはく奪され、虐げられていた私は、はしたないと思うのだけど、美しくも自由を感じさせるお庭に心が少し踊るのを感じたのだった。
そんな風に、花々の美しさに見とれていると、
「あ、お嬢様、お城の裏手につながる道がありますね」
「あら、本当ね」
隠すように作られた植物のトンネルがあり、それが城の裏手に続いていた。まるで童話の世界に誘う通路のようだ。
「ちょっと行ってみましょうか」
いいのかしら? と思ったが、アンがどうも行きたそうな表情をしていたので、私は彼女の気持ちを汲《く》むことにした。
それに多分だけど、アンはあえて私に色々なものを見せようとしてくれているのだ。
そういう彼女の優しさに、私は何となく気づくことができた。
こういう人の心根《こころね》の優しさに気づけることは、私が唯一誇っていい良い点なのかもしれない。
「いいわ。裏庭にちょっと行くくらいなら、お医者様もお許しくださるはず。でも少しだけよ?」
「はい、もちろん」
アンが微笑んだ。表情がコロコロ変わって可愛らしい。
私たち二人は植物で作られたトンネルを通って裏庭に行く。
ただ、その先で見つけたものに、私とアンはとても驚くことになったのでした。
「こ、これ……」
「凄い。大きい。まさかこれって……伝説の聖獣グリフォン!?」
そう。
目の前には自分より遥かに大きな、生きる伝説であるグリフォンがいたのです。
眠っているようで、目を閉じて、羽毛の上に自分の頭を乗せています。
ですが、その時。
『パチ!』
寝ていたはずのグリフォンが突如目を覚まし、その大きく円らな瞳を開くと、
『クルルルルル!』
高い声を上げながら、私たち二人へと迫ってきたのでした!!
(続きます)
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。
下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。
アルファポリス様で10話以上に肉付けしたものを読みたいとのリクエストいただき大変嬉しかったので調子に乗ってやってみました。
小説家になろう様でも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる