わたしはあなたの隣で幸せに咲く

初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』

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8.旦那様との初めての朝食 その1

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「ルーダさん、本当にすみませんでした。勝手にロベルタ様の聖獣に乗ってしまうなんて。妻だとしても許されないことを……」

私はしばらくグリフォンちゃんに空の旅の後、地上に下りてきました。

そして、とんでもないことをしてしまったと、思わず顔を青くしたのでした。

グリフォンちゃんの方から乗って欲しいと誘われたとはいえ、相手はロベルタ様の大事な聖獣。

それに無断で乗るなんて許されるわけないのですから。

「これはもう今すぐにでも、お城を出て行かないといけませんよね……」

私は覚悟します。

当然の処罰だと素直に受け止める覚悟をしました。

ですが、

「ほっほっほ! 何をおっしゃいますか、奥様! そのような素晴らしい奇跡を披露しておきながら!」

ルーダさんは逆におかしそうに笑われます。

「え?」

私は意味が分かりません。

「あの、私は無断でロベルタ様の。公爵様の聖獣に乗ってしまったのですが……。いえ、もちろん、乗るように誘われて、なんの躊躇もなく騎乗してしまった私にすべての責任があるわけですけど……」

グリフォンちゃんにも何か処罰が及んだりすることもあるのかと、全責任が自分にあることを明確にしようとします。

でも、

「聖獣様からお誘いですか! ほっほっほ! ならばお断りすれば逆に失礼に当たりましょうな。聖獣様はあなただからこそ、背中に乗ることを許したのですから」

「え? 私だけ、なんですか?」

それは信じられない。

「私になんて。そんな資格も、何も優れたところもないのにどうして?」

私は思わず首を傾げて困惑しますが、

「そういうところですって、お嬢様!」

「はぁ。そういうところって、アン?」

メイドのアンが返事をしてくれましたが、やっぱりよく分からないのでした。

「いやぁ、公爵家も聖女を迎えられて、安泰ですな」

「聖女? 聖女は妹の方なのですが……」

「いやいや、聖女とは本来そう言う意味ではないのですじゃ。と、それはそうと奥様。儂は奥様にご用がありまして、うかがった次第でして」

「ああ、それは失礼しました。お忙しいところ足を運んで頂いたのに待たせてしまってすみません」

「いえいえ。おかげで良いものが見られました。それに奥様が家令の私にそのように親切に接して下さることも儂としては嬉しく思っております」

「それは当然のことだと思いますけど……。この公爵家の家令なのですから」

「ま、そのあたりを分かっていない方々ばかりだったと申しましょうか。むしろ、そういった心遣いが出来る方とお会いしたのは初めてですな」

「は、はぁ」

そんな訳はないだろう。おそらく気を使って言ってくれているのだろうと思う。

これ以上、気を遣わせるのも申し訳ない。

「それで御用というのは?」

「おお、そうでしたな。実はロベルタ様から明日の朝食を一緒にどうかとのお誘いがございました。そろそろ体調も回復してきた時期でございますし、正式な結婚はまだとはいえ、夫婦になる間柄。主様は公務でなかなかお食事を一緒にする機会がありませんが、朝食くらい一緒に食べられるのが良いでしょう」

「え? ロベルタ様が、ですか?」

どういうことだろう? 私は疑問に思う。

アンのことであんな身勝手なお願いをした女だ。その代わり、私のことはいつ放逐してくださっても構わないと言ってある。

だから、私はロベルタ様には蛇蝎だかつの如く嫌われているはずだ。

とすれば、私と朝食をともにする理由というのがよく見えてこない。

(いえ……)

と内心首を横に振る。

(もう十分にロベルタ様にはよくしてもらっている。アンの今後のお世話の他に、お医者様も手配してくれた。お食事もわざわざ部屋に運んできてくださり、その内容も私の体調をおもんぱかったものだった)

それは、今まで実家で虐げられて来た私からすれば、本当に恵まれたものだ。

だからもう十分だし、もし朝食で何を言われても全て聞き入れるつもりだった。

私は幸せだった。

「分かりました。では明日の朝食時に、食堂へ伺わせて頂きますね」

「ええ、奥様。それでは」

ルーダ様が去ってゆきます。

私たちもグリフォンちゃんにお別れを告げて、部屋へと戻りました。



夜になりました。ベッドで眠る準備をアンがしてくれます。

「お嬢様、大丈夫ですか?」

「どうしたの? いきなり?」

「何だか顔色が悪くなっていらっしゃるから。あ、少し熱が出てきていますね」

私の額に手を当てて、アンが言いました。

「明日は大事な公爵様とのお食事ですから、早めに眠られてください」

「ええ、そうね。コホ。ごめんなさい」

「とんでもありません。お嬢様」

明日のロベルタ様との朝食はどのようなものになるだろう。

そのことに思いをはせながら、私は夢の中へと落ちて行ったのでした。
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