学校すら追放された魔法使いの少女は防御魔法しか使えない〜花吸い戦士と弱虫な魔法使いの成り上がり〜

りり

文字の大きさ
2 / 3
1章

ダンジョン攻略を開始する

しおりを挟む

ーー中央広場、女神像前

 眠り眼を擦りながら待ち合わせ場所に着いたニーナは、シャルティの姿を探していた。

「ダメだ。飽きてきた」

 女神像の周りにある池が朝日に照らされキラキラと輝く中、ニーナは見つかんないやと小言をいいながら肩掛けの小さなカバンを開け、紙とペンを取り出す。

「えっとなになに? 見つからなかったから帰って寝る……。じゃなあぁぁい! いるここに!」
「なんだ、いたのか……」

 意気揚々と置き手紙を書いていたニーナに大声で怒鳴るシャルティは、昨日の普段着とは変わって、短剣の刺さった皮のベルトに白いマントも羽織っていた。
 そんな背後から現れたシャルティに、行くならさっさと行こ。と目を瞑りながら呟くニーナ。
 もうニーナの心はお金より睡眠が勝ち始めていたのだ。

「よし! じゃあ行こ! ニーナさんは何もしなくていいから!」
「ん、わかった。おんぶ宜しく」

 歩きたくない。と駄々を捏ねるニーナに、おまかせを! と軽々しくおぶるシャルティ。
 流石戦士だねと無駄の無い腕の筋肉を触りながら、やるねと笑みを浮かべたニーナはぎゅっと目を細める。

「ねぇシャルティ。この服眩しすぎて寝れない。今すぐ服脱いで」
「マントだけならいいよ!?」

 マントもインナーも真っ白なシャルティの体は、神々しい太陽の反射のせいで最早発光体になっていたーー

~~~~~~~~~~~~~~~~

ーー西のダンジョン

 今回の試練として選ばれたのは都市の西側にあるダンジョン。
 数多の冒険者が攻略しているため、マップも完成済み。手順をしっかり追えば何の難しいものは一つも無い、初心者用のダンジョンだ。

「よし! 着いたよ!」
「ん、ほんとだ……」

 背中から降ろされたニーナは、あぁここねと欠伸をしながら入口に近づく。
 森の中にポツンとあるその岩肌のダンジョンは、ニーナの見知ったダンジョンだった。

「……ねぇシャルティ。その試験の合格ってどうやって証明するの?」
「それはもちろん! ボスのドロップアイテムを先生に見せることだよ! あ、安心して! 私が1人で倒すから!」
「なるほどね……」

 ボスの攻略方法は散々勉強してきたんだー! と目を輝かせるシャルティをよそ目に、ニーナはシャルティの背後にある木々を眺めながらため息をついた。

「まぁ、シャルティにまかせるって決めたしね、ちゃんと付いてくよ」
「うんうんまかせて! それじゃあ早速入ろ!」

 先頭を行くシャルティのマントから白い光がこぼれ落ちるのを見ながら、面倒くさいことになりそうだなぁと呟いたニーナは、後ろを再度振り返り、ザワザワと動く木々を再び睨みつけたーー


~~~~~~~~~~~~

ーー1階層

 全3階層で出来ているこのダンジョンは、特に難しいギミックもなく簡単に攻略をすることが可能だ。

「うわぁ、初めてダンジョンに来たけど、やっぱり教科書で見るのとはなんか違うね……! 本物って感じだ」
「まぁ本物だからね……」

 本当に大丈夫かコイツと目を細めるニーナは、周りを見渡しシャルティに声をかける。

「ねぇシャルティ、早速ゴブリンがこっち見てるけど大丈夫?」
「え! どこどこ!」

 1階層最初の広間に着いた2人は、左右にある他の部屋に続く道を見ながら、ヤバいもう挟まれてる! と両サイドのモンスターを見入る。

「それじゃ、後はよろしくシャルティ。私は朝ごはん食べるから」
「え、今!? ま、まぁいいけどねっ!!!」
『ギガガァァァ!!』

 のんびり座りながらサンドイッチを頬張るニーナを横目に、勢いよく飛びかかってきたゴブリンのお腹目掛けて短剣を突き刺すシャルティ。
 これくらい余裕! ともう一体のゴブリンと一気に距離を詰め、短剣を左目に突き刺す。

『ギガガァァァァァァッ!』
「はぁぁぁっ!」

 そのまま力いっぱい剣を突き刺され、頭を貫通したゴブリンは断末魔と共に、黒いオーブとなって消えていった。

「おお、やるね。さすが戦士」
「ふっふーん! 私、やる時はちゃんとやる女の子だから!」

 そう言ってダブルピースを見せるシャルティに、サンドイッチをもぐもぐ食べるニーナは、これなら大丈夫かなとサンドイッチを飲み込み、言葉を続ける。

「そうだシャルティ、昨日聞き忘れてたんだけどステータスカードって持ってないの? 学校に通ってるならもうあるんじゃない?」
「え……! ま、まぁ、あるには、ありますけど!?」

 あからさまな動揺を見せるシャルティは、やっぱり聞かれたかぁと汗をダラダラ流す。

 ステータスカードーー

 それは普通、冒険者登録をしてから貰う物なのだが、魔法学校や戦士学校など、特定の学校に通うものは入学時に与えられるのだ。

「なんだよ、見せてよ」
「……は、はい」

 そんなごにょごにょするシャルティの手から渡されたステータスカードには、こう書かれていたーー


ーーーーーーーーーーーーー
シャルティ・クライン
Lv1

力・1
耐久・1
器用・1
技量・1
敏捷・1
魔力・12

ーーーーーーーーーーーーー

「え……。何このステータス……。ってかシャルティまさか…………」
「はい! ステータス更新してません! すみませんでしたっ!!」
「……………………」

 違法だったーー

 この世界のステータス管理は特に厳しく、常に更新をし続けなければならない。遅くても1週間以内の更新を義務付けられているのだが、シャルティには更新をする手段がなかったのだ。

「だ、だってぇ! 魔法使いの友達いないし! 先生にそれがバレるの恥ずかしくて頼めなかったし! こうするしか無かったんだもん!」
「…………惨いな」

 ステータス更新に必要なものはたった一つ。

 『魔法』である。

 これは世界で魔法が発達し始めた頃の初期の魔法。人のステータスを数値化することが出来るというものだ。
 カード自体の発行には許可が必要だが、更新自体は誰がやってもいい事となっている。

「ごめんねシャルティ。私が更新してあげれれば良かったんだけど……」
「え! いいよいいよ! 私が悪いし!」

 さすがになんか申し訳ないと頭を下げたニーナは、もちろんそんな魔法すら使えないのである。

「よ、よーし! じゃ、張り切って探索続けよ~!」
「…………」

 お互いの傷に塩を塗った2人は、2階層へと続く階段を目指すーー


「なんで、魔力だけちょっと高かったんだろ」



~~~~~~~~~~~~~~~


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...