『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人

文字の大きさ
26 / 58
今日もアクアオッジ家は平和です

26 ①トウモロコシ畑からボイコット運動始まるよ

しおりを挟む
 
 

 ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。

 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なく──



 ウィルフレッドは悩んでいた。
 誰も来ないであろう、ジャングルのようになったトウモロコシ畑の中で。

 


 アクアオッジ家のトウモロコシは大人の身長を優に超え、規則正しく植えられ実っている。風が吹くとまるで緑の海のようにさわさわと揺らめいて美しい光景だと評判だし、かくれんぼにはもってこいだ。
 いや、そうじゃない。
 ウィルフレッドはかくれんぼをしているわけではなかった。

 秋になったら学園に入学しなければならない。
 貴族の子息令嬢は十五歳から学園に通うのがごくごく一般的だった。
 辺境伯といえばれっきとした上位貴族である。
 農業で有名になっていたとしても、だ。

 ウィルフレッドは学園には行きたくなくてボイコット運動を起こしていた。
 現在トウモロコシ畑の中にいるのは絶賛運動中だから。

 元々彼はひと気のない場所で、精霊たちがおしゃべりするのを聞きながら、ぼーっとするのが好きだった。

 メリル以外、他の人には精霊たちが見えないし、声も聞こえない。
 学園で同じことをしたら、たちまち虚空に向かって話しかけているヤバい奴の出来上がりだと、ウィルフレッドも理解している。

 王都にある学園のため、この北の辺境の地から通うという選択肢はなかった。遠すぎるので寮に入るしかない。そんな場所で、今まで通り精霊たちが満足に過ごせるんだろうか。

 集団生活にうまくなじめる気がしない。
 勉強なら父さまが教えてくれるし、このままでいいんじゃないのかなあ。


 今も精霊たちが不思議そうにしながらもおしゃべりを止めない。

ウィンディーネ(水):"ウィル、アドリアナが呼んでたのに"

ライトネス(光):"そうよぉ。どうしたの? 分かった! コドクを愛するってやつ?"

 アドリアナとは母の名前だ。
 今日は学園に通うための制服を仕立てに王都に行く日なので、ボイコット運動を行うことに決めていた。『制服がなければ学園に通わなくてもいいんじゃないか』そんな虫のいい考えだった。


 トウモロコシ畑の中で悶々としながらうずくまっていると、

シルフィード(風):"あっ! 見つかった"

サラマンダー(火):"かくれんぼはおわり、だな"


「みーつけた」


 ガサゴソと葉っぱをかき分けて双子の妹メリルがやってくる。
 いつでもどこでもこの妹にだけは居場所がバレてしまう。
 
「この裏切り者め」ウィルは毒づいた。

「なーに言ってんの。母さまが早く来いって!」

「……何で買収されたんだよ」

「王都に着いたら、評判になってるっていう焼き串の買い食い……おっとと」

 メリルだって毎日のように学園には行きたくないって言ってたくせに。
 ウィルフレッドは頭を抱えたくなった。
 買い食いで僕売られたのか。安いなー……
 相変わらずこの妹は買収に弱すぎる。特に食べ物関係は防御力ゼロじゃんか。

「わたしだって学園なんてほんとは行きたくないんだよ。リディア姉さまだって行ってないのに」
 二つ上の姉のことを持ち出すメリル。

 そりゃ、リディア姉さまはとんでもない【スキルツリー】の持ち主だから、学園になんて通わせてる場合じゃないだろ。ウィルフレッドは思った。
 
 いや、待てよ。僕のスキルが学園に向かないってみんなが思えば学園に行かなくて済むんじゃないか!?
 メリルにも一応聞いてみよう。

「……メリル。学園に通いたくないよね?僕と気持ちは一緒だよね?」

「うん。勉強は父さまので充分だし=(勉強したくないし)、何より学園にはあの腹黒王子……とっ、ともかく! とりあえず王都にだけは行こう! メイベルにも会えるし。アーサー兄さまを袖にした理由をとうとう教えてもらえるんだよ!」

 むう。それは僕もちょっと興味がある。
 兄さまを振るなんて、それだけですごい女性だもの。
 どんな理由だったのか、聞かせてもらえるなら王都に行く価値はある……

ライトニング(雷):"アドリアナが雷落とす前に顔出したほうがいいだろ"

(うへ……)
 ウィルフレッドは、角の生えた母の幻影が見えたような気がした……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...