おれのツガイ

青空ばらみ

文字の大きさ
上 下
11 / 23

11. 当たり人

しおりを挟む
 砂金か塊どちらでもいいのか?
 金が選べるというのなら……

「そうだな。もっと大きな塊も、見てみたいなぁ」

 どれだけどんなモノを持って帰ってきたのか、ちょっと気になって少しふざけたように聞いてみた。

「ライ。大きいって、どれくらい?」

 なにっ?!

 ホントにさっき見た金の塊よりも、もっと大きな塊を持って帰ってきてるのか?
 それなら。
 
「そうだな…… ガントの顔、ぐらいだな」
「おれの顔か?」

 ガントが口元を少し上げてパールを見た。
 ソードもおれの意図に気づいたようで、笑いながら告げる。

「パール、けっこう大きいですよ? ふっふ」
「探しておきます……」
「「「あるのかっ!!」」」

 パールの返答に三人でおどろいていると……

「あったら、いりますか?」
「いる!」

 すぐ、返事しておく。
 
 ガントが辛抱できなかったようで。

「パール。おれも向こうの国の金がほしい! さっきの小さな金の塊でいいから、両替してくれないか?」

 さっきの小さな金の塊って…… ガントおまえ……

 ガントとおれにとって、向こうの国は自分たちの
ルーツでもあるからな。
 ガントがその国のモノをほしがる気持ちはわかる。
 本気で言っているのだと、パールにも伝わったようだ……

 パールがまた、魔法袋から細いバンブの木を三本と先ほどと同じぐらいの金の塊を、ひとつだして話しだす。

「ガントはわたしの当たり人、三人目だからどうぞ! 一人目にも二人目にも同じだけ渡しているから、受け取ってね」
「えっ、おれが三人目?」
「そうだよ、馬車に乗せてラメール王国まで連れていってくれるんだもん」

 ガントが少し震えている……

 うれしいいんだな……

 パールの言葉を聞いて、ソードが尋ねだした。

「パール。それならライにも、当たり人の権利があるのでは? これは、ライの馬車ですよ?」
「おう、そうだぞ! これはライの特別な馬車だぞ!」

 ああ……
 こういうときは、つらい。
 そんな、忖度はいいんだ……
 見てみろ、パールが黙ってしまっただろう……
 困らせているのか?

「パール、おれはいいぞ! 気を使うな」

 あわてた様子で、パールが手を横に降りながら話し出す。

「違うの、ライっ! 実は、もうひとりどうしても当たり人にしたいお祖母さんがいるの……だから、ライが四人目でソードには申し訳ないんだけど、4.5人目っということで、0.5人扱いにしてもらって。最後そのお祖母さんを残りの0.5人目でちょうど当たり人が五人ということにしたいんだけど……いいかな?」
「もしかして、パールはわたしのことで悩んでいたのですか?」

 ソードが少し目を大きくして聞いている。

「えぇと~ そういうことではないけど……もし、いやじゃなかったら4.5人目の当たり人になってくれますか?」
「ええ、えぇ よろこんでならせていただきます! わたしまで入れていただき、ありがとうございます」
「よかったな! ソード! それにライも!」
「パール、おれも四人目の当たり人になっていいのか?」
「はい、それはもちろん! みなさん、よろしくお願いします!」

 そう告げると、おれとソードにもガントと同じ砂金と金の塊を渡してきた。

 良い子だ。
 パールは、優しい子……

 ソードがうれしそうなのが、おれもうれしい。

 お礼といってはなんだが、おれと連絡がとれるメダルを渡しておく。
 
「これは、なに?」
「これを見せると、おれの知り合いだとすぐにわかって便利なのさ。なくすなよ」
「このメダルは、真ん中に小さな魔石が埋め込まれていて偽造もしづらくなっていますから、これを見せたらすぐにわたしたちまで繋がります」

 ソードも説明していた。

「パール、おまえ見た目は小さい子どもだから、念のためだな! ガハッハッ!」

 ガントが笑いながら告げる。

「ガント、あなたのそういうデリカシーのないところは、どうにかしてください」

 ソードがガントの代わりに謝っていた。
 パールは苦笑いぎみに頷いている。

 手に取ったメダルをみて首をかしげ……

「このメダルの素材は、なんですか?」

 んっ? めざといな……

「パール、よくそこに気がついたな! これは貴重なドラゴンの骨から作られているんだぞ! 魔力の伝わり方がすごくいいんだよ。見た目より頑丈なのに、細工がしやすいんだ」

 なぜかガントが、自慢げに答えていた。

「そんな…… 貴重なモノもらえないよ」
「パール、あなたは持っておくべきです。これでラメール王国に後ろ盾ができたことになりますから、変なことをいってくるヤツらには効きますよ」

 ソードが少し悪い笑顔で、パールに説明する。

「……ライ、ありがとう」

 わかってくれたのか、よかった。
 
 ♢

 次の日、朝からソードもガントも機嫌がいい。

 特にガントは金の塊をずっと眺めている。

 まあ、気持ちはわかるが……

 自分のルーツ。
 向こうのモノだからな。


 どうして?

 なぜだ!

 パールが、ガントの御者の横に乗りたいと言いだした。

 ガントはひまだぞっと言いながらも、パールを御者に乗せてやるようだ。

 気に入らない……
 
「なぜだ……」

 小さく言葉にでてしまった……

 それをソードが聞いていたようで、二人が御者に向かおうとするのを眺めていると声をかけられる。

「ライ、少し話しをしましょう」
「なんの話だ?」

 そんなことより。
 あぁ~、二人が御者に行くのが気になる……

 ソードはお茶を淹れながら。

「ライ、いまは二人です。正直に答えてください。 パールはライのツガイですか?」

 ソードが半分、友として聞いてきた。

「えっ!? ツガイ……  そうか、そうなのか?! やっぱりツガイなのか? しかし、父上たちに聞いていた ドキッとして心臓を持っていかれたようなそんな強烈な感じではないんだ。聞いていた話しだと、見てすぐにわかるようなんだが……」
「そこまででは、ないということですか?」

 ソードから見ても、おれの態度は明らかにおかしいらしい。

「わからないんだ…… 気になるのは、たしかだ。いまもガントとパールが御者に二人でいるのが、気になってしょうがない気もする……」
「気もする……ですか?」
「そうだ。まだ、それぐらいなんだよ…… あの、王立学校にいた、どの令嬢たちより……気にはなる。そのぐらいだな」

 あきれているのか?

 ソードは、ため息をひとつ吐いて。

 おれをじっと、見つめていた……
 
 
 
 

 
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:227pt お気に入り:4,212

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,000pt お気に入り:4,142

処理中です...