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21. 水晶
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思わず、つぶやいてしまう。
「これは、すごい感動的だな……」
「すごいですね……」
「だろ? はじめ見た時は、からだが震えたよ……」
おれの言葉にソードもつぶやく。
はっはっ!
ガントはなぜか、自慢げだ。
まあ、第一発見者だからな。
少し離れたところでは、ガメイがカベルネに尋ねている。
「カベルネ、おまえこの景色を夢でみたのか……?」
「ああ、そうだ。これだよ…… キラキラしていて、とっても神秘的な光景だったんだ……」
「なんだって!? カベルネおまえ夢をみたのか?」
カベルネの父親もおどろいて聞いていた。
「父さん、それってヴェーゼ婆ちゃんと一緒じゃないか?!」
メルロが父親に確認している。
「ああ、そうだ……」
カベルネはなんのことだかさっぱり分からないようで、祖父のガメイがみかねて話しだす。
「ヴェーゼ婆ちゃん、ワシの母さんは夢で未来を予知できたんじゃ。その予知夢で母さんは、人族だがサンジョ爺ちゃんのところまでひとりでやって来て、結婚してくれと自分からサンジョ爺ちゃんに告白したそうじゃ」
んっ?!
思い出した、聞いたことがあるぞ……
そうだっ!
予知夢のヴェーゼ!
ヴェーゼの子どもガメイが生まれると、予知夢を継承していないか期待されたが継いではいなかった。
ガメイはそのあと自分の子ども、カベルネの父親や孫のメルロに期待したが誰も継承していない。
だからもうあきらめていたと教えてくれた。
カベルネの父親が少し怒ったように話しだす。
「カベルネ、おまえ。どうしてそんな大切なことを、あの挟まれたときに言わないんだ!」
「オレはヴェーゼ婆ちゃんの夢の話を、知らなかったから…… また、くだらないことを言ってとよけいに叱られると思ったんだよ」
なるほどな……
子どもらしい、子どもだな。
「まあまあ。今わかったんですから、よしとしましょう。それにこの晶洞のことは、しばらくはこの八人の秘密にしますよ」
そうだ。
しっかり調査するまでは、封印だな。
うわぁ、父上になんて報告しよう……
今回は報告盛りだくさんだな。
そんなことを考えていると、またカベルネが子どもらしいことを聞いてくる。
「でも、記念にちょっとだけでいいから、水晶がほしいけど ダメか?」
なるほどな……
晶洞を見つけた発見者でもあるし、父上たちに少し持って帰って水晶を見せるのもいいだろう。
あとは……
「ここの水晶をどう配分するのか、これからガメイとも話し合わないといけないんだが…… 発見者でもあるカベルネたちが少し持って帰るぐらいなら大丈夫、問題ないんだよ。でもね…… そうだな、庭に泊めてもらった礼と宴会を開いてもらった礼もかねて、その水晶を明日旅立つときに渡そうか。そうすれば家族の人たちにも怪しまれず、水晶が自然にカベルネたちの手に渡り心配ないだろう」
「やったー! ありがとう! 兄さん、パールも。 なにを持って帰るか、探しにいこう!」
「えっ、ボクまでいいの?」
さすがだ、カベルネ。
やはり、策士だ……
うなずいてやる。
「みんな全員ひとつずつ、大丈夫だ」
その言葉を合図に、みんながうれしそうに探しだす。
ソードが近づき、王様に少し持って帰るのかと聞いてくる。
うなずいて数個良さそうな物を二人で探し、魔法袋にしまっておく。
そのあと自分の水晶を探したガントが戻ってきて、代わりにソードが自分の水晶を探しにいった。
近くではパールがキレイな水晶を見つけたようだ。
水晶は小さめだが、とてもキレイに光り輝いている。
よく見ると、その水晶と同じ欠片の水晶が横にあるじゃないか?
これは、他のだれにも渡したくない……
少し大きいが、サッと魔法袋に入れておく。
そのあとは落ち着いて自分の気に入った水晶を探す。
なかなか楽しい。
カベルネたちも全員選んで、それを一度預かっておく。
ソードが確認しながら受け取っていた。
カベルネが少し難しい顔をして聞いてくる。
なんだ?
「ここの秘密をペクメズばあちゃんにだけは、教えていいか? ばあちゃんは感が鋭いから、言わないとかえってややこしいことになりそうなんだよ」
「「「あーーっ」」」
納得だな……
ペクメズには、伝えても安心だ。
許可を出す。
ガメイたちも、大きくうなずいていた。
もう一度パールに今度は隙間なくキッチリ、岩で洞窟を隠してもらう。
それからカベルネの家へ。
宴会の用意はすでにできているようだ。
おれの席が特別に用意されているのか?
すごい料理の数だ……
量もすごい。
ここでパールとカベルネがおれたちの席から離れる。
子どもたちが集まっている果物がたくさん置いてある席に移っていく。
「やはり、パールを目で追っていますね」
「そうか……」
ソードがこっそり教えてくれる。
「この中の誰よりも、気にはなる。しかし横にずっと座らせておきたいとまではまだ思わないんだよ。見えるところにいたらそれでいいかと思うぐらいなんだ……」
「そうですか? 難しいもんですね」
「ああ。楽しくみんなとブドウを食べているのが、かわいいな」
「……ええ、かわいいですよ。まだ、九歳ですからね」
あれ?
おれは、おかしい?
ワインも入って気分が少し良くなってきた頃、子どもは寝る時間となり各自家に戻っていった。
パールも馬車に戻ってしまう。
ここからは大人たちだけになり、酒の飲み方が グッと変わる。
女たちも端の方で、本格的に宴会をはじめたようだ。
子どもの前では良い母親を演じていた女たちが、だいぶ盛り上がっている……
もともとドワーフ族は酒好きが多いからな。
ガントも酒樽の前まで連れて行かれて、若手たちと飲み比べをするのか?
すごい盛り上がり方だ。
そんなときでも、ソードはぜったいおれから離れない。
それをわかっているから、ガントが盛り上げ役になれるのだが……
「ライアン様、おめでとうございます! ツガイ様が見つかったのですね!」
ガントが別の場所にいるからか、数人連れ立ってやってきて、祝いの言葉をかけてきた。
このために、ガントが離されたのか?
ガントにはナイショだと、ここにいる者たちには全員話が通っているようだな。
ガント、すまん……
「ハッハッハーァ! まだまだいけるぞ!!」
ガントがみんなと酒を飲んで楽しそうに叫んでいる。
もう少しだけナイショにさせてもらうぞっ。
酒でも料理でもなんでも、好きなだけ飲んで食べて騒いでもらって、他で楽しんでいてくれ……
ガント…… いつも ありがとうなっ!
「これは、すごい感動的だな……」
「すごいですね……」
「だろ? はじめ見た時は、からだが震えたよ……」
おれの言葉にソードもつぶやく。
はっはっ!
ガントはなぜか、自慢げだ。
まあ、第一発見者だからな。
少し離れたところでは、ガメイがカベルネに尋ねている。
「カベルネ、おまえこの景色を夢でみたのか……?」
「ああ、そうだ。これだよ…… キラキラしていて、とっても神秘的な光景だったんだ……」
「なんだって!? カベルネおまえ夢をみたのか?」
カベルネの父親もおどろいて聞いていた。
「父さん、それってヴェーゼ婆ちゃんと一緒じゃないか?!」
メルロが父親に確認している。
「ああ、そうだ……」
カベルネはなんのことだかさっぱり分からないようで、祖父のガメイがみかねて話しだす。
「ヴェーゼ婆ちゃん、ワシの母さんは夢で未来を予知できたんじゃ。その予知夢で母さんは、人族だがサンジョ爺ちゃんのところまでひとりでやって来て、結婚してくれと自分からサンジョ爺ちゃんに告白したそうじゃ」
んっ?!
思い出した、聞いたことがあるぞ……
そうだっ!
予知夢のヴェーゼ!
ヴェーゼの子どもガメイが生まれると、予知夢を継承していないか期待されたが継いではいなかった。
ガメイはそのあと自分の子ども、カベルネの父親や孫のメルロに期待したが誰も継承していない。
だからもうあきらめていたと教えてくれた。
カベルネの父親が少し怒ったように話しだす。
「カベルネ、おまえ。どうしてそんな大切なことを、あの挟まれたときに言わないんだ!」
「オレはヴェーゼ婆ちゃんの夢の話を、知らなかったから…… また、くだらないことを言ってとよけいに叱られると思ったんだよ」
なるほどな……
子どもらしい、子どもだな。
「まあまあ。今わかったんですから、よしとしましょう。それにこの晶洞のことは、しばらくはこの八人の秘密にしますよ」
そうだ。
しっかり調査するまでは、封印だな。
うわぁ、父上になんて報告しよう……
今回は報告盛りだくさんだな。
そんなことを考えていると、またカベルネが子どもらしいことを聞いてくる。
「でも、記念にちょっとだけでいいから、水晶がほしいけど ダメか?」
なるほどな……
晶洞を見つけた発見者でもあるし、父上たちに少し持って帰って水晶を見せるのもいいだろう。
あとは……
「ここの水晶をどう配分するのか、これからガメイとも話し合わないといけないんだが…… 発見者でもあるカベルネたちが少し持って帰るぐらいなら大丈夫、問題ないんだよ。でもね…… そうだな、庭に泊めてもらった礼と宴会を開いてもらった礼もかねて、その水晶を明日旅立つときに渡そうか。そうすれば家族の人たちにも怪しまれず、水晶が自然にカベルネたちの手に渡り心配ないだろう」
「やったー! ありがとう! 兄さん、パールも。 なにを持って帰るか、探しにいこう!」
「えっ、ボクまでいいの?」
さすがだ、カベルネ。
やはり、策士だ……
うなずいてやる。
「みんな全員ひとつずつ、大丈夫だ」
その言葉を合図に、みんながうれしそうに探しだす。
ソードが近づき、王様に少し持って帰るのかと聞いてくる。
うなずいて数個良さそうな物を二人で探し、魔法袋にしまっておく。
そのあと自分の水晶を探したガントが戻ってきて、代わりにソードが自分の水晶を探しにいった。
近くではパールがキレイな水晶を見つけたようだ。
水晶は小さめだが、とてもキレイに光り輝いている。
よく見ると、その水晶と同じ欠片の水晶が横にあるじゃないか?
これは、他のだれにも渡したくない……
少し大きいが、サッと魔法袋に入れておく。
そのあとは落ち着いて自分の気に入った水晶を探す。
なかなか楽しい。
カベルネたちも全員選んで、それを一度預かっておく。
ソードが確認しながら受け取っていた。
カベルネが少し難しい顔をして聞いてくる。
なんだ?
「ここの秘密をペクメズばあちゃんにだけは、教えていいか? ばあちゃんは感が鋭いから、言わないとかえってややこしいことになりそうなんだよ」
「「「あーーっ」」」
納得だな……
ペクメズには、伝えても安心だ。
許可を出す。
ガメイたちも、大きくうなずいていた。
もう一度パールに今度は隙間なくキッチリ、岩で洞窟を隠してもらう。
それからカベルネの家へ。
宴会の用意はすでにできているようだ。
おれの席が特別に用意されているのか?
すごい料理の数だ……
量もすごい。
ここでパールとカベルネがおれたちの席から離れる。
子どもたちが集まっている果物がたくさん置いてある席に移っていく。
「やはり、パールを目で追っていますね」
「そうか……」
ソードがこっそり教えてくれる。
「この中の誰よりも、気にはなる。しかし横にずっと座らせておきたいとまではまだ思わないんだよ。見えるところにいたらそれでいいかと思うぐらいなんだ……」
「そうですか? 難しいもんですね」
「ああ。楽しくみんなとブドウを食べているのが、かわいいな」
「……ええ、かわいいですよ。まだ、九歳ですからね」
あれ?
おれは、おかしい?
ワインも入って気分が少し良くなってきた頃、子どもは寝る時間となり各自家に戻っていった。
パールも馬車に戻ってしまう。
ここからは大人たちだけになり、酒の飲み方が グッと変わる。
女たちも端の方で、本格的に宴会をはじめたようだ。
子どもの前では良い母親を演じていた女たちが、だいぶ盛り上がっている……
もともとドワーフ族は酒好きが多いからな。
ガントも酒樽の前まで連れて行かれて、若手たちと飲み比べをするのか?
すごい盛り上がり方だ。
そんなときでも、ソードはぜったいおれから離れない。
それをわかっているから、ガントが盛り上げ役になれるのだが……
「ライアン様、おめでとうございます! ツガイ様が見つかったのですね!」
ガントが別の場所にいるからか、数人連れ立ってやってきて、祝いの言葉をかけてきた。
このために、ガントが離されたのか?
ガントにはナイショだと、ここにいる者たちには全員話が通っているようだな。
ガント、すまん……
「ハッハッハーァ! まだまだいけるぞ!!」
ガントがみんなと酒を飲んで楽しそうに叫んでいる。
もう少しだけナイショにさせてもらうぞっ。
酒でも料理でもなんでも、好きなだけ飲んで食べて騒いでもらって、他で楽しんでいてくれ……
ガント…… いつも ありがとうなっ!
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