28 / 53
二章・トサ王子との婚約破棄編
28話・トサ王子の歓迎パーティーです
しおりを挟むようやく、トサ王子の家臣達もバクーフ王国に到着したのでトサ王子の歓迎パーティーが開かれる事になりました。
こうなると、私にガールズラブの呪いをかけたバクーフ王国の姫であるスズカも自分の呪いが発動してほとんど自我を失います。
他国王子との婚約を成立させる為の呪い。
バクーフ王族の娘の試練でもあるわね。
トサ王子の歓迎パーティーは始まり、バクーフ王宮のパーティールームにて行われているわ。相変わらず貴族令嬢達は、玉の輿狙いでトサ王子との婚約を狙ってるわね。
「ハッ、中々の歓迎ぶりだなバクーフさんよ。俺も楽しませてもらうぜ!」
燃えるような中わけの赤い髪に、赤を基調とした王子服。その背中にはショートマントが付いているわ。ちょっと攻撃的なトサ王子は、野生的な感じで貴族令嬢達からの人気も高いわね。
アイヅ王子とはタイプが違うけど、尖った王子も人気があるようね。と、私はオレンジンジャエールを飲みながら、パーティー会場の隅で様子を見ていたの。
「そろそろ……ヒロインモードのスズカの登場かな。さて、今回も勝ってやるわよ私の為にね」
貴族令嬢達にトサ王子が奪われないかと、そわそわしてるバクーフ王が長い口ヒゲを上下に動かしているわ。そして、バクーフ王国の十番目の姫が現れたの。
「ようこそお出でましたトサ王子。初めまして。私はバクーフ王国の十番目の姫。スズカです」
歓声と拍手が起こり、スズカは赤いドレスの左右のスカート部分をつまんでお辞儀したわ。トサ王子もスズカを気に入ったかのように握手してるわね。
今日のヒロインモードのスズカは、今日は編み込みの髪じゃなくて普通のポニーテールにしている。今日は純白のドレスではなく赤いドレスなの。
強い服の色に負けない美しさは相変わらずだわ。スカートはアイヅ王子の時より丈が短めなのは、トサ王子対策なのかしら?
(赤い服のトサ王子と合わせたのね。お揃い好きな人とお揃いなんて、オッパッピーなだけよ)
私もニートさんとエンマダンジョンの時ペアルックだったけど、自分のことは棚に上げるわ。当然の事よ。さて、私も少し攻めようかしら。
「スズカ姫とのお話中ごめんなさいねトサ王子。肉好きのトサ王子にオススメのメニューがあるわ。トサ王国には無いトンカツという肉料理よ」
「ハッ、これがトンカツか。食ってみようじゃねーか。にしても、今日は雰囲気が違うなアヤカ。クエストクラスらしい感じがするぜ。ま、俺は黒い服の女は嫌いだから安心しとけ」
イラっとする事を言ってるけど、トンカツを食べてくれたわ。添え物のキャベツも一緒に食べたのは意外だったけどね。トサ王子の顔が少し緩んだわね。
「このトンカツってのはなかなか上手いな。衣を付けて油で揚げるだけで食感や味も最高だな。そして、このソースというベトベトした液体をかけると更に美味い」
「ほらほら、顔にソースが付いてますよトサ王子。このソースは私の父も大好きなソースなので、バクーフ王国でも人気商品なのです!」
「へぇ、バクーフ王も好きなのか。食の趣味が合いそうだな。マジでトンカツ美味いな。ご飯が欲しくなるぜ」
顔にソースが付いていたトサ王子の顔をスズカは拭いていた。しかも結構ゴシゴシ拭いている。
(あんなに強く顔を拭くの? あり得なくない?)
「サンキュースズカ。やっぱり顔をゴシゴシ拭いてくれると血行が良くなって気分がいいぜ。家臣達は肌が荒れるとかウルセーけどな」
まさかアレが評価されるなんて。
トサ王子には強めの接し方がいいのかしらね?
すると、紅茶を渡す時に二人の手が触れていたわ。キラキラしたスズカに見つめられて、流石のトサ王子も微かに照れているのがわかる。私はもうトサ王子と過ごしている時間があるからね。
(この上目遣いに弱いのは、あのゴシゴシ顔拭きがあったからこそね。スズカの奴、これまでのトサ王子の行動のデータがあるようね。その為に、私の家で泳がせていたのかも知れないわ。あの女……)
相変わらずヒロインモードになると、いつもの数倍ウザく感じるスズカにイラついたわ。だから言ってやるの。
「トサ王子は昨日まで私の家に泊まっていたのに、私以上にスズカ姫はトサ王子の扱いが上手いのですね。尊敬しちゃいます」
「いや、私なんてまだまだですわ。それよりも若い男女が一夜を共にして何も無かった方が尊敬しますわアヤカさん」
冷静な笑みの口元が私を嘲笑っていたわ。
ムキーーーッ!
つまり、この女の言いたい事は……。
「だってスズカ。俺はアヤカみたいな陰気臭い魔法使いタイプは嫌いだからな。そりゃ、エロい事にはならないさ」
クソガーーッ!
トサ王子はみなまで言いやがったわ。
途方も無く他人に遠慮しないタイプね。
(ならいいわよ……とんでもない婚約破棄させてやるんだから。阿修羅地獄に堕としてやるわ)
ほくそ笑むスズカと、トンカツをパクパク食べているトサ王子に対して忿怒の婚約破棄を誓ったの。そうしてパーティーは進んで行き、トサ王子は落ち着いて来たパーティー会場でマジックマイクを使い話し出したわ。
「あー、あー、うん。この中に勇者はいるか?いたら返事してくれ」
『……』
「チッ、いねーか。勇者が近くにいるのは確かなんだがな。でも見つけてやるぜ。絶対にな」
すると、スズカはトサ王子に言う。
「何故、トサ王子は勇者を探しているのですか?何か因縁でも?」
「勇者は過去にトサ王国のモンスター食いを否定していた。それを訂正させる必要があるのさ。たとえ敵対してもな」
やはりトサ王子は勇者様探しを本格的にするようね。このパーティー会場での発言は、後で撤回は出来ないから。婚約者と勇者様探し。
この二つを成し遂げるのがトサ王子の目的か。そして、今度はトサ王国の美食が現れたの。
「今度はトサ王国の美食ね。楽しみじゃないの」
美食メニューはレアスライム・ワギュースライム。見た目は牛のような形のスライムね。でもサイズはネコの二倍ぐらいの大きさね。だから本物の牛とはサイズ感は違うわ。
食感も柔らかく、噛めば噛むほど出る肉汁が溢れていて、SSSランクの美味スライムのようね。料理としては腐りやすいから保存は出来ないそうなの。
だから生きたワギュースライムを殺してすぐに調理する必要があるのね。殺すと言ってもフォークで刺せば死ぬからグロくもないけど。
「って思ってたけど、一匹ワギュースライムが逃げたわね。パニックになる前に始末しとこうかしら」
「おいアヤカ。余計な事はするなよ。俺がトドメを刺す」
私を制止したトサ王子が、逃げたワギュースライムをパンチすると腕にハマったの。その失敗をトサ王子は自虐的に話していると、パーティー会場から笑い声が起こる。そして、あの女がとんでもない事をしようとしていたわ。
「ねぇ、トサ王子。その腕ごとワギュースライムを焼いてみます?」
スズカは、ワギュースライムに刺さる腕ごとその肉を食おうと焼こうとしていたわ。狂ってるわねこの女は。婚約破棄になるわよ?ヒロインモードが発動してるのに……何故?
パーティー会場全体にも緊張感が伝わってるわ。バクーフ王なんて、泡吹いいてプクプクしてるわよ。その娘である姫は続けていた。
「勇者と敵対してまでスライムを食べさせるなら、その腕ごと食べられるのも本望でしょう?ねぇ、トサ王子?」
じっ……と見つめるスズカの赤い瞳に吸い寄せられるようなトサ王子は口元を笑わせて答えた。
「ハッ、面白いなバクーフ王国の姫スズカよ。着てるドレスも赤でいいし、面白い女だなお前。気に入ったぜスズカ姫。この腕のワギュースライムは俺が直々に焼いてやるさ」
出会って早々、自分のミスからいきなりの婚約破棄と思ったけど、何故かスズカはトサ王子に気に入られていた。
(スズカ……まさかもうトサ王子の本質を見抜いていたの? やるわね……)
そして、ワギュースライムの食事も終わり、ひと段落ついたわ。すると、トサ王子は自分の個人的な意見を述べ出したの。
「個人的な意見を述べるが、俺はトサ王国の法として人肉禁止を出す。俺が王になればトサ王国の肉への関心をモンスターだけにとどめる。それを犯したら王族でも死罪は間逃れない。それを勇者に教えたいのさ。このバクーフ王国のどこかにいる勇者にな」
誤解している人間もいる可能性があるからと、パーティーの最後にトサ王子は宣言したの。これは、ニートさんからされた話を重く受け止めているのね。他国の悪い評価を消し去る事を考えてるんでしょう。
そして、明日はトサ王子がバクーフ王国巡りをしたいらしいから、遠足に行く事になったわ。スズカ姫はもう気に入っているから、後は勇者様探しをしようという魂胆ね。
ま、悪役令嬢として婚約破棄させるけどね。
オホホのホ!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
65
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる