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二章・トサ王子との婚約破棄編
29話・馬レースにトサ王子は興味を持ちます
しおりを挟む今日は、トサ王子のバクーフ王国の観光という名の遠足です。トサ王子とバクーフ王国の姫であるスズカの後ろに、護衛として私がいます。
トサ王子はバクーフの歴史などは興味は無いようで、細かな事は家臣達に任せて自分は勇者様探しをしていたいようなの。それと、バクーフでの面白い事巡りね。
(今日のタロット占いは悪魔の逆位置。苦しんでいた出来事からの解放があるという事。つまり、それは婚約確定している出来事が脱するチャンスが生まれるという事。だから私は絶対にそのチャーンスを活かして見せるわよ。オホホのホ!)
特にトサ王子の興味を持ったのはギャンブルの最高峰である馬レース。つまりは競馬ね。そして、バクーフ王国南側にあるギャンブル街の奥にあるその競馬場に辿り着いたの。赤い髪をかきあげるトサ王国は言う。
「ハッ、ここがバクーフの馬レース場か。ここまで管理されたギャンブルは素晴らしいな。トサ王国ではゴブリンの強さを比べる事はあっても、スピードを比べる事は無いからな。それに、誰でも参加出来るギャンブルというのがいい」
「我が父も大好きな競馬に興味があるとは、やはりトサ王子はお目が高いです。やはり男はギャンブルが好きだとカッコいいですね」
「そうだろうスズカ。俺はお前と婚約して、トサ王国を異世界ジパングで成り上がらせるギャンブルをするんだからな」
やはり、もうトサ王子はスズカと婚約するのは決めているようね。トサ王子にとってスズカは自分の国を高める為の道具でしかない。けど、人間としてちゃんと扱う事はしてくれそうね。童貞だし。
「おい、スズカ。馬券はどこで買うんだ?俺も馬レースに賭けてみたいぜ」
「アヤカさん。トサ王子の馬券購入をお願いしますわ」
「……喜んで」
馬券購入方法ぐらい、自分で知っとけっつーの!でも、仕方ないから買うしか無いわね。そうして、私はトサ王子の予想した馬券を買い続けたわ。当たったり、外れたりを繰り返してかなり楽しんでいる様子ね。
「ハッ、面白いな競馬って奴はよ。こうなると、トサ王国のゴブリンにもレースをさせたいな。それに俺もレースに参加したいぜ。楽しい、稼げるの一石二鳥だ。この馬のレースにまず参加するぜ!」
「それは無理よトサ王子。競馬はバクーフ王国の人間しか騎手にはなれないの。不正防止の為にね」
「マジかよアヤカ? それじゃ仕方ねーな。でも馬には乗れるよな? その辺の草原で走らすぐらいならいいんだろ?」
「えぇ、それなら問題無いわ。でも誰とレースをするつもりなの?」
「そりゃ、婚約者のスズカに決まってるだろ?」
『え?』
と、私とスズカは驚いた。
どうやら、本気でトサ王子はスズカと馬に乗って散歩をしたいようなの。その理由を話してくれたわ。
「トサ王国はゴブリンだけじゃなく、乗り物に乗れない人間は王族としては認められない文化がある。だから、スズカと婚約するならスズカも馬には乗れないと婚約は成り立たないんだよ」
『……』
「二人共黙ってたらわからないぜ? おい、アヤカ。まさか、スズカは馬に乗れないのか?」
アハハ……という笑みで誤魔化しているけど、これはスズカでも想定外だったようね。スズカは魔法や運動能力は高いけど、乗馬能力は皆無の筈だから。それを心で笑う私は答えた。
「そうですね。スズカ姫は馬には乗れないようです。これじゃ、婚約破棄まっしぐらですねぇ」
「……マジか? スズカとの婚約は確定だから俺は勇者探しに勤しもうとしてたのに。そうなるとマジで婚約破棄だな……トサ王子の文化は変えられない」
チャーンス。
この展開なら悪役令嬢の出番はあるわね。ビッグチャンスでもあるわ。
トサ王子は馬に乗れないスズカをどう攻略していいか悩むので、二人の仲を取り持つ事にしたわ。
(私が二人の仲を取り持つ以上、婚約破棄はここから始まるのよ)
という自信を得て、私は困惑するトサ王子に救いの手を差し伸べたの。
「じゃあ、こういうのはどうでしょう。馬レースを行い、勝った方がトサ王子との婚約をするという事でなら、スズカを数日で馬乗りに調教してあげましょう」
「マジか!? 確かにそれは嬉しい話だが、数日で馬に乗れるようになるのか? アヤカの調教なら?」
「当然ですわトサ王子。私はこのバクーフ王国最強のクエストクラスですから。まぁ、調教される側がガラクタのクソまみれのすっとこどっこいのポンコツじゃなければ……の話ですけどね」
ジロリ……と超絶上から目線で言ったわ。
それでも微笑んでいるヒロインモードのスズカは答えるの。
「ありがとうございますアヤカさん。クエストクラスの方に教えて頂いたら私もすぐに上達して乗馬マスターになれるでしょう。なのでトサ王子も安心して下さい。明日の一日で全てマスターしますから」
ウフフと笑うスズカはトサ王子に無理難題をこなす覚悟を伝えたわ。それにトサ王子も喜んでいる。
(嫌な女ね。明日の一日で乗馬マスターしたいならいいわよ。徹底的に調教してやるから。そもそも、調教する条件はスズカとの馬レースで勝った方が婚約するという条件。それさえ守られるなら一日で私もスズカを仕上げる覚悟はあるわ)
もう一度、このスズカを乗馬マスターにする為の条件を話した。
「このスズカを乗馬マスターにする条件は、トサ王子のバクーフ滞在最終日のレースで勝った方がトサ王子と婚約するという事。二人共、この条件は守ってもらうわよ?」
「……ハッ、わかったよ。お前も魔法で卑怯な手を使うなよアヤカ?」
「使わないわよ。じゃ、スズカ姫もいいわね?」
「えぇ、私が勝ってトサ王子と婚約するだけなので問題ありません。明日はよろしくお願いしますアヤカさん」
……かなりの自信だわねスズカ!
とにかく明日はスズカを調教して乗馬マスターにし、私が馬レースで勝てばいいだけの話。今回の婚約破棄は楽でいいわ。恋の駆け引きより、馬レースで勝てばいいんだから。
そうして、明日はスズカとの乗馬トレーニングになったの。
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