31 / 53
二章・トサ王子との婚約破棄編
31話・会食の夜で色々します
しおりを挟むトサ王子との会食の夜になります。
すでにスズカは乗馬マスターになっているから、トサ王子との約束は果たしている。だから、馬レースの開催日が婚約破棄の日になるの。私が馬レースに勝つだけで今回の婚約破棄は終わるから、残りの数日はゆったり過ごせるはず。
とりあえず、トサ王子が勇者様を探してくれれば、私も勇者様と恋に落ちて自分のガールズラブになる呪いからも解放されるのに……。
バクーフ王国の姫としてスズカは登場したわ。
今日はキラキラした黄色いドレスに、茶髪のロングの絹のような髪は下ろしている。足元のヒールも金色で、派手な色が好きなトサ王子も喜びそうな服装だわ。貴族令嬢達もビビってるわね。
(相変わらずのSSS級のヒロインモードね。あのスズカを、本当のスズカが見たらどう思うのかしら?それに私が昨日言った言葉もどこまで届いているやら……)
あのヒロインモードのスズカに対して言った言葉がどこまで届いているか気になる。だから二人の間に割り込む気が起きなかったの。
もう、バクーフ王も長いヒゲを上下に動かしして今度こそ婚約決定じゃ! と盛り上がっているわ。あの王の願いはもちろん潰すけど、私はスズカの全てを潰したいと思い出していたの。
(スズカはヒロインモードのまま婚約決定した場合、元の人格がどうなるかもわからないわ。だからこそ、ヒロインモードに勝つ為の強さが必要。出来れば今回の婚約破棄の中で実現したいけど……)
鉄壁で完璧なヒロインモードのスズカを崩すのは容易では無さそうだわ。あの微笑みと、気品はこのパーティー会場で一番輝いているもの。だからこそ、偽りの輝きには消えてもらわないとならないの。
悪役令嬢以外の悪は必要無いからね。
トサ王子とスズカとの話も一通り終わったようだし、群がり出した貴族令嬢達を蹴散らしましょう。
「貴族令嬢達を蹴散らして、私もトサ王子に乗馬マスターの件を報告しないとね」
会食パーティーが始まっているバクーフ王宮にいる私は高いヒールを鳴らして歩き、悪役令嬢としてザコの貴族令嬢達を蹴散らすようにトサ王子の元へ進む。
「こんばんはトサ王子。約束通り、スズカ姫は乗馬マスターになったわよ。これで最終日の馬レースが楽しみになったでしょう?」
「よぉ、アヤカか。相変わらず陰気臭い真っ黒黒助だな。スズカから話は聞いてるぜ。もう乗馬マスターになれたなら、馬レースに参加出来る。その決着は俺も楽しみだ」
「それを聞いて安心したわ。そちらの勇者様探しはどうなの?」
「この前のドラゴン飛来事件でバクーフに勇者がいるのは確信的になった。今はドラゴンエッグと勇者の光の魔力の痕跡を家臣達が探している。おそらく、もうすぐ発見出来るだろうよ」
どうやら、トサ王子の家臣団も勇者様探しに躍起になってるようね。ドラゴンエッグはあらかた探された後だし、勇者様の痕跡が見つかると私も助かるんだけどね。すると、少し困り顔の赤髪の攻撃的な男が聞いてきたわ。
「スズカ姫というのは、言われた事を完璧にこなすタイプなのか? たった一日で馬レースに出られるレベルまで上達するなんて異常だぜ?」
「あぁ、その事ね。スズカ姫は王族の娘として他国に嫁ぐ義務があるの。だから成人式から五年以内に婚約する為に努力は惜しまないという事ね」
「なるほど……それで納得しとくか。少し外の空気が吸いたい。ベランダに出るぞ」
私はトサ王子に連れられて、ベランダへ行ったわ。
いつの間にか私はトサ王子の相談役になっていたの。そこからすれ違いが起こる事も知らずにね。夜風を浴びながら、トサ王子は言葉を話す。
「あそこにいる貴族令嬢達は噂してるぜ。どうやら俺達は近寄り過ぎてるような感じを持たれてるな。俺がアヤカの家に泊まっていたのも噂になってやがる」
「それは事実だししょうがないわ。私達の間には何も無かった。今はね」
「今はねじゃなく、今後もねーだろ。スズカが馬レースで勝てば全て終わる。俺はそもそもクエストクラスじゃなくて、王族との婚約に来たわけだ。そこを忘れんなよ」
相変わらず夜の月を見つめたまま話している。どうやら私と噂になっているのに照れがあるようね。面白いわ。
「それとよ。スズカ姫がいるから、パーティー会場では距離があった方がいいかもな。でも今更距離を開けても遅いから意味無いけどな」
「じゃあ、どうするつもり?」
「ま、結果は俺のバクーフ滞在の最終日に出るからそのままでいいかな。それに、馬レースを宣言すればそんな話も立ち消えるだろうよ」
「消せないわよ」
私はトサ王子の頬にキスをしたの。
驚くトサ王子はベランダから下に落ちそうになりつつ、私の行為で婚約する気があると納得してくれたわ。
そうして、パーティー会場に戻ったトサ王子は馬レースを宣言したの。
クエストクラスのアヤカと、バクーフ王国の姫スズカの対決である馬レースをね。
でも、この勝敗次第で婚約者が決まるという話は、何故かしなかったわ。おそらく、バクーフ側の心情を考えたのでしょう。この勝敗で婚約者の決着がつくなら、バクーフ王は間違い無くレースに介入してくるだろうから。
気を良くしたのか、トサ王子はだいぶ酒に酔っていたの。それを私は介抱して王子の泊まる寝室まで運んだわ。そうして、私達は一夜を過ごしたの。
「ん……どこだここは? 俺は確か馬レースを宣言してから……」
朝になり目覚めたトサ王子は、昨日の出来事を思い出そうとしているわ。それを隣で寝ていた黒い下着姿の私は答えたの。
「裸で起きない王子をそのままってわけにはいかないでしょ?」
「!? アヤカ!? お前何で俺の部屋にいるんだ……?」
驚いたトサ王子はベッドから飛び上がり構えたわ。私は鍛え上げられた王子の肉体美を見ていたの。トサ王子は黒い下着だけの私に見とれているわ。
「一夜を共にしたからここにいるのよ。昨日はお楽しみだったのに、もう忘れるなんて最低よ王子様」
「酒の飲み過ぎで記憶が飛んでるぜ……。でも俺はアヤカを抱いた記憶は無い。絶対に無いぜ! たぶんな!」
「下の王子様は嘘をつかないわ」
と、私は王子様の素直な気持ちを教えてあげたの。下を見るトサ王子は自分が全裸という事に気付いた。
「? 俺、全裸かよ!? なら……マジで俺はお前で童貞を……?」
「さぁ、どーでしょうねぇ?」
あたふたしてる王子は中々かわいい所もあって面白いわ。
そうして、私とトサ王子との関係の噂は広まったわ。
0
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる