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第十二話『酔いが抜けた朝にも』
しおりを挟むサラサラとした冷たいシーツの海で手脚を泳がせる心地よさに、何度も、何度も目覚めかけては、覚醒が妨害された。
眠気の重力が、深く深く、俺をまた夢のなかへと沈めていく。
「んん……」
背筋がぞくりとするような色気と愛嬌の適度に混じった声が、顔のすぐ近くから聴こえた。
薄目をあける。
ピンクのシーツに映える薄桃色の頬が布団に埋まり、整った顔を歪ませていた。
頬が枕に押されて、唇がにゅっと突き出されている。
アッチョンブリケだ。
子供の頃に病院の待合室で読んだ、昔の漫画を思い出す。
あれは闇医者の漫画だったが、怖い病気がたくさん出てきた。
なぜこれから診察する人に、こんな怖いのを読ませるんだと驚いた記憶。
同時に、実家の光景やにおいまでもが、鮮明に呼び覚まされる。
ああ、なつかしい。胸の奥が締め付けられる。子供に戻りたい。
ノーメイクでもじゅうぶん美しい、すぅすぅと寝息を立てるアッチョンブリケを眺めているうちに、愛しさで搾られた脳味噌から甘酸っぱい汁が溢れ出て、全身に染み渡っていくのを感じた。
はらはらと動く柔らかい前髪に唇を寄せ、おでこに口付けをする。
チュッと鳴る唇の音で、彼女の長いまつ毛がピクリと動いた。
まぶたが開き、大きな目のなかで、黒目がちな瞳がくるりと起動する。
俺と視線を合わせると、ぷっくりとした唇が横にのびて割れ、白い歯がのぞく。
猫のように手脚を「ううぅんんーん」とのばして、目をギュッと閉じる。
笑顔がクシャッと幼くなり、「たいへんだぁ! 寝起きの顔を見られたぁ!」とシーツの上を転がる。
俺に背を向ける彼女の細い背中から、くびれた横腹への曲線が丸い尻へと続き、笑声で生めかしく白肉が揺れると、微かな産毛が光を反射して靡く。
二人とも、全裸のままベッドで寝ていた。
ベッド横のクッションの上で二度、風呂場で二度、いや三度か? ベッドでは、何度したのだったか。互いの体液を浴び、呑んで、体温と感触を愛した。
「寝顔、かわいかったよ」
肩甲骨の浮き出る背筋にそっと触れる。
さらさらの肌が程よく寝汗でしっとりと艶をもち、吸い付くような感触だった。
俺はその背に身を寄せて、背後からそっと抱きしめた。
彼女は俺の掌をぎゅっと強く握り、自分の胸に押し付けるようにして大切そうに抱いてくれた。
枕に散らばった長い黒髪をよけてから同じ枕に頭をのせ、後頭部に顔を埋める。
甘酸っぱい香りに、人間の体温の匂いと、ほんのりと苦い寝汗の匂いがまざり、俺はまた唇を鳴らして、それら香りの全てを愛した。
唇をうなじへと滑らせ、彼女に巻き付けた右腕や、彼女の胸に抱かれた俺の掌と一緒に、白い柔肌の前面と背面を同時に味わう。
黒髪の後頭部に鼻先を埋めたまま、深呼吸をした。
むくむくと、股間が反応して育っていく。
揺れる太ももにそれが触れると、彼女は背を反らすようにして丸い尻を後方へと突き出し、尻肉の山と山の間で挟むようにして、グリグリと押し付けた。
「うぅ」
自然と声が出る。声とともに先端からも、少しよろこびが漏れ出てくる。
彼女は尻を回すように動かして挑発し、嬌声と吐息をもらした。
荒くなる息。
掌からこぼれる、波打つような胸の軟肉を回すように揉み潰す。
果実のようなつぶつぶが、大きく膨らんだ乳頭のまわりで、鳥肌のように快感を主張する。
二筋の荒い呼吸がシンクロするように重なり、また昨夜の続きが始まった。
──つづく。
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