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第三話『翌日の囀り』
しおりを挟む六月十五日(火)
キンキュー事態ハッセー中! 誰か助けてマジで死にそう!
とりいそぎ、殺すリストを追加することにする。
ついこないだ追加したばっかだけどしゃーない、あの女は殺らんでいられるか。
ハナのやつ、予想の倍の速度で、予想の三倍も盛った噂を流しやがった。
「マックとサブが食堂で見つめ合って愛を語った後、目配せをしていた。どうやら帰りにバス停で待ちあわせをしたらしい」
……だとこの糞オンナ! いや待てまだ続きがある。
「一緒に帰ってるのを、この目で見たから間違いない」とさ。
おお、おおお、おほほい、おほほい、おほほいバカ、殺すぞ。
デカ盛りにもほどがあるだろ! フードファイターかてめぇはイイ加減にしろやブス! ハゲ! ビヤッチこら!
なにをどう見てそう思ったのか知らんというか、なにも考えずにただ思いついたことをペラペラと、口の動くのに任せて喋っただけなんだろうけど、断言をするな断言を!
事実無根なのに、ここまで堂々とやられちゃうと、なにをどうイイワケしたって嘘っぽくなってしまうだろうが。
私があの場でしたことといえば、黙って俯いて顔を赤らめただけ。いや、そう、なっちゃうだろどうしても! 怒りと! 恥ずかしさと! 混乱と! 怒りで! 怒り二回言っちゃったよ腹が立ちすぎて!
ていうか私は私で、なにをしとるのだマッタクもう。
それしかできなかったのはわかるけど、それ絶対にしちゃダメだろ!
ハナのガセネタを認めたように見えちゃうじゃんか!
ああ、そうだ、あれだ。ミラの「かわいい~」が利いたんだ。
あれがなきゃ、もしかしたら、反論していたかもしれない。
赤面しているのをカワイイと言われ、脳が即死した。
あの女も私のリアクションを読んで、ホメ殺し作戦を使いやがったな?
なんてこった、やられた……!
仲間内の他の誰にあんなことを言われても、私はあそこまで照れたりしない。
私はミラみたいに可愛らしく振る舞える女になりたいと、実は少し憧れている。
だから、嬉しいのと恥ずかしいのが、怒りと混乱に加わってしまった。
ミラもそう考えると許せないけど、今回は未必の故意だから殺すリストに名前は載せないでおいてやる。
許せないのはハナだ。
あいつ、なんでそうまでして私を陥れようとする?
ハナもトランが好きなのか?
いや、でも、私は自分の気持ちを公言したことはない。
私がトランを好きなことは、私しか知らない秘中の秘のはずだ。
知らずにやった? ……だとしたらなぜハナは、そんなことをする?
仮に彼女もトランを好きだったとしても、私の気持ちにいつなんで気づかれたのかが説明できない。
これは、早急に確認し、対処しなくてはならない案件が増えたかもしれない。
どうイイワケをしてもダメなら、なにを言われても「は?」で返そうか。よし、そうだな、それが一番だ。
当分の間は、それで火種が勢いを増すのを防ぐ。
燻り続けるかもしれないが、下手に鎮火しようとするよりは、相手にしないのが一番だ。
よし、それでいこう。ふう。糞が。
なんにせよ、今日の殺すリストはハナに決定だ。
ここしばらくで、ブッチギリで、一番ムカついた。
ケッカーなんか、これに比べりゃカワイイもんだ。
ハナにはあからさまな悪意が見える。
ハナ・B・M・ガンナー。
あぁのウソツキハラグロ女、マジでぶっ殺す。
──つづく。
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