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五章 開戦前夜
二十八話
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タイセイたちがスクールバルーンを完成させる四日前にさかのぼる―――
「首長閣下、もうすぐ到着します。」
「分かってるわよ。昔住んでたんだから。」
私にとっては里帰りも兼ねているというのに、こうも騒々しいと困る。
私、アイラ・ジョシュアはただいま我が国の首都にして生まれ故郷のシャラトーゼに向かう馬車に揺られている。
ただまあ穏やかな帰省とはいかない。今回の用件はニフラインのワイド伯爵に反乱の嫌疑アリの報告をセルギアン公にすること。
なので、当然調査を行ったパゴスキー准将も同行している。この私の身の上だからもちろん護衛も沢山ついているけど、この馬車には私と彼女しか乗っていないから、実質女の二人旅だ。
「閣下はシャラトーゼには何歳まで? 」
「七歳までよ、それからはホルンメラン。父親がホルンメランの首長になったからそれに合わせてね。」
「へえ、大変ですね。」
自分から聞いたんだからもっと興味持てよ。……まあいいわ。そんなに聞かれたいことでもないしね。
まだ一時間はかかるという距離だというのに、もうすでに街の壁は見えている。ホルンメランの壁も立派だけれど、こっちは格別。ワイド伯はこれを本気で攻略しようというけれど、もしかして見たことがないのかしら?
私とパゴスキーは服の下にしっかり鎖かたびらを着込んでいる。この旅程はいつ襲撃されてもおかしくないから。
「流石に暑いわね。」
「今更ですよ。私がゴースから帰ってから毎日着てるでしょう。」
ゴースへの使節が完了してからは毎日警戒が必要だった。ワイド伯はホルンメランがかぎまわっていることをすでに知っている可能性がある。刺客が直接ホルンメランの中まで来てもおかしくない。
この前タイセイが窓から突っ込んできたときは心臓が止まるかと思ったわ。このタイミングだからほんとにタチが悪い。ちょうど機密事項を扱っていてパゴスキーが部屋の中にいなかったから、本当に刺客だったらかなり危なかったわ。
しかしこの娘、いや、私より年上なのだが。このパゴスキー、つくづく抜け目のない。
「あなた、危ない橋だったのを本当に自覚してるんでしょうね? 」
「なんのことです? 閣下。」
「分かってるでしょうに。ギルドの件よ。もしかしたらゴースを出る前にニフラインの一行に捕まってたかも知れないのよ? 」
私は本気で心配して言っているのだけれど、彼女は冗談としか思っていない。
私はゴース行きの前のパゴスキーに、ただ探ってくるだけで構わないから無理はしないようにと釘を刺しておいた。それなのに彼女は半ば囮のような作戦で証拠を集めてきた。
「しかし閣下。これ以上ない成果だったでしょう? 」
「結果論よ。それにしても、ギルドを利用しただけでどうしてニフラインの人間がゴースまでやって来ると思ったの? 」
「ワイド伯爵は猜疑心の強い男ですから。常に近所のゴースには目を光らせているはずです。当然そこのギルドのことも。あれはゴースの名物のようなものですから。」
「官庁じゃダメなの? 」
「ノース子爵は賢明な方ですから、官庁のセキュリティはしっかりしてるはずです。やはり少し遠ざかったギルドでなければ。」
彼女の話から察するに、ワイド伯はゴースのギルドの中まで把握しているらしい。パゴスキーは続けた。
「そこをホルンメランの軍人が一度でも利用すれば、すぐにワイド伯の耳に届きます。そうなれば彼は即座に行動を起こす。流石に彼本人がゴースまで来るとは思いませんでしたけどね。」
かなり紙一重の作戦だ。
「ちなみに、タイセイは知ってるの? 」
「知らないに決まってるでしょう。あの人、すぐボロが出そうですから。」
それは同感。そもそもそんな危険な橋に渡ってると知ったらパニックになるかもしれない。
「次からはやめてよね。」
「そんなこと言って、閣下だって私の記録帳を届けてくれたじゃないですか。」
「そ、それはあなたが要るって言ったからじゃない! 」
原則として魔法を使用した物品はその管轄の都市からは持ち出すことができない。持ち込むことはできたとしても。だが唯一首長、つまり私の名義なら持ち出せる。パゴスキーはそれを利用した。
彼女は私名義で馬車を後から出して、それで魔法記録帳をゴースの自分のもとまで届けさせた。
「宿の窓から投げ入れてもらったんですよ。それを今度は携帯してるのが子爵あたりにバレないように下着の裏に隠したんですけどね。」
やってることがもう盗賊じゃない。ほんとよくやるわ。
「そんなときに限ってタイセイさんが私の部屋のドアを開けるんだから焦ってしまいましたよ。本当に間が悪い人です。」
そんな危険な奇策を平気で実行するのは褒められたものじゃないけれど、結果としては完璧だったし、今回はもうこれ以上は言わないでおこう。ゴースから帰ってきてからは私の護衛をずっとしてくれていたし、ついでにパシられてもくれたしね。
話しているうちにシャラトーゼの正大門はすぐ目の前にきていた。懐かしさが去来したが、緊張感がすぐにそれを吹き飛ばしてしまった。
おびただしい守衛に迎えられると、そのうちの数十人が私たちの馬車についてきた。
「騒がしいですね。」
「私も一応貴族だから。」
馬車はそのまま一直線に町を行く。向かう先はもちろんシャラトーゼの中心、セルギアン宮殿だ。
宮殿は町の真ん中にあるものだから一際目立っている。私じゃ、あそこには落ち着いて住めないな。
宮殿につくと、役人たちに出迎えられて宮殿に入った。天井は相変わらず高い。一面に描かれている絵は何なのかいまだに分からないけど。
足を踏み入れるのは実に二年ぶりだ。私が首長に任じられたとき以来。相変わらず煌びやかで派手な宮殿だ。
ただ趣味は悪くない。住むのはやっぱり嫌だけど、この宮殿に入れるのは貴族の役得だ。
「私が入ってもよろしいのでしょうか。」
「いいのよ。呼ばれてるんだから。」
さすがのパゴスキーも宮殿には緊張してしまうらしい。そういえば彼女は平民出身だったな。
普通は宮殿には平民は入らないのだけれど、セルギアン公爵にお呼ばれした場合は別である。
今回呼ばれているのはこのパゴスキーだけだから、宮殿には他に宮仕えの役人と貴族しかいない。緊張してしまうのは当然だろう。
私たちは大部屋に案内された。
「宮殿にご滞在の間はこの部屋をお使いください。」
とのこと。そういえば前来たときもそんな感じだった。
部屋の中は全てが一級品だ。さすがは我が国の宮殿という感じ。ホルンメランでは見られないような代物もいくつかある。
「不気味ですよ、こんな派手な部屋。」
パゴスキーはやっぱり落ち着かない様子。そんなとき、私たちの部屋がノックされた。
「どうぞ。」
と声をかけるとドアが開いた。立っていたのは私よりすこし年上くらいに見える男の人だった。
「どちら様? 」
「お初にお目にかかります。私、国軍シャラトーゼ本団所属のナラン・アギル・フリージア少将と申します。」
「ご丁寧にどうも。」
「ホルンメランからアイラ・ジン・ジョシュア伯爵がはるばるいらっしゃったと聞いてお会いしたく伺った次第です。」
「あら、それは嬉しいわね。けれどミドルネームは呼ばないでもらえる? 」
「どうしてです? 貴族の特権でしょう。」
「嫌いなのよ、人にそのミドルネームを呼ばれるのが。それと、こっちは今回セルギアン公に呼び出された私の護衛。あなたと同じ軍人だから仲良くしてね。」
ちょうど正式の軍服に着替え終えたパゴスキーが出てきた。
「おや、そうなのですね。ナラン・アギル・フリージア少将です。よろしく。」
「ああ、どうも。ピオーネ・パゴスキー准将です。」
フリージア少将はパゴスキーの名前を聞いて露骨に怪訝そうな顔を見せた。理由はおそらく、貴族でなかったからだろう。
「まあこれからも会う機会があると思いますから、どうぞよろしくお願いしますね、ジョシュア伯。」
彼はもうすでにパゴスキーには興味がなさそうだった。ドアから出ていくと、そそくさと離れていってしまった。
少将がいなくなってからパゴスキーの方を見ると、椅子に腰を下ろしていた。
「どう? 本団の軍人に会ってみて。」
「緊張がいい感じにほぐれました。」
「どうして? 」
「貴族にもボンクラはいるんだなって。」
二、三言交わしただけなのに凄い言われてるな、彼。まあ鼻につくのは認めるが。
「どうしてボンクラだと? 」
「剣の帯が緩んでいたからですよ。ろくに戦ったことがない証拠です。」
よくみてるなほんと。でも確かに彼は戦ったことがないのだろう。貴族の一人息子だし。
フリージアという名前であとから思い出したが、あの男は確か財務相フリージア侯の一人息子だ。
「首長閣下、もうすぐ到着します。」
「分かってるわよ。昔住んでたんだから。」
私にとっては里帰りも兼ねているというのに、こうも騒々しいと困る。
私、アイラ・ジョシュアはただいま我が国の首都にして生まれ故郷のシャラトーゼに向かう馬車に揺られている。
ただまあ穏やかな帰省とはいかない。今回の用件はニフラインのワイド伯爵に反乱の嫌疑アリの報告をセルギアン公にすること。
なので、当然調査を行ったパゴスキー准将も同行している。この私の身の上だからもちろん護衛も沢山ついているけど、この馬車には私と彼女しか乗っていないから、実質女の二人旅だ。
「閣下はシャラトーゼには何歳まで? 」
「七歳までよ、それからはホルンメラン。父親がホルンメランの首長になったからそれに合わせてね。」
「へえ、大変ですね。」
自分から聞いたんだからもっと興味持てよ。……まあいいわ。そんなに聞かれたいことでもないしね。
まだ一時間はかかるという距離だというのに、もうすでに街の壁は見えている。ホルンメランの壁も立派だけれど、こっちは格別。ワイド伯はこれを本気で攻略しようというけれど、もしかして見たことがないのかしら?
私とパゴスキーは服の下にしっかり鎖かたびらを着込んでいる。この旅程はいつ襲撃されてもおかしくないから。
「流石に暑いわね。」
「今更ですよ。私がゴースから帰ってから毎日着てるでしょう。」
ゴースへの使節が完了してからは毎日警戒が必要だった。ワイド伯はホルンメランがかぎまわっていることをすでに知っている可能性がある。刺客が直接ホルンメランの中まで来てもおかしくない。
この前タイセイが窓から突っ込んできたときは心臓が止まるかと思ったわ。このタイミングだからほんとにタチが悪い。ちょうど機密事項を扱っていてパゴスキーが部屋の中にいなかったから、本当に刺客だったらかなり危なかったわ。
しかしこの娘、いや、私より年上なのだが。このパゴスキー、つくづく抜け目のない。
「あなた、危ない橋だったのを本当に自覚してるんでしょうね? 」
「なんのことです? 閣下。」
「分かってるでしょうに。ギルドの件よ。もしかしたらゴースを出る前にニフラインの一行に捕まってたかも知れないのよ? 」
私は本気で心配して言っているのだけれど、彼女は冗談としか思っていない。
私はゴース行きの前のパゴスキーに、ただ探ってくるだけで構わないから無理はしないようにと釘を刺しておいた。それなのに彼女は半ば囮のような作戦で証拠を集めてきた。
「しかし閣下。これ以上ない成果だったでしょう? 」
「結果論よ。それにしても、ギルドを利用しただけでどうしてニフラインの人間がゴースまでやって来ると思ったの? 」
「ワイド伯爵は猜疑心の強い男ですから。常に近所のゴースには目を光らせているはずです。当然そこのギルドのことも。あれはゴースの名物のようなものですから。」
「官庁じゃダメなの? 」
「ノース子爵は賢明な方ですから、官庁のセキュリティはしっかりしてるはずです。やはり少し遠ざかったギルドでなければ。」
彼女の話から察するに、ワイド伯はゴースのギルドの中まで把握しているらしい。パゴスキーは続けた。
「そこをホルンメランの軍人が一度でも利用すれば、すぐにワイド伯の耳に届きます。そうなれば彼は即座に行動を起こす。流石に彼本人がゴースまで来るとは思いませんでしたけどね。」
かなり紙一重の作戦だ。
「ちなみに、タイセイは知ってるの? 」
「知らないに決まってるでしょう。あの人、すぐボロが出そうですから。」
それは同感。そもそもそんな危険な橋に渡ってると知ったらパニックになるかもしれない。
「次からはやめてよね。」
「そんなこと言って、閣下だって私の記録帳を届けてくれたじゃないですか。」
「そ、それはあなたが要るって言ったからじゃない! 」
原則として魔法を使用した物品はその管轄の都市からは持ち出すことができない。持ち込むことはできたとしても。だが唯一首長、つまり私の名義なら持ち出せる。パゴスキーはそれを利用した。
彼女は私名義で馬車を後から出して、それで魔法記録帳をゴースの自分のもとまで届けさせた。
「宿の窓から投げ入れてもらったんですよ。それを今度は携帯してるのが子爵あたりにバレないように下着の裏に隠したんですけどね。」
やってることがもう盗賊じゃない。ほんとよくやるわ。
「そんなときに限ってタイセイさんが私の部屋のドアを開けるんだから焦ってしまいましたよ。本当に間が悪い人です。」
そんな危険な奇策を平気で実行するのは褒められたものじゃないけれど、結果としては完璧だったし、今回はもうこれ以上は言わないでおこう。ゴースから帰ってきてからは私の護衛をずっとしてくれていたし、ついでにパシられてもくれたしね。
話しているうちにシャラトーゼの正大門はすぐ目の前にきていた。懐かしさが去来したが、緊張感がすぐにそれを吹き飛ばしてしまった。
おびただしい守衛に迎えられると、そのうちの数十人が私たちの馬車についてきた。
「騒がしいですね。」
「私も一応貴族だから。」
馬車はそのまま一直線に町を行く。向かう先はもちろんシャラトーゼの中心、セルギアン宮殿だ。
宮殿は町の真ん中にあるものだから一際目立っている。私じゃ、あそこには落ち着いて住めないな。
宮殿につくと、役人たちに出迎えられて宮殿に入った。天井は相変わらず高い。一面に描かれている絵は何なのかいまだに分からないけど。
足を踏み入れるのは実に二年ぶりだ。私が首長に任じられたとき以来。相変わらず煌びやかで派手な宮殿だ。
ただ趣味は悪くない。住むのはやっぱり嫌だけど、この宮殿に入れるのは貴族の役得だ。
「私が入ってもよろしいのでしょうか。」
「いいのよ。呼ばれてるんだから。」
さすがのパゴスキーも宮殿には緊張してしまうらしい。そういえば彼女は平民出身だったな。
普通は宮殿には平民は入らないのだけれど、セルギアン公爵にお呼ばれした場合は別である。
今回呼ばれているのはこのパゴスキーだけだから、宮殿には他に宮仕えの役人と貴族しかいない。緊張してしまうのは当然だろう。
私たちは大部屋に案内された。
「宮殿にご滞在の間はこの部屋をお使いください。」
とのこと。そういえば前来たときもそんな感じだった。
部屋の中は全てが一級品だ。さすがは我が国の宮殿という感じ。ホルンメランでは見られないような代物もいくつかある。
「不気味ですよ、こんな派手な部屋。」
パゴスキーはやっぱり落ち着かない様子。そんなとき、私たちの部屋がノックされた。
「どうぞ。」
と声をかけるとドアが開いた。立っていたのは私よりすこし年上くらいに見える男の人だった。
「どちら様? 」
「お初にお目にかかります。私、国軍シャラトーゼ本団所属のナラン・アギル・フリージア少将と申します。」
「ご丁寧にどうも。」
「ホルンメランからアイラ・ジン・ジョシュア伯爵がはるばるいらっしゃったと聞いてお会いしたく伺った次第です。」
「あら、それは嬉しいわね。けれどミドルネームは呼ばないでもらえる? 」
「どうしてです? 貴族の特権でしょう。」
「嫌いなのよ、人にそのミドルネームを呼ばれるのが。それと、こっちは今回セルギアン公に呼び出された私の護衛。あなたと同じ軍人だから仲良くしてね。」
ちょうど正式の軍服に着替え終えたパゴスキーが出てきた。
「おや、そうなのですね。ナラン・アギル・フリージア少将です。よろしく。」
「ああ、どうも。ピオーネ・パゴスキー准将です。」
フリージア少将はパゴスキーの名前を聞いて露骨に怪訝そうな顔を見せた。理由はおそらく、貴族でなかったからだろう。
「まあこれからも会う機会があると思いますから、どうぞよろしくお願いしますね、ジョシュア伯。」
彼はもうすでにパゴスキーには興味がなさそうだった。ドアから出ていくと、そそくさと離れていってしまった。
少将がいなくなってからパゴスキーの方を見ると、椅子に腰を下ろしていた。
「どう? 本団の軍人に会ってみて。」
「緊張がいい感じにほぐれました。」
「どうして? 」
「貴族にもボンクラはいるんだなって。」
二、三言交わしただけなのに凄い言われてるな、彼。まあ鼻につくのは認めるが。
「どうしてボンクラだと? 」
「剣の帯が緩んでいたからですよ。ろくに戦ったことがない証拠です。」
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