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エピソード2
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ロッカーからカバンと着替えを取り出し、投げつけるようにソファの上に放り投げた後、着ていたエプロンを剥ぎ取るとポケットに入っていたスマホが床に転がり落ちた。
「はぁ。」
苛立ちから大きなため息をついた瞬間、噛み締めるように閉じていた唇が開くと涙腺が決壊し、蛇口を捻った様に涙が溢れて止まらなくなった。
辛い。悔しい。悲しい。
声を押し殺す様にソファに突っ伏していると、ドアをノックする音が聞こえ、我に返って顔を上げた。
「…はい。」
「峯岸さん。山田です。あけてもいい?」
「…はい。」
鍵をあけてゆっくりドアを開けると、山田さんが心配そうな顔をしてたっていた。
「大丈夫?」
「はい!あ…あの、お店混雑していたのに…申し訳ありません!」
頭を深々と下げると、くしゃくしゃにまるまったエプロンを拾った。
「あ!ちょっと待って!」
山田さんの静止の意図を読み取れず、
エプロンを身につけながらホールに出ると、
ちょうど悠太と美流がお会計をしているところだった。
(最悪…)
レジを操作しているのは長身でリーゼントの男性だった。来れるかわからないと言っていた柊原さんだろうか?
「お客様のお会計、1860円でございます。」
悠太が財布を取り出して支払いをしようとすると美流が後ろから顔を覗かせ、強気な口調で声を上げた。
「店長さんですかぁ?見ての通り、ここのスタッフに注文したパフェをぶっかけられたんだけどぉ?証拠の動画あるから見ますぅ?」
(あの人が店長…?)
スマホを操作して証拠の動画を探す美流を無視するように店長はもう一度注文を繰り返した。
「お客様のご注文は、コーラフロート1点とチョコレートパフェ1点ですので1860円のお会計でございます。」
あきらかに機嫌の悪い顔して美流が店長を覗き込んだ。
「はぁ?美流の話聞いてる?スタッフの失態に対して誠意をみせろっていってんの!」
「…うちの店のカメラ、音声付きですけど?さっきのあんたらのやり取り、うちが動画あげることもできるけど?」
「はぁ!!?」
「すみません!もう来ませんから!あ、これPayPey払いで!ほら、美流行くよ!ね?」
不機嫌になった美流の肩を掴み、無理やりお店からだそうとあたふたする悠太に店長がにっこりと微笑んだ。
「お客様、お忘れ物です。」
パシャッ。
美流の顔から水が滴り落ちる。店長がグラスに注いであった水を美流めがけて勢いよく振りかけたのだ。
「は…はぁぁあ?!最悪!2度とこないわよ!」
濡れた前髪をかき上げ、悠太を引っ張る様に美流は店を出ていった。
店長は呆気に取られている私の方に向くと、ニヤッと意地悪そうに笑った。
「防カメ、音声付きじゃないどころかダミーだけどね!」
「須藤さーん。俺がやるって言ったのに!もぉー!」
山田さんもレジ前の床をモップで拭きながら満面の笑みで笑った。
今日でクビになる覚悟もしていたのに…。
「あの…どおして?」
店長に恐る恐る聞いてみると、山田さんが店長と肩を組んで言った。
「須藤さんね。あの2人の真後ろの席で仕事してたんだよ。んで、峯岸さんとのやりとり聞いてたってわけ。」
「あ…あの、店長!初日からこんな事…申し訳ありません。今日の分の時給はいりません。クビも覚悟してます。」
頭を下げて謝る私の肩を店長がポンと叩いた。
「今日からよろしくね。峯岸さん。山田から色々教わって。あ、今日来れないけど柊原も、姉御肌ないいやつだから。改めまして、ようこそ我が喫茶店spiceへ。」
「はぁ。」
苛立ちから大きなため息をついた瞬間、噛み締めるように閉じていた唇が開くと涙腺が決壊し、蛇口を捻った様に涙が溢れて止まらなくなった。
辛い。悔しい。悲しい。
声を押し殺す様にソファに突っ伏していると、ドアをノックする音が聞こえ、我に返って顔を上げた。
「…はい。」
「峯岸さん。山田です。あけてもいい?」
「…はい。」
鍵をあけてゆっくりドアを開けると、山田さんが心配そうな顔をしてたっていた。
「大丈夫?」
「はい!あ…あの、お店混雑していたのに…申し訳ありません!」
頭を深々と下げると、くしゃくしゃにまるまったエプロンを拾った。
「あ!ちょっと待って!」
山田さんの静止の意図を読み取れず、
エプロンを身につけながらホールに出ると、
ちょうど悠太と美流がお会計をしているところだった。
(最悪…)
レジを操作しているのは長身でリーゼントの男性だった。来れるかわからないと言っていた柊原さんだろうか?
「お客様のお会計、1860円でございます。」
悠太が財布を取り出して支払いをしようとすると美流が後ろから顔を覗かせ、強気な口調で声を上げた。
「店長さんですかぁ?見ての通り、ここのスタッフに注文したパフェをぶっかけられたんだけどぉ?証拠の動画あるから見ますぅ?」
(あの人が店長…?)
スマホを操作して証拠の動画を探す美流を無視するように店長はもう一度注文を繰り返した。
「お客様のご注文は、コーラフロート1点とチョコレートパフェ1点ですので1860円のお会計でございます。」
あきらかに機嫌の悪い顔して美流が店長を覗き込んだ。
「はぁ?美流の話聞いてる?スタッフの失態に対して誠意をみせろっていってんの!」
「…うちの店のカメラ、音声付きですけど?さっきのあんたらのやり取り、うちが動画あげることもできるけど?」
「はぁ!!?」
「すみません!もう来ませんから!あ、これPayPey払いで!ほら、美流行くよ!ね?」
不機嫌になった美流の肩を掴み、無理やりお店からだそうとあたふたする悠太に店長がにっこりと微笑んだ。
「お客様、お忘れ物です。」
パシャッ。
美流の顔から水が滴り落ちる。店長がグラスに注いであった水を美流めがけて勢いよく振りかけたのだ。
「は…はぁぁあ?!最悪!2度とこないわよ!」
濡れた前髪をかき上げ、悠太を引っ張る様に美流は店を出ていった。
店長は呆気に取られている私の方に向くと、ニヤッと意地悪そうに笑った。
「防カメ、音声付きじゃないどころかダミーだけどね!」
「須藤さーん。俺がやるって言ったのに!もぉー!」
山田さんもレジ前の床をモップで拭きながら満面の笑みで笑った。
今日でクビになる覚悟もしていたのに…。
「あの…どおして?」
店長に恐る恐る聞いてみると、山田さんが店長と肩を組んで言った。
「須藤さんね。あの2人の真後ろの席で仕事してたんだよ。んで、峯岸さんとのやりとり聞いてたってわけ。」
「あ…あの、店長!初日からこんな事…申し訳ありません。今日の分の時給はいりません。クビも覚悟してます。」
頭を下げて謝る私の肩を店長がポンと叩いた。
「今日からよろしくね。峯岸さん。山田から色々教わって。あ、今日来れないけど柊原も、姉御肌ないいやつだから。改めまして、ようこそ我が喫茶店spiceへ。」
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