CROWBAR〜あだ名死神の主人公が本当に死神になったとしたら?〜

さしみ

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誰にだって秘密くらいあるよ

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「水無月どうして、ここにいるんだ!?」
水無月は、神一郎のことを無視するように毛づくろいを始める。
俺が死ぬか否かのときに、なんでコイツは毛づくろいなんてしてるんだよ。
神一郎の額にシワが寄る。その光景を傍観していた、ジルが言葉を発した。
「其奴はなんなのだ?気配を感じなかった。ただの猫ではないな」
水無月が、ジルの言葉に反応する。
おーい、水無月さ~ん、俺の言葉には何も反応しなかったのに、なんでジルって人には反応するんですかね?差別ですか?俺ら友達でしょ?冷たいよ、悲しいよ。
そんなことお構いなしに水無月は、神一郎に背を向ける。涙が溢れそうなのを神一郎は必死にこらえる。それを見ていた、フットマンが無言でハンカチをくれた。
なんて、優しいお方なのでしょうか!まさに、紳士!もう、貴方だけにはいつか恩返しします。
悲し涙と嬉し涙で、目がパンパンだった。それを見て、変なやつだなって顔でジルはこっちを見ている。神一郎は、無意識に目をそらし、ブリッチに手をやる。
「おい、其奴!早く正体を表せ!猫のふりをしようと、吾輩の目はごまかされん」
水無月は、ため息をつく様に頭を下げる。そして、ポンッと言う音を立ててあたりが煙に包まれた。思わず神一郎は、目を瞑った。
目を開けると、そこには身長150センチくらいの、男の子が立っていた。
「僕の正体に気づくなんて、おじさんやるね」
「誰がおじさんであるか!目上の人は敬えと、習わなかったか?」
「そんなの僕の自由じゃん。僕が敬う人はこの世で二人だけだもん!その一人は、この神一郎さ」
男の子は神一郎を手繰り寄せた。蚊帳の外にいた神一郎が、急に話題に持ち込まれて、動揺し言葉が出ない。
何がどうなっているのやら。男の子の容姿は、黒髪に琥珀色の瞳と、水無月の特徴に似ているが、状況的に水無月なんだろうが、どういう意味かさっぱりわからん。
「あれりゃ、神一郎かたまっちゃった。そーだ、おじさん」
「黙れ、クソガキ。吾輩は死神さがしで忙しいのである」
「そのことなんだけど、死神って神一郎であってるよ」
「は?何をいうであるか!少年は白だ、白が死神に匹敵する力を持つとは思えん」
「はぁ、だから今どきの外界人は嫌いなんだよね。常識に囚われすぎててほんとにやだ」
「無礼であるぞ」
ジルと水無月は睨み合っている。神一郎はどうしてるかというと、今の状況を一つずつ整理しようとしていた。
目の前にいるのが水無月ってことはわかったけど、水無月があんな性格なんて知らなかった。まぁ、確かに人が話してるのに無視することはあったが、それは猫だから仕方がないって思ってたのに。なんか、裏切られた気分。それに、ナチュラルに俺のこと死神って、言っちゃってるし、何なのコイツ!しかも、なんか喧嘩してるし、フットマンさん困ってるでしょーが。
後ろであたふたしているフットマンを神一郎は和やかに見つめる。
大丈夫だ、フットマンさん、さっきのハンカチの恩は返しますよ。
「まぁまぁ、二人とも一旦落ち着きましょ」
二人は神一郎の言葉を無視して話を続けていた。
ねぇ、これ泣いていい?
「おじさん、それ証明できたら、信じてくれる?」
「そうであるな、証明できたら信じてやろう」
あれ、知らない間に話し合い完結しちゃってる。全然話聞いてなかったけど、何を証明するんですか、水無月さん?
「そういうことだから、神一郎!」
水無月は、こっちを見てニッコリ笑う。
いやいや、なんも話聞いてないんですけどー!?

そして、ジルとフットマンは部屋をあとにした。部屋には神一郎と水無月が残された。
水無月はいつもの毛並みを揃えるように、鏡で髪の毛を整えていた。
あれ、なんでちゃんと人間してるの?実は人間だったの?どういうことだよ?
視線に気づいた水無月は、ニッコリと笑う。
ニコッじゃないよ、何がニコッだ!ちゃんと、説明しろ!
「もー、ごめんてー!そんな怖い顔しないでよ神一郎」
それでも神一郎の含めっ面は治らない。
「ちゃんと説明してあげるからさ」
「俺が理解できるように完結に説明しろ」
「はいはいw」
水無月は、神一郎の態度にやれやれっと言うように肩を上げた。
「じゃあ、質問して!そしたら何でも答えるよ」
「じゃあ、水無月の正体は?」
「え、極秘」
「最初から回答拒否!?」
「ははっ!じょーだんだよ、じょーだん!僕は正真正銘、黒猫だよ」
水無月はニコッと笑う。
今の全く説得力ないんだけど。
「今の姿は?」
「話しやすいように変身したの!すごいでしょ!」
いや、すごいとかいう話じゃないのよ。話のベクトル違いすぎるのよ。
「じゃあ、水無月はいつも俺との会話、無視してたってことですか?」
「えっ…!?そ、そんなことないよ…」
「ご飯あげる前はちゃんとついてきて話聞いてるのに、ご飯後いつもすぐ去るだろ」
「それは…、僕も忙しいからさ」
神一郎は水無月に駆け寄る。両者は一心に見つめ合う。
「もー、だってさ!神一郎の話長いんだもん!そんな長い間、一方的に会話されても、会話じゃないじゃん!キャッチボールしてないじゃん!」
「た、、確かに一理あるな…」
確かに一人で喋ってて、寂しくなっことがたたあった。てか、ものすごくあった。
「でしょ?それに、僕と話すのもいいけど、人間の友達もちゃんと作りなよ!作って欲しいから、いつも切り上げてるんでしょ?感謝してほしいくらいだよ!」
「ごもっともです…水無月さんごめんなさい」
神一郎は深々と頭を下げる。
「わかったならよろしい!」
なんか久しぶりにこんなに人と会話した気がする。長年人とあんまり喋ってこなかったけど、人と喋るのって心地良い。
包容感に浸ってる神一郎に、水無月が問う。
「他に聞きたいこと、いっぱいあるでしょ?なんで、序盤に出てくるトピックそれなのさ」
「なんか、この謎な状況より水無月の性格のショックがすごくて……」
「おい!それ失礼だぞ!」
ほっぺたを大きくする水無月に、少し笑いがこみあげてくる。神一郎は、そっといつも水無月を撫でるように、頭を撫でた。
「うん、水無月は水無月だ。だめって言っても、俺をいつも迎えに来てくれる優しいやつってことは知ってるからな」
「なんだよ、急に…」
少し照れた顔で水無月はまた頬を膨らます。
その姿を見ると、これから起こることはなんでもできると思った。
 
 神一郎と水無月は思う存分、楽しく語り合った。いつもは返ってこない返事も、今は返ってくる。とても楽しい時間だった。

そして、神一郎は話し疲れて眠ってしまった。窓の外には輝く月がこちらを除いていた。水無月はその月を見つめて、
「クロー…」
と、一言呟いた。
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