CROWBAR〜あだ名死神の主人公が本当に死神になったとしたら?〜

さしみ

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登校にアクシデントはつきものだよね

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「なぁ、水無月さん?」
「どーしたの?神一郎」
「この服はなんですかね?」
「何って制服に決まってるじゃん」
鏡に写る自分は、どこかの学校の制服らしきものを身にまとっていた。
手触りも普通の制服に近いんだけど、何で知らない学校の制服着てるの?
「こんな格好して、これから何するのでしょうか…」
「何って制服来たらやることは一つでしょ?学校に行くの!」
なぜこの子はこんな大変なことを、いとも簡単に言えてしまうのだろうか。いや、行かないよ。なんで、行くこと前提で話してるのよ。
「てか、今思ったけど、いつになったら家に帰れるの!?そーだ、楓が心配しているかもしれない!帰らしてよ」
そーだ。1日帰ってこなかったなんて、心配でたまらないはずだ。
けど、水無月はニコッと笑う。
「そのことなら大丈夫だよ!僕が代わりに神一郎のスマホから、妹ちゃんと家政婦さんに連絡したから」
「え!?何勝手に!?変なこと送ってないだろうな」
急いでメールの内容をチェックする。
神一郎『今日から、友達の家でお泊りする。月曜には帰るから、いい?』
楓『お!我が兄にも友達ができたか!我が兄のためなら、なんだって許可するぞ、楽しんできて!』
という、会話が残されていた。
妹ってメールだとなんかテンション高いんだよな。リアルとのギャップがすごい。てか、俺にだって友達くらいいるぞ…。えーと…、水無月とか…?
神一郎は、家政婦とのログも見てみた。
神一郎『今夜と、土日は友達の家にお泊りに行ってきます。なので、楓のことよろしくお願いします。』
家政婦『あら、お友達?珍しいわね!楓ちゃんのことは任せて、楽しんできてね』
というのが残されていた。二人とも普通に承諾してるのに驚きを隠せない神一郎。しかも、二人とも友達いたんだって、裏の意味を持ってそうなので、ちょっとキズついた。
神一郎は、いつものように癖で眼鏡を触る。
「ね?ちゃんと、連絡してるでしょ?」
「うん、けど、心のダメージがすごい…」
友達くらいいるよ…。その人が俺のことを友達って思ってない場合もあるけど。さみしいよ。
「まぁ、ということは、後2日過ぎれば家に帰れるってことか!」
「いや、違うよ」
「へ…?」
時間が止まったように感じられた。うちに秘めた希望が絶望へと色を変える。
「いい忘れてたけど、ここでの1日は、自界の半日なんだよねー、つまりは、合計であと4日はこっちだね」
その言葉に神一郎は、愕然とした。
なんで、こんなことに巻き込まれてしまったんだ。あのときの、生徒会長を恨みたい。けど、やるって言ったのは自分だし…、自己責任だよな…。はぁ…。
思わず深いため息がでた。その様子が気にかかったのか、水無月がこっちの顔を覗き込んできた。
「神一郎おねがい。人助けだと思って、少しだけ我慢してほしい、けど、本当に嫌になったら教えてね。その時は、家に帰れるようにするから…」
水無月は、しょぼんと下を見つめる。その姿をみた神一郎は、なんとも言えない顔になる。
そんな顔されたら、頑張らないといけないじゃないか!一人の友達として、これはもう義務かもしれない。
「わかった、水無月の初めての頼みだから頑張る、何するかわからんが」
水無月はニコッと笑う。そして、これから4日間何をするのか説明してくれた。
俺はこの4日間、ある学校に行ってもらって、そこで授業をうける。そこで俺が死神って証明されたら、そのまま例の学校に通い続けなればならない。けど、証明されなかったらそのまま帰れるというわけだ。水無月には悪いが、俺は死神ではない。ただ、あだ名が死神なだけ。
「授業形式は自界と同じか?」
「あー、だいたい一緒だよ!ちょっと、科目が特殊なだけで」
「というと?」
「科目は、歴史、数学、国語、魔術、格闘かな」
「数学はやるんだな、てっきり魔法学校的な感じで、数学みたいな理論はないと思ってた」
「言っちゃえば、神一郎の世界の授業とファンタジーの世界の授業が混ざった感じだね!アニオタの神一郎なら嬉しいことでしょ?」
「おい、アニオタじゃないって!アニオタなのは俺の妹だ!決して、俺はアニオタではない。うんうん」
実際、妹がアニメのグッズやらなんやらを集めているが、俺は全く集めていない。
俺の中ではヲタクはグッズを集めてから、という謎の定義をしてるので、まだ自分はヲタク未満だと思っている。実際のところはわからない。
「まぁ、とりあえずは、学校に行ってきて!荷物はまとめといたから!」
荷物を手渡された神一郎は、中身を確認する。
「あのさ、絆創膏とかさ救急キット的なのある?」
「あるけど、なんで?」
「いや、だってさ、俺白で無能なわけじゃん?もし、誰かに攻撃されたら終わりじゃんRPGじゃあ、回復アイテムは必須だよ。これ常識」
水無月が、やっぱりヲタクじゃんって顔してるけど、神一郎は可憐に無視した。
「絆創膏やら、包帯やら入ったやつあったよ。これでいい?」
「あぁ、ありがとう」
これで、ある程度は心配ないはず。俺はゆっくりと、学校へと歩みを進めた。

水無月から渡された地図によると、あそこの大きな建物が学校に違いない。たぶん。いや、わからん。
てか、水無月ついてきてくれるんじゃないのかよ。自分は、用事あるからまたねってどっか行っちゃうし、急にボッチにされて悲しいんだが。
一歩一歩、地面を踏みしめるたび緊張の色が濃くなっていく。まさに、入学初日って感じだ。一歩が重い…。なんで、最近高校に入学したばっかなのに、2回目の緊張感味わわなきゃならんのだ。
ムカつく神一郎の一寸先に、人が歩いているのが見える。
丁度いい、あの人に学校があそこで合ってるか聞こう。
少しずつ、神一郎は距離を詰めていく。近づくと背丈は俺くらいの男で髪は金髪、そして服が少し汚れていた。よーく見ると、右腕から赤色の何かが…。
血…!?
「あの!!右腕から血出てますよ!」
思わず叫んでしまった。男は何事かと後ろを向いた。一番最初に目に飛び込んできたのは、彼の瞳だった。一見、黒一色かと思ったが、かすかに青い。きれいだ。じっと見つめてると、男は目をそらして歩みを進めようとする。
いや待って待って、手当くらいしようよ。
追いかけようとした神一郎は、不幸なことに足を絡ませ、思いっきり地面にダイブした。とっさの判断で手をついたので、顔面と眼鏡は無事だ。しかし、手は無事ではなかった。
男は神一郎の方を見て、歩みを止めていた。
チャンス。
神一郎は、男の足にしがみついた。
「今転んで怪我したんで、ついでに手当しましょ?ね?」
神一郎は、じっと彼の目を見つめる。彼は、バツが悪そうだが、その場に座り、腕を突き出した。
これは、手当していいってことだろうか。
神一郎は、カバンから消毒液と、包帯、ガーゼを探し出す。
「先に自分の手当してから、あなたの手当しますね」
これは、消毒液にやばい薬が入っていないことを証明し、警戒心をなくす効果がある。多分。
霧吹きタイプになっている消毒液を、手に振りかける。針で刺されたような痛みが、全身を震わせる。
「お前、変なやつだな」
唐突に彼が口を開いた。神一郎の眼鏡が曇る。
第一声それ?な、なんかちょっとキズつく。てか、ムカつく。転んだのがいけないのか?仕方がないじゃん、転ぶなんて誰も予測できないって。それともなに、俺の目が白いこと言ってるのかな。これも、仕方がないじゃん。白だったんだもん。
神一郎は、少しふてくされた。自分の手の消毒をし、包帯をまこうとする。けれど、うまく巻けない。
すると、男がそっと神一郎から包帯をとりあげ、なれた手付きで巻いてくれた。
この人、いい人だな。
神一郎は、彼の手当を始める。袖をまくり、傷口に消毒液をする。彼は苦い顔をする。消毒液がしみるのだろう。神一郎は、そんなこと構わず手当を続ける。
「お前、名前は?」
変なやつの次は、名前を聞いてきた。最初からそういう発言をしてほしいものだ。ふてくされながらも神一郎は彼に名前を教えた。
「しんいちろう?変な名前だ」
神一郎の頬が膨らんでゆく。変な名前と言われて嬉しいやつなんていない。この人は、デリカシーというものがないのだろうか。
「はい、手当できました。これで失礼します。初日から遅刻しちゃうんで、では」
男をおいて、神一郎は走り出す。走っている最中に、学校を聞くのを忘れたことを思い出したが、もう遅い。一か八か、あってることを願い、建物に向かって走り続けた。
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