最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第一章

宿舎の騎士達は真実が知りたい

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「おかしい・・・・」

敵国の騎士がここに住みだしてから数ヶ月。
俺は怪しんでいた。

「え?何だって?なんか言ったか?」

あ、自己紹介がまだだった?

俺はこのサウジスカル帝国の騎士キルトだ!
実は最近とても気になっている事がある。

「あのさ。食堂の改装の事なんだけど」

「あー!あれな?強盗を捕まえた報奨金を、また意味も無いものに使ったよなぁ?何でよりにもよって厨房の改装・・・・・・」

お?気が付いたか?
そう、あの食堂。
実はあの女騎士が来るまでまともに機能していなかった。

何故なら無駄に爽やかなイケメン。フィクスの妹が重度なブラコンを発揮して、ここに来る使用人達を悉く辞めさせてしまったからな。

いや。確かに下心丸出しで働いてた子もいたよ?
ちょっと羨ましいとか、リア充シネとか思ったけども。
でもなぁ?だからって全員辞めさせるとか、なくね?
しかもそのせいで誰も働きに来てくれなくなったんだよなぁ。そんな時やって来たのがティファだ。

最初聞いた時は敵国の騎士が来るって言ってたから皆殺気立ってたんだ。
それなのにやって来たのは若い女の子!
しかも美人!驚いたよね。そして疑ったよ。
ドッキリかと思って思わず後でギャドに確認しちまったしな。

まぁそれはいいとして、とにかくあの子が来てから宿舎は綺麗になったし、氷冷庫も片付いて俺達の雑用が減ってごみ出しもしなくて済んで万々歳なんだ。

ん?じゃあいいじゃないかって?俺も最近までそう思ってたさ。街で露店の野菜売り場の店主に声をかけられるまでは。

「そういや騎士さんとこ、とうとう食堂に料理人が入ったのかい?」

「え?いや、そんな話聞いてないけどな?」

「え?そうなのかい?最近あんたんとこの騎士さんと偉い美人のお嬢さんが沢山野菜買い込んで行くからてっきりそうかと思ったんだがね?」

これを聞いた時はティファが自分の食材を買いに来たんだろうと思ってたさ。だけどさ、一人で肉2キロって幾ら何でも多いよね?どんだけ食べるんだよって話だよ!因みにこれは精肉店のおっちゃんに聞いたんだけど。定期的に買いに来るらしい。

「食堂を改装するちょっと前から、お昼時になると宿舎からいい香りが漂って来るって、近所のおっさんが言ってた。そういえば俺達さ、ティファが来てから殆ど食堂に近づいてないじゃん?」

そうなんだよ。最初はさ?やっぱ反抗心というか、敵国の奴なんかと馴れ合うつもりはない!っていう気持ちがあったからほっといたってのもあるけど、途中からはハイトに巧みに誘導されていたような気がするんだよ。

「あんなにティファを目の敵にしてたヨシュアが最近大人しいだろ?この前その事を指摘したら"俺は大人の階段を登り切ったから昔の事は忘れた"とか言ってた」

「え?登り切るどころか階段に辿り着いてさえいない奴がなに言っちゃってんの?」

「そうなんだよな。あとさ、アイラ嬢がこの前来てたじゃん?俺ティファと仲良く話してるとこ見ちゃったんだよ」

何!?アイラ嬢がここに住む女を目の敵にしないだと!?
あり得ない。はっ!!そういえば・・・・・。

「最近。フィクス昼飯や晩飯、誘っても来なくなったよな?彼女でも出来たのかと思ってたんだけどさ・・・・」

・・・・・・・・・・。
ほーーーーーん?俺の勘。強ち間違ってない?

「あのさ、これ、ただの憶測なんだけどさ。口に出していい?」

「はい。どうぞ」

俺達はたった今、晩御飯を食べる為に宿舎を出て来たばかりだ。勿論、先程名が上がった人物達はここには居らず、そしてオーブンはこの前完成したばかり。

「もしかして、ハイト達さ。俺達に内緒でティファの手料理を食べてたりなんてしないよね?」

はい、皆んな!いーい笑顔だぁ。
じゃあ、とりあえずさ?

「「「ダッシュで帰るぞ!!!」」」

それは物凄い勢いで走ったよね?
こんなに全力疾走したの何年ぶりだろう。
もしこれで何も無かったら俺達ただの間抜けだよね?

いや、そんな事ない。だってさ・・・。

「うへぇー何この香り・・・めっちゃいい匂いするんですけど・・・・」

宿舎に近づいて行くほどに濃厚で香ばしい香りが強くなって行くんだよ。俺達は一目散に宿舎に入ると真っ直ぐ、迷う事なく食堂の扉を開けて、開けて・・・・・。

「「「「ああああああああ!?」」」」

「え!どうしたんですか?こんな大勢で?皆さんご飯を食べに出かけたんじゃ?」

そりゃ驚くよね?さっき出てった奴等全員、一気に戻って来ればさぁ?

「なっなんで・・・・・」

「お前ら一体」

「・・・・それは、俺達のセリフなんだけど?ハイト、ヨシュア?そしてギャド団長?」

今、どさくさに紛れて逃げようとしたでしょ?逃がさないぞ。

「あ、いやぁ~これには、色々と訳があって・・・・」

「へえ?そうなんですか?俺達に内・緒・で女の子の手料理を食べる訳ね?聞かせて貰いましょうか?」

「あのぉ?ご飯出来ました。食べないと冷めちゃいますよ?」

「ごめんちょっと黙ってて。だいたいさぁ?・・・」

目の前のテーブルに置かれているのは見たことも無いような料理のオンパレードだ。沢山の野菜が入っているらしいシチューに美味しそうな肉のスライス。それに、あれは何だろう。パリパリの生地らしき上にトマトやハーブやソーセージが乗りたっぷりとろけたチーズがかかっている。その他にも数点、それを、今まで俺達に黙って楽しんでいたなんて・・・・・天誅!!!

「ま、まてまて!!落ち着けお前ら!!とにかく座れ!」

「これが落ち着いていられますか!!しかも団長自ら一緒になって何やってんすか!!」

あ、顔そらした。
自分が悪いって分かってんだなちゃんと。

「で、でもな?料理はあくまで彼女の趣味であって!彼女はあくまで捕虜なんだよ!おおっぴらにここで雇うのは問題あるだろ?」

「じゃあ、あんたらも食べないで下さいよ!!何で自分達だけ食ってんすか!」

「ちょっと待て。それとこれとは話が違うぞ?僕はティファの監視役で付きっ切りだから、ついでに作って貰ってたんだ。僕を巻き込まないでよ」

「あ!ずりぃ!お前自分だけティファのご飯食う気だろ!そもそも事の発端はお前が・・・・」

ダァアアン!!

・・・・・アレェ?今、すぐ近くでけたたましく何かを叩きつける音がしたような?

「・・・・・ご飯。冷めちゃうんですけど?食べるの?食べないの?」

あら?なんか一気にこの場の空気がマイナス十度ほど下がった感覚がしたぞ?だけど俺、何故か背中から凄い量の汗が出て来たぞぉ?なんでだろ?

「喧嘩なら外でお願い出来ます?それで?何ですか?ご飯食べるんですか?それとも今すぐここから物理的に叩き出して欲しいんですか?」

やぁ~あれぇ?この子目がマジですよ?いや、ホント、アハハハハ?とりあえず、肉に振り下ろした包丁から手を離そうか?

「「「た、食べます。食べさせて下さいティファさん」」」

皆んな黙るよねー。そして、大人しく座るよね?目の前では前のめりに倒れてるハイトが見えたけど、それどころじゃねぇよ。

「うむ!!では食すがよいです!」

色々と突っ込みどころ満載だけど、とりあえずここは黙って食う事にしたよ。そして次々と出て来る料理を涙目になりながら食ったよ!!俺は今幸せ感じてる!!

「ハイトさん。大丈夫ですよ?今日はお代わりが沢山ありますから」

・・・・・・でも、後でハイトは問い詰めて、しばくわ。
これ決定事項だから。
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