最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第一章

ナシェスはティファを振り向かせたい

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「貴方は完璧です。誰もが貴方に平伏し、貴方に従うでしょう」

まぁそうだろうな?
私はこんなも美しく、ありとあらゆる才能に溢れている。
いずれ私がこの国の王になり、お前達凡人共を率いて行ってやろう。

「きゃあぁぁぁぁ!ナシェス様ぁ!!」

「素敵!!なんて麗しい御姿なのかしら?!」

うんうん分かるぞ。
だが私は選ばれし特別な人間なんだ。
お前達のような、なんの面白味もない者が私と釣り合うなどと思うなよ?

「今年の闘技大会の有力選手はティファと言う兵士だそうです。」

ほぅ?その女は余程身の程を知らないらしいな?
女の身で男だらけの闘技大会に出場するとは。
しかし、面白そうだ。今年はその女の泣きっ面を眺めながら酒でも飲むとしよう。
いつも退屈で退屈でしょうがない行事だったからな?

「勝者、ティファ!」

闘技大会に出るだけあって流石に強いな、それに想像していたよりもかなり見られる容姿じゃないか?これは面白い。

キィィィン。

「勝者、ティファ!」

・・・・・・・・・。
思った以上に強いなあの女。それに、あの動き。
洗礼され、まるで動きに隙がない。なんて美しく闘うんだ。

「勝者、ティファ!」

おい。まさかこのまま勝つのか?
最後はこの国一番の剣士だぞ?あの女・・・・。

「闘技大会優勝者は、ティファ!」

信じられない。
本当に勝ち上がるとは。それに、よく見るとなんて美しい少女なんだ。あんな女は見たことがない。欲しい。

「兄様、彼女は駄目です。冷静になって下さい。理由は分かるでしょう?」

出自が平民で身分差があるからか?そんな物どうとでもなる。それに、調べた所によるとアイツは魔力を持っている。いざとなったらそれを理由にしてしまえばいい。

「そんなに言うなら一度彼女と会ってみろ。それで上手くやれるようなら考えてやる。ナシェス。彼女は特別な人間だ、決して嫌われるような事をするんじゃないぞ?」

ハッ!父様。私が女に嫌われる訳がないでしょう?
アイツらは私を見た瞬間から私に夢中になるんだ。
私の事を何も知らない癖に。

「お初にお目にかかります。ティファです」

「ああ。会えるのを楽しみにしていた」

お前はきっと私を楽しませてくれるだろう。
この退屈な俺の人生に刺激を与えてくれるだろう。

「あの!良かったらコレ」

「何だこれは?」

「パウンドケーキです!王子は甘い物が好きと伺ったので!」

は?なんだって?今この女はなんと言った?
この私にパウンドケーキを持って来ただと?

「・・・・・ハッ!」

「ナ、ナシェス様!」

しかも、この見た目。美しくもなければ形も悪い。
そこら辺の安い商店で買ってきたような菓子を、王子であるこの俺に平気で差し出すだと?
それに、何故こんな物持ってきたのだ?
こんな物で、私のご機嫌をとりたかったのか?心底がっかりした。

「失望したぞティファ。私はお前に何処にでもいる低俗な女共と同じ物は望んでいない」

いや。そんな筈はない。私が間違える事はない。
この女は私に相応しいだけの物を持っている。
それを見せてみろ!私に愛されたいのならな!!

「お前は、私の物だティファ。私の望む女になれ」

「え?嫌です」

・・・・・は?何言ってる?この女。

「私は陛下に言われたのでここに来ただけで、別に貴方の物になるつもりなんてありませんが?そういう話なら、私失礼させて頂きます」

「ははは。何を言っているんだ?本当は私に会いたくてしょうがなかったのだろう?」

「いいえ?実は今日会うまで貴方の顔も知りませんでした。私、人の顔と名前を覚えるの苦手なんです」

そんな馬鹿な。この国の人間で私の顔を知らない者など殆どいないぞ?変な意地を張って可愛いじゃないか。

「それに、私食べ物を粗末に扱う人間がこの世で一番嫌いなんです。だから、貴方の事、今嫌いになりました」

「は、ははは。何を・・・・・」

「もう二度と貴方の顔も見たくありませんし、声も聞きたくありません。貴方も私がお嫌いなようですから、もうお呼びにならないで下さいね?私これでもとても忙しいので」

ちょ、ちょ、ちょっと待てーーー!?
まだ私の話が終わって・・・ん?何だ?止めるな!ティファが行ってしまうだろう!!

「・・・・お前は、あれ程上手くやれと念を押したのに。見事に嫌われたようだな。まぁ、予想はしていたが」

「あの者があんな安物の菓子など持ってくるのが悪いのです。私を馬鹿にして・・・・」

「馬鹿はお前だナシェス。私がわざわざ仲良くなるようティファにお前が甘い物が好きだと伝えておいたものを・・・アレはティファが自分で作ったのだ」

・・・・・・・・・・・は?作った?

「お前の為にティファ自ら作ったのだろう。それをお前は・・・・あんな事をして、もうティファを振り向かせるのは諦めろ」

わざわざ私の為に?あのティファが?

「いいえ父上!あの女、何故あんな物を持って来たのかと思えばそう言う事か!そんなに私の事が好きだったのですね?全くそれなら最初からそう言えば一口くらい食べてやったものを・・・」

ハハハハハ!
やっぱりな!それは確かに私も大人気なかったな!
それであんな事を言って拗ねたんだな、可愛い奴め!
では今回は私が折れて再び私にお菓子を作る機会をくれてやろうではないか!!

「・・・・・・ナシェス」

「陛下、お諦め下さい。(馬鹿には何を言っても通じませんから)」

だから、許してやるって言ってるだろ!!!
サッサと私の下へ戻って来いよ!!

「何?何か言いたいの?」

ハッ!一瞬意識が飛んでしまった!そうだった。
言いたいが貴様の所為で声が出せないではないか!!
野蛮人が!!サッサと口に突っ込んでる物を抜け!!

「ゲホェホォ!!ティ、ティファ・・・」

あれから、どんなに声をかけても呼びつけても妨害に遭ってお前に会えなかった。周りの者達はお前が私を嫌っていると言っていたが、そんな事信じられる訳がない。
何故なら、この私が女に嫌われるなどあり得ないからな。

「ハイトさん」

おいティファ。何故そんな男の服を親しげに引っ張っているんだ?お前今までそんな顔で他の者に話しかけたことなどないだろ?

「ん?なぁに?ティファ」

なにそんな親しげにヒソヒソ話してるんだ!!こら!お前私というものが居ながら・・・・。ん?なんだティファ?
やっと私を解放する気になったのか?

「そうだティファ。私を助け、私と共に帰ろーーーッムグゥ!!」

「美味しいですか?ケーキ」

な、何でそんな笑顔で私の口にケーキを突っ込むんだティファ。しかもあの男の時より若干大きいぞ!

「美味しい、です、か?お・う・じ?」

ねじ込むなぁ!美味い!美味いから!
思わず頷くくらい美味いから!

「ムフーーーーー!!!!」

あ。笑顔可愛い。
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