最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第一章

皇帝陛下は可愛い娘が欲しい

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「皆御苦労だったな?此度の戦は無事、我々が勝利を収める事が出来た。よくやったな」

「それで?相手はなんと?」

皆息災か?
私は相変わらず休みなく働く毎日を過ごしている。
最近は引退という言葉が頭から離れない。

「全面的に敗北を認め本気で和平に応じたいと言っている。まぁ、勝ち目が無いとやっと理解したのだろうな」

相手はデズロの存在をよく知っているからな。
山にあんなでっかい風穴開けられたら本気で怒らせたのだと気づいただろ。
きっとティファの出自にも気付いて真っ青になっているに違いない。自業自得とはいえ気の毒な。

「あの馬鹿王子は、まだこちらの牢に捕らえている。王子の部下はデズロに引き渡した・・・。まぁ生きてはいる」

「あーーーーそうか。まぁ当然の報いだがな?」

「あと一つ確認したいのだが、ハイトとティファはあの王子に何をしたんだ?」

捕まえて少し痛めつけたら恍惚とした顔してたから気色悪くて思わず手を止めさせたぞ?新しい扉、どうやって開かせた?お前達。

「さぁ。ただ確かに少し様子がおかしかったな?主にヨシュアが」

それは確実に何か起こっただろう?
大丈夫なのか?私にこれ以上心労を与えないでくれ。
今回の事で十年分くらい寿命、縮まったぞ?

「俺達が到着した途端、半べそかきながらヨシュアが走って来たからなぁ?一体何があったんだか・・・・」

うむ。きっとハイトだろうな。
アイツ父親に似て極端な性格してるからなぁ。
突然スイッチ入る癖やめてもらいたいものだ。

「じゃあティファは正式にこの国の民って事で宿舎に雇い入れていいんだな?」

「ああ、構わない。もう彼女が狙われる事も無いだろうからハイトの監視も外して構わない」

まぁ元々後半は護衛のつもりで付けてたからな。
デズロは正体を名乗るつもりもまだ無いようだし、もう暫くこのまま、あそこに居ても問題ないだろう。

「・・・・陛下は、それでいいのか?」

「ん?構わないが?」

なんだ?どうしてそんな顔をする?
何か不満でもあるのか?あ、そうか。

「彼女が魔力保持者だからか?いらんいらん。デズロ一人いれば暫くは事足りるし、アイツの次はササラがいる。それにアイツの道楽のお陰で、それも解消されつつあるからな?」

アイツ遊んでるフリして大層なもの作ってたみたいだな、ニートとか連呼して悪かった。・・・お前は立派なアルバイターだ。決して真面目に働いている人間と肩を並べようなどと思うなよ!!アルバイターめ!!

「じゃあなんでティファの能力を調べたんだよ?」

「お前はアホか?何処の世界に危険人物かもしれない者を調べない王がいる?お前もティファと撃ち合ってようやく彼女の実力が本物だと理解しただろう?ササラをそちらに向かわせたのも彼女の魔力が危険ではないか調べさせる為だ。お前がちゃんと仕事しないからだぞ?」

お?黙ったな?そうだ、少しは反省しろ。
お前、私は仮にも一国の王だぞ?舐めるなよ?全部お見通しだ。

「お話中失礼致します。陛下、ティファが陛下に謁見したいと」

「え?」

「なんだ、噂をすれば。すぐに通せ」

そういえば私は彼女にあれ以来会っていないな。
話は聞いていたが、あれから何事もなく過ごせているらしい。概ね平和で良かった事だ。

「失礼致します。陛下」

・・・・・・・・?ん?この子は誰だ?来たのはティファではなかったか?

「うん?君は」

「ティファです。陛下には数々のご温情と御配慮を頂き感謝致しております」

・・・・いや、何だろうな?
この子こんなに美人だったんだな。初めて会った時は鎧姿で泥まみれだったから気付かなかった。これはギャドが狼狽えたのも頷ける。

「ああ。そんな畏まらなくていいぞ?この国の者は基本皆私に気を使わないからな。舐めきっているのだ。私を」

「人聞きの悪い事言うなよ!親しみ易い人柄だから、だ。ティファ。決して俺達は陛下を舐めてないからな?」

嘘をつけ嘘を!
分かってるんだぞ?お前たまに私がこの国の王だって事忘れてるだろ?処すぞ!

「それで?今日はどうしたのだ?私は呼び出したりはしていない筈だが?」

「あの、お話を聞いて陛下が色々と手を回してくれていたと知りまして、今日はそのお礼に・・・・」

ホロリ。
何だろうな?
私は、とても感動している。
この国で私にわざわざ感謝を伝えに来る人間がいるだろうか?答えは否。誰一人としていない。アイツら私が働くのが当たり前だと思っている鬼畜共だからな!!私はとても癒された!!癒されたぞー!

「よいよい。お前はもう私の国の住民だからな。気にするな。それで?ティファはその後問題なく過ごしているのか?」

「はい!しかもお給料もちゃんと頂けると言う事で益々ヤル気がみなぎってます!!ありがとうございます!!」

あ、可愛いな。デズロがメロメロなのも頷けるな。
親権をアイツから私に変更しようかな?可愛い娘、欲しかったんだ実は。

「あのーそれで。コレ良かったら。王様に渡していいものかどうか迷ったんですが・・・・・・」

は!!それは、ま、まさか?

「お昼御飯用のサンドイッチです。甘いものは得意ではないと伺って。毒味は宰相様がしたので大丈夫です!」

おい。宰相?お前そんな話聞いてないが?何さり気なく食ってるんだ私のサンドイッチ。あ、目を逸らしたなお前。

「そうか。では有り難く頂くとしよう」

「王様、お魚が好きだと伺ってお魚をフライにして野菜を加えたタルタルソースなどを挟んであります。あとはタマゴサンドと生ハムとハーブなどを挟んだヘルシーな物にしました!」

よく分からないが取り敢えず美味そうだな?
よし。今食べよう。

「え?今食うのかよ?」

「何か文句でもあるのか?まさか隙を見て私の代わりに食べようなどと、思ってたわけではないよな?」

ギクリ

全員か!!油断も隙もないなお前ら!
絶対渡さん!!

お?まだ温かいではないか。まずこのフライなる物を一口。サクリ。

「・・・・・ティファ。お前宮廷で働かないか?」

「駄目だぞ!こいつは宿舎の料理人だからな!!」

チッ!ギャドは先に帰せば良かったな。しかし美味い!
宰相がこちらをジッと凝視してるがやらんぞ。お前コッソリ食っただろ?結構隙間空いてたぞ!どんだけ毒味したんだお前は!!

「陛下」

「ん?美味いぞ、ティファ」

「ンフーーー!ありがとうござます!私を拾ってくださって」

よいよい。
ちょっと面倒で途中、何度も逃走しようと考えたが構わないぞ?お前はデズロの娘でデズロは一応私の親友だからな?

「私、ここに来てから色々頂いてばかりです。何をすれば皆さんのお役に立てるでしょう?」

デズロ。お前にこの子は勿体ない。やはり親権を私に変えてしまおうか。

「そうだな?では、この国で一番幸せになるといい」

「はい?」

「幸せな気持ちで作るティファの料理は食べる者を幸せにするだろう。一度お前の料理を食べた者は皆、同じ事を口にする。もう一度あの幸せを感じたいと」

私も今、分かったぞ。きっとティファの料理はそういう物なのだと。だから、あちらの国では受け入れられなかったのだな。

「幸せになりなさい。ティファ」

それにしてもこのサンドイッチ美味いぞ!!
もうお昼毎食作って貰おうか?構わないよな?私この国の王だしな?皆どう思う?
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