最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

文字の大きさ
69 / 144
第二章

フィクスはめちゃくちゃ複雑である

しおりを挟む
「・・・・ハイト。大丈夫か?」

「何の事?僕はいつも通りだけど?」

・・・・皆さん御機嫌よう。フィクスです。
まず、話を整理してもいいでしょうか?

俺は最近陛下の命でサウジスカルから西側にあるオスカール帝国に行っていたんだ。うちの国とオスカリタはとても親交が深い。今回はオスカリタの春の祭典に国の代表として参加してきたんだけど、それを終えて帰って来たら魔物襲来騒ぎに出くわしました。

それでね?

その魔物がとても美味しくてさ?
討伐した甲斐があったぜ!とか、呑気に思ってたら実は俺が居ない間にティファがギャドと付き合ってると聞いてね?俺は頭真っ白になりました。何故あの筋肉と。

でも、実は付き合う振りだったんだよ。
まぁそこはいい。あえて突っ込まなかった。問題はその後、ギャドがティファに状況を説明に来てたんだけど。

「おう!ティファ、この前は悪かったな。一人で帰らしちまって。あの後、ヨシュアと合流して無事セラ嬢見つけられたぜ?ありがとな」

「いいえ!セラさん怪我などはしてませんでしたか?」

「ああ、お陰様で。それでさ、こっちから頼んでおいて悪いんだが、更にややこしい事になっちまってな?俺セラ嬢と婚約する事になったんだ」

コレを聞いてた俺とハイトは呆れて目を合わせちまったんだけどさ?その頃から、ハイトの様子がおかしいとは、思ってたんだ。でも、まだその時はいつものハイトだった。

「そうなんですね?では、私との事は?」

「おう。正直に話そうと思う。フェアじゃねぇだろ?だから、恋人のフリはコレで終わりにしてぇんだ」

「そうですか。分かりました!あ、ギャドさんご飯どうします?」

「あ、いや、俺この後、用事がまだあるんだ、悪い。また今度ご馳走になるわ」

絶対セラ嬢と会う約束があるなアイツ。
あれか?顔合わせか何かか?それにしても、なんでいきなり婚約?ティファと恋人の振りする必要なかったじゃないか?ギャドの分際で図々しい。

「・・・そう、ですか。じゃあしょうがないですね。また今度作って待ってます」

ティファさん?なんでそんなガッカリした顔しているんだ?ギャドなんて忙しくてたまにしか顔出さないだろ?
いつもは平気な顔してるじゃないか。

そんな事を考えていた俺は隣の存在をすっかり忘れてたんだ。きっとここからすでに始まっていたんだと思う。

「すまん。もしかして俺の分作ってあったか?勿体無いから他の奴にやってくれ」

「・・・はい。そうします」

その後。ハイトブチギレ事件が起こる訳なんだが。
やはりコレはそういう事だと捉えていいんだよな?

「もうティファに謝ってご飯食べさせてもらえよ」

「断る。僕は今ティファと距離を置いてるんだ。なのに食べちゃったら意味がないだろ?」

「あれから3週間。明らかにやつれてるよな?」

「・・・・ちゃんと食べてる。ただ食が細いだけだよ」

お前。なんでこんな時だけ意固地なんだ。
前はそんな人間じゃなかったよな?
確かに昔から食事に関してうるさい奴ではあったけど、他人の事でこんなに揉めたことないだろ?
そもそも興味がなかったよな?他人に。

「ティファも流石に心配してるぞ?もう許してやれよ」

「・・・僕は何を許せばいいのかな?」

何だそれ。俺が聞きてぇよ。お前何がしたいんだよ。

「ハイト。お前ティファが特別なのか?」

「フィクスはどうなの?」

質問に質問で返すんじゃねぇよ!相変わらず捻くれてやがる。

「まぁ。気になる子、ぐらいには」

ただ、付き合いたいか?と聞かれたら、どうだろうか?
今まで出会った女性の中では一番気になっている。
でもティファから色恋沙汰を匂わせるものは感じられないんだよなぁ。笑顔は可愛いし綺麗だなとは思う。これは正直な気持ちだ。

「そう。じゃあ僕の答えは聞かない方がいいよ」

「言えよ。お前と俺の仲だろ?」

酷い顔だなお前。
ティファが来る前より酷ぇ。

「正直、戸惑ってる。こんな筈じゃなかったのにな」

もう俺答えは分かってるんだけど、敢えて黙ってるぞ。
俺もどうしたらいいのかわかんねぇしな。

「馬鹿だな僕は」

複雑だ。

俺やっともしかしたら本気で好きになれるかな?程度にはティファの事気にしていたわけで、多分ギャドが俺のライバルになる予定だったんだよ。

実際ティファは俺よりギャドに懐いてたし、ちょっと不利かとは思ってたんだけど、それでもまだ負ける気はしなかった。だってギャドもそこまで本気じゃなかったから。

なんて表現したらいいんだろう。
ティファは、あの宿舎の癒しなんだよな。
だから、いつまでもあの場所にいて欲しい。
皆で馬鹿言いながら、美味しいご飯を食べたい。
でも、ハイトは違うんだな。思い返せばそうだった。
ハイトは最初から・・・・。

「これじゃ、まるで子供だな」


お前がはっきり言うまで俺も口には出さないぞ。
俺だって、自分の事、まだ分からないんだからな。
敵に情けをかける程、俺大人じゃないからな?
・・・・・・・・今回だけだからな!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...