最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第二章

ヨシュアは更に頭が痛い

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「ササラ様。まだ目が覚めないみたいですわね?」

「・・・・・・・」

「一命は取り留めたみたいですが、やはり一度に大量の出血は体にかなりの負担がかかったのですわね。心配ですわ。ヨシュア様、聞いてらっしゃいますか?」

フィクスよ。
お前、妹を説得するどころか悪化してるんだけど?
日に日に通って来る回数が増えてんだよコイツ。どんだけモフに飢えてんだ?しかも注意されてから応接室で撫でられてんだけど俺。正直狭いんだよ、この姿だと。

「もしかして、今日は撫でられる気分じゃありません?やめますか?」

その撫でられる気分って何だよ。俺じゃねぇよ。
お前が撫でたくて通って来てんだろうが。勘違いすんな。

「ヨシュア様、この姿だと全然喋ってくれませんのね?」

「あのな?お前は俺に会いに来てるんじゃなく動物を愛でに来てんだろうが。動物が言葉を喋るか?」

「はい?ヨシュア様は人間ですわよね?動物ではありませんわ?」

そうだよ!俺は人間だ!!その俺を、お前は撫で回している。だが、それは俺を愛玩動物と思っているからだろうが!!じゃなきゃお前は男を撫で回すのが趣味のただの変態女だ!!わかってんのか?わかってねぇよな?

「お前この状況ちゃんと分かってるか?個室で男女が二人きりでソファーの上で、男の頭を膝に乗せて、そいつを撫でてる。本来なら恋人同士じゃなきゃ許されない行為だぞ?」

「言われてみれば確かに。でも、ヨシュア様も嫌がらなかったですわよね?」

「脅しておいて言うセリフか?それ」

お?やっとおかしい事に気がついたか?
そろそろこんな事に時間を割くのも面倒だったんだ。
もう、いい加減目を覚まそうぜ?

「確かに最初はそうですけれど、効力のない脅しなど、何の意味もないのではないですか?ヨシュア様自分で陛下から許可を得てると・・・」

・・・・・ん?じゃあなんで、お前通って来てんの?
行ってみてダメだったら帰ればいいやとか、軽い感じ?

「いや。俺は一度撫でさせれば気がすむかと思って撫でさせてやったんだけど?その後、何故か回数が増えていったから疑問には思ってたけどよ?」

「え?では、本気でお嫌でした?私はてっきりヨシュア様は嫌がってないと思ってましたわ」

ーーーーーーーーぐぅ!コイツ!!

「・・・じゃあもう止める。今日限りこの姿でお前には会わない」

「変幻しなければ会いに来ていいんですの?」

「は?」

「こうやって。時々会って下さいます?」

はい?

悪い。俺ちょっと混乱してきた。なんで変幻しない俺と二人で会う必要が?理由が全く思い当たらない。

「別に、たまにならかまわねぇけど」

「では来週また来ますわ。ヨシュア様の都合が悪ければまた次の週でも構いませんので」

・・・・・・解せぬ。

「なぁ。俺、女の考えてる事さっぱり理解出来ねぇんだけど?コレってどういう事だと思う?」

「お前それ、モテない俺に聞く?マッジン答えてやれよ」

「俺だって詳しくはないけど、その話の内容だとさ?アイラ嬢は変幻姿のヨシュアを撫でるのが目的で通って来てるとヨシュアは思い込んでたけど、実は違った、とか?」

いや、だからそれが一番わかんねぇんだって。

「じゃあ一体何が目的で来てたんだよ。」

「え?そんなの、ヨシュアと仲良くなりたかっただけじゃね?」

「・・・・・・は?何で?」

俺と仲良く?
仲良くなってどうすんだよ。許嫁でもあるまいし。

「いや、だからさ?」

「好きなんじゃね?お前の事」

出たなメルロー。
お前本当好きだな?こういう話。

「阿呆か。そんな訳ねぇだろ?アイツの周りにいる男共見た事あるか?長身でそれなりのイケメン揃いだぞ?そんな女が俺に惚れるわけねぇだろが!」

「ちぇー?つまんねぇ奴」

うるせえな。
こちとら女に人気が無いのは分かってるんだよ。
今に見てろよ、数年後にはお前らの身長抜いてやるからな!!

で、何故か今度は人間の姿のままでアイラと茶を飲んでるわけだが?

「明日からティファ復帰するらしいですわね?また美味しいご飯が食べられますわね?」

「長かった!ベロニカの飯も美味しいけどさ?やっぱりティファの飯がしっくりくるんだよなぁ?」

「はい。私もまた寄らせていただきますわ」

そういえば、こんな風にアイラと二人きりでゆっくり話した事なかったな?こうやって話してみると結構話しやすい奴なんだよな。
お互いの性格を知っているっていうのも大きいけどな。
気を使わなくていいのは楽だよな。

「あのさ?何で俺にわざわざ会いに来るんだ?もしかして、フィクスに関する悩み事か?」

あれから考えて思い当たるとしたら、それしかないんだよなぁ。ティファにも言えない悩みなのかもしれない。
ずっと言い出せなかったとか?ありえる。

「・・・・ヨシュア様。隣、座ってもよろしいですか?」

「は?別に、いいけどよ?」

何故わざわざ隣に?
もしかして盗み聞き、されそうで怖いとか?
そんな奴この宿舎には・・・・・いるな?数名ほど。

「言っとくが、変幻はしないぞ?」

「構いません。あの、撫でてもよろしくて?」

・・・・・・は?撫でてもよろしくて?
何を?何を撫でる?

「ヨ、ヨシュア様の、髪を。触ってもよろしいですか?」

「・・・・・・・・・駄目だ、アイラ。もう今日は帰れ」

そんな顔すんな。
何だよ、俺が鈍いのかよ。クソ!

「そういう事は特別な相手としろよ。俺は違うだろ」

「はい。でも、私・・・・」

フィクスめ。
アイツ知ってたな。だから邪魔しなかったんだな?
馬鹿野郎が、わかってんのか。

「アイラ。こういうやり方、俺は好きじゃねぇ。お互い家の事だってあるし、知ってるか?魔力は遺伝する。俺は・・・」

あーーー!俺の馬鹿。
いつもの我儘だって疑わなかった俺のせいだ。
泣くなよ。俺こういうのは苦手なんだって。

「わ、私、子供が可愛いワンちゃんなら愛せますわ!」

ちがーーーーーう!!根本的にお前は間違っている!!
そして、じゃあいいか!とか思った俺自身を、俺はしばき倒したい!!取り敢えず俺達一旦冷静になろうぜ?
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