最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

文字の大きさ
89 / 144
第二章

ティファはアイラを慰める

しおりを挟む
「ティファさん、元気そうじゃない!」

「イノリさんお久ぶりです!もうすっかり良くなりました!ご心配おかけしましたー!」

皆さま!すっかり全快しました!ティファです!
ここ数日間、料理を作りたい禁断症状を押さえながらも私、耐え抜きました!だってハイトさんの監視の目が常に付きまとってましたから!!彼は最早プロの監視人です!!

それに、少しでも抜け出して何かを作ろうとしようものなら・・・・・。

「ティファ?どこに行くのかな?まさかご飯を作ろうなんて、してないよね?」

どこからともなく現れたハイトさんに背後から捕獲され、抱きつ・・・・押さえつけられて部屋に連行されてしまうので、途中から大人しくしていました。

アレを何度も繰り返すのは私の精神衛生上よろしくないですからね?・・・・・・恐怖!

「今日は何があります?」

「頼まれていたお米とパンの酵母。あと野菜が少しあるわよ?ナスと三食ピーマンあとかぼちゃも採れたわ」

「へえ!じゃあ一通り頂きます!イノリさんは他のお店に?」

「そうね。あ、ねぇ。ティファって料理どこで習ったの?どこかのお店で修行したとか?」

「いいえ?殆ど独学ですが、故郷の族長の奥さんのお手伝いをしながら基本的な事は覚えました。肉の捌き方は狩りで学んでいたので」

私の母は、料理がそれほど得意ではなかったですから。
なんだかんだで族長の奥さんが差し入れをくれてましたね?母もその度に新しく薬を渡していたので、もしや物々交換だったのでしょうか?

「ティファの経歴って面白いわよね?実家が薬師なのに狩人に弟子入りして兵士に志願してそのまま騎士になってその後料理人?中々ないわよね?」

「あはは!そうですね?でもカスバールで料理人になるのは当時難しかったと思いますから、私は運が良かったですね?」

「あのね?私実は、料理がとても苦手なの」

え?そうなんですか?
イノリさん働き者だから料理も出来そうなのに・・・。

「この前ティファがくれたサンドイッチ本当に美味しくて、その時思ったんだけど、この国の人は、味付けが下手だと思うのよ。多分、料理に対する研究が他の国に比べて遅れていると思うわ」

ああ。確かに。素材の味は生かせてると思いますが、調味料の使い方が上手ではないですね。惜しい!!

「それで、時間が空いている時でいいから、その、私に料理の作り方、教えてくれない?」

なんですと?私に料理の指南を?

「勿論食材の費用はこちらで出すし、お金はないけど何かしら食材を無料で提供するわ。どう?」

「構いませんよ。でも、私人に教えるの慣れてないんですけど?」

「じゃあ、たまに料理してるところを見学してもいいかしら?それで興味を惹かれた料理を教えてもらうなんてどう?」

「はい!構いませんよ?いつでもどうぞ!」

バーーーーン!!

ん?この荒々しい扉の開け方は、アイラさんでしょうか?
当たりです!!

「・・・・・・・・・・てぃふぁ~」

「え?アイラさん?その顔は一体?」

「わたくし、やってしまいましたわ。今まで上手く隠していましたのにぃ~」

あ、これはこの前のお話ですね?
アイラさん実行されたのですか?

「あ。じゃあ私はこれで・・・・」

「待って下さい!!イノリさんもう暫くお時間ありませんか?一緒にお話聞いて下さい!」

「え?でも、いいの?私部外者だけど?」

「私一人では荷が重いので!!是非!」

だって私その話を聞いた時、正直目玉が飛び出そうなくらいビックリしたんですよ?だって、アイラさん全然そんな素振り今まで見せなかったんです。普通少しくらい態度に出ると思うんですけど。隠していた理由もハイレベル過ぎて私には理解が出来ませんでしたから。

では、回想どうぞ!

「ティファは良いですわね?そんなに想われて。羨ましいですわ」

「え?でもアイラ様も、とてもおモテになるのでは?いつもお側に男性の方達がいるイメージがありますが?」

え?そうなのですか?そういえばファン一号とか前言ってましたね?流石アイラさん!モテモテですね?
私は違いますからね?

「あれは私ではなく、お父様の仕事関係や知り合いの方達ですわ。別に私本人が好かれているわけではありません」

「厳しいですね?アイラさんはどんな男性を好きになるんでしょうか。好みの男性はどんな方なのです?」

「好みの、男性というか。好きな方はいますが・・・」

「「はい?」」

え?アイラさん好きな人いたんですか?私てっきり重度のブラコンを拗らせまくって「お兄様以外と結婚なんて考えられませんわ!!」とか、言い出すかと。

「え?誰ですか?私の知っている人、ではないですよね?」

「・・・・・ここだけの話にしてくださる?」

はい!ちゃんと聞かなかった事として処理します!

「・・・実は私。・・・・・ヨシュア様が・・」

「「はい?」」

いえいえいえ?アイラさん?それはいくらなんでも笑えませんよ?冗談ですよね?軽いジャブのつもりですよね?

「では、最近ヨシュア様をモフモフしているのは、ヨシュア様と二人で過ごす為なのですか?」

「・・・・・だって。そうでも言わないと、私と二人でなんて会って下さらないですし」

ゲブーーーーーーー!!本気でした!!
笑いのネタとかでは無かったです!!衝・撃・的・事実。

「一体いつから?全然気が付かなかったです。アイラさんそんな素振り全く無かったですよね?」

「・・・・初めて会った時からですわ」

「「はい?」」

「この宿舎で、初めてお兄様に紹介された時から、ずっと気になってました」

ちょっと待って下さい?それは私がここに来るずっと前から、という事です?え?じゃあ何故・・・。

「何故今まで隠していたんです?アイラ様お気持ちを伝えれば考えて頂けたのでは?」

「背が足りなかったのですわ」

「「え?」」

「ヨシュア様、当時今よりも背が低かったのです。それをとても気にしていらして、せめてヨシュア様の背がもう少し伸びて、私を追い越すまでと待っていたらズルズル時間だけが過ぎてしまい・・・・」

これは大事件です。フィクスさん号泣です。
あれ?じゃあ、もしかして・・・・。

「まさか、この宿舎で働く人を、ことごとく辞めさせたのも、フィクスさんの事だけではないのですか?」

その顔は当たりですね?マジですかーーーーー!!!
おかしいとは思ってました!いくらフィクスさんがモテモテでも、流石に全員は多すぎますもんね?

「今では反省してますわ。やり過ぎたと思っております。でも、不安だったんです。まさか、誰も働きに来なくなるなんて思わなくて・・・」

一体何をしたんでしょうね?気になるところですが。

「でもヨシュアさん。あまり恋愛ごとには興味なさそうですよね?」

「・・・・はい、全く。私、ヨシュア様はギャド様と同じで、伴侶を求めていないと思いますわ。ヨシュア様の力の事を知ってそれを確信しました」

「そうなんですか?何故?」

「・・・・・魔力持ちは、この国では腫れ物を扱うように扱われます。ヨシュア様はそれでお辛い思いをしてきたみたいですので。子供も、欲しくないかと。でも、諦めきれなくて・・ティファがここに来てから、やっとまともにお話が出来るようになったのです。でも、それだけじゃ満足出来なくなってしまって・・・・」

それで脅迫までして、ヨシュアさんを撫で撫でしてるんですね?しかしそれは困りました。

「逆に気持ちを伝えづらくなったのでは?ヨシュアさん、完全に開き直って犬化してましたが?」

「そうなのですわ。もう、怒ることすらしてくれなくなりました・・・どうしましょう。今更後には引けませんし」

アイラさん強引そうに見えますがそうでもないんですよね。ちゃんと周りに気を使える人です。

「でも、触らせてくれるんですよね?それって、嫌がってないのではないですか?」

「「え?」」

「変幻も陛下の許可の下行ってます。本来ならアイラさんの脅迫など無効なのでは?だったら一度ちゃんとお話してみるべきです」

セラさんって見た目と違ってパワフルですよね?
ギャドさんに対してもそうでしたが、積極的ですよね?
凄いです!

「ちゃんと、ヨシュア様に素直な気持ちをお伝えしてみては?どの道ずっとこのままではいられませんし」

そして、玉砕したのですね?

「やっぱり受け入れられませんでした・・・。こんな事なら、モフらせてなんて言わなければ良かったですわ!」

そうですね。
ヨシュアさん、可愛いと言われるの嫌いそうですもんね。
とりあえずアイラさん、頭撫で撫でしてあげます。

「えぅーーーー!!私の癒しがーー!モフモフーー!」

あの、アイラさん?
人間のヨシュアさんが好きなんですよね?犬ではなく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...