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第二章
ササラはとても目覚めが悪い
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「ササラ。お願いだからこの部屋から出ないで頂戴」
私の母だった人は、いつも怯えながら私を部屋に閉じ込めた。子供の私には母の事が理解出来なかった。
父は私が生まれてからは殆ど家に帰って来なくなった。
私の周りでは常に普通では起きない現象が起こったからだ。人は、自分と異なる物を受け入れられないものだ。
幼かった私は、自分はずっとこの狭い部屋の中で生きて行くのだと疑わなかった。そうすれば母に愛されると思い込んでいた。
「あの子は素晴らしい魔力を持っている。貴方達では手に負えないでしょう?彼を王宮魔術師候補生としてお預かりしたい」
私はそれを呆然と、部屋の外で聞いていた。
きっと母は、私をあの部屋から出さない筈だ。
きっと断るに違いない。
あの部屋から出なければ、私はずっと愛される。
「連れて行ってもらってかまいません。どうぞ、ご自由に」
人は、望んでこの世に生まれたりはしない。
私も生まれて来たくて生まれて来たのではない。
「あんな子供間違いだったのです。私から、あんな子が生まれる筈ないもの」
ただ、あの人から生み出された私はその事さえ否定され、正直、混乱したのだと思う。あの人は私が覚えている限り私に笑いかけたことも触れたこともない。ただ悲しそうな顔で私をあの部屋に閉じ込めた。誰にも知られないように。
「ササラ?貴方、何故部屋から・・・・・」
「どうして?部屋から出たから?」
「君がササラか?私は・・・・」
「・・・・・・でていけ」
「ーーーーーーひっ!!」
今でも鮮明に思い出せる。
私達の体が、まるで紙くずのように舞い上がって、外に放り出されたあの瞬間。
私は初めて外に出て、あの青い空を見た。
そして、あの人が現れた。
「あはは!!何?君急に飛び出して来たねー?空中遊泳したかった?確かに、今日はいい天気だからねぇ?きっと気持ちいいよ?」
「きゃああああああ!!だ、誰かぁ!助けて!」
「デ、デズロ様!?何故ここに?」
「えー?だってこんな面白い子見つけたのに僕に黙ってるんだもん?なんでなのかなぁ?」
その人は、平然と宙に浮いたまま私を抱き上げた。
そして、頭を撫でて、こう言った。
「君、宮廷に来るなら僕の息子にならない?ここに一生閉じ込められてるのと、僕に可愛がられながら面白おかしく暮らすの、どっちがいい?」
6歳の子供に、よくもそんな事聞いたな?と後に思ったが、私はそんな事よりも初めて私を子供扱いした、この男から離れたくなくなった。その時は、それが何なのか理解出来なかったが、私は今でも、その事を後悔した事はない。
「おとうさん?」
「そうだよ?パパって呼んでも、いいんだよ?」
・・・・阿呆が!誰が呼ぶものですか。でも、あの瞬間から、私の親は貴方ただ一人です。これから先もずっと。
「ティファって僕の実の娘なんだよねー?実は」
「へぇ?それで?あと何人くらい子供作ったんです?この際だから全部吐いて下さい」
「え!?ササラって実は僕の奥さん?浮気を疑う正妻?」
ビックリしたんですよ。貴方に子供がいたとは思いませんでした。では、私はその代わりですか。納得しました。
「なんだよーササラ冷たいなぁ。もっと、慌てたりするかと思ったのになぁー?」
貴方のおふざけに慣れてしまいましたから。不服ですが。
「それで?私にどうしろと?」
「ティファをさぁ、僕の養子にしてもいい?」
なんでそんな事をいちいち私に確認するんでしょう?
そもそも養子ではなく実の娘でしょうが。
「えー?だってぇ。ササラの妹になるんだよ?聞くでしょ?普通」
何、常識人ぶってんですか?貴方は非常識人間なのでその気遣いは無駄ですよ。お好きにどうぞ。
「ご勝手に」
「じゃあササラ、ギャドとバトンタッチしてね?あの子の引受人頼んだよ?」
「何言ってるんですか?貴方が面倒をみるのでは?」
「僕まだティファに会えないの。あの子に術をかけてあるからね?あの子がここに馴染んで落ち着くまでティファとは会わない」
その後ティファの今までの経緯を聞き彼女に会った時、私は気付きました。あの子の私を警戒する姿や人への接し方で。
この子は深く傷ついていると。
それなのに、その事に本人が気付いてないんです。
そして、関わって行く内に、この子はとてもデズロ様に似ていると思いました。本当に不器用なんですね。やり方が。
ギャドからも常々話を聞かされてましたから、私は彼女を快く迎え入れました。
でも結局デズロ様はティファに真実を話しませんでした。ティファがピンチになれば駆けつけるほど彼女が大事な癖に。あの子を抱き締めてやる事が出来ないんです。
本当に、馬鹿なんです。あの人。
「・・・・・ササラ?おはよう。やっとお目覚めだね?」
「・・・・・何、して、るんです?」
「何って?ササラが起きるのを待ってたんだけど?」
思ったより静かにしてましたね?でも、少しやつれましたか?酷い顔してますけど、鏡見てみたらどうです?
「もう、子供ではないので、一人で起きられますが?」
「はは!何言ってるの?ササラはどんなに年をとっても僕からしたら子供だから?子供は親より早く死んじゃ駄目なんだよ?」
・・・・貴方、その様子だと、また何か無茶しましたね?
本当に勘弁して下さいよ。私、目覚めて数秒で後処理の心配しなくてはいけないんですか?
「ティファは無事だったんですね?」
「僕、本気で心配したんだけどな?どうして分かってくれないのかなぁ?」
日頃の行いじゃないですか?その様子だと無事ですね?
「ササラ」
「それで?貴方はどんな無茶をしたんですか?」
死んでもいいなんて思ってなかったですから、大丈夫です。中であれほど魔法が使えなくなるとは予想していなかったんですよ。それで咄嗟にティファの前に飛び出してしまっただけですから。
「いい加減、その顔やめてもらえます?目覚めてすぐそんな顔されたら起きる気、失くします」
貴方はいつもみたいにヘラヘラしながら我儘言ってて下さい。そうじゃないと私のした事が無駄になってしまうでしょう?
私ももう、いい大人なので。
いつまでも子供扱いするのは、やめて頂きたいものです。
全く。どうして、貴方が抱きしめる相手が彼女ではなく私なんでしょうか?
「・・・・・・すみませんでした。泣いてます?」
「そうだよー。僕久々に、こんなに働かされて泣きそう。もう暫くダラダラ過ごすから!!仕事しない!」
はいはい。つまり、いつも通りですね?了解しました。
万年アルバイターのデズロ様?
私の母だった人は、いつも怯えながら私を部屋に閉じ込めた。子供の私には母の事が理解出来なかった。
父は私が生まれてからは殆ど家に帰って来なくなった。
私の周りでは常に普通では起きない現象が起こったからだ。人は、自分と異なる物を受け入れられないものだ。
幼かった私は、自分はずっとこの狭い部屋の中で生きて行くのだと疑わなかった。そうすれば母に愛されると思い込んでいた。
「あの子は素晴らしい魔力を持っている。貴方達では手に負えないでしょう?彼を王宮魔術師候補生としてお預かりしたい」
私はそれを呆然と、部屋の外で聞いていた。
きっと母は、私をあの部屋から出さない筈だ。
きっと断るに違いない。
あの部屋から出なければ、私はずっと愛される。
「連れて行ってもらってかまいません。どうぞ、ご自由に」
人は、望んでこの世に生まれたりはしない。
私も生まれて来たくて生まれて来たのではない。
「あんな子供間違いだったのです。私から、あんな子が生まれる筈ないもの」
ただ、あの人から生み出された私はその事さえ否定され、正直、混乱したのだと思う。あの人は私が覚えている限り私に笑いかけたことも触れたこともない。ただ悲しそうな顔で私をあの部屋に閉じ込めた。誰にも知られないように。
「ササラ?貴方、何故部屋から・・・・・」
「どうして?部屋から出たから?」
「君がササラか?私は・・・・」
「・・・・・・でていけ」
「ーーーーーーひっ!!」
今でも鮮明に思い出せる。
私達の体が、まるで紙くずのように舞い上がって、外に放り出されたあの瞬間。
私は初めて外に出て、あの青い空を見た。
そして、あの人が現れた。
「あはは!!何?君急に飛び出して来たねー?空中遊泳したかった?確かに、今日はいい天気だからねぇ?きっと気持ちいいよ?」
「きゃああああああ!!だ、誰かぁ!助けて!」
「デ、デズロ様!?何故ここに?」
「えー?だってこんな面白い子見つけたのに僕に黙ってるんだもん?なんでなのかなぁ?」
その人は、平然と宙に浮いたまま私を抱き上げた。
そして、頭を撫でて、こう言った。
「君、宮廷に来るなら僕の息子にならない?ここに一生閉じ込められてるのと、僕に可愛がられながら面白おかしく暮らすの、どっちがいい?」
6歳の子供に、よくもそんな事聞いたな?と後に思ったが、私はそんな事よりも初めて私を子供扱いした、この男から離れたくなくなった。その時は、それが何なのか理解出来なかったが、私は今でも、その事を後悔した事はない。
「おとうさん?」
「そうだよ?パパって呼んでも、いいんだよ?」
・・・・阿呆が!誰が呼ぶものですか。でも、あの瞬間から、私の親は貴方ただ一人です。これから先もずっと。
「ティファって僕の実の娘なんだよねー?実は」
「へぇ?それで?あと何人くらい子供作ったんです?この際だから全部吐いて下さい」
「え!?ササラって実は僕の奥さん?浮気を疑う正妻?」
ビックリしたんですよ。貴方に子供がいたとは思いませんでした。では、私はその代わりですか。納得しました。
「なんだよーササラ冷たいなぁ。もっと、慌てたりするかと思ったのになぁー?」
貴方のおふざけに慣れてしまいましたから。不服ですが。
「それで?私にどうしろと?」
「ティファをさぁ、僕の養子にしてもいい?」
なんでそんな事をいちいち私に確認するんでしょう?
そもそも養子ではなく実の娘でしょうが。
「えー?だってぇ。ササラの妹になるんだよ?聞くでしょ?普通」
何、常識人ぶってんですか?貴方は非常識人間なのでその気遣いは無駄ですよ。お好きにどうぞ。
「ご勝手に」
「じゃあササラ、ギャドとバトンタッチしてね?あの子の引受人頼んだよ?」
「何言ってるんですか?貴方が面倒をみるのでは?」
「僕まだティファに会えないの。あの子に術をかけてあるからね?あの子がここに馴染んで落ち着くまでティファとは会わない」
その後ティファの今までの経緯を聞き彼女に会った時、私は気付きました。あの子の私を警戒する姿や人への接し方で。
この子は深く傷ついていると。
それなのに、その事に本人が気付いてないんです。
そして、関わって行く内に、この子はとてもデズロ様に似ていると思いました。本当に不器用なんですね。やり方が。
ギャドからも常々話を聞かされてましたから、私は彼女を快く迎え入れました。
でも結局デズロ様はティファに真実を話しませんでした。ティファがピンチになれば駆けつけるほど彼女が大事な癖に。あの子を抱き締めてやる事が出来ないんです。
本当に、馬鹿なんです。あの人。
「・・・・・ササラ?おはよう。やっとお目覚めだね?」
「・・・・・何、して、るんです?」
「何って?ササラが起きるのを待ってたんだけど?」
思ったより静かにしてましたね?でも、少しやつれましたか?酷い顔してますけど、鏡見てみたらどうです?
「もう、子供ではないので、一人で起きられますが?」
「はは!何言ってるの?ササラはどんなに年をとっても僕からしたら子供だから?子供は親より早く死んじゃ駄目なんだよ?」
・・・・貴方、その様子だと、また何か無茶しましたね?
本当に勘弁して下さいよ。私、目覚めて数秒で後処理の心配しなくてはいけないんですか?
「ティファは無事だったんですね?」
「僕、本気で心配したんだけどな?どうして分かってくれないのかなぁ?」
日頃の行いじゃないですか?その様子だと無事ですね?
「ササラ」
「それで?貴方はどんな無茶をしたんですか?」
死んでもいいなんて思ってなかったですから、大丈夫です。中であれほど魔法が使えなくなるとは予想していなかったんですよ。それで咄嗟にティファの前に飛び出してしまっただけですから。
「いい加減、その顔やめてもらえます?目覚めてすぐそんな顔されたら起きる気、失くします」
貴方はいつもみたいにヘラヘラしながら我儘言ってて下さい。そうじゃないと私のした事が無駄になってしまうでしょう?
私ももう、いい大人なので。
いつまでも子供扱いするのは、やめて頂きたいものです。
全く。どうして、貴方が抱きしめる相手が彼女ではなく私なんでしょうか?
「・・・・・・すみませんでした。泣いてます?」
「そうだよー。僕久々に、こんなに働かされて泣きそう。もう暫くダラダラ過ごすから!!仕事しない!」
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第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
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